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ある犬の生い立ち

原 亨

犬のトリミングスクールは多くの犬を飼っている。学生がトリミングの練習をするための練習台だ。その犬はそのような犬の中の一匹だった。その犬がひょんなことから学校を離れて我が家に来ることになった。

彼女(雌犬だった)はプードルと柴犬の雑種。多分できちゃった婚の結果で歓迎されず、学校に売られたのだろう。

不妊手術をされているのは、雑種なのだから仕方がない。しかしそれだけではなく、声帯を取られていて、ワンワンと鳴けない、ヒョンヒョンと鳴く。

ケージが大好きで外で遊ばず、ケージに篭りっきり。そこで「ヤドカリ犬」というあだ名が付いた。

ケージから出されると「また何か嫌なことをされるのではないか?」とびくびくしている。人の顔色を見る。生い立ちを考えると不憫なのだが感じの良いものではない。犬は単純な心が美しいのに、この犬はその長所を失ってしまった。

しかし、頭は良い。叱られたことはやらない。褒められたことはやる。

食欲は凄い。毎回きれいに平らげて残さない。

そんな犬だったが、学校を離れてもう10年以上。大分普通の犬に戻ってきた。

ケージの外で眠れるようになったのは大進歩。でも人の顔色を伺うことは直らない。

この犬も今年で16歳。もういいおばあさん。体中にいぼができてきた。毛が生えているので皺は分からないが。

学校で一緒に練習台にされていた犬達はとうに死んだのではあるまいか?ストレスの多い環境だから。

安心しきって長々と寝ている姿を見ると、「お前、家に来て良かったな」と思う。

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コメント (2)

第三市民:

 うーん、伸び伸びとした善い余生を送ってほしいと思います。

 でも、なんとなく身につまされて、本当の自分に戻ったのかなー、と時々思いますもの。

ton:

トラウマを解消するには長い時間がかかりますね。

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