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オール電化とオールガス化のどっちがよいのか

永井俊哉

現在日本では、電力会社とガス会社が、一般住宅での顧客獲得をめぐって激しく競争している。かつて、電力会社は電気を、ガス会社は熱を供給して、棲み分けていたが、相互に相手の分野にも進出することで、競合する関係になってしまった。電力会社はオール電化に「エコキュート」、ガス会社はオールガス化に「エコウィル」と紛らわしい愛称をつけているが、本当にエコロジカルでエコノミカルなのはどちらだろうか。

1. エコキュート

「エコキュート」の「キュート」には英語の「かわいい」という意味と、「給湯」という意味が込められているそうだ[All About:最近よく聞く?!「エコキュート」ってなに?]。商品のネーミングの妙という点では、エコキュートに軍配が上がるが、ここで問題にしたいことは、どちらがエコなのかということである。

東京電力のサイトには「空気の熱でお湯が沸く」[TEPCO : エコキュートとは]というキャッチフレーズが掲げられているが、これはどういうことなのか。まず以下の図でエコキュートの原理であるヒートポンプの仕組みを説明しよう。

エコキュート

火力発電が高熱から電気と廃熱を作るのに対して、ヒートポンプは電気と廃熱から高熱を作る。だから、ヒートポンプは火力発電の逆のサイクルで、火力発電における「順カルノーサイクル」に対して、「逆カルノーサイクル」と呼ばれることがある。順カルノーサイクルについては、既に「生命にとっての資源問題と環境問題」で説明した。ここでは、逆カルノーサイクルを同様に説明してみたい。

気体が持っている熱エネルギーのことを、内部エネルギーという。冷媒の内部エネルギーUは、外から仕事Wが加えられたり、熱Qを加えられたときに上昇する。

⊿U=W+Q

冷媒の内部エネルギーは、図の番号に対応して、四つの段階で次のように変わる

  1. 熱交換器で、大気から熱を吸収して、内部エネルギーを増やす
  2. 圧縮により、外から仕事を加えられ、内部エネルギーを増やす
  3. 熱交換器で、水道水に熱を放出して、内部エネルギーを減らす
  4. 膨張により、外に仕事を加えて、内部エネルギーを減らす

このように、膨張により大気温以下に温度が下がった冷媒を元に戻すのに大気の熱が使われているから、ヒートポンプは、冷媒の内部エネルギーを元に戻す過程で、大気の熱を汲み上げ、取り入れていると言うことができる。

ヒートポンプの効率性を表す指標として、投入した電気エネルギーに対して、どれだけの熱エネルギーを生み出すかを計測する、COP(coefficient of performance 性能係数)がある。エコキュートは、COPが3以上あるので、電気エネルギーの2倍以上の熱エネルギーを外界から汲み取っていることになる。

エコキュートは、給湯だけでなく、暖房もできる。エアコンの冷暖房もヒートポンプを使っているのだから、そこまでお湯でする必要はないと思うかもしれないが、冷房はともかく、暖房は、あまり消費者に満足感を与えていない。頭寒足熱というように、足元が暖かくて、頭は涼しく感じるというのが一番快適なのだが、エアコンの暖房だと、頭上ばかりが暖かくて、足元は寒いままになりがちである。だが、エコキュートなら、温水式の床暖房で、頭寒足熱を実現することができる。もとより、使う時間が短く、こまめに切り替えたいのであれば、電気式の床暖房という手もある。

ヒートポンプは熱効率がよく、また夜間の割安の電気を使うことで、経済的でもある。その一方で、こういう意見もある。

基本的にエコキュート(冷媒CO2)は、10℃の水を90℃のお湯にすることを得意としています。(内臓しているガスの特性より)COP(消費電力あたりに加熱する能力・この数字が高いほど効率が良い)という表示があります。深夜お湯を沸かす場合、エコキュートはCOPがおよそ4.0です。これは1.0の電力を使用した時に、4倍の熱を発生することができると言うことです。しかし、お湯が足らなくなり昼間に沸き増しする時には、COPがおよそ1.0の状態になります。ということは、電気ヒーターでお湯を直に温めている、非常に効率の悪い状態です。

想像してみてください。床暖房は55℃から35℃程のお湯が一定の温度を保ちながら、循環しているのです。先程の10℃から90℃まで温度を上げるときは効率がおよそ4倍なのですが、いざ、一定温度を保とうとすると効率が非常に悪くなるのです。あなたが、床暖房を8畳だけ敷設し、3時間しか使用しないのであればエコキュート床暖房はとてもランニングコストが安いと思います。しかし、敷設面積が広く、また休日、長期休み、ご家族が昼間も床暖房を使用する状態があるようでしたら、慎重に採用をされたほうが良いと思います

欲しいのが35-55℃のお湯だとしても、それは90℃のお湯と水を混ぜればよいのだから、大して問題はないだろう。

むしろ本質的な問題は、ヒートポンプは、大気の熱という広く薄く散らばったエネルギーを時間をかけて、少しずつ集める暖房機で、瞬時に大量の熱を発生させることはできないというところにある。私はオール電化のアパートに住んでいるのだが、冬の寒いときにタンクのお湯が切れて、入浴中、シャワーから冷たい水しか出なくなって閉口したという経験がある。

もちろん装置を大型化すれば、もっと大量の熱を貯蔵することができるのだろうが、そうなると、コストやスペースの面で条件が厳しくなるだろう。また、ヒートポンプは、初期費用が高いにもかかわらず、高圧であるため、故障しやすく、寿命に不安があり、ランニングコストが安くても、トータルで安くつくとは限らない。

また、外界の大気から熱を集めるという性格上、寒冷地では、COPが低下する。マイナス20度以下で使うと故障しやすくなる。しかし、寒冷地ほど熱需要は大きいわけだから、ヒートポンプにとっては二重に不利である。温暖であまり大量の熱を必要としないところには、ヒートポンプはよいが、寒さが原因で死者が出るようなところでは、ヒートポンプは頼りなさ過ぎる。

深夜にヒートポンプが作動するので、騒音が問題になることがある。深夜は、電気料金が安いが、それは、原子力エネルギーが、弾力的な出力調整ができないからで、前提となっている原子力発電が本当にエコロジカルなのかどうかまで考えなければならない。

2. エコウィル

ガス会社が宣伝している「エコウィル」は、自宅において、ガスで発電し、その廃熱を給湯などに利用するコージェネレーション(電熱併給)設備である。大型火力発電では、エネルギーの56%が廃熱として捨てられ、さらに4%が送電などで失われ、エネルギー効率は40%程度になってしまう。しかし、各消費地で、発電し、生じた廃熱を給湯や冷暖房に使えば、エネルギー効率を70-90%にまで引き上げることができる[日本ガス協会/ガスコージェネレーションシステム]。

エコウィルは、エコキュートと異なり、お湯が切れるとか、寒冷地で使えなくなるとかいったことはないというメリットはあるが、エコキュートに比べると普及していない。それにはいくつか原因がある。

日本は、海外のように、ガス田からガスパイプで天然ガスを輸送するということをせずに、液化しているため、ガスの価格が割高である。パイプラインの敷設には大きな初期投資が必要であるが、メタンは再生可能な資源であり、長期的な視点からすれば、パイプラインの敷設によるガスの低コストな供給は、エコノミカルな観点からもエコロジカルな観点からも必要である。

また、ガスタービンを回して発電する場合、騒音や振動が大きいと言う問題もある。

コージェネレーションの本質的な問題として、同時に発生する電気と熱のどちらか一方が需要に合わないことがしばしばあるという点を挙げることができる。電気が余ったからといって、電力会社が買ってくれるわけではない。このため、電主熱従で、熱の方を調節しなければならない。

発電時のエンジン排熱で暖房温水を加熱します。暖房の熱が足りないときは、補助熱源機で暖房温水を加熱します。エンジン排熱が余るときは、貯湯タンクに余剰熱を貯めます。

よって、熱需要と電気需要に大きなギャップがあるときには、エネルギー効率は低くなる。

電力中央研究所の浜松照秀氏は、以下のような図を描いて、同じ熱と電気を供給するのでも、オール電化の方が、オールガス化よりも、投入一時エネルギーが小さくてすむと主張する。

コジェネレーション

図の中央に示された熱と電気の需要に対して、左右からエネルギーが供給される形で示したものである。図の左からは、ネットワーク電力が熱と電気を併給する。すなわち、純粋な電気・電力用途の電気と、暖房・給油用との熱をヒートポンプ用電力の形で供給される。年平均COPで入力電気の4~5倍の熱を発生できるヒートポンプにより、必要な発電所一次エネルギーは左端の幅となる。

この図では、熱需要が電力需要よりも過大に描かれている。また、コージェネレーションにおける電気エネルギーへの変換率が低すぎる。実際には、電気需要はもっと多いし、その場合、コージェネレーションの方が有利になる。

ガス会社は、次世代コージェネレーションとして、燃料電池の導入を考えている。天然ガスは、もともと燃やしても、排出される窒素酸化物、硫化酸化物などの有害物が少ないので、クリーンなエネルギー源であるが、それを燃料電池の燃料として使えば、排出物は水蒸気だけになるので、さらにクリーンである。また、燃料電池は、騒音や振動がないという点で、消費地の近くに設置しやすく、コージェネレーションにはぴったりである。

また、化学エネルギーを直接電気エネルギーに換えるから、エネルギー効率は高くなる。例えば、TOTOが、2004年9月17日に発表した燃料電池は、発電効率が55%もある。

TOTOではこのたび、固体酸化物型燃料電池(以下SOFC)セルスタックで世界最高水準の発電効率55%を達成し、耐久3000時間に成功しました。排熱を利用するコジェネレーションシステムとすることで総合効率80%以上を実現できます。このほどNEDOの研究委託を受け、発電システムとして2007年の実用化を目指します。

この燃料電池の作動温度は、約900度である。これだけ温度が高ければ、瞬時に給湯できるし、熱を冷房に使うこともできる。また、白金などの高価な触媒を使わなくても、自分のエネルギーで天然ガスを水素に改質することもできる。

コージェネレーションのもう一つの問題である電熱の需給ギャップであるが、熱エネルギーの輸送が難しいことから、コージェネレーションは、熱主電従で行い、あまった電気は、不足しているところに売るようにするのが最適である。全体として電気が足りないなら、遠隔地のモノジェネレーションで補えばよい。

しかしながら、現時点では、電力会社は、ライバル企業のガス会社によるコージェネレーションで生み出された電気を買い取ろうとしない。こんなことでは、コージェネレーションは普及しない。

私は、1999年に次のように書いた。

ユーザ宅から町内にひとつある交換機までの加入者線を「天下の公道」として国公有化し、加入者交換機から先の接続サービスで各電話会社をイコール・フッティングで競争させる機能分割の方が、競争促進になって良い。NTTと新電電の競争は、喩えてみれば、道路を所有するタクシー会社と道路を借りているタクシー会社の競争のようなものだ。前者は、コスト削減の努力をしなくても、道路の賃貸料を値上げすることによって、ライバルの値下げをくい止めることができる。新電電各社がNTT回線を利用する時に払う接続料金は、98年現在で売上の40%に相当し、しかもその接続料金は、NTTが実際に使った費用を積み上げて計算する総括原価方式で設定される。NTTにしてみれば、広告宣伝費や研究開発費を含めて、金を使えば使うほどライバルの負担を重くすることができるわけだから、コストを削減しようとする必要性を感じないわけだ。

現在、NTT持ち株会社や東西NTTは、敷設した光ファイバーを東西NTTが使うのと同じ条件で他事業者に貸し出す義務を負っている。同じことは、電線についても言える。

もしも電線を公道化するならば、買い手は売り手を選ぶことができるようになり、これにより電力価格が下がることが期待できる。売り手を選ぶといっても、面倒な手続きは不要である。インターネットで電力ネットワークを管理し、入手可能な一番安い電力を自動的に選択するようにプログラムしておけばよいのである。

[永井俊哉:水素エコノミー]

エコキュートとエコウィルのどちらがよいかは、現時点ではまだ決定的なことは言えない。しかし、最良の電熱供給方法が生き延びるためには、事業者間でフェアな競争が行われることが前提で条件として必要である。

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