序文
2007年12月4日・5日において、大阪国際会議場(グランキューブ大阪)で経済産業省資源エネルギー庁/おおさかFCV推進会議/リードエグジビジョンジャパン株式会社の主催で開催されたFC EXPO セミナーIn 大阪に参加してきました。今回のコラムでは12月5日に開催されたセッションを中心に特筆すべきものを読者の皆様にお伝えしたいと思います。
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FC EXPO セミナin大阪 12月5日 セミナープログラム
1.定置用燃料電池の現状と普及に向けた課題~新日本石油の取組み、今後の水素社会のあり方について~
講演者:新日本石油(株) 常務取締役執行役員 FC・新商品事業本部長 兼 研究開発本部長 松村 幾敏
内容:定置式家庭用燃料電池は、いよいよ開発の段階から実用化の段階に移ってきており、普及段階の幕開けである。現在の取り組み状況をレビューし、今後の本格普及に向けての課題、および今後の水素社会のあり方について述べる。
2. 家庭用SOFCコージェネレーションシステム開発の現状と将来展望
講演者:京セラ(株) 総合研究所 SOFCプロジェクト 責任者 吉田 真
内容:家庭用コージェネレーションとして使用されるSOFC(固体酸化物形燃料電池)システムは、その高い発電効率により、家庭から排出されるCO2削減の切り札として期待されている。他の家庭用システムと比較しながらその開発動向と将来展望を紹介する。
3.PEFC/DMFC用次世代材料の開発とその特性
講演者:山梨大学 クリーンエネルギー研究センター センター長・教授 渡辺 政廣
内容:PEFCの広汎普及には、高特性・耐久性、コスト低減が必須である。そのポテンシャルを有する新材料(電極触媒、電解質膜、水素製造触媒)開発と物性評価の文科省「リーディングプロジェクト」成果を発表する。
4.世界の燃料電池ベンチャー最前線
講演者:Conduit Ventures Ltd. Principal / ナノフュージョン(株) 取締役 野村 貴紀
内容:ベンチャーキャピタリストの視点から近時の(欧米を含めた)燃料電池ベンチャー会社の動向を紹介する。
5.モバイル用燃料電池の将来展望
講演者:(株)東芝 ディスプレイ部品・材料統括 技師長 上野 文雄
内容:携帯電話・パソコン用電源として開発されるモバイル用燃料電池は、他にも様々な提案がなされている。アプリケーションに応じて、既存の電池・電源と比較しながらその最新技術動向と将来展望を紹介する。
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1. 定置用燃料電池の現状と普及に向けた課題
FC EXPO in 大阪の2日目最初の講演は「定置用燃料電池の現状と普及に向けた課題~新日本石油の取組み、今後の水素社会のあり方について~」という題目で、新日本石油(株) 常務取締役執行役員 FC・新商品事業本部長 兼 研究開発本部長 松村 幾敏によって行われました。昨日と同様、大きな会場席が満席で、参加希望者が完全に入りきらない程でした。新日本石油(株)の定置用燃料電池の取組みに対する関心の高さを伺うことができます。
~石油系燃料で民生用初となる次世代型燃料電池システムのフィールド実証試験を実施~
当社(社長:西尾 進路)は、財団法人新エネルギー財団(NEF)が、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から助成を受けて実施する 「平成19年度 固体酸化物形燃料電池実証研究」 において、LPG仕様および灯油仕様の2種類のシステムを提供し、設置・運転試験を行うことが決定しましたのでお知らせいたします。
固体酸化物形燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)システムとは、様々ある燃料電池の中でトップレベルの発電効率であることに加え、作動温度が高いため排熱を有効に利用できることが期待されております。これは現在開発が進んでいる固体高分子形燃料電池よりも発電効率が高いため、さらに環境にやさしい次世代型の燃料電池システムといわれております。
本プロジェクトにおいて当社は、SOFCシステムを製造し提供するとともに一般住宅に設置し、今後6ヶ月以上にわたり実負荷環境下での実証データを取得、最新技術レベルおよび技術的問題点を把握し、今後の技術開発課題を抽出することを目的としています。
このLPG仕様および灯油仕様のSOFCシステムには、石油系燃料から高効率で水素を製造できる当社独自の改質装置、システム制御技術などの当社技術の粋を組込んでおります。
/ LPG 仕様、灯油仕様での参加は当社のみであり、これによりSOFCシステム開発の上で、今後の燃料種多様化への貢献を目指します。
当社は、既に1kw級 固体高分子形燃料電池 (PEFC) を対象として、2005年よりNEF が実施している「定置用燃料電池大規模実証事業」 において、全設置台数1,257台のうち、最大規模となる435台を設置しており、今後もこれまで築き上げてきた技術力、各種ノウハウを基に将来の燃料電池の普及に向けて様々な施策に取り組んでまいります。
ENEOS:固体酸化物形燃料電池(SOFC)実証研究について
新日本石油は上記の通り、定置用燃料電池の種類として注目を浴びている固体酸化物形に取り組んでいます。高分子型(PEFC)に比べ固体酸化物型(SOFC)の方がCO2除去プロセスが不要な為システムフローが簡素で反応熱が最終的に750度の高温である点がまず特徴としてあげられます。
ENEOS:固体酸化物形燃料電池(SOFC)実証研究について
その他、燃料電池の詳細は後の京セラ”家庭用SOFCコージェネレーションシステム開発の現状と将来展望”の部分で取上げたいと思います。
ここでは石油元売り会社という事で家庭用燃料電池の”燃料”の特徴をまとめましょう。
燃料は大きく分けて灯油、LPG、都市ガスの3種類になります。果たしてバッティングしないのでしょうか?どれが使いやすいのでしょうか?という問いには下記である程度答える事が可能です。
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灯油
家庭用国内消費量:1280万t(1600万kL)
使用方法:給油、暖房(70%)
使用地域:全国で広く普及、北海道、東北、北陸が中心
その他:液体燃料でありタンクにより供給
LPG
家庭用国内消費量:550万t
使用方法:暖房、給油、厨房用
使用地域:都市ガス地域以外で広く普及
その他:ボンベで供給
都市ガス
家庭用国内消費量:700万t(98億立方メートル)
使用方法:暖房、給油、厨房用
使用地域:供給エリアは全国土面積に対して5%、供給個数は全国の総戸数に対して47%
その他:パイプライン供給
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住居地域により都市ガスかLPGかの違いは出てきますが、実は灯油の消費量が一番多いのが現状です。灯油はインフラが全国に整備されているために利便性が高く、また他の燃料に比べて経済性に優れた水素原料といえましょう。しかし、液体で都市ガスなどに比べて炭素数が多いために、水素を製造するには高度な技術が必要とされます。灯油は市販灯油と専用灯油に分けられますが、新日本石油は両方に対応しています。
新日本石油は09年度にも市販灯油を利用できる家庭用燃料電池システムを商品化する。現在は硫黄分を低減した専用灯油による機種で大規模実証事業に参加しているが、実際に商品展開するためには市販灯油への対応が必須と判断した。現時点で灯油仕様の燃料電池システムを商品化しているのは新日石だけだが、出光興産も08年度に市販灯油へ対応した機種を市場投入すると発表。灯油離れを防ごうと、開発競争が激しさを増してきた。新日石では06年3月に荏原バラード、荏原製作所と専用灯油を使う燃料電池システム「ENEOS ECOBOY」を共同開発したが、これをベースに脱硫機能などを追加するものと見られる。灯油は都市ガスや液化天然ガス(LPG)と比べて硫黄分が多く、燃料から水素を取り出す改質触媒に悪影響を及ぼす。そのため現行機種では事前に硫黄分を10分の1以下まで落とした専用灯油が必要だった。
市販灯油は脱硫機(対応年数:10年ほど)を付ける必要がありますが、専門灯油にはその必要がありません。専門灯油を使用する場合、機器コストは低減できるメリットがある事は覚えておいて良いでしょう。
最後、まとめとして家庭用燃料電池を広く普及させるには大掛かりな装置というイメージではなく「家電」である事が必要条件と掲げています。装置の安全性の他、本体価格のコスト低減、寿命の向上など、総合的に見て費用対効果に見合うものにならねばなりません。家庭の財布を握る主婦をいかに納得させる事ができるか。今後に期待したい所です。
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現状
一般価格:数百万円
寿命:数年レベル
信頼性:故障率0.1件/台・月
発電効率:34%(LHV)
総合効率:80%(LHV)
普及レベルの要求性能
本体価格:50万円
寿命:10年以上
信頼性:故障率0.001件/台・月
発電効率:36%以上(LHV)
総合効率:80%(LHV)
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2.家庭用SOFCコージェネレーションシステム開発の現状と将来展望
FC EXPO in 大阪の2日目、2番目の講演は京セラ(株) 総合研究所 SOFCプロジェクト 責任者 吉田 真さんによって行なわれました。皆さんご存知のように京セラは電子機器、情報機器、光学機器、セラミック関連メーカーです。主に燃料電池の小型化に繋がる各種機器開発の進捗を伺う事ができました。
大阪ガス株式会社(社長:芝野 博文)と京セラ株式会社(社長:川村 誠)は、定格出力をこれまでの1kWから700Wに変更し、都市型小規模住宅にも設置可能な小型の家庭用固体酸化物形燃料電池(SOFC※1)コージェネレーションシステムを開発しました。両社は発電効率と設置性に優れた本システムを2008年度市場導入に向けた原型機と位置づけ、実用化に向けた取り組みを進めていきます。
■SOFCコージェネレーションシステムの写真

発電ユニット(左)と排熱利用給湯暖房ユニット(右)
■2mmセル(新型セル)および3mmセル(旧型セル)の写真

2mmセル(新型;左)と3mmセル(旧型;右)
新日本石油と同様、NEF主催のSOFC実証実験のシステム提供者および設置運転試験者として参加していますが、新日本石油が灯油とLPGなのに対し、京セラは都市ガスと水素を作り出す元の燃料が違います。SOFCは、セラミックス系の固体電解質を使用した燃料電池で、固体高分子形(PEFC)と比べて作動温度が750~1,000℃と高いことが特長です。発電効率が高く、且つ高温の排熱も利用できることから、省エネルギー効果の高いコージェネレーション機器として大きな期待が寄せられています。さらに、総合エネルギー効率に占める発電比率が高いことから、お湯の使用量が少ない家庭や業務用施設でも十分な経済メリットや省エネ効果を得ることが可能となります。
従来のSOFC(Solid Oxide Fuel Cell)システムは、1000℃という高温で作動しますが、熱自立運転を行うことの難しさや高温で使用可能な材料の制約もあり、実用化にはより低温での作動が求められています。東京ガスの持つ横縞形SOFCのシミュレーション技術、低温作動化に関する材料設計技術と、京セラの持つ筒状平板形状SOFCセルの材料技術、成形技術、焼成技術の活用により、横縞形SOFCの作動温度の大幅な低温化(1000℃→750℃)に成功し、かつセルスタック1本当たり約10Wの出力を確認しております。また、今回の横縞形セルスタックは、一枚のセラミック基板上に複数のセルを焼成する構造であるため、セル間の接続に関する製造工程が省略可能であり、かつ一枚のセラミック基板で高電圧が得られることにより、低コストとなる構造となっております。
1980年代後半から自社内でセルの開発を行なっており、SOFCの作動温度が1000℃ではなく750℃と低減されたのもこのセルがあるからと言えます。
家庭用SOFCコージェネレーションシステムの構成単位はシステム、モジュール、スタック、セルに分類できます。
京セラでは各種燃料電池の詳細を下記のようにまとめています
| 燃料電池の種類 | リン酸型 PAFC |
高分子型 PEFC |
有産炭酸塩型 MCFC |
固体酸化物型 SOFC |
|---|---|---|---|---|
| 燃料 | H2 | 純水H2 | H2 CO |
H2 CO CH4 |
| 電解質 | H3PO4 /SiN Matrix |
Sulfon - F 高分子膜 | Li2CO3-K2CO3 溶融塩 |
ZrO2 (Y2O3 Stabilized) |
| 伝道イオン | H+ | H+ | CO3 2- | O 2- |
| 作動温度 | 190~220℃ | 60~90℃ | 630~670℃ | 600~1000℃ |
| 発電効率 | 35~40% | 30~40% | 40~45% | 45~60% |
| 燃料改質 | 必要 | 必要 | 必要 | 簡便、又は不要 |
| 廃熱の利用形態 | Hot Water, Sterm 90~150℃ |
Hot Water 60~70℃ |
Hot Water 60~70℃ |
Hot Water, Sterm 90~200℃ |
| 利点 | 既に上市 | 低温作動 | 高効率 | 高効率 多種燃料に対応 |
| 欠点 | メンテナンスコスト システムコスト |
システムコスト 耐久性 燃料改質が複雑 |
高温作動 信頼性 |
高温作動 長い起動時間 脆性破壊・もろい |
| 用途 | オンサイト発電 200kW~1000kW |
家庭用コジェネ 自動車用 |
大規模発電 オンサイト発電 |
大規模発電 分散電源 |
※どの方式も一長一短です。一般的な水素の貯蔵・運搬技術と燃料電池に関心がある方は、永井俊哉氏のコラムをまずご確認していただくことをおすすめいたします。
水素エネルギー(2)水素の貯蔵と運搬
燃料電池はどれが有望か
上記表の固体高分子型SOFCは高温動作、長い起動時間、脆性破壊・もろい課題がありますが、戸建住宅だけでなく、集合住宅に適用できるポテンシャルを秘めています。SOFCの高い発電効率と、貯湯温度が高い事による貯湯槽を小型化する事も可能で”人がやれないと言ったことを、やり遂げるのが、京セラの技術者魂”という事がスタートのきっかけになったとの事でした。
フィールド実験のレポートの一部は下記サイトで確認できます。
大坂ガス:家庭用固体酸化物形燃料電池(SOFC)コージェネレーションシステムの国内初の居住住宅での運用試験結果について
また、規制・制度の見直し状況をまとめると下記になります。今までは中大規模発電をベースとした安全の考え方でしたが、規制見直し後には新たな技術基準および民間認証取得により設置性が大幅に向上しました。
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①常時監視をしない発電所の範囲拡大/電気事業法
②一般用電気工作物への位置付け/電気事業法
③窒素ガスパージの不要化/電気事業法
④消防庁への設置届け出の不要化/消防法
⑤建築物からの保有距離の撤廃/消防法
⑥逆火防止装置の取付け不要化/消防法
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今後、ますますこの分野で開発が進められ消費者の手にとりやすいものになっていく事でしょう。吉田真氏は家庭用SOFCコージェネレーションシステムの将来展望として以下のようにまとめられ講演を終了されました。
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課題
・セル・スタックの耐久性向上
・システム信頼性の向上
実家庭屋外に設置し、フィールド試験を継続
(NEF「SOFC実証研究」)にて多数台の評価)
・製造コストの低減 補機の見直し、量産工程確立
・商品力向上 設置性、施工性、メンテナンス性など
展開
・業務用システムへのスケールアップ
・多種燃料対応(プロパン・灯油・バイオ燃料など)
・小型化により乗用車補助電源(APU)へ
・電解セルとして水素製造へ(リバーシブルセル)
・太陽光発電との組み合わせによる脱化石燃料
→水と空気と太陽光(熱)で全てのエネルギーを
【太陽電池・熱】→【水電解(SOEC)】→【水素貯蔵】→【燃料電池(SOFC)】
※必要な時に必要なだけ発電(安定電源)
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関連コラム:希望の船
