2007年1月28日から31日まで、UAEのアブダビ市で行われた展示会“Environment 2007”で見つけたメジャーなブースやユニークなブースを紹介しよう。
アブダビ未来エネルギー会社
アブダビ未来エネルギー社はUAEのアブダビ政府の国有企業で、ムバダラ開発を通じて、エネルギー問題・環境問題を解決するマスダール・イニシャティブと呼ばれるプログラムである。このプログラムは、石油収入にのみ依存してきたアブダビ経済の多様化、将来のエネルギー市場でのアブダビの地位の維持と向上、アブダビの技術力の向上、持続可能な人類の発展への有意義な貢献を目標にしている。
プログラムの具体的な内容としては、以下の三つがある。
- 2億5千万ドルの「マスダールクリーン技術基金」が、アブダビの環境に適用可能なクリーンエネルギー、水問題、環境問題の解決策に重点的に投資される。
- 「持続可能な技術と先端的研究プログラム」は、商業化可能な事業との合弁を行う。太陽光発電、海水の淡水化、バイオ燃料に焦点が当てられている。
- 「マスダール・ビジネス・インキュベータ」は、6平方キロメートルのスペシャル・フリー・ゾーンで、最大で1500社までの、駆け出しのベンチャー企業の育成と指導を行い、2009年に稼動する。
アブダビ政府は、技術の輸入国から輸出国への変貌を図るべく、マスダール・インスティチューションという大学院大学を設置する。MITとの協力の下、MITを模範として作られるとのことであるが、日本の東京工業大学など、世界各国の高水準の大学とも研究のネットワークを形成する。UAEの最高学府は、UAE大学であるが、マスダール・インスティチューションは、UAE大学とは異なって、大学生を採らない、研究機関としての性格の方が強い教育機関である。研究テーマは、太陽光発電、淡水化処理、太陽熱、炭素の捕集と貯蔵処理などである。
ドルフィン・エナジー
ドルフィン・エナジーは、1999年にアブダビ政府によって設立され、2000年にはフランスのトタールが、2002年には米国のオクシデンタル・ペトロレアムが株主として加わった。カタール沖合いの天然ガスをカタールで精製し、それを海中のパイプラインを通じて、2007年からUAEに、2008年からオマーンに、25年間にわたって供給する事業を開始する予定である。UAEの天然ガスは、世界で四番目に埋蔵量が多いが、発電や淡水化のためにはそれだけでは足りないので、輸入しなければならないのだそうだ。世界有数の産油国がエネルギーを輸入しなければならないというのは、異様である。。
トタール
トタールは、フランスのエネルギー会社である。その名が示すとおり、様々な代替エネルギーをトータルに手がけている。
太陽光発電は、途上国の僻地で重宝されている。フランスは、アフリカに多くの植民地を持っていて、いまだに影響力があるらしく、トタールは、アフリカ向けに太陽光発電パネルを販売している。
太陽光発電よりも割安な自然エネルギーが風力エネルギーである。フランスには、まだ海上風力発電所はないが、海上は、陸上よりも風力が強く、安定しており、地代が不要であることから、トタールは、シェルと共同で、ダンケルクの沖合い10キロメートル、水深5-10メートルの海域に90メガワット級のウィンドファームを作るとのことである。
トタールは、バイオ燃料にも力を入れている。世界的には、バイオエタノールがよく使われているが、ヨーロッパでエタノールよりも、FAME(Fatty Acid Methyl Ester)が主流である。ヨーロッパ最大のバイオマス燃料生産国であるドイツでは、特にそうである。FAMEは、メタノールを植物油と反応させて得られるエステルで、ディーゼル燃料に5%混ぜることができる。トタールは、FAMEの生産に加え、E85(エタノールが85パーセントのガソリン)やバイオマスのガス化に取り組んでいる。
燃料電池に関しては、トタールは、PEFCとSOFCを重視している。SOFCは定置用にむいているというのが一般的な見解であるが、トタールは、出力が高くて小型化できるからという理由で、自動車エンジンにむいていると言っている。
ロイヤルダッチシェル
温室効果ガス対策として、ロイヤルダッチシェルは、2005年からオランダで二酸化炭素を地元の温室に供給する事業を始めた。2006年からは、ストイル社とともに、ノルウェイ沖合いの油田で、原油精製時に発生する二酸化炭素を貯蔵することを始めた。二酸化炭素を注入すれば、石油の出もよくなるし、地盤沈下も防ぐことができる。
石油の代替燃料としては、バイオエタノールに力を入れている。2004年に、シェルのパートナーであるロゲン社が、茎から実用化可能な水準のエタノールを製造することに成功した。2005年には、木材をガス化することで、それを、ディーゼルに混ぜることができる燃料に転換する事業に投資した。シェルは、自分たちの販売網を活用して、バイオ燃料の普及に努める。
バイオ燃料と異なって、水素燃料が代替エネルギーとなるのは先のことである。燃料電池はまだ高いし、水素ステーションの建設もコストがかかる。しかし、地元政府や主要な自動車会社と協力して、水素ステーションの実験的な建設を始めている。
風力発電は、発電コストが下がってきたが、場所の選定や発電の不安定さなど解決するべき課題を抱えている。トタールのところで述べたように、シェルは、北海やオランダの沖合いに海上風力発電を建設したが、海水による腐食という問題の解決に迫られている。
BP
訪問者に対するサービスナンバーワンのブースは、間違いなくBPだ。スターバックスのコーヒーとパンを無料でふるまい、生演奏でメッセージを伝えていた。肝心の中身の方はどうだろうか。
BPは、Scottish and Southern Energy とともに、2005年に、低炭素水素発電プラントをスコットランドのピーターヘッドに建設するピーターヘッドプロジェクト発表した。北海ガス田から採取した天然ガスを水蒸気改質し、発生した水素は発電に用い、二酸化炭素は近くのミラー油田に注入し、貯蔵するというプロジェクトで、これにより、天然ガスに含まれている炭素の90%を捕獲することができる。
ガス田の近くに油田がなければならないので、このプロジェクトにはあまり汎用性はない。
シャープ
シャープが展示していたLumiwallは、太陽光発電パネルなのだが、その名の通り、壁でもあり、シースルーで、発電しつつも、外の光を室内に通す。太陽光発電で得た電気を照明に使うよりも、そのまま太陽光を照明に使った方がよいことはいうまでもない。そして、蓄積された電気は、夜や曇りの時に照明用に使う。UAEは暑くて、太陽光線がきついので、ビルの窓ガラスには、遮光断熱装置が取り付けられているが。Lumiwallにはそうした効果があるので、UAEのビルの窓に使うのもよいだろう。ただし、Lumiwallはコストが高いので、発電機としては割に合わない。公共の施設向けの高価なデコレーションとしてよいだろうと展示員が言っていた。
YM TRADING
もう一つ、日本のユニークな製品、マックス・フィルターを紹介しよう。マックス・フィルターは、株式会社モノベエンジニアリングが開発した浄水装置である。上の写真は、YM TRADING が展示していたマックス・フィルターである。フィルターといっても、コイル状のバネフィルターで、こうすることで汚水との接触面積を増やしている。このフィルターの隣合う線間空隙に水を取り込み、高濃度・高圧・高温・高腐食性液体等あらゆる液体の濾過が可能で、また以下の図に示されているように、逆洗浄による付着物の除去も瞬時に容易にできる。
ただし、この浄水装置は、不溶物を除去するだけで、海水の淡水化まではできない。中東では、逆浸透法ではなくて、蒸留法で100%ピュアな淡水を作っている(むしろ味気がないということで、逆にミネラルとかを加えなければならない)ので、あまり需要はないが、UAE奥地のオアシスの町、アルアインでは、使い道があるかもしれない。


