緊迫の度合いを増す中東情勢について

ご挨拶

 この度、新たに連山でコラムを掲載させていただくことになりました。まだ慣れぬ部分があるかもしれませんが、どうか宜しくお付き合い下さい。

 昨今、急激な勢いを持って世界情勢が変化していることは賢明なる連山読者の皆様におかれましては既にご存知のことと思います。

 世界各地で同時進行している情勢、及び日本を取り巻く情勢について、海外・国内の報道を問わず適宜取り上げ、思うところを述べて行きたいと思います。

風雲急を告げる中東情勢

 北京オリンピック開催を巡り、チベット情勢を絡めて欧米のメディア主導で中国政府を非難する国際的ムーブメントばかりが注目を集めておりますが、その裏で中東情勢は風雲急を告げているようであります。

 特に、イスラエルは今年の4月上旬に建国史上最大規模の国家全体を上げた軍事訓練を敢行し、それに対抗するように隣国シリア・ヒズボラも警戒態勢を一気に引き上げました。

 その後、イスラエル・ヒズボラ・イランの間で熾烈な声明・宣言の応報が繰り返されており、緊張の度合いは加速度的に高まっております。

【参考】イラン国営通信:Israel threatens Iran with destruction

【参考】イラン国営通信:Lebanon, Hezbollah on full alert

【参考】アルジャジーラ:Israel stages major security drill

【参考】イラン国営通信:Syria 'preparing to repel Israel attacks'

【参考】イラン国営通信:Iran condemns Israel's threats

【参考】エルサレムポスト:Syrian official: We're prepared for war

 そして4月9日には、南ガザでイスラエル軍とパレスチナ側の間で衝突が発生し、4月11日にはイスラエル軍戦車部隊が先陣を切る格好でガザに侵攻、15日には本格的にイスラエル軍部隊がガザに侵攻を再開しました。

【参考】イラン国営通信:Israeli tank fire kills 7 Palestinians

【参考】アルジャジーラ:Fatal clashes in southern Gaza

【参考】イラン国営通信:Israel makes incursion into Gaza

 ガザ侵攻再開とほぼ同じタイミングで、イスラエルのリヴィニ外相はカタールを訪問し、「アラブ諸国とイスラエルは、パレスチナ和平が達成されるの待たずに関係正常化することができる」「他のアラブ諸国も、カタールの例にならい、イスラエルと関係を正常化してゆくだろう」と言った内容のコメントを発表しました。

 リヴィニ外相のこの発言に対して、レバノンの最高位聖職者アヤトラ・モハンマド・フセイン・ファドララ氏は非常に強い調子で非難し、アラブ・イスラム諸国に対する侮辱だと強く反発しました。

 リヴィニ外相としては、アラブ諸国を分断したい(ハマス・シリア・ヒズボラ・イランと、それ以外に)という意図があったのかもしれません。  ただし、現在中東で高まるハマス・シリア・ヒズボラ・イランに対するシンパシーを押し切ることは容易ではないと思われます。各国政権にとっても国民感情を無視する事は非常に大きなリスクになりかねません(場合によっては政権転覆の引き金に)

【参考】アルジャジーラ:Livni speaks at Qatar conference

【参考】イラン国営通信:'Livni's remarks big insult to Arabs'

 イスラエルのエルサレムポストは、「ハマスがエジプト国境を侵犯しようとしている」「テロ攻撃のためガス兵器の準備をしている」と言ったニュースを報じており、情報戦も白熱の様相を呈しております。

 エジプト側は親米政権と言うこともあり、アラブ・イスラム側とアメリカ・イスラエル側の間で葛藤しているのでしょう。先日のガザ国境壁崩壊の際には、国民感情にも配慮して寛容な姿勢でしたが、今回のエルサレムポストの報道については「また今度パレスチナ側がエジプト国境を侵犯するのなら、以前のような寛容な真似はできない」と、強い姿勢を示しました。今回はイスラエル側に配慮した形になっていると思われます。

 ハマス側にとっても、エジプトと事を構えることは一切利がありません。即座に「エジプト国境を侵犯する計画はない」と否定する声明を発表しました。

【参考】エルサレムポスト:Hamas denies plans to breach border

【参考】エルサレムポスト:Officials: Hamas hoarding gas for terror ops

 強硬な姿勢を貫くように見えるイスラエルですが、内情は単純ではないようです。オルメルト政権は「現在他に良い選択肢がない」と言う消極的理由で、何とか体制維持できているようなものです。アメリカにおけるブッシュ大統領の支持率よりも、オルメルト政権の支持率は低いと言う声もあります。

 国内の経済状況も深刻なようです。10代など若者達のホームレス化が著しく、社会問題化していると言う報告が、NPO法人・エレム(困窮するイスラエルの若者たちを支援する組織)から発表されています。

 その報告によると、過去3年を通してイスラエルの若者のホームレス化が劇的に進行しているとのことです。

 この事実は決して軽く受け取るべきではないでしょう。  イスラエルの国家の礎が確実に、そして深刻に蝕まれていることの象徴ではないでしょうか。

【参考】エルサレムポスト:Number of homeless female teenagers soar

【参考】アジアタイムス: Ehud Olmert on the Damascus road

 一方、中東地域ではイランの存在感が日増しに強まっており、反イスラエル・反アメリカ感情・機運がこれまでになく高まっています。前回のレバノン侵攻以来、中東におけるイスラエルの覇権が弱まった事とは対照的です。

 イスラエルがかつてのような覇権を維持するのは難しい情況にあると考えられます。

 イスラエルを支援してきたアメリカの経済的衰退は、その主要因として注目すべきものでしょう。

 信用収縮にイラク駐留による米軍の疲弊──ドル機軸体制は危機に瀕し、アメリカ覇権体制に裏付けられたイスラエルは根幹から揺さぶられている、という構図がうかがえます。

 アメリカ側もイラク派兵規模の削減や撤退を延期するなどして、何とか中東に留まろうと懸命になっています。もし、アメリカ軍が中東から撤退する事になれば、イスラエルの衰退は決定的になると考えられるからです。

 時間の経過と共に、イスラエル・アメリカを取り巻く状況は悪化してゆくことでしょう。

 たとえ、中東大戦と言う最悪の状況を回避したとしても、外交交渉で今までにない──破滅的とも言える譲歩をアラブ・イスラム諸国から迫られることは想像に難くありません。

 まだ力が残されているうちに決戦に臨むか、大幅な方針変更・譲歩を受け入れるのを覚悟で和平路線を選ぶか──もはやイスラエルに残された時間は、決断を下すまでに残された時間はわずかなのかもしれません。

 そうした状況を察してか、あのカーター元大統領がなんとハマスの最高幹部と面会する予定とのことです。

 当然の如く、アメリカ・イスラエルの双方から非難が沸き起こりました。もし、ハマス側に正式な外交チャネルを開くような国が現れれば、今までの路線は大転換を迫られるでしょう。カーター元大統領とハマス側代表との会合には、その可能性が秘められていると考えられます。

 

【参考】AFP通信:中東和平プロセスは「ハマスも含むべき」、カーター元米大統領

【参考】CNN:カーター氏のハマス会談に米政府が「待った」

【参考】エルサレムポスト:Rice slams Carter for Hamas meeting

【参考】エルサレムポスト:Peres: Carter damaged peace process

 いかがでしたか?

読みにくい、分かりにくい、その他質問点などあるかと思います。何か思う点がありましたら、お気軽にコメント欄に記入していただけると幸いです。

 

【次回予告】

 次回は、金融面に焦点を当てて思うことを述べて参りたいと思います。信用収縮の荒波は世界恐慌の引き金になるのか、こちらも予断を許さぬ状況にあります。日々のニュースを読むにつけ、激動の時代の真っ只中にいることを感じさせます。

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参考コラム:【自立】アメリカの占領が終わる日本
産経新聞:空自の緊急発進、14年ぶり300回超 対ロシア軍機で増加
参照コラム:【予言】北京五輪は中止か(再掲載 当コラムは2007年8月のコラム)

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