先送りされる欧米の不良債権とその裏で仕組まれている新たな投資ブーム

 米国発の信用収縮が消費減退を招き、実体経済は深刻な状況下にあります。しかし、株式市場は厳しい世相とは無関係かのように上昇を続けています(今年3月下旬から安定的に上昇中)
 
 実態はそれほど悪くないのでしょうか? 実体経済はこれから回復に向かうと言うのでしょうか?
 
 いや──実体経済はこれから更に厳しさを増してゆくと思います。
 また、前回のコラムでも触れたように米国の金融機関は、不良債権を「レベル3債券」と言う種類に分類する事で時価評価を回避していると考えられます。実体隠しを政府ぐるみで公認している節があります。
 不良債権の規模を隠蔽する(言い方は悪いのですが)方法には、別の方法もあります。評価損著しい債券と国債を交換すると言う方法です。具体的には、金融機関が抱えている不良債権と中央銀行が保有する国債を額面に近い価格で交換すると言うものです。最近では、「ターム物証券貸与ファシリティー(TSLF)」と言う仕組みで受け入れる債券の種類・規模を拡大しています。
 こうした不良債権隠しのアプローチに対して、欧州の一部──具体的にはドイツ側からは批判の声が上がっています。


 4月28日(ブルームバーグ):英紙フィナンシャル・タイムズ・ドイツ版(F
TD)は28日、欧州中央銀行(ECB)の政策委員会メンバー、ウェーバー独連
銀総裁が、時価会計が現在の信用危機を増幅しているとの議論に触れ、時価会計を
変更すべきだとの意見に反対を表明したと報じた。
 同総裁はインタビューで、時価会計の廃止は「金融システムに対する市場参加者
の信頼を回復させる以前に損ねることになる」と答えたという。

 
 ちなみに、一連の不良債権隠しに必要な資金を賄っているのが中央銀行のバランスシートです。踏み込んで言えば、中央銀行が金融機関が抱える不良債権を引き取って抱えると言う形になります。ゆえに、中央銀行のバランスシート規模が引き取り可能限度額となります。
 中央銀行のバランスシートの概算規模ですが、FRBは約7000億ドル、ECBは約8300億ユーロ、イングランド銀行は約500億ポンド、日銀は約150兆円──多少の前後はあるかもしれませんが、このような規模であると推測されます。
 
 バランスシートに抱える国債を弾薬として、不良債権を打ち落とす訳ですが、イングランド銀行は既に500億ポンドの国債と不良債権を交換しております。早くも弾薬を使い果たした格好になっていると考えられます。


 4月21日(ブルームバーグ):イングランド銀行(中央銀行)は21日、約500億ポンド(約10兆2900億円)相当の国債を銀行が保有する住宅ローン担保証券(MBS)と交換すると発表した。これにより資金コスト押し下げと貸し渋り解消を図る。イングランド銀のキング総裁は、需要が500億ポンドを超える場合でも対応する考えを示した。
 キング総裁はロンドンで記者会見し、国債・MBS交換のプログラムには「恣意的に設定した上限というものはなく、500億ポンドを大きく上回ることもあり得る」と述べた。この措置の目的は金融システムへの信頼回復であり、最も重要な点は「必要な資金にアクセスするための仕組みの存在を周知させることだ」と述べた。
 発表によると、イングランド銀に貸し出した資産の価格下落による損失は貸し出し元の銀行が負う。交換の期間は1年で、最大3年まで更新が可能。国債に交換可能なのは2007年末時点で存在していた資産に限定される。
 英政府は中銀に融資奨励策を求めている。資金コスト急上昇を受けて英国の市中銀行は好条件の住宅ローンを提供しなくなった。これが住宅不況に拍車をかけることを当局者らは恐れている。イングランド銀は2007年12月以来3回の利下げを実施したが、信用収縮の傾向に歯止めがかからないことから新手の策を編み出した。

 そのためでしょうか、直近のドル資金供給のプログラムにイングランド銀行は参加しない方針を表明しています。バランスシートに余裕が残っていない以上、身動きが取れないのですから、必然と言えましょう。


イングランド銀行(英中央銀行)は2日、ロンドン市場ではドル資金が十分だとして、米連邦準備理事会(FRB)との為替スワップ協定には参加しない方針を明らかにした。
 英中銀の報道官はロイターに対し「ロンドン市場でドル資金が不足しているという兆候はない。従って(協定に)加わる必要はない」と言明した。
 そのうえで「(スワップ協定に関する)発表は承知しており、他の中銀による金融市場での努力を支援する」と語った。

 
 FRBとECBは、ドル資金供給の勢いを強めています。FRBがドル資金供給をする(≒不良債権の買取資金の供給)のは分かります。しかし、ECBまで一緒になってかなりの規模のドル資金供給をするのはなぜでしょうか?
 
 実は、欧州金融機関は大量の「ドル建て資産」を保有しているのです。そのため、ユーロ・ドルでドル安が進むと、欧州金融機関の抱える評価損が膨れ上がってしまうのです。現在、ユーロにはドル離れした資産が流れ込んでいますので、評価損増加に拍車が掛かっています。ECB側が、「過度な為替相場の変動は望まない」と何度も繰り返しているのは、こうした背景(欧州金融機関が大量のドル資産を抱えている)を踏まえたものと考えられるのです。
 
 欧州金融機関としては、「過度なドル安を食い止めつつ、不良債権と化したドル資産をバランスシートから切り離す」事が重要になってきます(日本の土地バブルの様に、住宅・不動産価格の下落が長期に渡ると考えられる=債券の価値下落が止まらないので、不良債権化したドル資産は早めに切り離すのが賢明)。
 ECBがFRBと歩調を合わせてドル資金供給をする事も、理にかなった行動と言えましょう。
 
 中央銀行や大手金融機関ですら、信用収縮で四苦八苦しているのですから、当然貸し渋りが横行し、ヘッジファンドは次々と倒産に追い込まれる──日本の土地バブルの事例を振り返ると、そう考えるのが自然かもしれません。ところが、実際にはヘッジファンドへの資金流入が止まる様子はなさそうです。
 


 15日に発表された米調査会社、ロススタイン・カスの調査によると、世界的な信用収縮にもかかわらず、米ヘッジファンド・マネージャーの90%以上が今年のヘッジファンド業界の資金調達に関して楽観的な見通しをしている、と15日付のロイター通信は報じている。
 今回の調査は、米ヘッジファンドのシニアマネージャー306名を対象に実施。回答者の3分の2近くは米経済に悲観的な見通しを示しているものの、ほとんどのマネージャーが、ヘッジファンド業界に今年も潤沢な新規資金が流入すると予想していることが判明した。
 回答者のおよそ半数は運用資産額7.5億ドル以上のヘッジファンドに勤務。残り半数が運用資産額1−7.5億ドルのヘッジファンドに勤務している。
 また同調査で、ヘッジファンドの運営コストが増していることが明らかになった。優秀な人材の確保、また機関投資家の顧客層拡大のため、リスク管理、インフラ整備を強化していることが要因と考えられる。「回答者の70%近くが今後、運営コストが上昇すると予想している」と調査会社はコメントしている。
 ヘッジファンドは、通常、管理報酬2%、またリターンから成功報酬20%をとり、手数料の高さがしばしば批判にあがるが、不透明な景気動向の中、分散投資を望む投資家が多いため、ヘッジファンドの需要は高く、手数料が高止まりしていることも同調査で判明した。

 
 
 散々な成績にも関わらず資金供給を引き続き受けられるヘッジファンド──どうやら、中央銀行や金融機関の別働隊として活躍を期待されているようなのです。
 具体的には、「金融機関の増資引き受け」「不良債権の買取」の2点を期待されている模様です。

 「金融機関の増資引き受け」ですが、国際的な金融活動をする銀行には8%の自己資本規制が課せられています。評価損失が大きくなるほど、自己資本を増強せねばなりません。
 昨年末にはアブダビやシンガポール、中国の政府系ファンドが出資に応じてくれたのですが、最近はシビアなスタンスになっています(出資したものの、大損をしたのですから当然です)。
 増資の引き受け先を他に見つけなければ、自己資本比率を維持できなくなってしまいます。そこで白羽の矢を立てられたのが、ヘッジファンドやプライベート・エクイティです。
 FRB・ECBから供給された資金は、主要金融機関を経由して、ヘッジファンドやプライベート・エクイティに貸し出されます。軍資金を受け取ったヘッジファンドやプライベート・エクイティは、金融機関の増資を引き受けます。これにより、金融機関は無事に資本調達する事ができる訳です。
 更に、ヘッジファンドやプライベート・エクイティは、金融機関が保有する不良債権の買取もします。例えばシティグループの場合、買い手側に低金利で資金を貸し出しをしてまで、不良債権を引き取ってもらっているのです。

 信用収縮が終わりに近づいているという米銀大手シティグループのビクラム・パンディット最高経営責任者(CEO)の発言が真実なら、同CEOはなぜ、自社のバランスシート上に抱えるレバレッジド・バイアウト(LBO)向け融資債権を、不利な条件で売却するのだろう。  事情に詳しい複数の関係者が匿名を条件に明らかにしたところによると、シティは今月、80億ドル(約8310億円)の融資債権をプライベートエクイティ(未公開株)投資会社に売却した。売却前に60億ドルを、自社の調達コストよりも低い金利で投資会社に貸し付けていた。ドイツ銀行と英ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド・グループ(RBS)も、融資債権を売却するために買い手に資金を貸し付けた。  このような売却によって、銀行が抱えていた2300億ドル相当の売れ残り融資債権は910億ドルまで圧縮された。しかし、ベアリング・アセット・マネジメントの債券・為替調査ディレクター、ナイジェル・シリス氏は、銀行が早急に新規融資に積極的になるとは限らないと指摘する。なぜならば、このような取引では、ある種類の債権を別種の債権に交換したことにしかならないからだ。
     危険な貸し出しをしてまでも、不良債権をバランスシートから切り離す必要があったのでしょう。今後、シティグループのようなケースが増えるかもしれません。と言うのもヘッジファンド側はキャッシュポジションを増やしており(=株や債券を換金し、資金量を確保している)、その目的がディストレスト資産(≒不良債権)の買い集めにあるらしいのです。今回のシティグループのケースの様に、評価損著しい不良債権を買い取るチャンスを虎視眈々と狙っていると考えられます。  
 ウォールストリート・ジャーナルは17日付の紙面で、ヘッジファンドは、クレジット市場危機で相場が乱高下し方向性を掴むことが困難なことや、流動性確保のため、高レバレッジ運用を避け、運用資産全体に占める現金、あるいは現金同等物の比率を高めている、と報じている。  アナリストやマネージャーは、こうしたヘッジファンドの方針転換について、現金が急に必要になるリスクが高まっていることを指摘する。ヘッジファンドに資金を提供する銀行が、融資担保不足を理由に追加保証金(追証)を要求する事態や投資家の解約請求が増えるリスクがあるためだ。  ヘッジファンド自体も、新しい資金の調達が困難になっていることや、調達コストが2倍以上になっていることも理由として想定される。しかし、もっと大きな理由があると、同紙は指摘している。つまり、ファンドマネージャーは、現金比率を高めて、将来のディストレスト資産投資(経営破綻、あるいは破綻寸前の企業の社債などを安値で買い取り、企業再生後に売却して利益を上げる手法)の機会を待っているためだとしている。

 
 実は、ヘッジファンドがディストレスト資産・債券を狙う動きは、昨年のサブプライム問題表面化時(2007年7月下旬以降)から活発になっていました。


 世界的な信用危機が市場を襲ったにも関わらず、破綻企業などの債券に投資するディストレスト債権型ヘッジファンドの成績は振るわなかった。しかし、2008年はディストレスト債権戦略が勢いを増す年になるとの見方を示す業界関係者も少なくない。
(...中略...)
 そのため、銀行が手持ちのディストレス債権を売りに出すのは時間の問題と考えられる。リストラの始まった銀行では、すでに回収困難なローン債権のディスカウントでの売りが始まっているという。こうした売りは一般には公表されないが、ディストレスト債権のヘッジファンドは、売り手の動きに注目している。
 英大手ヘッジファンド、テムズ・リバー・キャピタルのキンゼー・クイック氏は、ロイターの取材に対して「ディストレスト債権は、8月の信用危機から12ヵ月後、つまり来年の8月ごろから多くの売りが現れるだろう。ディストレスト債権の売り手がより多く現れる機会を常に伺っている」と述べている。


 上記ニュースで「来年の8月ごろから多くの売りが現れるだろう」と述べられていますが、これは金融機関が溜め込んだ不良債権が2008年8月頃から放出され始める事を指しているものと考えられます。今年の第3四半期決算発表時期には、銀行のバランスシート上に多額の評価損が(今まで以上の規模)計上される可能性があります。

 今後訪れるであろう「ディストレスト資産ブーム」ですが、信用収縮を解決する希望の星として注目を集めています。不良債権の引き取り手が現れる事で、今まで値が付かなかった紙くず債券に値が付くようになるわけです。保有資産が無価値になると言う最悪の事態を回避すべく、不良債権を売却する動きは確実に高まってゆく事でしょう。
 
 ヘッジファンド業界では、今までの「高レバレッジ型ファンド」が退場させられ、入れ替わる形で「ディストレスト資産運用型ファンド」が台頭するものと考えられます。
 「高レバレッジ型ファンド」は、アメリカの住宅不動産バブルに便乗して、相当高い倍率を掛けて(高レバレッジ)運用していた為、追証をかけられたり解約請求が相次ぐなどして衰退しつつあります。
 その一方で、評価損失が著しい債券を買い集めて、高く売り抜けようとする「ディストレスト資産運用型ファンド」が資金を集め、動きを活発化させているのです。
 時価評価会計を中止したとしても、こうしたヘッジファンド業界の動きを見ることで、金融機関が保有している債券の価値がどれほど落ちているのか、うかがい知る事ができます。
 


 米経済通信社ダウ・ジョーンズは4日付の記事で、専門家の分析を引用して、ディストレスト資産投資の動きが今年後半に本格化すれば、クレジット市場の安定化に寄与すると報じている。
ディストレスト資産投資は、経営破たん、あるいは、破たん寸前となっている企業の社債などを安値で買い取り、それらの企業が裁判所の財産保全命令を受けて企業再生したあと売却して値上がり益を得る投資手法だ。
 クレジット市場は、買い手不在で取引が極端に減少している。買い手のヘッジファンドなどレバレッジの高い投資家は追加保証金(追い証)に迫られ、ポジションの解消を余儀なくされている。また、銀行や証券会社も保有資産の値下がりで数十億ドル単位の評価損の計上に追いやられているのが現状だ。
 こうした厳しいクレジット市場に新しい買い手が現われたことで、市場に活気が戻り、金融資産の価値が押し上げられる効果が期待される。ロスチャイルド銀行のデービッド・レズニック氏は、M&A資金調達のレバレッジド・ローン市場は、特に、こうしたディストレスト資産投資家への依存度を強めてきているとし、市場の流動性を高める上で重要な存在だ、と指摘する。
 また、景気後退と金融市場の混乱でも、企業破産はまだそれほど増えていないことから、ディストレスト資産投資家は住宅ローン債権に的を絞っている。
 ヘッジファンドのフォートレス・インベストメント・グループは、今年、150億-200億ドル(約1兆5000億-2兆円)規模の新規の資金調達を実施し、ディストレスト投資を強化する方針だ。同社は、ディストレストMBS(不動産担保証券)は投げ売りされており、大口の買い手も少ないので、レバレッジを使わずに高リターンが期待できる点で、一生に一度あるかないかのチャンスだという。
 3月後半、ブラックロックとハイフィールズ・キャピタル・マネジメントは住宅ローン債権を狙った20億ドル(約2000億円)のファンドを発表した。シダテル・インベストメント・グループも昨年暮れ、イートレード・ファイナンシャルから30億ドル(約3000億円)相当のMBSを8億ドル(約800億円)で買い叩いている。マラソン・アセット・マネジメントも今夏にディストレスト資産の購入ファンドを組成する計画だ。

 米ヘッジファンド運用大手フォートレス・インベストメント・グループが、住宅不動産や住宅ローン担保証券(RMBS)を積極的に買い増している、と28日付けのダウ・ジョーンズが報じている。  フォートレスのウェズ・エデンズCEOは「安値でも処分できない不良債権が日に日に増えている。まもなく、あらゆる種類の資産が格安で購入できる『黄金時代』がやってくるはずだ」と述べ、「信用危機の影響を見極めるには時期尚早だが、今後3ヶから半年のうちに、地方銀行などへの融資を巡って大きなチャンスがやって来るだろう」との見通しを示した。  一方、運用資産額130億ドルを誇るゴールデンツリー・アセット・マネジメントは、レバレッジド・バイアウト(LBO)債権を以前より大幅に値下がりした価格で取得している。  ゴールデンツリーのスティーブン・タナンバウムCEOは「今年に入って弊社は、清算を余儀なくされた金融機関からLBO債権を数億ドル分購入しているが、株式の10-30倍の資産価値がある」と語っている。


 ディストレスト資産ブーム到来を見越してか、中東勢もそろりそろりと動き出した模様です。バーレーンの政府系ファンドが、欧米の金融機関から不良債権を買い集めるべく、準備を進めているとのニュースが報じられました。

 資産規模100億ドルを誇る中東の政府系ファンド(SWF)、バーレーン・マムタラカト・ホールディングは今後の投資対象としてディストレスト資産に注目していることを、同ファンドのTalal Al Zain最高経営責任者(CEO)がダウ・ジョーンズとのインタビューで明らかにした。  マムタラカトは現状、100億ドルに上る資産の98%を国内や近隣諸国で運用しているが、「今後、欧米など海外向けの投資配分を50%まで増やすつもりだ」とAl Zain氏は語った。同氏は今後、同ファンドの資産を年率15%のペースで増やしていくことを目標に掲げている。  Al Zain氏が特に注目しているのは、欧米におけるディストレスト資産への投資である。米国のサブプライムローン問題を端に発した信用収縮によって、世界経済への懸念が高まり、欧米の金融機関が保有する資産の価値は軒並み下がっている。「市場の状況を鑑みると、欧米の金融機関は私たち政府系ファンドから支援を受けざるを得ないだろう」とAl Zain氏は述べている。

 
 金融市場におけるブームが「高レバレッジ型」から「ディストレスト投資型」へ変化しつつありますが、これはどういった意味をもつのでしょうか?
 「高レバレッジ型」は、まさにバブル市場を体現する運用スタイルと言えるでしょう。上昇し続ける事を大前提として、効率の運用倍率を掛けるので利益も何十倍になります。その一方で損失も何十倍です。住宅不動産市場が下落傾向に転じてからは目も当てられない状況となりました。
 「ディストレスト投資型」では、不良債権を格安で買い集め、加工して再販すると言う運用スタイルになります。その加工ですが、社債を買い占めるなどして主導権を握り、再建計画を実施──バランスシートが改善された時点で売り抜ける、と言うやり方になるのではないでしょうか(今まであった欧米流再建ビジネスを踏まえると)。
 恐らく、ひたすら人員削減を繰り返して人件費を削除し、コストを徹底的に削除してバランスシートを改善させるのでしょう(手っ取り早いですから)
 ただし、その帰結としてリストラされた社員が社会に溢れかえりますので、失業率は極めて深刻な水準に突入するかもしれません。短期的にバランスシートを改善する事が出来ても、経済活動は著しく縮退し(膨大な失業者で溢れる為)、より深刻な悪循環に突入する可能性があります。
 首尾よく「ディストレスト投資」ブームに火が付いたとしても、その後に残るのは疲弊しきった経済──まるで焼畑農業で周辺全ての森を焼き尽くした後の如き状況になるやもしれません。

今後どうなるか?

   FRB、ECBはバランスシートが許す限り、ヘッジファンドへ資金を供給し、金融機関のバランスシートから不良債権を切り離す作戦を続行するでしょう。    

 FRB、ECBのバランスシートを合わせると、200兆円弱の規模があると推測されます。この規模までは不良資産を吸収できると予想しても良いかもしれません(ただし、バランスシートを使い果たすと、中央銀行自体が身動き取れなくなりますが......)    

 FRBやECBでも「これ以上の不良債権回収は無理!」と言う段階が近づくと、金融機関同士が合併吸収を繰り返し、ウルトラバンクが誕生する可能性があります。「あまりにも規模と影響が大きすぎて潰せない」銀行に変身してしまう訳です。もし、欧米の金融機関の間で合併吸収の話が本格化して来たら、中央銀行による不良債権処理の限界が見えてきたと言えるかもしれません(実際のところ、ベアスターンズがJPモルガンに吸収され、カントリーワイドはバンカメに吸収されました。今後、救済合併の動きには注意を払っておくべきでしょう)    

 FRB、ECBも手段を使い果たし(資金供給が不可能になる)、ウルトラバンクが誕生して潰すに潰せない状況になると、いよいよ「公的資金注入」の段階に入るかもしれません。

 まとめると、以下のようなプロセスをたどるのではないかと考えられます。   
(1)時価会計の停止で時間稼ぎ 
(2)中央銀行で不良債権を引き取る 
(3)ヘッジファンドに資金を供給し、銀行の不良債権を引き取らせる 
(4)ディストレスト投資ブームに火をつけ、一気に不良債権を銀行のバランスシートから切り離す 
(5)不良債権に改修・改善を施し、高値で売りさばく
    
 欧米の金融機関が時価会計を適用したバランスシートを発表すれば、一夜にして金融システムが崩壊する「ハードランディング」になりかねません。そこで、「ハードランディング」を回避すべく損失表面化を先送り。  時間を稼ぐために時価会計を中止したり、不良債権を中央銀行で引き取るなどの対症療法に奔走。その間にも、「ディストレスト投資型」のヘッジファンドを資金援助し、「ディストレスト投資」ブームに火をつけるべく下準備を進める──といった流れではないでしょうか。    

 ただし、ディストレスト投資ブームと言っても焼き畑農業の様に一過性のものでしかありません。そのブームの後では、企業の再建・リストラの嵐が吹き荒れ(人員削減などのリストラを通して、買い占めた企業などのバランスシートを一時的に改善し、資産価格を高めると考えられる)、その結果として途轍もない規模の失業者が社会に溢れ、消費はもはや見る影も無いほどに縮小している事でしょう。  そこから先、新たな需要や消費を生み出さない限り、金融テクニック的なアプローチでは問題を解決出来なくなる事でしょう。    

 もし仮に、米国が新たな中東戦争と言う大事業に打って出るとすれば、ディストレスト投資ブームの後──可能性として、2〜3年後かもしれません。少なくともその頃には、打てる手を尽くし、その結果は明らかになっている事でしょう(=これまでの世界経済を支えていた需要・消費は消滅したと言う結果の事)。

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悲劇か回避かを選択するのは貴方です。それだけは事実...

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