米国のリセッション入りや各国金融機関が被る膨大な評価損がニュースをにぎわせる中、物価高の勢いが止まりません。消費・需要が減退し景気後退すると同時に悪性の物価高が進むという様相は『スタグフレーション』を連想させずにはいられません。
しかし、今まで何度もの金融危機や金融恐慌を乗り越えて来た欧米の金融機関が、ここまでお粗末な手しか打てないとは考えにくい部分もあります。
今回は、物価高がどのようにして起きているのか構造的に見て行きたいと思います。
利下げ・金融緩和局面における物価高
【物価高騰の構図】
小麦や原油価格が数年来凄まじい上昇を見せているのは周知の事を思います。最近では日本でも穀物高のため、酪農が打撃を受けてバターが品薄になったり、ガソリン価格が170円台にさしかかるなど、身近なところで物価高を感じるようになりました。
OECDでは、今後中長期的に食糧価格が上昇し続けると警鐘を促しています。特に原油高に起因する代替燃料需要(=バイオエタノール)によって、食糧価格が上昇している点を指摘しています。最近では、バイオ燃料政策を批判されたブッシュ政権が食糧援助を発表するなどフォローに回っています。
【ブルームバーグ】 OECD:小麦などの穀物価格見通しを引き上げ−原油高とドル安で
5月29日(ブルームバーグ):経済協力開発機構(OECD)は29日、小麦やトウモロコシの価格が向こう10年で昨年時点の予想より最大26%上昇する可能性があるとの見通しを示した。原油価格の上昇とドル安を理由に挙げている。
OECDは国連食糧農業機関(FAO)と共同で製作したリポートで、2016−17年に小麦価格は1トン当たり231.60ドル、トウモロコシなどの粗粒穀物は同166.60ドルとなる公算が大きいと予想した。1年前にはそれぞれ同183.20ドル、同138.20ドルと見込んでいた。
FAOのシニアエコノミストでリポートの執筆者の1人であるメリット・クラフ氏は、「昨年の見通し時点の原油価格は60−70ドルで、今年は約100ドルだった。現時点で予想し直せば、さらに高くなるだろう」と述べた。これにより、「トウモロコシ価格の見通しに最も大きな差が出ている」という。
(・・・中略・・・)
世界的な在庫縮小と需要拡大で、小麦やトウモロコシ、コメ、大豆の価格は今年、過去最高値を付けた。食料品やエネルギー価格が6年連続で上昇したことを受け、世界銀行はメキシコからイエメンまで33カ国が社会不安に直面する可能性があると指摘。エジプトやハイチ、カメルーンでは、既に食料品・エネルギー価格高騰が暴動を引き起こしている。
原油価格が過去最高となったことで、トウモロコシやサトウキビから作られるエタノールなど代替燃料への需要が増加している。FAOは22日、今年のエタノール生産への穀物使用量は約9800万トンと40%増加すると予想し、このうちトウモロコシが94%を占めるとの見方を示した。 (・・・中略・・・)
バイオ燃料需要
OECDの貿易・市場部門の責任者、ローク・ブーンカンプ氏は、向こう10年間の食料品価格全般の伸びのうち約3分の1をバイオ燃料原料への需要が占めることになるとみている。
(・・・中略・・・)
OECDとFAOは、価格高に対応して生産が拡大する場合でさえも、食料品価格は過去10年の平均値に下がらないと予想。牛肉・豚肉価格は今後10年間に過去10年間から平均で約20%上昇する可能性がある。小麦やトウモロコシ、粉ミルクは40−60%上昇、食用油は80%以上値上がりするとみられる。
【産経新聞】 食糧危機 米、800億円援助 大統領、バイオ批判に反論(5月2日)
【ワシントン=渡辺浩生】ブッシュ米大統領は1日、世界的な食糧価格高騰に苦しむ途上国の食糧援助や開発支援を目的に7億7000万ドル(約800億円)の資金援助を実施すると発表、議会に承認を求めた。大統領は、食糧危機への国際的取り組みを米国が主導する姿勢をアピールするとともに、サミット(主要国首脳会議)メンバーとの協調も訴えた。
(・・・中略・・・)
ブッシュ大統領は、コメなどの自国流通を優先させるため輸出規制を導入する一部の食糧生産国に対して規制の解除を、遺伝子組み換え作物の輸入を規制する国には輸入障壁の撤廃を求めた。
ホワイトハウスによると、過去1年で世界の食糧価格は43%上昇。小麦は146%、トウモロコシは41%、コメは29%それぞれ上昇。アフリカやアジアの途上国で「約1億人」(世界銀行)が空腹や飢餓の危機にさらされ、各地で暴動や政情不安に発展している。
一方、食糧危機の原因として米国のトウモロコシを原料としたバイオ燃料増産に批判が集中しているが、ホワイトハウスは「いくつかの原因のひとつにすぎない」(フラトー大統領副報道官)と指摘、途上国の需要急増やエネルギー価格高騰、気候変動の影響が大きいと反論している。
一連の物価高騰の原因として、ヘッジファンドなどの投機活動が指摘されています。海外からはもちろん、最近では米国内からも批判の声が高まっている模様です。
またヘッジファンド関係者自身が、物価高騰の主因は投機活動にあると認める発言を米国議会でしています。こうした状況を受けて、米国議会では商品先物取引に対する規制が検討されています。
しかし、抜け穴がシッカリ残されており、実効性が担保されるのか注視しなければならないようです。
【ロイター通信】米利下げや流動性拡大措置、新興国にインフレ問題をもたらしている=中国人民銀行(5月30日)
[北京 30日 ロイター] 中国人民銀行(中央銀行)の周小川・総裁は30日、米連邦準備理事会(FRB)による大幅な利下げや世界的な流動性拡大が、新興国にインフレ問題をもたらしていると述べた。
周総裁は記者会見で、商品価格の急速な上昇によって増幅されたインフレの脅威に立ち向かうため、世界の中銀は連携を強化する必要があるとの考えを示した。
【HFK】 コモディティ価格高騰の要因は機関投資家--米ヘッジファンドマネージャー(5月27日)
【元記事を参照】
米ヘッジファンドマネージャーのマイケル・マスター氏は20日、米上院国土安全保障政府問題委員会において、最近のコモディティ価格高騰に関する証言を行った。
株式ロング・ショート・ヘッジファンドを運用する米マスターズ・キャピタル・マネジメントのマイケル・マスターズ氏は、米上院国土安全保障政府問題委員会において、最近の食料品、エネルギー関連商品の価格上昇の一因は機関投資家にあると述べた。
コモディティ価格は過去5年で歴史的な上昇を見せている。しかし、同氏は価格上昇の要因を需給のひっ迫によるものではないと指摘。新興国の台頭などによって需要は増加しているが、充分な供給がなされていると述べ、価格の上昇率と需要の上昇率に大きな乖離があると指摘した。
マスター氏は、現在のコモディティ価格の上昇要因は、商品先物市場に多額の投資をしている機関投資家(年金基金、政府系ファンド、大学基金)であると述べた。機関投資家は、リターンの追及のため株式や債券と無相関のコモディティ市場への投資を拡大。主に、25種類の主要コモディティで構成されたインデックス(「Standard & Poors Goldman Sachs Commodity Index」「 Dow Jones AIG Commodity Index」)を利用したバイ・アンド・ホールド戦略を用いている。
同氏は、機関投資家の一連の投資行動は、リターン追求を目指す合理的なものだが、投資先が商品先物市場に集中したことで、現在のコモディティ価格高騰を引き起こしてしまったと証言した。
【HFK】 ヘッジファンドなど投機筋のコモディティ市場における取引制限を検討--米議員(5月29日)
http://www.hf-klug.jp/hfnews/hfinfo/hfinfo002148.html
米国の国会議員は原油価格高騰の対応策として、ヘッジファンドなどの投機筋に対し、コモディティ取引の規制を強化する構えだ。
米国の国会議員は、オイルバブルとも懸念される現在の原油価格高騰に対処するため、超党派でコモディティ市場から投機マネーを排除する動きに出る。ヘッジファンドや投資銀行など、純粋な投機筋によるコモディティ投資への規制を強化することによって数十億ドルの投機マネーを排除し、物価の高騰に歯止めをかける狙い。
(・・・中略・・・)
今回の規制強化が実現した場合、現状で2つの抜け穴が考えられている。NYMEXのような主要取引所では、米商品先物取引委員会(CFTC)による投機的ポジションの上限規制が行き届いているが、世界中に電子取引プラットフォームを提供している英インターコンチネンタル取引所(ICE)は、同規制の適用除外となる。もう一点は、ヘッジファンドなどが行っているコモディティ・スワップ取引である。スワップ取引を利用することで、ポジション上限の規制を大幅に超えるポジションを実質的に保有することができるためだ。
今後、5月と6月に約10回ほど公聴会が開かれるほか、市場の規制強化案が多数提案される見通し。さらに一部の議員は、CFTC、連邦取引委員会(FTC)などの関係当局に対し、市場における投機マネーの規模と、規制の強化に関する調査の実施を求める姿勢だ。
萎縮が止まらない実体経済
最近では、米国の個人消費が減少しつつある事が報道されるまでになりました。これまでホームエクイティローンが大打撃を受ける為、今後の個人消費に暗い影を落とすだろうと言う指摘はありましたが、具体的に個人消費が落ち込み始めた(=リセッション)と踏み込まざるを得ないほど状況は悪化しているのかもしれません。
【ブルームバーグ】 4月米個人消費0.2%増に鈍化か、5月消費者マインドは低下へ−調査(5月30日)
5月30日(ブルームバーグ):ブルームバーグ・ニュースが金融・調査機関73社を対象に実施した調査によると、30日発表される4月の米個人消費支出(PCE)は前月比0.2%増(中央値)と、3月の0.4%増から鈍化したもよう。所得の伸び減速や消費者信頼感の低下を反映しそうだ。同日公表の5月のロイター・ミシガン大学消費者マインド指数(確定値)は速報値と同水準の59.5(57社の中央値)で、1980年6月以来、ほぼ28年ぶりの低水準に落ち込んだとみられている。4月は62.6だった。食品・燃料価格上昇や賃金の伸び鈍化、住宅価値低下が米消費者に打撃を与え、支出が今後低迷する可能性が高くなってきている。戻し減税は、向こう数カ月の経済成長を一時的に支えるにとどまりそうだ。
マリア・フィオリニ・ラミレスの米国担当エコノミスト、ジョシュア・シャピロ氏は「消費は非常に悲惨な状況に陥りそうだ」と指摘。「所得の伸びは鈍化しており、エネルギー価格が上昇し、インフレが購買力を弱めている」と述べた。
これまで、世界経済を支えていたのは米国の個人消費でした。そして、米国の個人消費を支えていたのがホームエクイティローンでした。家の価格を担保として、お金を借りて旺盛な消費をしていたわけです。
ところが既にご存知のように、住宅不動産価格の下落はホームエクイティローンの与信枠を直撃します。今までのようにお金を借りる事が出来なくなるのです。米国の個人消費が一気に冷え込むのは火を見るよりも明らかでしょう。
【NBonline・BusinessWeek】 米国を襲うもう1つの危機(2月5日)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20080201/146167/
サブプライム危機に苦しむ米銀に、もう1つの危機が迫っている。住宅価値を担保にしたホームエクイティローンが不良債権化しているのだ。米国経済を牽引してきた個人消費も、いよいよ危うくなってきた。
サブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)が大手米銀の巨額損失の主犯とされるが、実は混乱の陰に隠れた問題がもう1つある。ホームエクイティローンだ。
不動産価格の高騰で、米国人は自宅のエクイティ(純資産額)を担保に借り入れを増やし、新車購入や家の改築資金にまで回した。ホームエクイティは個人消費の大きな原動力だったのだ。
だが、住宅市場の混乱と不動産価格の下落により、ホームエクイティローン関連事業に綻びが見えてきた。
延滞急増で銀行に新たな打撃
2007年1〜9月に147億ドル以上の関連ローンで返済が延滞、過去10年で最悪の水準となった。「サブプライムに続く業界最大の問題がホームエクイティローンだ」と証券会社キーフ・ブリュイエット・アンド・ウッズのアナリスト、フレデリック・キャノン氏は言う。
さらに問題なのは、8500億ドル規模の同市場の悪化がもたらす痛みに防衛策が見当たらないことだ。住宅ローンの貸し手には、融資対象物件に対する第1位の抵当権が設定されるため、抵当流れの場合は不動産を売れば一部資金を回収できる。だが、ホームエクイティローンには現物の担保がない。
(・・・中略・・・)
最近まで、ホームエクイティローンの大半は与信枠の形で提供されていた。借り手は住宅のエクイティを現金化してクレジットカードの返済などに充てることができた。だが、好況が続き、不動産価格が青天井で高騰していくと、銀行は住宅購入者が頭金に利用できる第2抵当(ピギーバックローン)を提供するようになる。
これで住宅購入者は本来支払えるはずのない大きな住宅を購入できることになった。審査基準などないも同然で、住宅購入者は不動産価値を上回る融資を受けた。業界紙インサイド・モーゲージ・ファイナンスによると、2006年にはこの種の融資がホームエクイティ市場の14.4%を占めるまでに至った。
住宅バブルは特に危ういホームエクイティローンを生み出した。住宅所有者はギャンブル感覚で制度を利用し、不動産のエクイティを余すところなく現金化した。借り手がローンを組んだ後で競合他社からも融資を受けていないかどうか、銀行が追跡調査を怠ったことも問題に拍車をかけた。
もう1つの悪慣行が、ARM(変動金利型住宅ローン)に加えてホームエクイティローンを組むという手法だ。ARMでは毎月の返済額を利子より少額に設定できる。借入元金が増え続ける一方で不動産のエクイティが劣化し、ただでさえリスクの高い住宅ローンの上に高リスクのホームエクイティローンが乗っかる事態になるわけだ。
住宅市場の上昇局面では、こうした手法はさほど無謀に見えなかった。住宅所有者は、雪だるま式に増える不動産のエクイティを利用して速やかに借り換えを行い、第2、第3のローンを返済できたからだ。貸し手側もローンは完済されるものと思い込んだ。
ところが、不動産価格の急落で、こうしたローンが価値を失い始めた。
ある人が30万ドルで住宅を購入する際、24万ドルの住宅ローンに加え、頭金用に6万ドルのピギーバックローンを組んだとする。その後、住宅価格が2割下落して24万ドルになると、その不動産のエクイティは消滅する----。
今年の2月に指摘されていたホームエクイティローンの危機ですが、いよいよ本格化し始めた模様です。大手の住宅ローン企業や金融機関がホームエクイティローンを凍結すると発表したのです。ローンの凍結により、米国の消費者は資金源を断たれたも同然の状況に追い込まれる事でしょう。
【ブルームバーグ】 米カントリーワイド:ラスベガスでホームエクイティローンを凍結 (5月6日)
【元記事を参照】
5月6日(ブルームバーグ):米住宅金融大手カントリーワイド・ファイナンシャルは、ラスベガス地域のほとんどの顧客に対してホームエクイティ(住宅の持ち分担保)ローンの提供を停止した。
同地域で携帯電話アクセサリー業を営むクリストファー・ウィップル氏(35)は事業拡大に6万ドル(約627万円)の資金が必要だが、カントリーワイドから融資を得ることはできなかった。ウィップル氏の信用度を計るクレジットスコアは最高スコア850のうち790と、信用力の高い借り手のなかで上位 40%に入る。同氏は「融資見送りで人生が台無しにならないことを望む」と述べ、「想像以上に打撃を被るだろう」と語った。
消費者の苦情を受け付けるウェブサイトを運営するマイケル・クラツアー氏によると、今年1月以降、カントリーワイドのほかバンク・オブ・アメリカ(BOA)やワシントン・ミューチュアル、インディマック・バンコープが計約60万件のホームエクイティローンを凍結した。
同氏はラスベガスやシカゴ、ロサンゼルスなど、不動産価格が落ち込んでいる都市の借り手を対象に金融機関がホームエクイティローンの提供を停止していると指摘した。
まとめ 〜その1〜
このように、投機活動に由来する物価上昇は止まらず、ホームエクイティローンの凍結などが原因となる需要・消費の喪失に歯止めも掛からない──不景気と物価高のダブルパンチをスタグフレーションと呼ばずして何と呼ぶべきでしょうか。
しかも、このスタグフレーションですが、中央銀行・金融機関・ヘッジファンド・プライベートエクイティのドリームチーム(デビルチーム?)によって演出されている感があります。
おさらいになりますが、以下の様な構図が見て取れるのです。
1.金融緩和を実施し、大量の資金を金融機関に供給する2.金融機関は資金を実体経済側に回さず、ヘッジファンドやプライベートエクイティに提供
3.軍資金満載になったヘッジファンドやプライベートエクイティは、商品先物市場に大量に投機資金を流し込む
4.当然のごとくあらゆる物価が高騰する
5.ローン企業や金融機関は、ホームエクイティローンを凍結するなどして実体経済側への資金の流れを断ち切る
まさに兵糧攻めです。
さすがに批判の声も出てきたので、米国政府は商品先物市場に規制を掛けたり、食糧援助を表明したりすると言った姿勢を見せています。しかし、現時点で規制に抜け穴があると指摘されているなど、実効性の見極めは必須(あるいは疑わしい)と思われます。
さらには、こうした物価上昇を受けてFRBは利上げにスタンスを変え始めています。物価上昇局面で利上げをするのは教科書的には正しいのですが、今の局面においてはどうでしょうか?
今回の物価上昇は、非常に恣意的なもの(下手人はヘッジファンドやプライベートエクイティ)である線が濃厚です。しかも資金源はFRBやECBなど中央銀行です。事前に防ぐ事は十分出来たはずです。しかし、十分に強大な権限を持ちながらそれをしなかった──これは一蓮托生、もっと悪く言えばグルであったと指摘されてもおかしくはないでしょう。
免罪符をかざすかのように利上げシフトを表明したFRBですが(ECBは元々インフレに対してタカ派)、どういった影響が出るのでしょうか?
利上げ局面で驀進するスタグフレーション
【利上げ局面における物価高騰の構図】
上記の図がほぼ結論になってしまうのですが、今度は『海外から流れ込んだ資金が物価上昇の原動力になる』と言う構図になると考えられます。
各種住宅不動産債券市場が崩壊しつつある今、行き場を失ったお金がそう簡単に商品市場から逃げ出すとは思えません。投資対象そのものが減って、絞り込まれつつあるのです。利上げによって調整すると言っても、せいぜい申しわけ程度にしかならないのではないでしょうか。最大の原因である投機活動の規制が難しいと考えられる以上、利上げしようがしまいが物価上昇を食い止めるのは無理ではないかと思われます。
最近では利上げ機運を高めるような報道が目に付くようになりました。利上げの原因となる物価上昇を仕掛けておいて、何様のつもりだと言うのでしょうか。
【ロイター】 FRB、インフレ悪化すれば早めに利上げに踏み切る可能性=米ダラス地区連銀総裁(5月29日)
【元記事を参照】
[サンフランシスコ 28日 ロイター] 米ダラス地区連銀のフィッシャー総裁は28日、米経済の低迷が続いてもインフレが悪化すれば、米連邦準備理事会(FRB)は早めに利上げに踏み切る可能性があるとの見通しを示した。
当地での講演の準備原稿が事前に入手可能となった。
同総裁は「インフレ動向や特にインフレ期待が引き続き、悪化した場合、景気低迷が続いても早めに金融政策の方向転換が行われると予想する」と述べた。
フィッシャー総裁はFRB当局者の中ではタカ派の1人で、連邦公開市場委員会(FOMC)で3回連続して利下げに反対してきた。
総裁は「市場がインフレに圧迫されれば、成長は持続できない」と指摘。「持続可能な経済成長には物価の安定が不可欠だ」と強調した。
【ロイター】 FRBミシュキン理事が辞任へ、金融政策に影響も(5月28日)
[ワシントン 28日 ロイター] 米連邦準備理事会(FRB)のミシュキン理事が8月31日付で辞任することになった。これにより、FRB理事は7人のうち3人が空席という異例の事態になる。金融政策にも影響が出るとみられている。
ミシュキン理事は2006年に就任しており、2014年1月までの任期を大幅に残しての退任となる。退任後はコロンビア大学の教授に戻る予定。
バーナンキ議長は声明を発表し、「リック(ミシュキン理事)はFRBにおいて金融政策の知的支えとなってきた。それはかけがえのないものだ」と述べた。
FRB理事は議長、副議長を含めて7人いるが、現在2人が空席となっている。ブッシュ大統領は2人の理事候補を指名したが、大統領選挙戦のさなかにあって上院の承認は得られていない。大方の予想通り、ミシュキン理事が退任するまで上院の承認が得られなければ、1930年代に閣僚や政府機関の長が職権上の理事を務めて以来、初めて4人の理事しかいない事態が生じる。
米連邦公開市場委員会(FOMC)では、議長、副議長を含む理事のほか、地区連銀総裁が輪番で投票権を有するが、地区連銀総裁は就任のために議会の承認を得る必要がなく、理事のような議会に対する説明責任もないため、インフレ抑制を重視して利上げに傾きやすいと指摘するアナリストもいる。
リーマン・ブラザーズのエコノミスト、マイケル・ハンソン氏は「おそらく、理事会は現在までに比べ若干タカ派的になるだろう」と語っている。
リセッションが進む中で利上げをする場合、当然ながらローン返済金利・各種借り入れ金利が上昇するため、企業や個人は更に資金調達が難しくなると考えられます。貯蓄率の低い米国の個人にとっては、このタイミングでの利上げは悪夢ではないでしょうか。
一方で、海外の資金は高い利率を求めて米国やEUに流れ込むものと考えられます(特に日本の個人資産!)。当然ながら、資金が流れ込む先は金融機関です。これまでの傾向から察するに、金融機関は資金を実体経済側に流そうとはしないでしょう。運用効率を重視すると言う名目で、ヘッジファンドやプライベートエクイティに資金を供給し続ける事でしょう。
FRBやECBにしてみれば、自分達のバランスシートを消耗する事無く別働隊(ヘッジファンドやプライベートエクイティ)に軍資金を提供できるわけですから、大助かりでしょう(すでにバランスシートの半分を使い切っている以上、これ以上の金融緩和は危険であったとも言えます)
まとめ 〜その2〜
どうやら、利下げ局面であろうが利上げ局面だろうが、物価が上昇し、実体経済が萎縮し続ける事に変わりはなさそうです。物価上昇のエンジンとなっているヘッジファンドやプライベートエクイティには資金が流れ込み続け、ちゃんと規制の抜け穴も用意されているわけです。
1.FRBやECBは利上げを実施2.高い利率を求めて海外の資金が流れ込む
3.金融機関はヘッジファンドやプライベートエクイティに資金を供給
4.ヘッジファンドやプライベートエクイティは投機活動を続行=物価上昇
5.金融機関やローン企業は、消費者や企業に対して貸し渋り&貸しはがしで資金を巻き上げる
どうあってもスタグフレーションを実現すると言う強固な意志すら感じられます。
金融機関など資本勢力側は、多少のダメージを覚悟の上で経済自爆テロとも言うべきスタグフレーションを仕掛けているのかもしれません。実体経済側が焼け野原になった後(国家の破綻、自治体の破綻、個人消費の消滅)、進駐軍よろしく世界を統治するつもりでもあるのでしょうか。
従来のドル機軸通貨経済体制の枠組みの中にいる限り、この流れに抗うのは極めて困難かもしれません。
