ロシア人の国家観(1)

ロシア人の他民族性と国家意識

日本にいると、あまり見えてこないのであるが、やはり、今でも露西亜という国は、ソビエト連邦のときに繋がりのあった旧ソ連圏の諸国との間において、好き嫌い関係なく強い結びつきを保っている。その理由のひとつのは、ソ連時代に各国でロシア語教育がされており、知識階層や政治上層部などの人々の多くが、ロシアに今も住んでおり、重要な情報源がロシア語から来るということが考えられる。

そもそも、ソ連という国家戦略においては、そのような周辺諸国以外にも社会主義を広げるといった大義名分があったせいか、意外なくらいにアラブ諸国やアフリカなどからも留学生を受けて入れたりしていた時期もあって、モスクワなどはその名残で相当外国人といっても、多種多様の人々が定住している。故アラファト議長なども、意外なところでモスクワ留学経験などで、露西亜との結びつきがあったともいう。また、イスラエルは非常に積極的に露西亜のユダヤ人青少年の招聘事業に取り組んでおり、実際に招待されて行って来た人の話を聞いたことがある。(かなり、「ユダヤ人迫害史」についての洗脳教育を行っているようであった)

特にその中でも、目立つ人種といえば、やはりコーカサス系(現地ではカフカスという)の一見中近東にも近い風貌の人々で、多くがアゼルバイジャン、アルメニア、グルジアなどから出稼ぎに来ている人である。しかし、同じ出稼ぎでも土木作業などの出稼ぎで来る外国人は主に中央アジアの諸国、カザフスタン、ウズベキスタン、キルギスタンなどの人々が多く、前者のコーカサス系の多くは、市場で八百屋をやるとか、路面で果物を販売するとかが多かった。しかし、最近はグルジアなど政治的問題が起こった地域の人たちは、居住ビザの取得や労働許可も取りにくくなってきていると聞く。

wikipedia カフカース

また、意外に数が多いのが在露朝鮮人で、彼らも市場で働く人などが多い。アジア系では、シベリア各地に仏教信仰をする地域などもあり、そういう地方の人が日本食レストランで寿司を握っていたりすることもある。そして、日本人の多くが連想するような西欧的風貌で背の高い白系の人たちの中でも、実はウクライナ、ベラルシアからきている人もおれば、バルト三国の出身だとか、ポーランド系の人なども結構混じっている。

こういったそれぞれの民族意識というのは、ソ連時代には「民族友好」を前面に打ち出していたこともあって、表面的にはそれほどでもなかったらしいが、ソ連崩壊後は隣人だった人々が殺し合い、闘わねばならなくなった地域もあるくらい、問題が先鋭化している。これは、コーカサス地方に限ったことではない。大都市であっても、民族問題を貧富格差のはけ口に使っていると思われるような動向もあって、ネオナチを名乗る人種差別・国粋主義者などの台頭によって、多くの外国人がまったく理不尽な事件に巻き込まれ、酷い場合は命を落としている。

そして、全体的に同じロシア人といえども、革命後に亡命した貴族やそれに近い身分か裕福階層とみなされた人々というのは、処刑された不運の最後の皇帝と同じく、まずは風貌からして違うといわれる。よって、数年露西亜に住むと分かるようになるのだが、明らかに貴族的風貌のロシア人とソビエト国家になってからの無機質的な田舎から大量に流れ込んできた類のロシア人とではまったく風貌が違い、また知的教養程度、道徳・礼儀作法、日常生活、いずれをとってもまったく違うために、日本国内でも帝政露西亜を少しでも知る人ならば、「ソ連人」のことは多少なりとも軽蔑せざるをえないと考える場合が多いようだった。

このような多種多様なロシア人が持つ国家意識というのは、非常に漠然としていて、まず日本人のように、自分の国の歴史の悪い点を教育されていないこともあって、あくまで、「露西亜は素晴らしい国」と単純に考えている人が多いともいえる。一方で、もし過去の歴史を追及されても、ほとんどの場合が罪悪感などまったくないも等しく、さらに北方領土などに至っては、たいてい首都圏では関心外の事項である。

また、一部の独立を目指すコーカサス系の住民をはじめ、社会の風潮として、憎悪の対象になりやすいのが「ユダヤ人」である。彼らは、モスクワの知識階級のほとんどを占めるといっても大袈裟でないほど、芸術・文化・経済で重要なポストに就いている人が多い。ソ連時代でも、有名な俳優などの多くがユダヤ人で、敢えて自らを皮肉る「ブラックユーモア」で一世を風靡した芸人もいた。(アルカディア・ライキンという天才的喜劇役者は、ある意味、ソ連のチャップリンともいえるような才能のある人だった。彼の息子が、コンスタンチン・ライキンという役者で、演出も手掛け、モスクワに自分の経営する大きな劇場を持っている。)

ただ、徴兵制に関しては、都会であればあるほど、徴兵拒否のためならなんでもする傾向があり、賄賂から、果ては自分で自分の体を蝕んで、身体検査に意図的に落ちるものまでいるらしい。(ひとつの例として、大量にタバコを吸い続け、肺を駄目にする。あるいは、視力検査で落ちるように、片方の目を酷使するなどの手も使った人が実際にいるらしい。)金持ちは、当然のように子息を軍隊になどやるのなら、留学させるなりなんなりして、確実に徴兵年齢の間、大学の徴兵回避できる学部に殺到する。

愛国心が本当にあるのかないのかを考えれば、ない人の方が本当は多いのではないかと思う。ただ、地方は純粋な人も多く、特に親が軍人の場合は、受け継いで欲しいというケースもあるかもしれないが、全体的には人材を集めるのに四苦八苦している様子であり、なにも志願するような奇特な人は、今の露西亜に滅多にいないであろう。なぜなら、現代の軍隊イジメでも陰湿極まりなく、その多くが今は実際に報道されて、世間の知るところとなっているからである。多くが薬物中毒や同性愛で悩まされ、酷い場合には身体障害者になるまで暴行を加えられたり、極寒の中で十分な衣料品を与えられずに病死するなど、とにかく、ロシア軍の中の精神的な規律は、ほとんど崩壊状態に近いらしい。こういったバラバラの民族をなんとかまとめるために、中央政権は日夜、大統領をスーパースターのように放映してみたり、ソ連時代の独裁者を彷彿とさせるような絵画や、卓上に置く銅像まで作ったりしている。しかし、それを買い求めるほとんどは、政権に媚を売る地方官僚などであろう。とにかく、今の露西亜では「金」がすべてという社会になりつつある。これに関しては、石油景気が続いている今だから、全体的に能天気であるが、非常に国民全体の団結心も薄れてきており、民族同士の溝も深まり、結果的には露西亜の国家にプラスにならない結果に繋がっていくように思われる。

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