ロシアという国はユーラシア大陸に位置しているが、文化的には、ヨーロッパの文化圏と言い難い気がする。
実は、留学当時に知人がモスクワに初めて来て風景などを見て、「なんだか、中国にそっくり」といちいち指摘するのを聞いたときはかなり自尊心が傷ついたといえるくらいショックであったが、(やはり、ロシア文化にある程度傾倒して留学していたので) 実際に自分が中国に行ってみると、たしかに「共通点」はあると感じた。
それはある意味、ヨーロッパ社会にある「秩序」とか「規律」が欠如した社会であるということと同時に、中国に近い部分というのが「混沌」と「雑多」という点ではないかと思われる。
そういうロシアの首都の事情は、実は表面だけを見ていては分からない。特に最近は中心部だとか、お金のある層が出入りするような場所は「見掛け倒し」であったとしても、かなり綺麗になっている。あくまで表面的に。
しかし、実際のモスクワの素顔はそんなところにはない。まさにモスクワの真骨頂である「混沌」が露骨に現れた場所というのが、実は「学生寮」なのだ。まさに人種のるつぼといおうか、社会底辺の混迷がある。
このたび、偶然見つけたニュース記事の中の事実はそれほど現地経験のある人間を驚かせるものではないと思うが、いくつかの事件を列挙する。
1.某技術系大学の寮に、まったく無関係のトルコ人の建設関係者が100人近く暮らしていた。
2.中国系、ベトナム系など、モスクワで商売する(主に市場など露天)学生とは思えないほど露語ができない人々が大量に学生寮に暮らしており、中には部屋の中で、様々な商店として開業(?)している者もいる。
3.某大学寮の敷地内で、今年だけでも2人の乞食の死体が発見された。
4.売春、ドラッグなどの事件の温床になっている。
5.寮の部屋を関係ない第三者に賃貸しされている事実がかなり発覚している。
要するに、上記のような点について書いた記事だったのだが、これは過去に渡っても、非常に横行してきた事実なので「なるほど」という程度である。
ただ、これだけ見てもモスクワの学生寮が本来の「機能」を果たしていないということは、つまり地方から出てくる学生たちは、どうしているのか?ということでもあり、 学生寮だけを見ても、この「様」なのだから、「大学機能」もいかなるものであるか?は賢明な読者ならば、想像することは易いことにちがいない。
まさに、ロシアという国家システム自体の「迷走」と「混沌」ぶりは、日本のように 「整然」と「秩序立った」環境に恵まれた国から見ると、一種の「悪夢」に近い。
しかし、実際にその様子が改善されているということは考えられず、一応、その場凌ぎの「立ち入り検査」は行われているとしても、何を上から言われようと、「当事者」である寮の管理をする人々が、正当な方法では金儲けができないからやっているという大義名分がある限り、どうやらこの手の問題はなくなりそうにない。
事実、外人留学生の寮で火災事故が起こり、数名の死傷者を出した後は、かなり厳しく入寮する人物チェックなどが行われていたようだが、これも一時的なものだったのだろう。とにかく、インフラも悪く、時代遅れの老朽化した設備で、しかも、雰囲気は場末の貧民窟みたいになっている寮が非常に多いだろうから、そこに暮らす人の生活は いかなるものか想像がつく。
以前、あるロシア人が、「ロシアという国家に持ち込まれると、あらゆる主義が機能しなくなる。社会主義だろうと、資本主義だろうと結果は同じだ」ということを言っていた。
そのときはピンとこなかったけれど、おそらく、それは事実だし、今後もロシア人の 全体的な民度が高くならない限り、普遍の事実として続いていくのだろう。この学生寮の謎ともいうべき、混沌とした存在を許容するロシアの雑多さは、国際政治や、個々のロシア人など表に出ることは少ないが、むしろ、こういう部分こそ、この国の社会制度の実態として受け止められるべきだと思う。
