
写真出典:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
日本では、政財界の人間がユダヤ人かどうかなど、さほど重要なことではないので、ピンとこないかもしれないが、最近のロシアメディアの報道を見ていると、イスラエルの報道機関(HAARETZ.com,以下引用サイト英文)により、
http://www.haaretz.com/hasen/spages/957003.html
新しいロシアの大統領に就任したメドヴェージェフが「ユダヤ人」であることが
ほぼ認定されたようである。なんでも、母親(ユーリヤ・ヴェニヤミノブナ)と妻(スヴェトラーナ)が
100%ユダヤ人であることと、昨年末モスクワで行われたユダヤ系組織の宗教的儀式に
メドヴェージェフ本人が参加しているのが公式に確認されている。
http://www.newsru.com/russia/22feb2008/medv_5.html
まあ、これまでにもロシアではソ連時代からユダヤ人が権力の座についたことも少なくないので、珍しい話ではない。ただ、問題は国際状況であろう。イスラエルとのパイプは太くなっても、アラブ諸国とロシアの関係は複雑にならざるをえないであろう。大方、ソ連時代は、多くのアラブ諸国やアフリカから留学生を積極的に受け入れていた縁もあって、故アラファト議長などもロシアとの関係は友好的であった。しかし、これだけはっきりとロシア大統領自らが「ユダヤ人説」をほぼ受け入れたからには、アラブの親露派も内心穏やかではあるまい。
また、国内的にも「極端な右翼勢力(ネオナチなど)」が非常な勢いで増している中、一部の若い世代に反感を買う可能性も高い。このような若者は数年前までは、明らかに分かるような丸刈り(スキンヘッド)に黒の革ジャンにアーミーブーツというヤクザな格好で大都市を徘徊しては、無実の外国人を殺傷してきた。(現在もなくなったわけではないが、まったく普通の格好の若者が思想的に洗脳されて暴行に及ぶケースが増加しているらしい)
ロシア国内では、このような事件は暗黙の了解で放置されており、仮に警察沙汰、裁判沙汰になっても、応援勢力が結集してくると「無罪放免」に近い形で決着することが多く、殺されても泣きつくところもないのが現状である。
これに関しては、残念ながら国籍は関係なくスラブ系以外の容姿の人であれば被害者になりうる。よって、日本人も被害を受けた人が大勢いるのだが、ロシアでは残念ながら警察はまったく当てにならず、日本大使館はもっと役立たずである。また、一部無知な旅行者などはモスクワにも安全な場所があって、そこにいれば大丈夫だと考えているようだが、
それも随分怪しい話である。地下鉄や公共の乗り物を避けても、アジア系の顔というだけで知人の俳優などは、スーパーマーケットで買い物中に知らないロシア人女性に殴られたり、自分の家に投石されたり、自家用車を壊されたりしたというくらい、手口も傾向も年々予測のつかないことになっている。
残念なことだが、特に今の若い世代のロシア人は胆略的なので簡単に信用できないし、上の世代でも生活不満がある人は「外国人」に怒りのターゲットを向けてくる可能性も否定できない。こういう現在の社会状況に対して慢性的に不満分子の連中にとっては、「ユダヤ人」というのも当然「神聖なるロシアを汚してきた悪しき民族」という定義になっているらしい。(愚かにも、一部のネオナチの若者はソ連時代に侵攻してきてロシア人を散々痛めつけたヒトラーの「我が闘争」をバイブルのように思っているものもあるという。)
そういうわけで、当分、ユダヤ人によるロシア支配は拡大する一方だろうとのこと。これまでの歴史を見ても、多民族国家においては、たいていの場合、主権を掌握した側が自分の同胞を主要ポストにつけていくのが定石である。プーチンの場合は、シロビキ(KGBの関係者)やサンクトペテルブルク出身者を優遇したわけだが、それがメドヴェージェフでどういう風に変化するか、興味深い。そうはいっても、ロシアをよく知る人ならば驚かないと思うが、既に政治のみならず、特に芸術・学問分野においてトップの座を握っているのはユダヤ人という場合が多い。
明らかに彼らは「弁論に長けて」、「利殖、蓄財の才があり」、「一族を優遇する」という点で優秀だが嫌われる要素満載なのである。一見、全体的に所得が増えて豊かになってきているように見えるロシアだが、実際には天文学的な貧富の差がある。しかも、エネルギー資源に頼りきった財政事情であることには変わりなく、国内に貧富の差や、民族間差別、軍隊内暴力、警察権力の乱用、国家財政より多額の賄賂が減ることのない不正行政など多くの不安定要素を持っている国家であるゆえに、今後の展開によっては混乱が予想されるだろう。
ちなみに直接関係のない話になるが、最近になって日系三世で国会議員であった女性のイリーナ・ハカマダ氏が引退表明したようである。彼女のような聡明でリベラルな議員がいなくなるのは、非常に残念なことだ。在露期間中、テレビ放映される政治討論番組でユダヤ系のいつも熱くなりすぎて持論を怒鳴り散らすジリノフスキーに対して、常に感情的にならずに冷静に正論を述べていたイリーナは、視聴者の好感度の数値が(その場で支持されている場合に数値で出るようになっていた)いつも最高値であった。このような議員が活躍する場のないとは、いかにこの国の政治が民主主義から逸脱してきているか、誰の目にも明らかであろう。
