東京原発

「東京原発」は広瀬隆著の『東京に原発を!』を基に製作され、2004年に公開された映画です。 多くのシーンは会議室でのやり取りであり、都内のロケシーンであっても派手な仕掛けがあるわけでもないので、この映画の制作予算が限られていることは明らかです。にもかかわらず、その脚本の妙と俳優さんの味で、見事な社会派エンターテイメント映画、あるいはエンターテイメントの形をとった反原発の教育映画、風刺映画に仕上がっています。 物語は、財政再建を目指す東京都知事が、東京に原発を誘致しようとするところから始まり、役所広司さん扮する東京都知事のワンマンぶりがコミカルに描かれています。劇中では都知事に原発がいかに都の財政に寄与するかをアピールさせつつ、原発推進のためのバラマキ政策や、電気を人質にした脅迫、都市の電気のために地方に原発の負担を負わせている現状、電力会社の借金体質、原発のエネルギー効率の悪さ、六ヶ所村...

疫病の季節 (5)~厄災の時代を生きる

■籠城戦(引きこもり作戦) 新型インフルエンザの社会的流行が起こった場合に推奨されているのが引きこもり作戦です。食料や生活用品を備蓄して引きこもるのは、第一には感染しないようにということでしょう。しかし注意してほしいのは、未感染のまま引きこもっているだけでは、常に新型インフルエンザに対して感染リスクのある状態のままだということです。 そこで、引きこもり作戦を継続しながら感染までの時間を引き延ばし、プレパンデミックワクチンやパンデミックワクチンの配給接種を待つということが期待されます。籠城戦の成否は補給の確保と援軍の有無です。食料や生活用品を備蓄し補給を確保して、抗インフルエンザ薬やプレパンでミックワクチン、パンデミックワクチンといった援軍の到着を待つことで勝機を見いだします。 もう一つの目的は、感染までの時間を引き延ばすことで患者の集中を分散させるという効果です。患者が一時期に集中し、患者...

疫病の季節 (4)~パンデミックを封じる

伝染病の流行に際し、個人においては次の4つの経過が考えられます。 1)感染しない(獲得免疫なし。潜在的に感染リスクを持つ) 2)感染したが発病することなく快復した(獲得免疫あり) 3)感染し発病したが快復した(獲得免疫あり) 4)感染し発病して死に至った 1)と2)は一見区別がつきません。自覚的には「罹らなかった」人たちだからです。例年流行するインフルエンザの場合を思い返してみると、学級閉鎖になったようなクラスでも発病しなかった子がいたり、生活を共にする家族でも罹患しない者がいたりします。他の者同様にウイルスに曝露していることは十分に予想されるので、この場合は感染しなかったというより、発症しなかった(不顕性感染だった)と考える方が妥当だろうと思います。もっとも新型インフルエンザの場合、どの程度不顕性感染があるのかは起こってみなければわかりませんが。 社会的には死亡者数が少ないことがなにより...

疫病の季節 (3)~その時どういうことが起こるのか

■パンデミックの社会的影響 いったん一般社会の中で大流行となれば死亡者数だけではなく、社会機能のさまざまな所に甚大な影響を及ぼし、私たちの生活に深刻な影を落とします。 1)膨大な数の死亡者 短期間のうちに何十万~何百万(悲観的なシナリオで数千万)の人間が死ぬということはどういうことか。家族皆罹患となれば誰がその面倒をみるのでしょう。家族という濃厚な空間の中では十分あり得る事態です。下手をすれば一家全員死亡ということもあり得ないことではありません。単身生活者の多い集合住宅では、隣の住人が亡くなっていても誰も気付かないということも考えられる事態です。放置される遺体はさらに衛生環境を悪化させます。 新型インフルエンザがいったいどんな病気なのか、出現してもいない現時点ではわかりません。呼吸器感染なら咳やくしゃみの飛沫や痰や鼻汁が濃厚な感染源となりますが、もしも全身感染なら血液や便も感染の危険があり...

疫病の季節 (2)~パンデミックの被害

■諸説ある推定死亡者数 新型インフルエンザが流行した場合、推定される死亡者数は、感染率、致死率をどう考えるかで変わってきます。 厚生労働省は、新型インフルエンザが日本で流行した場合、国民1/4が感染し(感染率25%)、医療機関を受診する患者数は約1300~2500万人、入院患者は53万~200万人、死亡者は17万~64万人が死亡すると試算しています。はたしてこれは妥当な推計なのでしょうか。注意すべきは、この数字はスペインインフルエンザの際の致死率2%を参考に試算したものだということです。 オーストラリアのロウイー研究所の試算では、日本で流行した場合、人口密度の高さから死亡者は210万人にのぼると見積もっています。第二次世界大戦での日本の死亡者は軍・民間合わせて推定210万人ですから、それと同規模の死亡者数といえます。しかしこれも弱毒型と仮定しての推定なのです。 国立感染症研究所ウイルス第三...

疫病の季節 (1)~新型インフルエンザとは

人類はこれまで何度も疫病の恐怖に怯えてきました。天然痘、ペスト、コレラ、スペイン風邪...。その度に多くの犠牲が出て、社会は混乱しました。ここ何十年、日本では社会機能が麻痺するほどには疫病が猛威を振るったことはなく、そのため私たちは伝染病とは克服された過去の災難であるかのように感じています。しかしそれはあくまで既知の感染症に対して対策がとれるようになったためで、私たち自身が疫病に負けないほど強くなったわけではありません。そしていま、未知の、しかも極めて恐るべきウイルスが現れようとしているとの警鐘が鳴らされています。 近年、マスコミなどを通じて「鳥インフルエンザ」とか「新型インフルエンザ」という言葉をずいぶんと耳にするようになりました。「鳥インフルエンザ」とは、鳥インフルエンザウイルスによって引き起こされる、鳥類の世界の伝染病です。中でも現在世界的に多くの家禽の病死を引き起こしている病原性...

唯エネルギー論(5)

5.石油減産次代の舵取り  これからの時代はなんとも不思議な状況にあります。環境は温暖化するのにエネルギーは激減する、しかもこれまで経験したことのない人口を抱えているのですから。人類の歴史の中ではなかなか珍しい事態といえましょう。環境は温暖化するのですが、人の動きはエネルギー減少時の、つまり寒冷化するときの有り様を呈すると考えられます。どういうことかと言えば、「エネルギー量の減少と、E/Pの低下」の項で挙げました、1) 人口の減少、2) 移動、3) 交易、4) 収奪、5) エネルギー消費の削減、6) エネルギーの増産が起こりうると思われます。 1) 人口の減少  石油エネルギーの供給量が減少すれば、大きな社会的混乱が生じ、餓死、凍死、病死などの理由で死亡する人が増えることでしょう。乳児死亡率は上がり、平均寿命は短くなります。自殺や殺人も増えるかもしれません。戦争・紛争が起これば、そこでも...

唯エネルギー論(4)

4.エネルギーの過剰と石油消費文明の終焉  現代の人類は、豊富にエネルギーが供給される時代という、未曾有の事態に暮らしています。これまでエネルギーの不足からエネルギーを奪い合うという危機を経験してきた人類は、過剰に供給し続けられるエネルギーをどう消費するかという、これまで経験のない事態に直面するようになりました。   不足から余剰へ    エネルギーが不足すれば、つまり食べるものがなければ生命の危機です。人口は維持できません。人間で言えば栄養障害から餓死にいたります。ですからエネルギー増産に努めます(あるいは人口削減に努めます)。ところがエネルギー増産のためには、それをなすためにエネルギーを投入しなくてはなりません。いっぱい働くためにはいっぱい食い物が必要ということです。つまり増産するためには需要もまた増加します。エネルギー需要は増しますが、それに見合うような増産が得...

唯エネルギー論(3)

3.唯エネルギー史観 弥生革命  縄文から弥生へのイノベーションである水稲耕作とは、まさにこのエネルギー生産の転換だったといえましょう。稲作という技術革新によってエネルギー収量が増大し、加えて再度の温暖化でいっそう収量が上がりますと、再びエネルギー(つまり食料)の余剰が生じます。エネルギーの余剰はまたまた人口の増加をもたらします。人口が増加すれば、今度はそれを支えるだけの耕地を必要とするようになります。こうして人口がエネルギーを求め、エネルギーが人口を支え、増産のスパイラルが形成されます。そしてこれは、エネルギー採取の平面的拡大をもたらします。人口を背景とした耕地の拡大ですね。 土地所有の概念の濃淡  森林を採取の場とする場合、不特定多数が利用するものですから、縄張り意識は生じたとしても、厳格な所有の概念は必要ないのではないでしょうか。しかしこれが耕地となると、誰でも作って誰でも収穫し...

唯エネルギー論(2)

2.エネルギーの不足と人口崩壊の危機 エネルギー/人口比  エネルギーを分子に、人口を分母にして、その比を考えてみましょう。エネルギー/人口比です。energy population ratio というと、先述のEPRと紛らわしいので、ここではE/Pと記することにします。これは一人当たりが得られるエネルギー量を表します。人一人が生存できるエネルギーを1単位とすれば、E/Pは1以上必要です。1を割り込めばその集団は人口を維持できません。人口に対しふんだんにエネルギーがあれば、E/Pは大きくなり、人口を維持するのが容易になります。人口に対しエネルギーが十分でなければ、E/Pは1に近づき、飢えに苦しみ人口維持が危機にさらされます。 エネルギー量の増加と、E/Pの上昇  温暖化しますと体温の損失が少なくなりますし、それに空間当たりのエネルギー密度が増加します。木の実が多くなり獲物が多くなって、採取...

唯エネルギー論(1)

0.はじめに  「唯エネルギー論」といいますとなんだか、唯物論と相対性理論を組み合わせたみたいですね。物質はエネルギーであるから唯物論は唯エネルギー論と読み替えることができる、みたいな。こんなことすでに誰か考えているだろうなと思って検索してみますと、まさに「唯エネルギー史観」という言葉で「世界の政治経済はエネルギーを中心に動く」ということを主張しているかたがいます。早速読んでみましたが、これは非常に本質的で興味深い本だと思います。  さて、このコラムでいうところの「唯エネルギー論」とは、人間の活動や歴史はエネルギーによって支えられている、人間とエネルギーの相互関係によって営まれている、という思いつきを述べたものとご理解ください。そういう視点から眺めたらどう見えるだろうかという試みです。たいそうなタイトルですが、吟味された学術論ではなくて、ほんの思いつきですので、その程度のものとしてご容赦い...

自転車の愉しみ(3)

自転車の種類(3) 小径車,ミニベロ  ベロ(velo)とはフランス語で自転車のこと。ミニベロは小さな自転車をさします。タイヤの径は20インチとか16インチとか。こぎ出しが軽く、前後長が短くて、取り回しやすいことや、可愛らしく気軽に乗れるため街乗りに使う人が増えています。中には本格的なフレーム設計と多段変速装置とで、ロードバイク顔負けの性能を持つものもあります。   折り畳み自転車,フォールディングバイク  小径でも折りたためるタイプのものはフォールディングと呼ばれます。折りたたみ自転車ですね。折りたためるといっても重量は10kg以上あるので(最軽量のものは6.5kgというのもありますが)、実際には折りたたんで持ち運ぶことはあまりなく、専有面積が小さくなるので収納の重宝します。このフォールディングバイクにはいくつか有名なブランドがあって、それぞれに熱心なマニアが存在します。 &...

自転車の愉しみ(2)

自転車の種類(2) トラックレーサー,ピスト,固定ギア,"踏みきり"  競輪やタイムトライアルのようにオーバルコース(トラック,ピスト)で競う競技用の車両です。見るからに競技用の車両で、変速装置はありません。本来クローズドコースの競技用なので、街中では競輪選手の練習くらいでしかお目にかからなかったのですが、最近はニューヨークのメッセンジャーバイクの影響で世界的に流行しており、日本の街中でも見るようになりました。これは先述したフリーホイールではなく、固定ギアが装着されております。固定ギアですと、ペダル・クランク・前ギア・チェーン・後ギア(固定ギア)が直結しているため、脚を回した分だけダイレクトに駆動力が伝わります。このダイレクトな駆動感や、脚だけで速度を制御して操る感覚がとても新鮮で愛好者が増えています。しかし逆に言えば、車輪が回っている間、つまり走行中は常に脚も回っていなければならず、逆に...

自転車の愉しみ(1)

 近年、自転車がブームのようです。趣味で自転車に乗っているような人をよく見かけるようになりました。自転車趣味の人は「バイク」という、ちょっとカッコいい呼び方をするようです。自転車はいいですね。自分の体を使った分、ダイレクトに還ってくるような応答性が爽快です。脱石油時代を考えると、10kmくらいは当たり前に自転車で移動するような習慣をつけておく方が便利かもしれませんよ。  自転車趣味の人はたくさんいるので、私が紹介するのは気が引けるのですが、さらっと自転車の世界を眺めてみましょう。 自転車の歴史  自転車の歴史は19世紀はじめに遡るそうです。1817年にドイツのドライス男爵が前後二輪の木製の乗り物を考案しました。現在のようなペダルやチェーンといった駆動力を車輪に伝える機構はなく、直接足で地面を蹴って進むものだったそうです。またがって乗る二輪のキックスクーターのようなものと想像すればよいでしょ...

海から見た東北地方の過去と未来 (3) ~東北の未来

東北の今、そして未来  東北地方は、本州北部に位置し、青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県の6県からなります。総面積は66,890k㎡で、国土の約2割、本州の約3割の面積を占めます。これはチェコと同程度、オランダ・スイス・デンマークの約1.5倍の広さです。総人口は964万人で、これはスウェーデンとほぼ同規模。人口密度は約140人/k㎡で、全国平均343人/k㎡を比べますと少ないものですが、これはスイス(177人/k㎡)、デンマーク(125人/k㎡)と同程度です。東北6県の県内総生産の合計はおよそ33兆円(2004年度)で、東北6県を合わせても全国3位の愛知県に及びません。しかしながらこれはトルコ・オーストリア・デンマークなどのGDPを超えています。 食糧資源供給地としての東北  東北は食料供給地です。全国比でみますと東北地方の総人口は7.5%にすぎませんが、農業就業人口は18.5...

海から見た東北地方の過去と未来 (2) ~東北の過去 後

(7) 戦国時代(15世紀後期~16世紀後期)  東北地方では守護大名が領域支配を早々と確立し、最上義光、伊達政宗、南部晴政、安東愛季、津軽為信などの戦国大名が誕生します。一方、越後には上杉輝虎(上杉謙信)が登場しました。  その頃中央では、尾張に登場した織田信長は急速に支配地域を拡大していき、室町幕府に代わる畿内政権を樹立しました(1573年)。しかし、信長は本能寺の変(1582年)によって滅ぼされ、代わって豊臣秀吉が全国を平定して統一事業を成しました(1590年)。豊臣秀吉の奥州仕置によって東北の有力諸藩は安堵されましたが、東北諸大名を牽制するため、豊臣秀吉は上杉景勝を越後から伊達、会津、置賜、庄内に移封しました。これによって、最上氏は南と西から上杉氏に挟まれる事となり、上杉氏にとっても置賜と庄内を最上義光に遮断されることとなり、ここに両氏は緊張関係となりました。  ちなみに、織田信長...

海から見た東北地方の過去と未来 (1) ~東北の過去 前

 私は東北人です。今回は東北地方について書いてみます。とは言ってみたものの、私、東北人とはいいながら、実は東北地方についてよく知っているわけではございませんし、歴史にも明るくないので、ほとんど「Wikipedia」の受け売りです。それに、東北といってもはたして一括りにできる均一なものなのかという議論もあろうかと思いますし、歴史の見方には立場によって様々な意見がありましょう。そこは、間違い勘違いがございましたらご指摘いただければ幸いです。東北地方は他の地域の人にとってはあまり関心がないかもしれませんが、多少なりとも興味を持たれましたらどうぞお付き合いのほどを。 東北を巡る呼称  西日本に古代国家が成立し、畿内王権ができた頃から、東北地方は「蝦夷(えみし)」が住む地であると考えられました。さらに細分しますと、東北の太平洋側の人々を蝦夷、日本海側の人々を「蝦狄(えてき)」と呼んだようで、これは支...

【総集編】逝きし世の面影

逝きし世の面影 (平凡社ライブラリー) (単行本(ソフトカバー)) .渡辺 京二,平凡社,2005.  かつてこの国に確かに存在し、いまはすでに失われてしまった文明があります。  この本は、渡辺京二氏による著作で、1998年秋に葦書房より初刷され、現在では平凡社より刊行されている大冊でして、江戸時代の末期から明治時代の初期にかけて日本を訪れ、その比類なきユニークな文明を体験した欧米人の手記や書簡をつぶさに検証し、当時の日本がどのような習俗や価値観をもって存在していたかをまとめ上げたものです。  今回、私がこの本を取り上げましたのは、この中で浮かび上がる150年前の日本の様子が、今後の日本の在り方を模索するにあたって、何らかの参考になるのでないかと考えるからです。古来、日本はさまざまな文明や思想を受け入れ、取り入れ、それを自らのものにしてきました。自ら求めたものもありましょうし、そのように仕...

希望の船

1. 連山訪問 (出展:蒸気機関wikipedia)  連山の編集部を訪ねました。  これまで連山とは読者コラムに投稿するだけのつながりで、実際にお会いするのは初めてだったのですが、いやぁ、緊張しましたよ。だってどんな組織なのか正体がよくわかりませんでしたし、内容から察するに敵対勢力もありそうな気がしておりましたから。そんなところに足を踏み入れていいのか、鬼が出るか蛇が出るかという心境だったのです(連山の皆様には笑われるかもしれませんが)。実際に行ってみますと、怪しげな場所に案内されるでもなく、恐ろしげな人が登場するでもなく、普通のところで普通に、いや、たいへんよく対応していただきました。  現在抱えるエネルギー問題について、各種エネルギーの可能性と課題、そして今後の展望についてご説明いただきました。可能なこと無理なことの見切りが見事で、それを基にしたグランドデザインが明瞭であり、おかげで...

『モモ』

モモ―時間どろぼうとぬすまれた時間を人間にかえしてくれた女の子のふしぎな物語 (岩波少年少女の本 37) (単行本).ミヒャエル・エンデ 作, 大島かおり 訳.岩波書店,1976  あまりに有名な、ドイツの児童文学者ミヒャエル・エンデ(1929-1995)の傑作。児童文学の形をかりた思想書のようでもあり、多忙な現代への警告として受け取られることも多い作品です。  この物語の中に“灰色の男たち”が出てまいりますが、これがなんとも意味深長で、まさに現代の資本主義・商業主義世界に警鐘を鳴らしているように感じます。 “灰色の男たち”  灰色の男たちは、ある時ふっと人々の日常に現れ、その人の持つ時間を時間銀行に預けるよう、言葉巧みにささやきかけます。灰色の男のセールストークは次のようなものです。いわく、「あなたは時間を無駄にしている。あなたは時間を浪費している。その時間を倹約して、我々に預ければ、多...

【脱石油医療】 “体が資本”主義

1.医療もまた石油次第  原油価格が高騰しています。1バレル93ドルを超えました。今回の原油価格の高騰は、もともと投機的な原油価格の高値に加えて、サブプライムローンの破綻を契機とした金融不信から、金融商品から原油や穀物、資源などのモノにマネーが流れているのだという話をききます。さらに石油枯渇の問題がありますので、二重の意味で今後は石油の高騰および入手困難が予想されます。石油は燃料のみならず、様々な石油製品の原料でもありますから、原材料費および輸送費の両面からすべての物の価格が高騰し、さらには入手が困難になることが想定されます。(そもそも、石油が枯渇したら現在の石油製品はどうやって代替するのでしょう?)  化学製品である医薬品ももちろん影響を受けることでしょう。また、注射シリンジや点滴パックなど、医療機材の多くが石油製品ですから、これらもまた値上、そして入手困難となるかもしれません。医薬品、...

逝きし世の面影 第五回

逝きし世の面影 (平凡社ライブラリー) (単行本(ソフトカバー)) .渡辺 京二,平凡社,2005. 逝きし世の面影 第五回 また、日本人が動物とどう付き合っているかも興味深いものだったようです。日本人にとって身近で生活する動物は、共に暮らす輩という存在だったようで、家畜家禽を食することはもちろん殺すということも、まるで家族を失うかのように受け入れがたいことだったようです。 『日本の犬はあまやかされている。彼らは道路の真中に寝そべって、道をあけるなんて考えもしない。気のよい人力車夫たちは、かれらにぶち当てるなどけっして考えつきもせず、つねに車を片側に寄せる。そして犬を叱るが、犬の方は尾を振る始末(マクレイ)』 『どの村にも鶏はたくさんいるが、食用のためにはいくらお金を出しても売ろうとはしない。だが、卵を生ませるために飼うというのであれば、喜んで手放す(バード)』 「黒い牡牛を一頭購入した。...

逝きし世の面影 第四回

逝きし世の面影 (平凡社ライブラリー) (単行本(ソフトカバー)) .渡辺 京二,平凡社,2005. 逝きし世の面影 第四回 『日本を支配している異常な制度について調査すればするほど、全体の組織を支えている大原則は、個人の自由の完全な廃止であるということが、いっそう明白になってくる』『個人が共同体のために犠牲になる日本で、各人がまったく幸福で満足しているようにみえることは、驚くべき事実である(オリファント)』 『絶対専制支配が行われている日本において、個人は時に立憲的なヨーロッパ諸国家においてよりも多くの権利をもっていた(ヴェルナー)』 『江戸には現に二つの社会が存在していて、一つは武装した特権階級で、広い城塞の中に閉じこめられており、もう一つは武器は取り上げられ前者に屈服させられているが、自由から得られる利益をすべて受けているらしい(アンベール)』 『日本人は完全な専制主義の下に生活して...

逝きし世の面影 第三回

逝きし世の面影 (平凡社ライブラリー) (単行本(ソフトカバー)) .渡辺 京二,平凡社,2005. 逝きし世の面影 第三回 『住民が鍵もかけず、なんらの防犯策も講じずに、一日中家を空けて心配しないのは、彼らの正直さを如実に物語っている(クロウ)』 『私は全ての持ち物を、ささやかなお金を含めて、鍵も掛けずにおいていたが、一度たりとなくなったことはなかった(ムンツィンガー,1890)』 『この人たちは実に日本の大きな魅力である。……幸福で礼儀正しく穏やかであり、温和しい声で何時もニコニコしながらお喋りをし、ちょっとしたことからも健やかな喜びを吸収する恵まれた素質を持ち、何時間となく続けてトボトボ歩いてあちらこちら見物しても、決してへばらない羨ましい身体と脚を持っているなどの点で、日本の楽しい群衆にひけをとらないものがあると公言できる国など何処にもあるまい』『日本の庶民はなんと楽天的で心優しい...

逝きし世の面影 第二回

逝きし世の面影 (平凡社ライブラリー) (単行本(ソフトカバー)) .渡辺 京二,平凡社,2005. 逝きし世の面影 第二回 当時日本を訪れた欧米人は、そこに暮らす人々の陽気な様子、幸福そうな様子に目を奪われています。 『この町でもっとも印象的なのは(そしてそれはわれわれの全員による日本での一般的観察であった)男も女も子どもも、みんな幸せで満足そうに見えるということだった(オズボーン)』 『封建制度一般、つまり日本を現在まで支配してきた機構について何といわれ何と考えられようが、ともかく衆目の一致する点が一つある。すなわち、ヨーロッパ人が到来した時からごく最近に至るまで、人々は幸せで満足していたのである(ヒューブナー,1871)』 『誰の顔にも陽気な性格の特徴である幸福感、満足感、そして機嫌のよさがありありと現れていて、その場所の雰囲気にぴったりと融けあう。彼らは何か目新しく素敵な眺めに出会...

逝きし世の面影 第一回

逝きし世の面影 (平凡社ライブラリー) (単行本(ソフトカバー)) .渡辺 京二,平凡社,2005. 逝きし世の面影 第一回 かつてこの国に確かに存在し、いまはすでに失われてしまった文明があります。  この本は、渡辺京二氏による著作で、1998年秋に葦書房より初刷され、現在では平凡社より刊行されている大冊でして、江戸時代の末期から明治時代の初期にかけて日本を訪れ、その比類なきユニークな文明を体験した欧米人の手記や書簡をつぶさに検証し、当時の日本がどのような習俗や価値観をもって存在していたかをまとめ上げたものです。  今回、私がこの本を取り上げましたのは、この中で浮かび上がる150年前の日本の様子が、今後の日本の在り方を模索するにあたって、何らかの参考になるのでないかと考えるからです。古来、日本はさまざまな文明や思想を受け入れ、取り入れ、それを自らのものにしてきました。自ら求めたものもありま...

脱石油時代の農業

はじめに 現在の日本の食糧自給率は40%を切っており、60%以上の非自給分はアメリカに大きく依存しています。そのアメリカの農業も、種子から肥料、農薬そして最終の作物まで一部の企業が独占しています。 また日本国内の農業生産についても、農機具の燃料、施設の燃料・電力、そして作物の輸送・流通にわたり石油に依存しています。ご承知のように日本は石油のほとんどを輸入に頼っています。で、種子企業も農薬・化学肥料企業も穀物企業も石油メジャー傘下だったりするので、日本の食料はまるごと一部の資本の影響下にあるといってもよいでしょう。 ところが、今後ピークオイルが過ぎ(一説には2010年とも、もう過ぎたともいわれます)、原油の生産が減少してまいりますと、これがどうなるのか予断を許しません。ちょうどサブプライムローンの破綻を契機とした金融不安から、モノに流れたマネーが原油価格を押し上げているそうです。今後世界的な...

食糧自給率

 私はこんなふうに考えています。 「水・食料・エネルギー」を自分で自給できれば自立して踏ん張れる。 「水・食料・エネルギー」を相手に握られれば生殺与奪の権を奪われる。 相手の「水・食料・エネルギー」を握れば相手を支配することができる。 不足分は高度な外交戦略によって調達しなくてはならず、難易度が高い。  「水・食料・エネルギー」を奪われないように、売り渡さないように、そして「水・食料・エネルギー」を自分でまかなえるように、というのが私の基本的な考えです。完全自給は困難であっても、できるだけ自給率を高めておく、あるいは自給率を高められる体制に切り替えられるよう用意をしておくことはきわめて重要な国の安全保障であると考えます。ですから、「日本は他のことで稼いで、食料は外国から買ってくればいい」という考えには賛成できません。日本がいつまでそんな羽振りのいい状態とは限りませんし、そもそも外国の食料生...

もしも私が家を建てたなら (2)

エネルギー消費の少ない家  これからのエネルギー事情を考えた時、もしも私が家を建てるのなら、エネルギー消費の少ない家を建てたいと思うということをお話ししました。家は長年にわたって住むものであり、建物自体はさらにもっと長持ちする(長持ちさせるべき)ものです。ですから長期的なスパンで将来を考えて建てるべきでしょう。私は今後のエネルギー事情を楽観していないので、全体のエネルギー需要を減らすことでエネルギー安全保障上のリスクをできるだけ減らすことや、個人の生活防衛上のリスクを少しでも減らす意味で、エネルギー消費の少ない家が良かろうと思っています。  では、エネルギー消費を少なくするために、どのような工夫が役立ちそうでしょうか。その当たりを考えてみたいと思います。 1.エネルギーサイズの小さい家  まず、そもそもエネルギーをそれほど使わなくてもすむ家、エネルギー需要の少ない家ならエネルギーの消費が少...

もしも私が家を建てたなら (1)

 エネルギーと資源のことを考えるとどんな家がいいのか。世界金融危機というご時世ではありますが、空想するだけならタダなのでちょっと空想してみましょう。もしも私が家を建てたなら…。まずは、日本のエネルギー事情をおさらいしてみます。 日本のエネルギー事情  資源エネルギー庁の「エネルギー白書2006」によれば、日本の一次エネルギー供給は、22,941×10の15乗J(ジュール)だそうです。ここでは22,941,000兆Jと表しておきましょう。その内訳は石油が46%、石炭が21.5%、天然ガスが14.6%、原子力が10.8%、そして水力・地熱・太陽光や風力などの新エネルギーが6.3%となっています。この一次エネルギーは、ガソリン・軽油・灯油・LPガス等の石油製品、都市ガス、そして電気といった二次エネルギーに転換され、産業や日常生活に使用されるわけです。二次エネルギーの形態としては電気と石油製品がそ...

バイオディーゼル燃料を学ぶ 4

 今年6月、「全国菜の花サミット」という全国大会がありました。今回で第7回を数え、今年は山形で開催されました。この「全国菜の花サミット」というのは、「菜の花」をキーワードに地域循環型社会を目指そうという大会で、滋賀県発の「菜の花プロジェクト」運動が母体となってはじまったものです。なお来年は長野で開催される予定です。  基調講演として、農林水産省大臣官房環境政策課長さんが「農とエネルギーの地産地消」と題してお話しされました。その中で印象に残ったのは、 「バイオ燃料は食料と競合するものであるべきではない」「そのためにも菜の花等による休耕地の活用や稲藁、籾殻、間伐材など未利用資源の活用(セルロースからバイオマス燃料を精製する技術開発と生産コストの低減)が必要」「バイオマス燃料のライバルは、実は大量生産される外国産のバイオマス燃料」「温暖化を前提に農業構造を変えていくことを試算すると莫大な経費がか...

バイオディーゼル燃料を学ぶ 3

日本の軽油事情  バイオディーゼル燃料は軽油の代替燃料です。私がバイオディーゼル燃料に注目したのは、先にも述べましたが、軽油が農機具用途など食料生産に関わる燃料だからです。この分野は次世代新エネルギー(私は本命は水素エネルギーだと思っていますが)にシフトしてゆく時に、新エネルギーの普及が遅れる分野ではないかと私は危惧しています。つまり、石油が高騰し手に入りにくくなる、しかし燃料電池トラクターの普及は進まない、そんな事態を想像して不安に思っているのです。そんなわけで、水素エネルギーにシフトしてゆく端境期をしのぐ支援技術として、バイオディーゼル燃料に注目しているのですが、ここで現在の日本の軽油事情をみてみましょう。  日本国内の石油製品(ガソリンとか軽油とか灯油とか)需要のうち、85%は原油で輸入して国内で石油製品に精製しています。残りの15%は石油製品で輸入していますが、そのほとんどがガソリ...

バイオディーゼル燃料を学ぶ (2)

今回はバイオディーゼル燃料に話しを進めたいと思います。 バイオディーゼルとは  バイオディーゼル燃料とは、生物由来(魚脂、動物油脂も含むが多くの場合は植物由来)の油脂を原料として作られ、ディーゼルエンジンを稼働させることができる燃料の総称です。英語表記では「biodiesel fuel」と記します。日本ではその頭文字をとった「BDF]という表記もよく使われますが、これは廃食用油から軽油代替燃料を精製するという先駆的な取り組みをおこなったある企業の登録商標なのだそうです。それが一般化して日本ではBDFと使うことが多いらしいのですが、そのあたりのいきさつは私にはわかりません。   以下に、バイオディーゼル燃料に関連した簡単な用語集を記します。 バイオディーゼル燃料関連用語 【軽油】 原油の蒸留によって得られる石油製品。沸点範囲が180~350℃程度の様々な炭化水素の混合物で、主にディーゼルエン...

バイオディーゼル燃料を学ぶ

 私、バイオディーゼル燃料に関心を持ちまして、現在勉強中です。このコラムでは、私がバイオディーゼルについて勉強してゆく過程を報告いたいと思います。こちらにいらっしゃる皆様にとってはすでにご存じのことも多いことでしょうが、そこはなにとぞご勘弁下さい。  バイオディーゼルの話の前に、バイオマスについてひととおり復習しておきましょう。近年、バイオマスに対する注目は高まっており、新聞等のメディアに載る機械も多くなっております。NEDO(独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構,The New Energy and Industrial Technology Development Organization )の新エネルギー技術開発分野の項目にも、太陽光、風力とならんでバイオマスがあげられています。  バイオマス  資源・エネルギーの分野でバイオマス(Biomass)と言う際には、生物由来の...