連山の分散分権化

分散分権化

「使えない」原子力発電

 地球温暖化と石油枯渇という二大リスクを回避する手段として、ここにきて原子力発電が急浮上してきている。原発を否定しない科学者は多いが、ガイア仮説で世界に名を知らしめたジェームズ・ラブロックに至っては、『ガイアの復讐』という本のなかで原発を強烈に擁護する論陣を張っている。

 ラブロックは「自然界にとって放射性廃棄物は、貧欲な開発者から守ってくれる歓迎すべき相手で、そこから被る害などほんのわずかな犠牲にすぎない。非常に衝撃的な事実だが、放射性核種による深刻な汚染を受けた場所には、野生生物が豊富に生息している」と述べる

 なにやら『風の谷のナウシカ』を彷彿とさせる、私にはとてもついていけそうにないシニカルさが含まれているが、たしかに放射能が撒き散らされた大地には人間は立ち入れない。それによってある種の「野生」が回復されているのも、本当のことだ。
 ところがラブロックは、これに続けて、とてもではないが理解不能なことをいい出す。
 彼は、「私は、原子力発電所から一年間にで出る高レベル放射性廃棄物をすべて私の小さな地所に保管すると申し出て、それを公表した。廃棄物は一立方メートルほどの大きさで、安全にコンクリートの穴にはめ込まれることになる」というのである。
 もしラブロックがいうとおりなら、青森県六ヶ所村の再処理工場も、NUMO(原子力発電環境整備機構)の「深地層処分」のテレビコマーシャルも、その調査受け入れで町を二分した高知県東洋町の対立も、必要なかったはずだ。
 しかし、核廃物処理の実際は、とてつもなく大がかりな設備と人間の数世代程度ではまったく手に負えない膨大な時間を要する。とても「私の小さな地所に保管する」というような真似はできないのだ。
 しかも、ラブロックは原子力発電が、エネルギーとして「自立」していないことを(わざと?)無視している。
 原子力発電は、ウラン鉱石を掘り出すところから始まって、その精製、運搬、なんと発電(緊急用電源は別の原発以外の発電所から持ってきている)、そして廃棄に至るまで、化石燃料に依存しまくっているのである。
 さらに、原発がつくった電気を使って、次の原子力発電を行えるような「自立」サイクルが完成したとしても、廃棄物処理が絶対的なネックとなる。
 放射性廃棄物は化石燃料の廃棄物と違い、けっして環境中に放出することが許されない。しかも、その毒性が自然消滅するまで何千年、何万年とかかる("粗熱"を冷ますだけでも半世紀を要する)ため、それまでどこかに封じ込めておかねばならない。廃棄物は一方的に堆積するばかりだ。
 周知のように原発が供給できるのは電気エネルギーだけだ。もし原発から出る廃棄物を原発がつくれる電気だけを使って保管しようとするなら、廃棄物を管理するための原発が出す廃棄物を管理するための原発をつくり、その原発の出す廃棄物を管理するための原発をつくり、そのまた・・・・・・、という具合にエンドレスかつ増殖的に「管理用」原発をつくり続けなければならない。そして、その種の原発でつくった電気は、ほかの生産にいっさい「使えない」のである。
 これが、石油が枯渇した後では現実問題として浮上してくる。
 ジョージェスク・レーゲンは「熱核エネルギーは、火薬やダイナマイトと同様、爆弾としてだけしか使えない」と示唆したが、そんなものに未来を託す勇気を、私は到底持ち合わせない。


バイオ燃料という悪夢


二〇〇七年一月、ブッシュ米大統領は年頭教書演説で、ガソリン消費量を今後一〇年間で二〇%削減するとの目標を掲げた。一瞬耳を疑った。京都議定書にサインせず、G8のなかで唯一、温暖化防止に反抗する駄々っ子米国が、大胆な対策を打ち出したのだから。しかし、よく聞くと、ブッシュは環境派へ変身したのではなかった。
 単純な排出削減ではなく、年間三五〇億ガロン(約一億三三〇〇万キロリットル)分、一〇年間で三五〇〇億ガロン分のガソリンを、バイオエタノールに代えるという目論見だったのである。
こんなものは、私にいわせれば、やらないほうがマシの「最低の政策」だ。
バイオエタノールは、トウモロコシやサトウキビを原料につくられる。植物由来の燃料だから、カーボン・ニュートラル(植物が燃えて二酸化炭素が発生しても、それは成長過程での光合成で大気中の二酸化炭素を固定した分なので、収支は均衡するという考え方)な燃料であることは間違いない。問題は、そのつくられ方だ。
全米の耕地の約二〇%に植えられているハイブリッド・コーン(二つの異なった系統を交配した一代雑種トウモロコシ)は、一ブッシェル(二五・四キログラム)当たり、二分の一ガロン(一・九リットル)以上の石油を消費してつくられている。
 石油の助けを借りなければ生産できない食物は、「ペトロフード」と呼ばれる。ハイブリッド・コーンは、典型的なペトロフードなのである。
ペトロフードからバイオエタノールなどというのは、ブラックユーモア以外の何ものでもない。その温室効果ガスの削減効果などたかが知れている

出典:『「お金」崩壊』著:青木秀和 集英社新書 「使えない」原子力発電 p167~抜粋



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戦線から遠退くと楽観主義が現実に取ってかわる。

そして最高意志決定の段階では、現実なるものはしばしば存在しない。

戦争に負けている時は特にそうだ。

出展元:ジェイムズ・F・ダニガン『新・戦争のテクノロジー』


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