今回は、ヒートアップを続ける中東情勢を検討してみたい。
私は、現在の国際情勢の中心にはイスラエルの存在があり、イスラエルの出方を見れば、国際情勢の大半は分析できると考えている。なぜなら、イスラエルは超大国アメリカを裏から操り、イスラエルのコントロールは、アメリカにもなく、その意味で、イスラエルは国際情勢の中心だ。アメリカがイスラエルに対して行なっている、直接的な軍事援助と武器売却の総額は 下記の通りだ。
2001年から2005年の軍事援助金の総額は、毎年平均して25億~30億ドル(約3000億~3500億円)で大きな変動なく推移。この金額は、イスラエルの軍事予算の2割以上にあたり、それだけアメリカがイスラエルの軍事力を支えている、ということになる。 こうした軍事援助は、アメリカがこの30年以上にわたって継続して来たことであり、それについては、どちらかと言えば、周知のことであっただろう。
それに対して、この二年で急激な増加を見せているのが、アメリカからイスラエルへの武器売却だ。01~03年は6~8億ドル(700億~900億円)で推移していたものが、04年には13億ドル(1500億円)と倍近くに増加、05年にはさらに倍増し27億ドル(3100億ドル)を超え、直接的な軍事援助に並ぶ規模となった。合わせれば、いっそう膨大な規模となり、イスラエルの軍事力は全面的にアメリカによってバックアップされていると言っていい。
イスラエルを取り巻く、国際情勢の推移を見てみたい。
まず、4次にわたる中東戦争において、基本的にはイスラエルの勝利で終わった。その時点と、今日の中東情勢の大きな違いは、アラブ諸国の団結と兵器が改良されたことだ。
まず、かってのアラブ諸国は決して一枚岩ではなかった。イランとイラクは戦争をしていたし、サウジやエジプトのような穏健派親米政権もあった。しかし、イラク戦争によりフセイン政権が潰れたことで、逆にアラブ諸国の団結が生まれた。
サウジですら、イスラエルを非難している。
<参考>
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20060725AT2M2502U25072006.html
「サウジ国王、「和平失敗なら戦争」・イスラエルに警告
【カイロ=横田一成】サウジアラビアのアブドラ国王は25日、国営サウジ通信を通じて声明を発表、「イスラエルのごう慢さにより和平という選択肢が失敗した場合、戦争の道以外になくなる」と警告、イスラエルに対しレバノン、パレスチナ自治区への攻撃停止を求めた。国王は「アラブ各国は和平を進めるため、過激派の呼びかけも無視してきた。しかし我慢にも限界がある」と指摘した。
サウジはこれまでイスラエルを批判するとともにイスラム教シーア派民兵組織ヒズボラの行動も非難、このため国内世論に反発が生まれていた。
声明は同時にイスラエルからの空爆を受けているレバノンに5億ドル(約580億円)、パレスチナにも2億5000万ドルを支援することを明らかにした。 (00:03) 」
さらに、中国製の安価な兵器がイラン、シリアを経由して、ヒズボラに渡り、イスラエルを巡る軍事バランスを崩している。
<参考>
http://www.yomiuri.co.jp/feature/fe4800/news/20060716i313.htm
ヒズボラにイランがミサイル供給か、命中精度が向上
「【エルサレム=三井美奈】レバノンのシーア派組織ヒズボラは16日、ハイファを攻撃した際に、イラン製ミサイル「ラード」を使ったとの声明を発表した。
同ミサイルはこれまで対イスラエル攻撃に使われた旧ソ連開発のカチューシャ・ロケット砲より射程が長く、命中精度も高い。イスラエル軍はイランが兵器性能を著しく向上させている上、ヒズボラに大量に供給していることに衝撃を受けている。
イスラエル軍によると、「ラード」ミサイルは射程40キロ以上。ハイファでは一部が列車の操車場に着弾した。元参謀総長のモファズ運輸相は、被弾した操車場を訪れ、根拠は明らかにしなかったが、「弾薬はシリアが提供した」と述べ、イランとシリアがヒズボラの装備拡大の背後にいるとの見方を示した。
13日夜には、レバノン沖に展開していたイスラエル軍の駆逐艦が中国製C802対艦ミサイルで攻撃されたが、これもイランが供給したもので、同艦に搭載されていた防衛システムをくぐって命中した。国軍はさらに、イラン革命防衛隊の軍事顧問ら約100人がレバノン領内でヒズボラを支援しているとの見方を示している。」
(2006年7月17日1時38分 読売新聞)
イスラエルを巡る情勢は厳しさの一途をたどり、追い詰められたイスラエルが予防的に先制攻撃を加えたというのが今回の真相だろう。まさに、イスラエル、アメリカ連合VSイラン、シリア、中国の代理戦争ということだ。
このような、中東諸国を巡る情勢の変化が、かっての中東戦争と違う、レバノンのシーア派原理主義組織ヒズボラの戦闘力の高さを生んだ。
ヒズボラが打ち込んだ中国製の対艦ミサイルHY-2のデータは以下のとおり。HY-2は、重量約3000Kg、推進装置は固体ロケットで速度はマッハ0.9、誘導方式はアクティブレーダー・ホーミングと赤外線ホーミングの二種類、最大射程は95Kmである。 対艦攻撃にはC-802対艦ミサイルが使われたが、これも中国からイランに輸出されイランからヒズボラの手に渡ったものだ。 中国製の対艦ミサイルC-802のデータは、重量715kg、推進装置はターボジェットで速度はマッハ0.9、誘導方式はアクティブレーダー・ホーミング、最大射程は120kmである。C-802は中国海軍で今も使用され、旅海級駆逐艦や江衛Ⅱ級フリゲートに装備されている。ヒズボラがここまで高い戦闘力を獲得したのも、元をたどれば中国の存在が大きい。 工業力の低いイランは、高度な技術が必要とされるミサイルを独自で開発できるだけの基盤を持たなかった。 そこを補ったのが、中国だ。中国はイランから原油を手に入れ、軍事技術を輸出したのだ。
これは、かって、ユダヤ系米人が支持している民主党において、親中クリントン政権が、核ミサイルを含む軍事技術を中国に垂れ流し、中国が軍事大国としてのし上がった結果だろう。民主党は戦前は蒋介石を援助した挙句、中国を失った。さらに、以前、中国とイスラエルは安全保障面で良好な関係を築いていた。
イスラエルは自国の軍需企業ラファエル社製の空対空ミサイル・”パイソン3”を中国に輸出し、中国人民解放軍はそれをコピーした物をPL-8空対空ミサイルとして戦闘機に装備している。
またIAI社製の高性能無人攻撃機”ハーピー”も中国へ輸出されてアメリカから非難されているし、最近中国で開発された”国産戦闘機”・殲撃10型も、イスラエルで開発が中止された戦闘機”ラビ”の設計が、応用されたと言われている。 このように、中国を援助するというユダヤ戦略は結果として全て失敗している。何度、騙されれば、気が済むのか。
そして、イスラエル国防軍においても、本格的戦闘は第4次中東戦争以来経験していない。それに反して、アラブ諸国は、アフガニスタン、イラン、イラク戦争、湾岸戦争、イラク戦争と、実戦経験が豊富だ。イスラエル国防軍が実戦経験を積んでいない中で、この差は大きい。地上戦は兵器の性能以上に、士気や練度が意味をもつ。
<参考>
【イスラエル紙と仏紙が伝える】イスラエル軍精鋭地上部隊 待ち伏せ攻撃で壊滅
http://onuma.cocolog-nifty.com/blog1/2006/07/post_e72b.html
「イスラエル紙「ハーレツ」(電子版、7月27日付け)によると、レバノン南部のビント・ジバイルに侵攻したイスラエル軍地上部隊は26日早朝、待ち伏せしていたヒズボラ部隊の攻撃を受けて壊滅状態に陥り、生存者はヘリで窮地を脱した。 この戦闘でイスラエル軍兵士が9人死亡、27人が負傷したとされる。戦死した9人のうち8人は、ゴラン旅団の兵士と将校。
仏紙ルモンドによれば、壊滅したのはイスラエル軍が誇る「エリート部隊」だった。今回の戦闘に動員されたイスラエル軍兵士は、精鋭部隊とはいわれるが本格的な戦闘に従事したことのない若い世代が中心だ。もしかしたら、レバノン南部はイスラエルのベトナム=泥沼となるかも知れない。 」
ハーレツhttp://www.haaretz.com/hasen/spages/743027.html
ルモンドhttp://www.lemonde.fr/web/article/0,1-0@2-3218,36-798839@51-759824,0.html
このような諸点から、今後の推移を予測してみる。
まず、イスラエルにとっては、全てが、時間との勝負ということだ。時間がたてばたつほど、補給もままならず、国際世論も明らかに反イスラエルに傾くだろう。ブッシュ政権がイラク情勢について、欧州やアラブ諸国とよりをもどすために、協調主義に傾けば傾くほど、イスラエルの右翼は危機感を募らせ、極端な行動に出る可能性が高くなる。アメリカが欧州やアラブ諸国と妥協することは、イスラエル切捨てに繋がるからだ。
また強大な核兵器を保有するイスラエルが、ユダヤ系ネオコン主導のイラク戦争以後、国際的孤立を深めている。戦後、現在ほど反ユダヤ感情が高まっている時代は無いように思える。その意味で、短期決戦により、レバノン南部を制覇し、緩衝地帯を設けようとして攻め込んだのだ。ミサイルの射程や破壊力が大きく改善されている状況で、このような先制攻撃に踏み切ったのだ。これは、イスラエル国防軍のシナリオだろう。例えてみれば、戦前の日本において、「満州は帝国の生命線」との発想の下、関東軍が満州事変を起こし、対ソ緩衝地帯として満州国を建国したのと同じような行動だ。
しかし、ヒズボラが練度、兵器の双方で、予想を上回る抵抗を示し、そのため、短期決戦のシナリオは崩れた。言い方を変えると、ベトナムと同じような泥沼に引きずり込まれたわけだ。このまま、時間が経過していくと、イスラエルは間違いなく、敗退するだろう。ここで考えなければならない点は、イスラエルが他の国と異なり、軍事的優位を保つことでかろうじて、生存を図っている高度国防国家だという点だ。言い方をかえると、軍事的敗北が、仮に、それが局地的なものであっても、即国家滅亡に繋がりかねないのだ。ここから、どういう、結論が導かれるか。
つまり、イスラエルは敗北を認めるより、周辺国に核攻撃をする、いわゆる「サムソン・オプション」をとるということだ。
イスラエルは人口僅か600万人の小国であり国土も狭く縦深性がない。
仮にアラブ諸国が大量破壊兵器を取得したならば、イスラエルの大部分を破壊することは不可能ではない。逆にイスラエルが全てのアラブ諸国やイスラム諸国を攻撃破壊することは困難だ。人口比率や国土面積が明かに違う。ここにイスラエルの焦りと脅迫観念がある。
イスラエルは公表はしていないが、大量の核兵器を保有し
ている。イスラエルの技術力からすれば弾道型のミサイルだ
けではなく巡航型ミサイルなども保有しており潜水艦発射能力
も保持しているだろう。
アメリカはイスラエルに潜水艦ハープーンミサイルの対地攻撃型の供与を行っている。イスラエルは3隻のドイツ製ディーゼル推進の高性能潜水艦を保有しているので、アラブ諸国に対しての必要に応じた迅速かつ正確な先制核攻撃能力を有している。
更にはF15IストライクイーグルやF16I戦闘機などの世界最強レベルの高性能戦術戦闘機を保有しているために、弾道ミサイルを配備しなくとも何時如何なる時にでもアラブ諸国の軍事目標を核攻撃で制圧することは極めて容易なことだ。
要するに、イスラエルにとって、敗北はありえない。そして、地球上の次の核爆弾は、イスラエル関係で使われる可能性が非常に高い。中東戦争は中東地域だけに留まらず、それは世界のパワーバランスとアメリカの警察力を崩壊させることにより世界戦争を惹起する可能性が大だ。すなわち第三次世界大戦だ。
この第三次世界大戦では、ランドパワーVSシーパワーの最終決戦となる。更に、アメリカが中国を締め上げる理由は、実は台湾ではなく、中国の中東への覇権や弾道ミサイル拡大阻止である。また、中国のみならず北朝鮮も、中東を武器輸出のメインターゲットとしており、それは北朝鮮を封じ込めるためには看過できない事象である。日本を混乱させた先日のテポドンの試射は示威行動だけでなく、武器輸出へのデモンストレーションも兼ねていた。これらの、中東地域での米国のコントロールできない武器の増加は地域の不安定な要素となり、親米であるアラブ王制に対する『民主化運動』となりかねない。それは米国とイスラエルの長期安全保障にとって絶対に避けねばならない事態だ。(フランスやロシアはまだ、中東武器輸出に関しては米国と『調整』できる相手である)つまり、弾道ミサイルと核がイスラム原理主義者の手で結びつくと、イスラエルとアメリカの安保戦略は、根底から崩れることになるのだ。しかし、イスラム原理主義者が核ミサイルを手にするのは時間の問題だろう。
私が恐れるのはそのような、テロや地域紛争で核使用が日常化した世界だ。被害は現状と二桁以上違うだろう。問題は、次の核がいつ使用されるかだ。私はこれを「核のチキンレース」と呼びたい。世界の核兵器保有者は次の核がどこで使われるか、固唾を飲んで見守っている。そして、「次の核使用」がタガを外し、核使用の連鎖を生む。私も、この一点だけを注視している。
世界規模では新約聖書の「ヨハネの黙示録」に描かれたキリスト陣営とサタン陣営の戦争である「終末戦争(ハルマゲドン)」をかたくなに信じ、その後に新世界を展望する。
一九九五年にプリンストン宗教調査研究所が行った調査によると、その数は成人人口の18%であり、その数の大きさが分かる。なお、シオニストとキリスト教右派の利害はこの「黙示録実現」においてのみ一致しているとみるべきだ。
すなわち、最悪の場合、日本まで巻き込まれた形での黙示録実現だ。ブッシュ政権が狙う自衛隊の中東シフトはこの文脈で理解すべき。憲法解釈に関わらず、自衛隊は中東へ派遣された。集団自衛権を認めた瞬間に、自衛隊は全中東へ際限なく派兵され、中東戦争の当事者になるのだ。小泉政権が狙っているのはまさにこれだ。アメリカのこのような意図を正確に認識し、絶対に、日本は来るべき黙示録の当事者になってはいけない。そのような事態になれば、日本の安全保障政策に決定的ダメージとなるばかりでなく、国家存立の基盤まで犯される。ハルマゲドンとは、「メギドの丘」という意味でイスラエルの地名だという。この地でランドパワー(反ユダヤ=EU中露)とシーパワー(親ユダヤ=英米日)の最終戦争が行われるのであろうか・・・・黙示録は彼ら一神教徒にとって、聖書に予言された論理的帰結なのだ。イスラエルの極右が神殿の丘の岩のドームを破壊するという情報もある。実施されれば、真の黙示録の引き金になるだろう。イスラエル情勢から目が離せない。
<参考>
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060730-00000023-kyodo-int
【カイロ30日共同】レバノンのイスラム教シーア派民兵組織ヒズボラの指導者ナスララ師は、 29日に放映されたヒズボラ系テレビ局アルマナルで、米国は「イスラエルによる対レバノン攻撃の 継続を望んでいる」と指摘し、戦闘収拾に向けた米国の仲介外交を拒絶した。さらに「イスラエルが 攻撃を続けるなら、イスラエル中部の都市をロケット弾で狙う」と述べ、徹底抗戦を続ける姿勢を強調した。
29日に仲介外交を再開したライス米国務長官はヒズボラの武装解除を停戦の前提条件としているが 、ヒズボラ側に応じる考えがないことを明確に示した。 」
以上
