前回に引き続き、ヒートアップを続ける中東情勢の今後を検討してみたい。まず、事態が混乱すればするほど、原点に立ち返って考察するというのが私の基本的立場だ。以下はVOL15からの抜粋。ほぼ、私の予測どおりに動いているので、再掲する。ポイントは、イスラエルの孤立化と中国によりイランの核ミサイルが整備されたことだ。この点が、紛争の根底にある。
イスラエルの現状を理解するには、建国からの歴史を考察する必要がある。
第一次大戦後の中東の石油利権をめぐって、英米は対立する。米国は現地勢力のうちサウド家を援助したが、英国は現地諜報員トマス・E・ロレンス大尉(いわゆる「アラビアのロレンス」)の進言に基づきハシム家を推して、両者は死闘を展開。結果は「ロレンスが負け」、サウド家が勝ってサウド家のアラビア、サウジアラビア王国が誕生した。
英国は17世紀の二度の革命により、実質的に共和制であり、19世紀のVictorian Compriseによりユダヤ系に政権参画の道を開いた。ユダヤ系によりコントロールされていたのである。そのイギリスが第二次大戦後、失った中東利権を埋め合わせるため米国民主党トルーマンを操り建国したのがイスラエルである。パレスチナの地は石油は出ないが地中海への出口として、地政学上の重要性はある。
一般にはイスラエルは、差別されたユダヤ人が二千年ぶりに樹立した約束の地といわれるが、ユダヤ人は英国や米国で優雅な生活を行っていたのであるから、欧州で差別されたのなら、米国に行くという手があったはずだ。実際アインシュタインを始め多数のユダヤ人はそうしている。
イスラエル建国の真の理由はシオニズムではなく、英国の失った中東利権の埋め合わせといえよう。その証拠に、南米に建国することを主張したシオニストもいたのである。
この後、次第にイスラエルの存在が、英米(実質ロスチャイルド)にとって、お荷物であることがはっきりして来た。数度の中東戦争はテロを生み、不断の援助がなくては維持できない国であることがわかったのだ。唯一反共防波堤としての位置づけもソ連崩壊により失せた。つまり、欧米露の貧しいユダヤ人を除いて、イスラエルは完全に存在意義を失ったのである。
湾岸戦争ではイスラエルに軍事反攻を許さず、安全保障の観点からもイスラエル無用を証明した。それでも民主党クリントン政権は存在意義を失ったイスラエルを延命させるべく、オスロ和平合意を結ばせ、一時的な安定を得るかに見えた。
しかし、息子ブッシュ政権登場により、事態は一変する。すなわち、共和党保守派のブッシュはイスラエルに冷淡であり、シャロンとパレスチナの衝突を黙認した。つまり、イスラエル支持を明確にしなかったのである。なお、米国の二大政党制は、共和党=反ユダヤ、反英国、親アラブ、孤立主義(外国への軍事介入に否定的)、民主党=親ユダヤ、親英国、反アラブ、国際主義(外国への軍事介入に積極的)という真相がある。ブッシュ政権はパレスチナ国家を認めるほど、親アラブのオイル政権だったのだ。イスラエルはその建国以来、米国の援助なくしては存立できないし、それを主導してきたのはトルーマン以来の民主党である。
一方、共和党は、アイゼンハワーはスエズ動乱の時、英仏イスラエルに圧力をかけ撤兵させた。ニクソンは73年の第四次中東戦争において、敗北寸前のイスラエルの核恫喝を受けるまで軍事物資の支援(実質的にはキッシンジャー主導)に応じなかった(見殺し)。
レーガンは、83年にレバノンの米仏軍のキャンプが自爆テロを受け、死傷者を出した際に、モサドがその情報を掴んでいながら、アメリカをレバノンに引きずり込むために教えなかったことを知り、レバノンから海兵隊を撤退させ、サウジアラビアに最新鋭兵器を供与し、任期の末期において、ドイツ訪問の際、SS将校が埋葬されたビットブルグ軍人墓地に献花した。父ブッシュは、イスラエルへの100億ドルの信用供与を拒否し落選した。このように、共和党政権は、イスラエルに冷たい態度をとる事がわかる。ブッシュ政権では、生存は不可能だとの危機感をイスラエルがもったとしても不思議はない。そのような中で起きたのが911である。911を契機として、パールやウオルフォビッツに代表される、ユダヤ系ネオコンはブッシュ政権を乗っ取っていく。
911はモサドの陰謀だとの説もあるが、確証はないため断定はできない。ただ、『911により、最も利益を得たのはイスラエルである』ことは間違いない。何よりも、911からアフガンそしてイラク戦争とつき突き進む過程で、「アメリカのイスラエル化」が強固になった。
ここからは、あくまで、私の推測であるが、まず考えるべきは、米国におけるカソリックのヒスパニックやイスラム教徒の人口増加である。現在でも総人口の2%しかいない在米ユダヤ人は、徹底的な民主党に対するロビーとマスコミ操作によりイスラエルへの支持政策を取らせているが、今後50年から100年のスパンで考えると、対ヒスパニック、イスラム人口比から影響力を行使できなくなる可能性を考えたとしても不思議はない。ちなみにフランスでは1割近くをイスラム系住民が占めている。
アメリカでこうなった場合、親イスラエル政策は不可能になるだろう。イスラエルにおいても、ユダヤ人とパレスチナ人の出生率の差から、戦争がなくても、将来はユダヤ人単独の国家での維持は不可能であり、ユダヤ人は早晩「南アの白人」状態になるとの試算もある。さらに、燃料電池の開発や、中東以外の油田への依存率を上げることにより、長期的に考えると、アメリカがイスラエル、中東をともに見捨てる可能性が非常に高いのだ。すなわち、今後どう展開しようと、イスラエルに未来は無いことになる。
私が見るところ、彼らは、ローマに祖国を滅ぼされて以降、知性を磨き、各国にまたがるユダヤ人ネットワークを築くことで困難を克服し、現在の地位を築いてきたわけだが、戦術的には勝利(金融財産の獲得)しても、常に戦略的には、反ユダヤ感情の高まりから、各国を追い出され、放浪せざるをえないという敗北を繰り返してきた(不動産の放棄)という事実がある。
彼らが反ユダヤ感情の高まりを懸念するのは、そういう歴史があるからだ。問題は、次に彼らがアメリカ及びイスラエルにおいて敗北し、追い出されるときは、「世界を道連れに、核戦争を起こす=サムソン・オプション」ということだ。
このように、 国際的孤立を深め、将来に展望がもてない中で、イスラエルの安保政策に転換を迫る事態が起きつつある。イランによる核保有だ。
イスラエルは国土に縦深性が無く、先制攻撃に持ちこたえられないため、常に予防的攻撃を戦略の根幹においていた。次の攻撃はイランの核ミサイルである可能性があるため、まさしく、イスラエルを追い詰めていくと、「核の先制使用」しか、選択肢はなくなるのだ。周囲を陸続きで10億のイスラム教徒に取り囲まれ、核の照準を合わされたイスラエルが、孤立化による恐怖心と絶望から先制攻撃に出る可能性は非常に高い。これこそ黙示録の実現だ。かって、イラクの原子炉を先制攻撃した事実を忘れてはいけない。
1973年の戦争中にイスラエルは、核兵器の使用をちらつかせて、イスラエルに大量の軍事物資を空輸させるよう、ヘンリー・キッシンジャーとリチャード・ニクソン大統領に迫った。当時の駐米イスラエル大使シムチャ・ディニッツは、次のように語ったと言われている:「もしイスラエルへの大量物資の空輸が即座に開始されなければ、アメリカは約束を破ることになると私は理解しています…そうなれば我々はきわめて深刻な結論を出さねばならなくなるでしょう…」
このように、中東は間違いなく核戦争に向かって突き進みつつあり、イスラエル、もしくはイスラエルの代理人としてのアメリカの核使用を正当化する911を上回る大規模テロ(それは核テロであろう)が起きることを、私は心底恐れている。そして肝心なことは、核兵器そのものは既に大量に流出しており、インド-パキスタンを始め地域紛争で実際に使われる可能性は冷戦期よりはるかに高い。しかし、核使用には政治的リスクやタガがあり、その使用が自省され抑止されているだけなのだ。逆にいえば次の核兵器がどこかで使用されたら、そのタガが外れ、連鎖的に核使用が広がることは間違いない。米露ともに冷戦期の抑止戦略から、核の先制使用戦略に切り替えているのもこの文脈で理解すべきだ。
以上を要約すると、国際金融資本主導で建国されたイスラエルが、存在価値を失い、切られようとしたところ、そういう事態を避けようとして、イスラエル右派(ネオコン)は911以降アメリカを中東に関与させることに成功した。さらに、過去の中東戦争と異なっているのは、反イランのイラクが潰されたことにより、アラブ諸国とイスラム革命を起こし、周辺の君主国から警戒されていたシーア派のイランの協力関係が達成され、「イスラエル包囲網」が敷かれていることだ。イランは北朝鮮の友好国で、緊密な軍事協力を行っている。軍事専門家の間で、イランのミサイル「シャハブ3」が北朝鮮の「ノドン」の複製品であることは公然の秘密だ。ヒズボラの兵器はイランからもたらされた中国製だということでも分かるように、背後には中国がいる。
昨年十月二十六日、イランのアフマディネジャド大統領は「イスラエルは地図上から抹消されなければならない」と発言した。イスラエルとしては、イランまでを潰してしまわないとイスラエルの安全は保障できないため、核戦争の脅威は逆に高まっているといえる。このように、中東は、核戦争の瀬戸際であるが、日本ではそのような認識はされていない。日本政府は過去の中東戦争において、エネルギー政策の観点から、常にアラブよりの立場をとってきた。イランと日本における貿易高は97億ドルにまで達しており、イランにとって日本は主な貿易相手国となっている。日本に輸出している主なものとしては、原油が挙げられる。2004年、イランから640,000バレルの原油が日本に輸出された。これは日本が必要とする原油の、実に15パーセントを占めている。イランと日本の利害関係は実は、非常に強い。理由はイランの「アザデカン油田」。 詳しい埋蔵量は不明だが、おそらくガワール油田を越えて、世界最大の埋蔵量があるのではないかと言われている。ここの独占的開発・管理権をイラン政府から与えられているのが、日本。中国やアメリカとの激しい争奪の結果日本が勝ち取ったもの。日本が開発から独占的に支配する初めての「日の丸油田」で、ここが稼動しだすと、ここだけで日本の年間石油消費量の6%がまかなえる。
国連で、日本が制裁に参加すれば、イラン政府は日本の独占権を白紙に戻す、と言ってきている。白紙に戻されれば、一番喜ぶのは中国。世界最大の油田を捨てて、アメリカに従うか、対米関係を冷却させてでも油田を確保するか。まさに究極の選択だ。この板ばさみの中で割れてるのが今の日本政府。前者の選択をしたい小泉(首相官邸)と、どちらかと言えば後者の選択をしたい外務・経産省・国際協力銀行など。
結論からいうと、かってのIJPC同様に、利権を放棄し、負債は納税者がかぶるということだろう。国際情勢に無知でナイーブな日本人に、中東は手に負えない。おとなしく、メジャーから買えということだろう。アザデガン油田の開発を中止しても、中国が後を襲うだけで、イランには何の痛手にもならない。既に中国は、イランで具体的な動きを始めている。
<参考>
【テヘラン30日共同】
「劉振堂・駐イラン中国大使は30日までに、イランのメヘル通信に対し、同国での石油と天然ガスの開発をめぐる総額約1000億ドル(約11兆4000億円)の契約が数日中にも調印されるとの見通しを示した。「どの国もこの合意を阻むことはできない」とも述べ、核問題でイランに経済制裁を科そうとする米国などの動きをけん制した。
国連安全保障理事会の常任理事国である中国が対イラン制裁に反対する背景に、巨額のエネルギー権益があることがあらためて浮き彫りになった。
劉大使は「イランが石油を売ることを妨げるのなら、米国はわれわれに同じだけの石油を売ってくれるのか」と語り、イランに対して圧力を強める米国を痛烈に批判した。」
イランの背後には、資源パラノイアと化した中国が存在し、原油の見返りに提供された中国の技術でイランの核やミサイルが開発されている状況は、イスラエルのみならず、欧州までもその射程距離に収めるだろう。このような事態が明らかになれば、今後、「反中国」で、イスラエルと欧州諸国は同一歩調を取る可能性が高い。まさに、冷戦の再現だ。
中東はハートランドに近く、有史以来国境と民族が一致したためしがない、その意味で戦国時代だ。世界のエネルギーの主要供給源である中東は、今後、ますます核戦争リスクが高まり、そういった地域にエネルギーを依存するのは危険だ。日本は国を挙げた、燃料電池を核にした水素エネルギー開発に注力すべきだ。
<参考>
水素の効率的な貯蔵、運搬技術については、既に実用化されている。
http://www.j-energy.co.jp/et/lpg/fuel_battery/index.html
ジャパンエナジーでも今、北海道大学触媒化学研究センターの市川勝教授と共同で有機ハイドライドという燃料電池用液体燃料の研究を積極的に進めています。有機ハイドライドは、家庭用燃料電池などの定置用,車上搭載用,モバイル用の燃料電池に応用可能で、触媒を介することで二酸化炭素排出を伴わなず、容易に水素だけを取り出せる画期的な燃料電池用液体燃料です。水素を取り出したあとの液体は,再度リサイクルして使用できる点でも優れています。 家庭用燃料電池は早ければ、1~2年後には市販される予定。 低コスト化によって普及すれば、私たちの暮らしを、もっと便利に快適に変えていくに違いありません。
以上

コメント
石油は中国を渡して水素化インフラの充実に努めるべきです。
その実現のハードルはどうなんでしょうか。
Posted by esta at 2006年8月 9日 10:04
ハードルについては、コスト負担を誰がするかという点と、水素の供給減をどこに求めるかの2点だと思います。
コストについては、中東が戦乱に巻き込まれ、バレル100ドル突破すれば逆に水素エネルギーの競争力が出てきます。
水素の供給源はメタンやメタンハイドレーどあるいは家畜の糞なんかになるでしょう。
いずれにせよ、軍事コストやシーレーン保持コストをかけて中東に石油利権をもつのは不可能な選択になりつつあるので、早急な戦略と実行が必要です・・・
Posted by 江田島 at 2006年8月 9日 22:02
学生に2chで話題になっていると聞きまして参照しました。
http://www.iesu.co.jp/shinbun/2003/15-8-25.htm
地方において上記の簡易型プラントを設置すれば効率的です。
豪雪山岳地域では合理的ですよ。
Posted by 小松紘一 at 2006年8月10日 12:35
別海町とUAEのプロジェクトの
成功が重要な鍵です。
http://www.afforestech.com/n/gcc.html
Posted by 江田島 at 2006年8月10日 13:55
イスラエル右派の出身地はロシアが多いそうですが何か関係があるのでしょうか?
Posted by Henry at 2006年8月10日 20:26
ロシアや東欧のユダヤ人がどういう迫害を受け、アメリカやイスラエルへ逃れてきたかを知れば、彼らが先制攻撃論や右翼思想をもつこともわかります。ネオコンやイスラエル建国者はこれらの貧しい東欧ユダヤ人の末裔です。
興味があれば、以下をご覧ください・・・
http://inri.client.jp/hexagon/floorA4F_ha/a4fhb200.html
Posted by 江田島 at 2006年8月10日 23:35