水素エネルギーは状況をどう変えるのか

資源としての水素には分子状態のもの以外にも、原子状態で存在するものがある。これまでにニンゲンが得てきた知識によると、水素原子は単独では短時間しか存在することができないと思われていた。しかし、医療分野で活性水素の存在が知られるようになってきたことから、その事実を立証する必要に迫られている。天然水の中に活性水素が多く含まれているということは、飲用したあと体内の活性酸素が減っていると見られる変化のあったことから、原子状態の水素が存在するという仮説が支持されるようになってきたのだった。有毒な活性酸素に有益な活性水素が反応すると、活性酸素(一重項酸素)の毒性が消えて只の水になってしまうのである。このことから、生体機能の回復と健康の維持増進に活性水素が関与しているらしいという疑いが浮上してきたという訳だ。この活性水素の飲用を続けていると二週間程度で身体症状に変化が認められるようになったことから、ここ数年間で経過観察に関する研究の報告が纏められるようになってきた。活性水素に注目している医療分野は、主にガン、糖尿病などの臨床を担当する機関だった。それぞれの分野で共に顕著な改善が複数例報告されていたことから、人体と活性水素との関係について認識を改める機会が今後増えるようになるだろう。

活性水素とは、原子のままの状態で存在する水素のことである。原子核である陽子ひとつに、電子がひとつだけついているものが水素原子の構造である。同位体とよばれる水素も存在するのだが、その比率はコンマ以下で極めて低い。水素原子には中性子がついていない、とするのが一般に理解されている概念だといってよいだろう。この中性子をもたないものを軽水素と呼んで区別している。単に水素というときは、この軽水素のことを指している。元素は一つの電子軌道に二つの電子を得て安定するものであるところから、軽水素は足りない分の電子一つを求めて、不安定な状態から落ち着いた分子の状態へ移とうとする性質を直ちに発揮するのである。反応する相手を見つけて分子になろうとする性質を強くもつものを、フリーラジカルと呼ぶ。水素原子が単独で存在しないとされてきたのは、フリーラジカルとしての水素の性質が知識人の間に膾炙していたからであろう。水素原子がフリーラジカルの状態から安定した分子状態に遷移するのは、原子核同士で最外殻の電子軌道をシェアしあう状態をとったときである。電子軌道を共有する状態となった水素分子が互いに強く反発しあうようになることから、常圧下では希薄なガスになってしまっていたのである。水素分子を資源として大量に備蓄するためには、高圧化して圧縮しなければならない。水素資源を400気圧から800気圧にまで高めなければ走行距離が稼げなかったというのは、この水素分子となって新たに生じた遠ざけあう特異な性質のためだった。

電子軌道を共有する分子構造を成り立たせるための条件は、それぞれがもっている電子の属性が互いに異なっていなければならないということである。同じタイプの電子同士が単一の軌道を共有することは「絶対に」できない。(パウリの排他律) 量子力学では電子スピンの向きが上方向か下方向かという要素でその違いをみている。量子化学では磁気モーメントという概念で説明するのが一般的である。意味内容についてはどちらも同じことを言っている。双方において違いと呼べるものはない。電子スピン(磁気モーメント)の向きが同じ電子同士であるのなら、共有結合をとることはできない。これは物理法則なのである。このことから電子のもつ量子的な属性(量子数という要素)を統一してやれば、単原子だけで構成された水素資源を作ることができるということがみえてくる。電子のエネルギーを上げるより下げる方が容易で且つ確実なため、エネルギーを放出させて低い準位の電子状態に統一してやればよいということが見えてくるだろう。活性の高い電子からエネルギーを吐き出させてしまえば、繋がり合って分子化しようとしてもできない基底状態にある水素原子が大量に得られるということになるのだ。それを可能にするのが触媒だったということが、近年になって漸く理解されるようになってきたところなのである。

電気的な手法を用いて活性水素をつくるアルカリイオン整水機には、白金が触媒として使われている。天然水には白金と同様の触媒効果をもつミネラル成分が多く含まれている。天然水を採取した土地によって活性水素の量に差がでているのは、無機質が分布するその地域に特有の組成の違いが原因である。(ルルドの水が最も古くからよく知られているものだが、メキシコやドイツにも不思議な効能を示す水の存在が広く知られている。日本では九州日田の天然水がもつ効能が顕著で一般に浸透しているようである) 
電子のもっている量子としてのこの属性を触媒を用いて低い方に均してやれば、活性水素(水素原子)を大量に作り出すことができるということが判るだろう。これが電解水素とよばれる活性水素を作り出す装置で作った水が、病人の自然治癒力を引き出していた理由だったのである。この装置を開発した先生の説明によると、白金のコロイドに水素が原子状態で付着するからだということなのだが、電磁相互作用のはたらきを超越して電子が何らかの結合状態を取るということは考えられないことである。物理と化学の共通集合の部分を知らないと、反応の実態を正しく理解することは困難であろう。

活性水素ができるその原理を知っていれば、水素分子による膨張圧力を回避することができるということなのだ。液化水素の蒸発を抑える効果も引き出せる、ということになるだろう。水素を高圧化することなく且つ液化水素の蒸発を減らすことも可能であるのなら、水素エネルギー社会の実現を早める効果が引き出せるはずである。多くの技術的な急進展が近い将来あったとしても、決しておかしくはないのである。量子効果の応用法に気付けば、高圧ボンベを導入する必要はなくなってしまうのだ。高圧化するそもそもの理由は、分子状態の水素が互いに強く反発しあうという並々ならぬ属性をもっていたからであった。活性を保たせた水素原子のままの状態で水素資源を備蓄することができるのなら、大気圧のままで備蓄する形態をとることは可能でなければならない。

燃料電池自動車なら一回の充填で走行可能な距離を、高圧ボンベなしで、普通の乗用車並みのレベルにまで伸ばせるようになるということである。圧縮すれば走行距離は当然伸びることだろう。水素エンジン自動車でも燃料電池自動車と同様に、高圧水素から常圧水素へとシフトするのは必定である。液体水素での備蓄を目指すのなら、真空断熱と再冷凍システムにかかっていた負苛を減らす効果が引き出せる。液化した水素は電子スピンのエネルギーを放出してその向きを変えるとき、微小な熱を発生させていた。これが液化水素を気化させる熱源となっていることから、エネルギー状態を最低にしておけば、内的条件による気化を防いで再冷凍するための負担を軽減する効果が得られるのである。また液化水素の冷熱で誘導する高温超伝導応用技術が公開されるようになると、さまざまなテクノロジーを刺激して大輪の花を集中的に咲かせる百花繚乱の時代がやってくるようになるはずだ。この時、日本が世界を牽引して行くための「外的」条件が整うだろう。

水を資源とする究極のエネルギーシステムをつくれば、環境に負荷を与えない自給自足型の汎用モデルができるだろう。発電した後元の水に戻るだけだから、環境負荷は一切生じない。あらゆる水素化合物をエネルギー資源とすることは理論的に不可能なことではないが、水素を抜き去った後の最終処置をどうするかという課題が新たに生じてくるだろう。その処分方法を前もって検討しておかなければ、二酸化炭素の単純な増加が温暖化による気候の変動を生み出していた現実があるように、なんらかの非水素系化合物を生み出して未知の現象を惹起しないとも限らない。二酸化炭素が温暖化を促進する温室効果ガスだった、ということが一般に知られるようになったのは80年代になってからのことである。18世紀半ばの産業革命の頃から20世紀の終わる頃まで、人類が二酸化炭素濃度の上昇がもつ意味を理解することはできなかったのだ。
副作用のない持続再生が可能なエネルギー供給システムというのは、水を起源とする循環型の水素資源でなければ成り立たないのである。それを有効なものにする方法はたくさんある。古典的な電気分解法ではエネルギー収支がとれないため、経済合理性を引き出すことはできない。電気分解という方法を実用化するためには、ある特別の条件を満たさなければならない。その条件とは、超伝導という電気抵抗のない状態を安定的に維持する、ということである。

電気分解以外で水から水素を取り出す方法はたくさんある。確認されているものの中で最も小型のものなら、自動車に搭載することもできるような潜在能力をもつものが登場している。水素はガソリンと同じ内燃機関で燃やすことができる資源であるため、バイフューエルという方式を採用する自動車が数年前から市販されていた。先行しているこのBMWというメーカーでは、スイッチ一つで燃料種別を切り替えることができる水素・ガソリン併用型エンジン車の開発が進められていたのだった。そのバイフューエルタイプの自動車で高圧水素から液化水素へと備蓄方法を切り替えたモデルが、つい先月発表されたばかりである。バイフューエルという燃料を併用するための方式は、水素ステーションがまだ普及していないために編み出された暫定的な措置である。水素供給インフラが整うまでの間は、この経過モデルが水素エンジンによる移動体のトップランナーになっているだろう。だが、液化水素の応用技術が普及浸透するようになると、超伝導電気自動車の方がおそらくコスト面で有利になるはずである。日本は、将来をしっかりと見据えた慎重な投資を堅実に進めるべきであろう。

水素を資源とする近未来の移動体は、その動力源が内燃機関であろうと燃料電池であろうと、必ず純水を排出することになっている。水素燃料で走る移動体が登場すると、ヒートアイランド現象はなくなってしまうだろう。多くの移動体が散水して走りまわるようになるため、気化熱による冷却効果が日中安定して得られるようになるからである。その代わり、日本の夏では毎日のように夕立が戻ってくるようになるだろう。冬なら水のままタンクに備蓄しておくことによって、まとめて側溝などに捨てればよい。水を分解する装置が一般化すれば、燃料タンクには水を注入すれば運動エネルギーが取り出せるというモデルが登場するだろう。この段階になると二次生成した純水を循環させるモデルが登場しているはずである。燃料となる水を補給することなく長距離走行を可能にするのは、それほど難しい課題ではなさそうだ。そんなことを実用化するシーズは、既に発明されたものがニンゲンの手の上に乗っている。花を咲かせるかどうかは、同時代を生きる人類の心がけ次第だといえるだろう。

この小型水分解装置の動作原理は、熱化学反応というものである。熱と触媒があればいつでも水を分解することができるようになっている。反応速度は極めて速い。この方式なら水素分子の状態で資源を備蓄するまでもなく、水の状態のままで水素資源を取り出す装置へと発展させてゆくことができるだろう。600~700℃程度の熱源は必要だが、これは蓄電装置にある電力から取りだす工夫を導入すればよい。蓄電容量を多めにとっておけば、熱が不足して水分解に困るようなことはおきない。蓄熱材と組み合わせてやることで、電力消費の少ない水分解システムを構築することは充分に可能である。近在に工業炉をもつ工場があれば、その廃熱を有効利用することもできるだろう。不用になった熱を資源として水分解反応に応用するなら、より合理性の高い水素資源の創出が可能になるはずだ。

内燃機関の排熱は600℃程度である。この熱を水分解反応に取り込むことができるため、エンジンを始動させた後でなら水から水素を熱化学反応で連続的に抽出することは可能である。このモデルでは、燃料タンクには水が入っていればよい。二次生成するのも水であるところから、若干の工夫を加えることによって、閉鎖系のエネルギーモデルが自動車産業に登場する時代がやってくるものとみられる。大気を燃焼室内に取り込まなければ、窒素酸化物が生じるようなことはおきない。水には燃焼に必要な酸素が33%含まれている。大気中の酸素はおよそ21%なので、水分解した後の酸素を転用すれば燃焼効率を既存のエンジンより大幅に高くすることができるだろう。

臨界温度に達すると、水素と酸素とが同時に得られるようになるという装置である。反応容器内で再結合しないような配慮は必要だが、水素分子だけを先に取り出して燃料電池で発電を行うのなら、蓄熱で消費した分の電力を常に補えるシステムを組むことができるだろう。内燃機関でも同様のシステムを維持することは不可能ではない。水分解で同時生成した酸素の使い道は、いろいろなプランが検討されている。蓄電装置をエネルギーシステムに組み込むということは、直流の二次電源をもつということである。交流がゼロボルトである大地を目指して流れ下ってゆくのに対して、直流の二次電源ではプラスからでた電流は自身がもつマイナスの電極へと向かってゆく。負苛を発生させる電気製品のスイッチが入ると、そこで始めて電流が流れるような仕組みになっているので無駄な電流は生じない。これは交流の非接地系でも同じことなのだが、交流で発生する負苛変動は地下へ投棄する電流の方を見えないところで増やしていた。直流の二次電源とは決定的に異なった結果を、交流送電は生みだしていたのである。
エネルギー供給システムに蓄電装置というバッファ(緩衝装置)を組み込むということは、使った分だけを後でゆっくりと充電してやればよいということである。需要の減った時間帯で消費した分の電力を補充してやれば、翌朝からの需要に予め備えておくことができるようになるのである。

現在日本の石油備蓄残高は、海上で備蓄している分も含めてほぼ半年程度の需要を賄うレベルに達している。小型の水分解装置を住宅や企業などに導入することにより、石油を備蓄しておく必要性は大幅に減らせるはずである。水を分解するための熱を生み出す電力がバッファの中に用意されていれば、いつでも水素資源を水から取り出すことができるようになるからである。抽出した水素は燃料電池で電流となり、蓄電装置にできた充電するべき余地を埋めておくために使われる。小型の水分解装置の仕上げを急ぐことにより、所定の電流を随時取り出すことが可能な状態を需要地で実現することができるのだ。このようなまだ埋れている研究開発案件の仕上げを早めてやることで、炭素資源を輸入していた費用の総額である五兆円という金額の殆どが、日本のエネルギー産業のバランスシートから毎年消してしまえるようになるのである。

不要になった炭素資源を購入するための決済資金を善用するなら、大きな経済発展を導く飛躍のチャンスをこの国の中に作り出せるようになる。日本にはこのとき、世界を牽引してゆくという大きな使命が与えられることだろう。但し、航空燃料と高分子化学の分野では、原油の輸入は今後も末永く残されるはずである。航空機では水素の燃焼速度が極めて速いため、消費効率も非常に高くなっている。スペースシャトルの補助燃料タンクが異様に大きかったのは、液体水素と液体酸素を大量に消費して巨大な推力を生み出すロケットエンジンだったからである。航空機ならロケットのような大きな推力は必要がない。水素という燃料は航空機の運行にとって、決して経済効率のよい資源であるとはいえないのである。大量の水素燃料を積み込むスペースを客席に充てるなら、その分だけ収益を多くすることができるのだ。燃料補給の間隔を長く取れるようになっていれば長距離飛行ができ、運用効率はその分改善されたものになるだろう。


エネルギー備蓄を分散状態で充実させておくというのは、決して不可能なことではない。総合力を引き出すことにより、災害時であっても日常生活を変える必要のない住宅用エネルギー供給システムを提供することは可能である。独立分散型のエネルギー供給システムを搭載した免震構造住宅を普及させることにより、大地震に遭遇しても避難場所へ移動するという事態を回避すればよいことだ。住宅に太陽光発電システムが搭載されていれば、水素燃料がなくてもある程度の充電は可能である。自然エネルギー(太陽電池、風力、マイクロ水力)などと、燃料電池を併用するなら最適な電源構成となるだろう。蓄電設備を導入するだけで、無駄となっていたエネルギー消費を応分に減らす効果が得られるからである。高温超伝導応用技術の実用化が進むと、数年以内に水を資源とするエネルギー供給システムは普及段階を迎えるようになるだろう。この技術は既に実用化の直前のところまできている。開発の仕上げを急ぐことにより、短期間で普及機をリリースすることができるようになるはずだ。この段階に至れば、環境の回復と経済の再生を同時に進めることは容易であろう。超伝導応用技術の仕上がり方次第という話ではあるのだが、太陽電池がそこに設置されているというだけで、自然エネルギー単独でも十分な住宅用の電力備蓄を実現することができるようになっているはずである。