ドル資本は機軸通貨に固有のダイナミズムを活用して、貧困化する国を生み出すようになっている。現在の枠組みにおけるアメリカの繁栄というのは、犠牲となるものを常に必要とする。これからも栄え続けようとするアメリカは、多くの国に更なる犠牲を求めることによって、その立場を堅持してゆくことになるだろう。アメリカにとってドルは売るものであって、本来自らが買うようなものではなかった。外貨に投資していた資本を回収するときにドルが必要となったため、為替市場で元の通貨に買い戻していただけのことだった。ドル資本を操っていた一群が決算を行うには、一旦ドルに戻して利益を確定しなければならない。その時にドル高になり過ぎないよう適度な交換レートを維持しながら、機軸通貨としてのドルを安定裡に還流させているのである。(現在起きている円安状態は、これとは別の理由で抵抗線を一時的に突破したもので、日銀の利上げまたはイラクへの増派が終われば反作用へと転じるだろうと思われる)
アメリカのローカル通貨であるドルは、同時に機軸通貨でもあるという特異な性質をもっている。外国の需要に応じて売り渡したドルは、最終的にアメリカへと還って来るような仕組みになっていた。アメリカが為替市場でドルを調達しているのは、利益をドルで計上しなければ決算ができなくなっていたからである。その時に為替差益が乗せられるようになっていれば、行きと帰りで二度おいしい利益がドルに添加されるようになっていた。ドルを調達する段階では一時的なドル高になるのだが、その勾配を利用した円買いをその後実施すれば、資本の往復で差益をそれぞれ上乗せすることができるようになっている。
ドル売りで安くしておいた機軸通貨を高くなっていた外貨で買い戻すなら、ドルの量は帰路で増加していることになる。その前にはFRBによる政策金利の引き上げという段階があり、金利を目当てにしたドル預金が増えるようになっていた。ドル高を誘導するには金利の引き上げと、ドル資本の引き揚げという二系統の手段が用意されている。これらの方法を使い分けることによって、外貨への投資(投機)が随時実行できるようになっていたのである。多くの国が、必要なものを買うために自国の通貨を売ってドルを買っている。ドルの買い手が世界中にたくさんあったからこそ、遠心力というものがドルという機軸通貨には与えられていたのだった。ローカル通貨の売り手でもあった世界に散在するドルの買い手というグループは、アメリカに富を集積するという求心力を生み出していたのだった。この通貨メカニズムというものがアメリカに富を集め、軍事費を増強して国際社会に緊張を与えていたのである。アメリカの力による庇護が必要だと世界に思わせていたものは、ドルを買わざるを得なかったアメリカ以外の国だった。
勝者は資本が決めるもの
ドルを売る立場の国であるアメリカには、発行経費を負担するだけで外貨とその国に固有の資産とが「勝手に」やってくるようになっていた。この違いが、繁栄と貧困を同時に生み出す原因になっている。そのメカニズムについて調査してきたことを、これまで反復して報告してきたところである。資本を集約する立場の国であるアメリカは、その優位性を利用して軍隊を世界中に展開する費用に充てている。ドルを買って自国の資本をアメリカに提供している国では、ドルのもつメカニズムの実態を何一つ知らされていない。巧妙に隠されていたからである。経済格差が温存されたままの状態が続いているのは、その所為だったのだ。世界各国はひたすらドルを買い続けることで、アメリカを結果として支援してきたのである。軍事的な軋轢が高まる一方という展開になっていたのは、この経緯を知ればみえていたことである。通貨メカニズムの機能を見ることができていたら、アメリカと交渉する余地の存在に世界は気づいていただろう。
この通貨が生むダイナミズムを承知していると思われる国は、残念ながら未だ一つとしてでていない。反米国家でさえドルが果していた機能を指摘したことがないのだ。問題を理解していれば折衝の道具として早い段階で使うことができていただろう。ドル資本の流入で国が貧しくなったという因果の表層に気づいた国が、最近になって漸く目立つようになってきたところなのだ。通貨メカニズムの生み出した弊害を世界が正しく理解したら、一斉に反米国家になってしまうのではなかろうか。既存の反米国家は状況証拠だけでアメリカに注意を促そうとしたために、論理よりも感情で対応しようとする道を選択している。その態度が説得力に欠けたものになっていたため、訴えるべきことがらを却って伝わらなくさせてしまったようである。
ベネズエラ以外の反米国家とは、ドルが生み出した貧困を自らの結果で傍証している国のことである。(ベネズエラは有数の産油国で、原油高の恩恵を受けて潤っている。ドルの優位性が見える立場にあったことから、問題の所在に気が着いたもののように思われる) ドルがなければ国際間の決済ができないため、もたざる国ではやむを得ずドルを買って必需品を手に入れてきたのだった。その行為が劣悪な条件を甘受するという意味であるということを、先進諸国は今以て知らされていない。ドルとの通貨交換を円滑に行ってきたことで、国際経済を共に進化させてきたという関係ができていたからだった。市場の拡大があったからこそ、ドル本位制と呼ぶべき現在の枠組みが誕生したのである。ドル・ショック後の市場経済は計画経済を相対的に矮小化させ、ソ連の資本調達能力に限界を与えたのだった。市場規模が相対化されたことによって流動性の規模に差が生じ、米ソの軍縮合意をその後成立させた遠因になっている。ソ連の共産主義体制が自己崩壊していったのは、軍縮交渉が終わった後すぐのことだった。
中国の共産主義体制が生き残ったというのは、経済特区という市場経済の導入実験が奏功した結果である。共産主義体制でありながら、市場経済を導入するという一国両制という仕組みを鄧小平は考案していた。90年代の初めは、市場経済で国際社会が統一された時代となった。ドル経済圏が急速に広がったため、93年から二期続いたクリントン政権では、リセッションから脱して財政黒字が溜まるようになっていた。90年には先代のブッシュが湾岸戦争を開始し、クエートをイラクから解放した。この伏線があったために、アメリカはその後イラクという国に条件付けられてしまったのだった。2003年の三月には国連を押し切って、イラクに米軍を強引に侵攻させている。だが、大量破壊兵器という根拠が偽りであったことから、テロリストの側に大義を与えることになっていったのだ。イラクを相手としたニ度の戦争は、いずれもブッシュという名の家系からでた大統領父子によって引き起こされている。
ドルと政治の相関関係
計画経済圏が消滅した結果、ドル経済圏が急速に拡大していった。市場が急拡大した結果ドルのもつダイナミズムが膨張し、クリントン政権では大幅な黒字を計上してブッシュ政権にその成果を引き継いでいる。2001年には同時多発テロがおき、ブッシュ政権はテロリストを追い詰めて翌年にはアフガニスタンを解放している。その直後からイラクの大量破壊兵器を理由とした戦略行動を展開し、未確認情報を根拠とした攻勢に転じて当時イラク大統領だったフセインを逮捕している。第二次大戦後の日本の民主化に倣ってイラクを民主化してアメリカに帰順させようとしたのだったが、今のところ内戦状態を煽って分断国家になろうとする道を歩んでいる。イラクでの米軍は大儀なき戦いを強いられ、戦意は低下して戦死者の数だけが徒に増えていったのである。テロリストには聖戦という名分が与えられ、士気は高揚して米軍をイラク領内に膠着させるという結果を導いた。ブッシュ政権はクリントン時代に積み上げた黒字をアフガニスタンとイラクで使い切ってしまい、足りない分の戦費調達に腐心する立場へと立たされている。ドル資本の跳梁跋扈は、その頃から際立つようになっていったように思われる。日本では、外資の導入を政策として掲げる内閣さえ登場するようになっていた。
共和党政権は世界中からドルという通貨が集めてきた富を、イラクで使い果たしてしまったのだった。機軸通貨をもっているアメリカをさえ経済的に逼迫させてしまうのが、現代の戦争なのである。アメリカが衰えたとしても、他の国がそれに取って代わることはできない。どの国の通貨であったとしても、ドルのような求心力を発揮することは不可能だからである。資本の力がなければ、戦争を継続することはできない。ドルに力を与えているIMF体制が、アメリカに資本を集約させてきたのである。中国やロシアがどんなに力をつけたとしても、アメリカのような国になることはできない。その国の通貨を欲しがらせる根拠がなければ、どの国であったとしても指導的な役割を果すことは不可能なのだ。このことはアメリカが温和な国になれば、世界中が繁栄するということを示唆している。軍事支出がなくなるというだけで、その国の経済は成長を遂げることができるようになるのである。核を含む軍拡基調になっているこの現実は、アメリカに資本が集まってきたことによって引き起こされたものだった。
繁栄は犠牲を前提とする
アメリカ以外の国は、エネルギー資源などの必需品を買うために自国通貨を売り渡して、汎用性のあるドルに換えなければならない立場である。アメリカはその外貨を受け取ってドルを供給することにより、あらゆる国で通用する機軸通貨としての機能をドルに与えてきたのだった。ドルを譲渡する国が栄えてドルを買った国が衰えていったのは、その国に固有の資産をドル資本へと売り渡す結果になっていたからである。ドルは世界中で流通しているため、需要が減るというだけでたちまち供給過剰になるという特徴をもっている。通貨の供給量が増えすぎると、貨幣価値は余剰となった流動性が低下させてしまうのだ。このインフレ状態となることを予め回避するために、FRBは政策金利を引き上げて余ったドルを逐次速やかに回収してきたのだった。その結果金利を高め続けたことによって、FRBは自らの選択肢を狭めるという立場に陥っている。
金融緩和をしたくても、ドルの過剰供給が禍いとなる可能性がある以上慎重にならざるを得ないだろう。この背景を知っていると、日銀の利上げ観測にある種のダイナミズムの影響のでていたことが見えてくる。日本経済の実態は率先して利上げする状況にはない。機動的な利上げはいつでもできるようになっている。先走って利上げしようとするその意図に、中央銀行間にあるとおぼしき何らかのダイナミズムを感じざるを得ない。ドル経済圏を形成する中枢であるG7では、中央銀行相互の間合いで金融政策の動向判断を行っている。利上げ判断などは、経済実態が明瞭になった時点で行ったとしても決して遅過ぎるということはない。インフレの懸念がない低金利の状態で政策金利を率先して引き上げるという必然性は、本来あるはずのない話なのである。根強いインフレ期待があるのは事実だが、タイミングを無視した安易な利上げは状況を悪化させることにしかならない。国内経済の充実を図った上で、効果を見ながら利上げするのなら話はわかる。先に利上げありきという専行行為は、自主性に欠けていることを自ら証明するメッセージになっている。
ドルを発行するという権利は、アメリカだけがもっている特権なのだ。アメリカが供給したドルが市場で余れば、回収するための方法はたくさんある。ドルを回収し過ぎたとしても、増刷しさえすればアメリカの収入は却って増えることになる。いくらでもドルを供給することができるのが、アメリカという国なのである。市場で余ったドルの使い道は決まっている。金利の引き上げでドル高になると、国内に滞留しているドル建ての債権が流動化し易くなる。このため、アメリカにとっては資本の流出という危険な状況が生まれるのである。その対策としてドル安状態を維持しておくことを目的にしたドル売りという行為が、機動的に行われるようになっている。ドルが高くそして円が安くなり過ぎないように、ファンドを窓口とした「適切な」為替制御が行われている。経済分野では特別に有利な立場にあるというのが、ドルの発行権をもつアメリカという国だったのである。
アメリカの戦略
ドルの過剰流動性を回収するための手段として、政策金利を引き上げるというのが一般的に行われてきた方法であった。高くなった金利を目当てに戻ってきたドルは、ファンドなどのドル資本に再投資させるための原資として利用することができる。このドルで日本円を買わせれば、即ち円高という状態が実現する。110円を超える円高を日銀が嫌うため、余ったドルを回収して市場に再投入するだけで米国債が売れるようになっている。ドル資本はこの時、日本に固有だった資産をいくらでも手に入れることができる。日銀を為替市場に介入させてドルを買わせれば、FRBが利上げして還流させたドルの行き先は自動的に決まるのだ。それが米国債だったのである。ドルが足りなくなったら、印刷して追加発行すればよい。需要がある限り、ドルの発行は際限なく行うことができるのである。余ったドルの引き取り手を作るのは、とても簡単なことなのだ。回収したドルをファンドなどに再利用させることによって、日本資産と米国債の売却益とがセットでアメリカへとやってくるようになっている。これほどおいしい話は外にないだろう。
だが、FRBは政策金利を上げ過ぎてしまったのだった。金利差の広がった国がでてきたため、その国にドル資本が投資できる環境が失われようとしている。そこでドル売りを仕掛ける対象とした国の金利を、先に上げさせておくという必要が生じていたのである。日銀に利上げするという行為を先行させておけば、日米間にある金利差を圧縮する効果が得られる。日銀がFRBの意図を隠して国内景気の動向判断だけを根拠にした利上げを実施するなら、アメリカの術中に嵌まろうとする行為だと言わなければならない。日本政府には、このバックグラウンドというものに感心がなかったようである。そこで利上げに慎重になるというとても常識的な判断が生じるようになっていた。今回FRBが望んでいる利上げを行おうとした三名の日銀理事の態度からは、この問題に潜む本質的な部分を見ることができそうだ。財務相が利上げに賛同していたというのは、G7に直接関与してきた財務官僚がFRBの意向をよく承知していたからだろうと思われる。
日銀が買ったドルは、殆どが米国債として運用されている。ドル資産全体に占める長期債の割合は約90%である。ドルの現預金が5%、金塊が5%という構成になっている。日本がもっているドル資産を総称して、外貨準備高という。その合計は120円換算で100兆円を超えている。日本は90兆円の長期債と5兆円ずつのその他ドル資産をもっているということができるだろう。問題は、このドル資産が取り崩せないものだったという点にある。円高対策で買ったドル資産を円に戻して回収しようとすると、更なる円高の更新が発生してしまうのである。外貨準備高というのは、回収することができないドル資産のことを意味していたのだった。取り戻すことができない資産であるのなら、正しくは不良債権と呼ばなければならない。アメリカはドルを日本に売りつけさえすれば、過剰流動性を消滅させて日本の資産をファンドに与えるだけでなく、長期債まで買わせるという仕組みを保持しているのである。償還を求められない債務は、それがどんなに増えたとしてもアメリカの脅威になることはない。
ドル経済圏のメカニズム
ドルという通貨を支援している石油に付随する特別の価値が、炭素エネルギーを消費して成長する経済体制を拡大させてきたのである。この枠組みの中では、アメリカが失うものは何もない。ドルを印刷して渡すだけのことなのだから、外貨収入がアメリカに溜まる一方という展開になるのは当然のことだった。だが、ドルを買わなければエネルギー資源を入手できない国では、国民の労働資産をドルに換えなければ国が成り立たないのである。アメリカにはリスクがなく、ドル需要国には売り渡した自国通貨による外資からの買収というリスクが発生するようになっていた。ドルを買うという行為は、自らの資産をドル資本に売り渡すという意味なのだ。ドル資本がやってくると国が貧しくなるという現実は、反米国家へと転じる国を増やす傾向を既に顕在化させている。イラクでの駐留経費が足りなくなったことが、市場で余ったドルを使って特定の国に売りつけるという行為を増長させるようになっていたのである。米国債を買わせるという戦術をドル資本に展開させているのは、米軍を増派するための追加予算が必要になったからである。アメリカがイラクに貼り付いたままで経済が維持されていたというのは、ドルを買い続けてアメリカに資本を集約させている国が世界中にあったからこそできたことなのだった。
アメリカには紙幣を印刷する経費を負担するだけで、世界中から富が続々と集まってくるようになっていた。このドルが生み出していた貧困の背景を知れば、アメリカ以外の国はすべて反米国家になってしまうだろう。このからくりが見えていなかったからこそ温暖化が進んで少しも改まらなかったのだし、京都議定書からアメリカが一方的に離脱することを許してしまったのだった。ドルが生み出していた問題の本質がみえていたのなら、有効な対策というものは即座にでてきていなければならない。イラクでの駐留が予想を遥かに超えて長引いてしまったため、アメリカは強引にドルを売りつけて戦費を調達しようとするまでになっている。この展開は反米国家の簇生へと繋がってゆくことになりそうだ。
【反米国家がこのところ急に目立つようになったのは、戦端を開くことを急いだブッシュ政権がイラク戦争をコントロールできなくしてしまったからだった。日本政府には、その現実がまったく見えていない。内閣が外資を呼び込むという過ちを行って平然としているのは、認識能力の欠如を物語るものである。国民の困窮はその結果であった。呼び込んだ外資に利潤を持ち去らせるまま放置しているということが、国内経済の状況を悪化させていたのである。外資が日本にい続けたくなるような環境を作ってやれば、この国の経済は強い活力と高い経済成長をすぐに取り戻すようになるだろう。そのためには、アメリカに付随して活動するドル資本に対抗するための同様の組織を、国内に作っておかなければならない。通貨戦略の面で相互に釣り合いが取れるようになると、ドル資本によって誘導された結果である現状を脱して、状況は劇的に変わるようになるだろう】
敵とは何のことか
京都議定書が温暖化を止められずにいたというのは、要するに問題の所在が那辺にあったのかをつきとめていなかったからである。不具合の箇所を特定することができたら、問題の意味は見えてこなければならない。改善させるための方法などは、その時点ですぐに分かっていたことだった。認識は行動を生む原動力だ。知っていて放置していると、健康が損なわれてだんだん元気がなくなっていく。精神のパワーが下がりだすと、ますます行動力が失われてしまうのである。日本は、問題そのものが未だ見えていないという状態にある。有効な対策を講じることができていなかったのは、その証拠だと言える。アメリカの行っている通貨戦略の意味を知った後の日本は、富の漏出を抑えようとするだろう。日米同盟は、日本をアメリカに従属させておくためのものになっている。日本に損害を加えていたのはアメリカであった、ということがもうそろそろ見えてきてよい頃だ。その他の国がどんなに敵対的であったとしても、アメリカがやってきたことに比べたら、その実害においては節度あるものだったのだ。
中国の反日的な姿勢は、靖国参拝という行為を敢えて実行した人物がいたことから引き起こされたことである。あれは、まさしく嫌がらせだといってもよい行為であった。国家の首長がその立場で行うべきものではなかった。相手の嫌がることをやった国が反撃を食らうのは、情として了解可能なことである。原因がいなくなったら問題そのものが消えてしまった、という事実に国民は謙虚に接するべきだろう。朝鮮民族は、侵略を行ったという歴史をもたない。先制攻撃する方法を意味として知らないのだ。侵略されてばかりいた国だったのだから、先に攻撃を開始するという行動に経験知というものが欠けている。このような歴史的な経緯の存在が、北朝鮮に優れた外交交渉能力を与えたようである。その対応方法には、比類のないほど柔軟で強い素地によって裏打ちがなされている。
北朝鮮を強気に見せかけているものは、弱さを承知しているが故の戦術であるに相違ない。経済力からみても、そして人口比からみても、北朝鮮にはどうみたところで勝ち目というものはないだろう。核燃料にしてもごく微量のものしかもっていないのである。だからこそ何をするか分からないという不気味さを、繰り返し演出しておかなければならなかったのである。その小さな国が、アメリカと対等な立場で交渉を行っている。小さな国であってもできるような対等な交渉ごとを、遥かに力のある日本の指導者層が延々と見逃してきたのである。寧ろアメリカ一辺倒というありさまだったということは、誰にでも思い至ることだろう。日本が自立することができていなかったということは、結果において明らかなのだ。指導者のもつ認識次第で、日本はアメリカとも北朝鮮とも充分に渡り合える真に対等な国になっていたはずである。もしそうなっていたならば、六カ国協議というものは生まれてはいなかった。
日本は自立した国になれ
ミサイルに核弾頭を実装するためには、より大規模な核実験の成功例を積み上げておかなければならない。北朝鮮が行った核実験の実態をみると、ごく小規模な爆発を一度だけ行ったに過ぎない。言わば、予備実験みたいなものである。ここから見えてくるものを知れば、北のスタンスが読み取れるはずである。金正日にとって、日本に積みあがっている核燃料の方が余程脅威になっていたはずである。資金も技術も人材も豊富な日本がその気になれば、短期間で核保有国になる可能性は充分に高かった。東アジアの国々はそのような疑いの眼で日本を見ている。何故なら、憲法さえ自在に解釈してしまう国がその日本だったからである。日本政府の特徴的な憲法解釈は、その具体的な脅威の証拠だったのである。警察予備隊創設以来近隣諸国になにを考えているか分からない危険な国、という印象を与え続けてきたのである。北朝鮮が先に核保有国になってしまえば、日本がその後を追うのは困難になる。国際社会が核拡散をこれ以上認めるはずがなかったからである。
北朝鮮が追加の核実験を行えば、核燃料の備蓄はすぐに底をついてしまうだろう。補充が済んでいるという情報がリークされているが、現実的な観測だとはいえない。核燃料の備蓄を取り崩して敢えて核実験を強行するのであれば、実戦配備するためのリスクは小さくなっていなければならない。核あるが故に、米朝の二国間交渉はかろうじて対等な関係性が維持されている。アメリカにとって日本が北の核によって脅かされている、という状況こそが最大のメリットになっていることを想起するべきだ。日本を攻撃する敵が身近にいると思いこませておきさえすれば、米政権は日本政府を頤使することができるのである。日米同盟が必要だと思い込ませておきさえすれば、日本はアメリカに対する富の供給機関にとどめておくことができるのだ。日本がアメリカの属国状態になってしまったというのは、日米関係を対等なものから貶めた指導者達がこの国に大勢いたからなのである。
日本の役割
日本はこれから、問題点を指摘してアメリカと対等な関係で対峙しなければならない。日本が次世代のリーダーとなるためには、不具合を強要した原因者に対して毅然たる態度をとってみせることがなにより重要なことなのだ。IMF体制が生み出した諸問題を逐一指摘し、その対策と効果とを実際に示してやれば世界は日本についてくるのである。水素エネルギーのノウハウを日本がもつということが、その時真の価値を発揮するだろう。日本がリーダーシップを発揮できなければ、水素エネルギーをもっていても状況を変える力に変えることはできない。水色革命を推進する覚悟を国民個々がもつならば、世界の平和を誘導することがこの国からできるようになるだろう。
攻撃しようとする敵が存在していなければ、防衛するための一切の行為には意味がない。単一の市場経済になっている国際関係は、敵を作ったほうが負けるのだ。合法的な経済活動による収益源が消えてしまったなら、国家の繁栄は見込めない。非合法な方法が招くことになるその結果とは、イラクにおけるアメリカの状態をみれば歴然としている。国を繁栄させるものは、経済合理性ただ一つだけなのだ。どれほど軍事力をもっていても、そして強大な資本力をもっていたとしても、理のある相手には勝つことができないのである。力は決定因子ではない。力で何でも解決してきたアメリカが最後に陥った場所が、イラクという国であった。世界は、アメリカの得たこの教訓に学ばなければならない。
水色革命は日本をリーダーに変える
日本がいつまでも自立しようとしなかったのは、アメリカの核の傘というものが必要だと思いこまされていたからである。更にエネルギー資源を何一つ持っていないという不安が、この国を蔽っていたからだった。この二点がほぼ同時に消えてなくなったとしたら、日本の行く手を阻むものはなにもない。言いたいことも言えずに唯々諾々としてアメリカに付き従ってきた政府は、内容も外形もともに大きく変わった立場を手に入れることだろう。日本に必要だったものは、水素資源を確保して独自の哲学に基づく指導態勢を貫くということに尽きるのだ。コアになるものがきちんと立っていれば、肉付けは自在である。アメリカは日本の意志の前に、恭順の態度を示して協力を惜しまなくなるだろう。強いものを正しく評価するという点では、アメリカは極めて率直な態度を示す国なのだ。そうなったら、真に良好な日米関係というものが築けるようになるだろう。
水色革命は、日本にエネルギー資源を作りだす方法を与え、軍拡の根本原因であったドル本位制に引導を渡す役割を果すよう国民に求めるだろう。平和本位制への移行は日本が水色革命を実現した後で、はじめて可能な状態になるのである。重要な役目を果すのは、次代のリーダーとなるものの責務であろう。日本が周辺諸国から信頼されていなかったのは、憲法すら一度も遵守したことがなかったからである。法律を勝手に解釈してしまうような剣呑な国を、どの国家の国民が安んじて信頼するというのだろうか。日本は自らの姿を見ずに国際社会に向かって、指導的役割を担うよう勝手に庶幾していたのである。常任理事国になろうとしたのは、その強い思いが行わせたものだった。憲法を当時の日本に与えたアメリカでは、共和党政権によって派遣された米軍がイラクから撤収できなくなっている。そこで、ドルのもつ力を使って資金を生み出すための呪文を、今、必至の形相で唱えているところなのである。日本はアメリカにとって、単に外堀という程度の意味しかもっていない国なのだ。アメリカが日本を守っているのではなく、日本がアメリカの盾になっているという現実を国民は知るべきだ。
日本の自立と恒久平和
アメリカが日本を守ってくれる国であったのなら、ドルを勝手に売りつけてくるような行為をとるはずがないだろう。日本がアメリカの防波堤になっていたからこそ、この国を足がかりにして東アジア全域に米軍を展開することができているのである。為政者と国民はアメリカから敵という名の幻を見せられていただけだったのだ。それはアメリカとって都合のよい敵であって、日本が敵視すべき存在ではなかったのである。日本が属国になっていたとする根拠は、ここにあったのだ。日本人と政府とはアメリカに見せられた幻の敵を、すっかり実在するものとして信じ込んでしまったのだった。(ソ連が崩壊した段階で対立の脅威となっていたものは消滅していたのである。存在しない脅威を敵と呼ぶことはできない。当たり前の判断さえできなくなっていたのが日本という国だったのだ)
55年体制とは、朝鮮戦争で防衛線が必要になったアメリカによって作られた防人の代表からなる幻視集団のことだった。それ以来与党勢力はアメリカのための日本という国をひたすら保守し、営々と恒産に勤しんできたのである。これが、自立しようとしない国を作ってきたそもそもの原因になっていた。今ではすっかり骨抜き状態にされ、諌めるべきところを進んで過ちに加担する目的でイラクへの派兵を行っていたのである。それでも飽き足らず、米軍再編の移転費用を全額負担するために防衛庁長官を率先して渡米させていたほどであった。やるべきことが逆になっているということにさえ気づかない、というアリサマは当時世界の笑いものになっていたものだ。この姿が対岸からどのような格好に見えていたのかということを、今なら振り返って知ることができるだろう。
「防衛とエネルギー」それぞれの安全保障政策が意味をもたなくなれば、アメリカに日本が依存している理由は消えてしまう。今まではアメリカだけが友好国であったのだが、これからは総ての国を友好国と呼ぶべきだ。敵対していては何も始まらない。自国の発展のために、余ったドルを売りつけてくるような国に忠誠を尽くす義理はないだろう。日本に固有の資産であった土地と企業、金融機関などを買収させたうえ、100兆円規模のドル建ての長期債まで買わせて支援することをアメリカは強要していたのである。このバックグラウンドを知らなかった日本政府は、アメリカの戦略を真に受けて外資の導入を政策として推進してしまったのだった。長い経済成長が続いていたにもかかわらず国民に還元されるものがなかったというのは、外資が獲得した利潤の総てをアメリカへと持ち去らせていたからだ。少子化とワーキングプアの増加は、起きるべくしておきている。国民の困窮が、アメリカとドル資本を潤しているということを見落としてはならない。その責任がこの国の政府とその政策にあったということを国民が知ったとき、水色革命は粛々として始まるだろう。
