電力会社は負苛平準化という深刻な課題をかかえて、ながいこと苦しんでいる。おきている事態の内容を知ると、問題のもつ意味の深刻さが分かるだろう。課題の解決に十社こぞって腐心している、というのが現状である。有効解が見出せないのは、問題の本質を見ていないからだと思われる。電力需要の変化を示す負苛(電力消費)にデイベースで生じている落差が、無視できないほどまでに大きくなっているからである。時は原発を導入した頃へと遡る。遠距離送電が必要になったことが、送電を高圧化することになったそもそもの発端だった。ここ数年の「年」負荷率の推移をみると、ほぼ56%台に落ち着いている。今後も当分大きな変化はないとエネ庁では観測している。年負苛率とは、年間で最も高い電力需要の日を挟む前後三日間の平均を分母とし、その他の電力需要全体の加重平均を分子として導いた割合の数値である。(北海道では冬にピークがきている)
要素化の不備
電力需要の方が供給電力量を上回ってしまうようになると、その送電系統に属する一部の電圧が急激に低下することがある。電圧が低下すると電力供給が不安定になるため、当該エリアでは自動的に広域停電がおきるようになっている。発電所では供給する電力量を充分確保しておくために、ピークである盛夏に遊休設備を稼動させて需要の急増に備えてきたのだった。甲子園の高校野球と気温の上昇が重なる八月初旬頃に、冷房と家電製品の電力需要が急増するという傾向があるようだ。電力会社では需要の急増が供給の限界に達しないよう、設備の増強と経費の抑制に配慮しているのである。数年前には、東電管内の原発が不祥事の露見ですべて停止していたことがあった。気温が上がりだす六月下旬にさしかかる頃から、大電力を消費している工場の休日を増やすよう要請してようやくことなきを得たことがある。
電力需要の動向を判断することは、随時おこなわれている。30分単位で電力の需給ギャップを点検し、需要の増減に電力会社は速やかに対応しようとしている。(過剰供給が発生していても、最大30分間は無駄な電力供給が続いているということ) 多くの発電機が連携して大電力を生み出しているのだから、その内の一台の発電機を送電系統から解列したところで、燃焼炉が稼動を続けていたのだったら二酸化炭素を減らすことはできなくて当然である。このポイントを見落としているからこそ、頑張って省エネすれば温暖化を止められると思い込んでしまったのだった。考慮すべき要素を除外したまま平然としていたのだから、その誤りにいつまでたっても誰一人気づかないのである。温暖化対策の実効があがらなかったのは、交流送電の成り立ちを国民が知らされていなかったからなのだ。
負苛の違い
日負苛とは、一日を単位とした電力需要の変化するその様子のことである。通常曲線で表されるが、山と谷は一つずつしかできない。日中の最大電力需要を100とした場合、深夜の需要は50%程度にまで低下している。電力会社の発電システムは常に発電を行っているベース電源と、需要に応じて供給量を制御するための調整用ミドル電源、そして最大需要に対応するためのピーク電源の三種類が用意されている。ベース電源とは原子力、石炭火力、水力の半分程度を含み24時間365日常時運転を行っている発電所のことである。ミドル電源とはLNG火力が主電源とされているが、東電には石炭火力が少ないため一概に調整用電源だけだと断じることはできない。ピーク電源とは石油火力のことである。発電コストが最も高い石油火力は、できるだけ使わない方針で運営されている。二酸化炭素を最も多く吐き出しているのは、石炭火力である。次に石油火力、最も少ないのがLNG火力という順になっている。
石炭火力がベース電源になっているため、電力分野で生み出している二酸化炭素を減らすことが困難になっていたのだった。すべての火力発電所をLNG火力に切り替えるなら、ある程度のCO2削減効果を生み出せるはずである。発電所の建設コストが新たにかかってくるため、電力料金にも影響が及ぶことになる。京都議定書の達成期日までにはまず間に合わないだろう。石炭からLNGに切り替えるという計画は、業界内部でも議案として上程されていないようである。LNG火力へとシフトするためのその意志決定権は、電力会社の経営陣とその集合体である電事連にある。決断が早ければ、今頃は石炭火力の比率は大幅に低下していたことだろう。発電コストをみると石炭と比べて一円程度の差しかないのだが、LNGは原油価格と連動する性質をもっているため、相場の変動を受け易い資源である。経済環境によっては、リスクの高いものになるという可能性を秘めている。サハリン2では、政治的な要因まで考慮しなければならなくなってしまった。昨年暮れのことだった。
問題は、ベース電源の合計が65%であるのに対して、深夜の電力需要が50%でしかないというその点にある。差を構成する15%の電力の内、3%は揚水式水力発電で消費されている。残りの12%が捨てられていたのだったが、電力会社は深夜電力という低廉な料金体系を導入して状況の改善に努めている。電力会社は負苛の落差を均して平準化するための対策に取り組んでいるのだが、実際の効果を確認したとするデータは公開されたものが未だない。深夜電力に関するデータが検索ででてこないため、実態調査の結果に関する報告は行われていないようである。12%の電力のうち深夜電力で消費されているデータが公開されていない以上、正確な数値を知ることは目下のところ不可能だ。電力会社がエコキュートのキャンペーンに力を入れているところをみると、相応の普及効果があったとみるべきであろう。この点については、推測する以外に方法はない。だが、12%という電力の大きさに追いつくようなものになっていなかったということだけは、確かである。
既存の平準化対策
エコキュートは、自然冷媒の一つである二酸化炭素を200気圧に圧縮して得た熱を交換し、約90度のお湯を作りだすというものである。(「空気の熱でお湯を沸かす」というフレーズは、二酸化炭素を圧縮する原理からいうと適切な表現だとはいえない。大気成分中のCO2濃度は約380ppmしかない。百分比にすると僅か0.0038%なのだから) 圧縮機を使うために40アンペアの基本契約が必要だとされている。回転機で圧縮するため、深夜のノイズ源になっている場合がある。深夜電力という制度が導入された背景に鑑みると、電力の消費効率が低い装置であれば捨てる電気をより多く減らすのに効果があるはずだ。できるなら深夜の電力需要が下がっている午後十一時から翌朝の六時までの間、一貫して大電力を消費するような効率の悪いものの方が寧ろ望まれているということになるだろう。
需給率というデータには%という数値しか表れてこないため、プロセスの一部を捨象するという効果があったように思われる。エコキュートの導入効果が集計できていないのは、その電力消費が短時間で終わっていたからであろう。熱を生み出す効率が高くても、深夜の電力需要を創出して無駄な電流を減らす効果は大して得られない。需給ギャップを圧縮して負苛を平準化させるには、深夜発生する長時間のエネルギー消費というものが絶対的に必要なのである。問題の所在を取り敢えず韜晦することができれば、あとは経営管理上の内部問題というところにまで収斂させていくことができる、ということなのだろう。電気代を半減させてでも深夜電力の消費を増やしたいということなのだから、少しでも表層の無駄をなくして表向きの損失を減らしたいという切なる思いがよく伝わってくる話である。
販売方法は適切か
電力会社の戦略にみられる思慮の浅さという問題は、負苛平準化という課題にだけこだわってきたというその方針のあり方にみることができる。関係者には負苛平準化という課題がある種の執着となっており、電力会社の社員の間では「負苛平準化」という言葉だけが一人歩きすようになっている。そこに利益を増やす方法があったにもかかわらず、その存在に気付くことができなくなっているのだった。エコキュートの効用は消費者が負う給湯コストの削減という点にあるとみせて、実は深夜捨てている電力を現金化するためのものだった。供給側の電力会社では、日負苛のバランスがとれてさえいればどのような装置であっても問題はなかったのである。装置システムに保温機能をもたせれば昇温は可能だが、高い価格になる時間帯で電気を消費することになったのでは、エコキュートを導入した意義は消えてしまう。
入浴用だけの目的であれば温度が半減する夜にはほど良い位の温熱になるのだが、飲用としては使えない。冬季に沸騰させるためには、改めて加熱する必要がでてくる。消費者のメリットは、低廉な深夜電力料金の適用が受けられるという点にある。だが、基本契約を変えて40アンペアにしているケースでは、基本料金そのものが高くなっている。運用コストが下がっても料金設定のベースが上がっていたのなら、効果の一部は相殺されていなければならない。この点を情報開示した上でエコキュートの採用を売り込んだのかどうか、が今後のチェックポイントになるだろう。
判断能力に現れた電力会社の欠陥
電力会社が負苛平準化という概念にこだわらなくなっていたら、有効解というものがみえてきたはずだ。気付くべき対象というのは、俗に24時間風呂とよばれている温浴システムのことである。この電気製品はレジオネラ菌の問題が注目を浴びてからというものすっかり廃れてしまったのだが、現時点でみる限り評価に耐える進化したモデルが一機種だけ存在する。この装置をエコキュートの代わりに導入していれば、深夜電力の低廉な料金制度を導入する必要なしに需要を喚起することができていただろう。この24時間風呂は業界団体で定めた自主基準を完全にクリアしたモデルになっている。紫外線殺菌に加えて光触媒と熱殺菌を併用することで問題を完全に解決している。風呂掃除は家事労働の最たるものだったが、このモデルは家庭から風呂掃除という重労働をなくしてしまった。回収した不純物などは五方弁を自動で切り替えることにより、システムの外部へと汚れ成分を定期的に排出している。全自動でシステム自身をクリーンアップする機構を備えた温浴システムというのは、他に類のない出色のものである。
24時間風呂は使ってみたら分かるのだが、手放せなくなるほど重宝する装置である。システムに浄水場がついているようなものだから、一日中いつでもきれいなお湯に入ることができる。このため、運動選手や三交替勤務に従事している人などには必需品になっている。お年寄りにはこれほどありがたいものはないだろう。風呂場で受ける冬の温度ストレスで、心臓に負担をかけるようなことが軽減されるからである。電気代は当然上がるのだが、水道料金とガス代は応分に減っている。この差は家族構成によって変動するので、一人住まいの場合にはメリットは少ない。総合コストは却って廉くなる例の方が圧倒的に多い。そんなことを可能にしたのが、熱平衡という物理現象だったのである。家族が多くなればなるほどその経済効果は顕著になって現れる。電力会社にとってはオール電化を促進する結果が得られるというだけでなく、負苛平準化をする必要そのものを消してしまう結果までがやってくるのである。深夜電力料金制度をなくせるというだけで、大きな利益が新たに発生するようになっていただろう。値引きして売っていた電気を定価で販売できるようになったなら、収益率が改善しない訳がない。
24時間電力を消費するのが24時間風呂なのだから、需要率は当然向上する。需要率が低かったことが、電力会社の経営を圧迫する大きな要因になっていた。オール電化キャンペーンとは、即ち需要率を改善させるためのものなのだ。交流は発電したら使い切らない限り捨てるしか方法がない電気なのである。需要率が上がるということは、捨てる電気が減っているということなのだ。発想を柔軟にして執着となっていたものを突き放してみると、大きなチャンスを見逃していたということが見えてくるだろう。お茶を淹れるための給湯なら、電気ポットを併用すればよい。
エコキュートにこだわっていると、経営資産の価値を半減させるという結果だけが待っている。どちらが得か、電気事業者はよく考えてみる必要があるだろう。水資源の保護という観点からも、電力会社がこの装置を導入する意義は大きい。資源を消費して作った電気なら、捨てるよりは使った方がよいのは当たり前のことだろう。二酸化炭素の増減に影響がでない範囲で電力会社の収益を増加させるものならば、無駄を抑制して収益に換えることができるだろう。そこで生まれた利潤を環境対策費へと用いることによって、真に実効ある温暖化防止活動に着手することができていたはずなのである。およそ4500万戸あるといわれる住宅でガスの燃焼が減っていけば、二酸化炭素の発生量をその分減らすことができるだろう。導入コストはエコキュートの六割程度で、消費者の負担は減っている。
オール電化を目指すなら
電力会社がオール電化を積極的に進めていても、停電したらそこは牢獄に等しい場所になってしまう。新潟の地震では、オール電化マンションの欠陥が露わになっている。電気がとまってしまったため、生活の一切が成り立たなくなったからである。冷蔵庫は腐敗した食品の倉庫になり、お湯も沸かすことができなくなった。保存食を加熱調理することさえできなかったのである。一瞬にして原始時代の生活へと逆戻りしてしまったのが、新潟の震災で報告されたオール電化マンションの実例なのだ。このような事態に陥るのが、オール電化された最新鋭の住宅なのである。この課題を解決するには、電力供給のバッファとなる蓄電設備の早期普及が必要になる。蓄電容量が多ければ、停電が引き伸ばされてもある程度対応することができる。この程度のことなら、やろうと思いさえすればすぐにでも実行することは可能なのだ。電気を貯めておく量は近い将来大幅に改善する、という具体的な見通しが得られている。
負苛平準化という課題は、蓄電設備の導入で大幅に改善するだろう。深夜捨てている電気を備蓄しておけば、翌日の電力需要を減らす効果がひきだせる。系統管理を安定化させておくと、発電所の出力調整をする機会が減らせるようになるのだ。安定的な電力消費は、発電所にかかる負担を軽減するという効果がある。需要と供給が一致していないのが交流送電の宿命なのだが、その差を圧縮する方法がないという訳ではない。電力会社がやろうとしなかっただけのことだった。何故なら、原発が必要不可欠な存在になっていたからである。出力調整ができない発電所が供給する電力というものは、消費する側で使い切るしか無駄を省く方法というものはない。定格運転で電力を消費する回路を最も必要とするのが、現在の交流による高圧送電だったのである。電力貯蔵システムが標準化されるまでは、電力会社は無駄な電力の輸送を深夜延々と続けることになっている。負苛平準化を急ぐ電力会社の背後には、発電と送電で生じている特別に大きな損失の排除という要因があったのだ。
困難な状況をチャンスへと変えるには
一つは需要を増やすという方法だが、捨てていた経営資産を現金化する道を開くことはできても、二酸化炭素の排出を減らすことにはならない。エコキュートは深夜電力という低廉な料金体系が用意されていなければ、導入促進効果は得られない。電力会社の収益は殆どないのだが、電力を捨てるという無駄をある程度省く効果は得られる。24時間風呂なら通常の料金体系のままで、電力需要を増やすことができる。電力会社の収益率は倍増するようになるはずだ。導入費用は後者の方が廉く、水資源の節約と炭化水素の燃焼によって生じるCO2を抑制する効果が得られる。受益者のメリットはエコキュートなら電気代の低減だが、24時間風呂は水道代とガス代の削減と同時に風呂掃除という重労働をなくし、自宅を温泉地に変えてしまうという点であろう。世界規模でみると真水の不足が大きな国際問題になっている。日本全体では水に不足するようなことはないのだが、飲み水にも事欠くという地域が増加しているため、水飢饉の深刻さは年々際立つようになっている。
別の方法は電力会社が蓄電ユニットを無償で各家庭に配置し、供給電力の年間を通じた平準化を実施するというものである。蓄電装置が浸透していれば、負苛変動に発電所側の対応が追われるということはなくなるだろう。安定した定格運転で発電していれば、資源の消費効率は高くなる。消費する側に蓄電ユニットが設けられていれば、所要の電力はそこから逐次とりだすことができる。空席があれば電流はその場所を目指して流れ込んでいくため、キャパシタの場合ほぼ充電した状態を常に保つことができるようになっている。この対策を実施すると発電所にかかっていた供給義務という負担は減り、過剰な燃焼を減らすという効果が得られる。この時炭素資源の消費は減っているので、輸入する炭素系資源の量は当然低下していなければならない。炭素資源の輸入が減っていけば、その分の購入費用を減らすことができる。蓄電ユニットの普及をこの節約が見込まれる費用で賄えば、国庫金からの支出を前提としない温暖化防止対策が導けるようになる。
理のないシステムは生き残れない
負苛平準化が必要になったのは、原発を導入して高圧送電を普及させたからであった。送電ロスを減らすには、電圧を高めてやればよい。最大100万ボルトの電圧が東電管内の高圧の系統にはかかっている。つまり、需要が減った深夜でもこの高い電圧を維持していなければならなくなっている、ということなのだ。もともと原発は出力調整をしないという前提で作られている。需要が減れば、捨てるしか選択肢はなかったのだった。そこでエコキュートに飛びついたということなのである。深夜電力を利用してお湯を沸かす貯湯槽は40年近く前から登場していた。コストダウンだけでは、消費者に対する訴求効果はなかったようである。そこで、揚水式水力発電が登場し、電力全体の3%の電力を位置エネルギーに換えて再利用するようになっていったのだった。この方式は初期投資が嵩むため、水力発電全体の発電コストを最大化することになったのである。エコキュートとして製品が市販されたのは、2002年のことである。当時はダイキンただ一社だけだったが、今では多くのメーカーがライセンス生産を行うようになっている。
負苛平準化がエコキュートで片付けば問題はなかったのだが、深夜帯の電力需要は期待するほど伸びていなかったようである。余った電力を備蓄するようにしておけば、捨てる電力を生かすことができたはずである。電力会社でも蓄電システムを研究しているのだが、開発目的が高圧の交流送電をそのまま前提としたものになっている。二系統の電力備蓄方式にまで絞り込まれているようだが、進展はみられない。大電力を備蓄することに拘っているということと、200℃の高い温熱管理が安全性の確保という面で課題となっている。発想を切り替えたら、住宅単位で実施できる蓄電方式の普及は簡単にできていたはずなのだ。電力会社では、系統管理を変更してまで蓄電設備を導入する積もりはない。ここに民間の企業が付け入る隙ができている。二酸化炭素を減らせないことが明白になると、国は最終的に追い詰められていく。問題の所在に気がつけば、打つべき手はおのずから決まるのだ。ビジネスチャンスは、すぐそこにまできている。
交流高圧送電の課題
原発を導入したことで遠隔立地が必要になったのだった。送電系統が延長されていったため、エネルギーの輸送効率を高めざるをえなくなっていた。送電する電力に下限が生じたため、負苛平準化という問題を生み出すことになっていったのだ。送電電圧を高めてきたのは、電流損失を防ぐことが目的であった。電流と電圧という成分の積で電力が構成されている。電力は全体の量であり、電流と電圧はそれぞれが単独の状態を表す指標になっている。電圧を上げると電流値は低下するという関係にあり、全体のエネルギーを示す電力は常に一定となる状態を保っている。電流損失を減らすには電圧を上げて電流値を小さくしてやればよい。電気抵抗で失われる電流が減れば、損失を抑制する高い効果が得られるのである。送電系統の高圧化は電気抵抗が生む熱損を減らす目的で導入されたものだった。長距離送電の場合、電力を輸送する途上で生じるロスは無視できないほど比率として大きなものになっている。低圧送電だった頃40%ほどあった電気抵抗で熱になっていた損失は、電圧が二倍になることによって半減し20%にまで減ったのである。更に電圧を倍増させることによって10%になるというように、電圧と電流は相互変換することができるようになっている。現在公表されている送電で生じている電流損失は約8%程度だとされている。これには無効電力とされる損失が3%含まれている。
変圧器のコイルを交流電流が通過するときに、リアクタンスと呼ばれる一種の抵抗が生じている。コイルに発生している抵抗で電流が流れにくくなっているから、磁気エネルギーになっている時間も長くなっている。この磁気エネルギーが対抗する別のコイルに新たな電流を発生させているのである。このようにして変圧器の中では電気エネルギーが磁気エネルギーを経て、再び電気エネルギーへと戻されている。コイル同士の間には空間が設けられており、電気エネルギーは非接触で移転することができるようになっている。このときにできる作用を電磁誘導と呼ぶ。電流が移転される二次側のコイルから電流を引き出す位置を変えることによって、電圧が変化する。電流を取り出すときのポイント(タップ)の設定位置を変えることによって、任意の電圧を引き出せるようになっている。
トランスと呼ばれる変圧器の中の一次側(入力)のコイルで電気エネルギーが磁気エネルギーへと変わり、二次側(出力)のコイルでは磁気エネルギーが電気エネルギーへと戻されている。この変圧プロセスでは、3%程度の電力が失われている。変圧行程が多ければ多いほど、変電ロスも増えるということなのだ。この部分は殆ど公表されていないところであろう。発電機は通常2万ボルト3万アンペア出力というのが標準だとされている。これを並列に繋いで50万ボルトに昇圧するときに、最初の変圧がおこなわれている。最寄りの変電所または給電所までは通常6万6千ボルト(60Hzの地域では7万7千ボルト)にまで減圧された電流がきている。中間の変電所を通過する度に変電ロスが生じているので、100万ボルト送電の場合に最も大きな変電ロスが生じているはずである。変電所を五つ通過する送電系統の場合、合計で15%の変電ロスが生じているということになる。これに送電ロスの8%を加えると23%の電力が送・変電プロセスで失われているということになる。
系統管理の課題
日中にピーク電力を賄っている石油火力発電所では、需要を予測したの電力に対して通常8%多めに発電した電力を供給することになっている。需要予測を上回ることはほとんどない(停電がおきるからである)ので、概ね23%+8%=31%以上の電力が使われずに投棄されているとみなければならない。深夜なら8%の過剰供給分を15%へと変えてやればよい。合計すると23+15=38(揚水式水力を控除すると35%)という数字がでてくる。つまり、深夜失われている電力は無視できないほど巨大なものになっているということなのである。負苛平準化が電力会社にとってどれほど深刻な課題になっているのかということが、この数字をみれば見えてくるだろう。いつまでも交流送電をつづけていてはいけない。発電所では蒸気圧を常時保っている必要があるため、二酸化炭素を減らすことができなくなっている。京都議定書を遵守するためには、交流送電から速やかに脱却しなければならない。それが可能になった時、日本が生んでいる二酸化炭素はほぼ半減することになるのである。(電力分野で生み出しているCO2は、全体のおよそ48%に達している) 自動車産業が生み出しているCO2を削減する圧力が消えると、日本経済を牽引する能力を維持することができるようになる。その間に、輸送分野では独自の対策をとることができるだろう。
この他に、接地点から投棄されている限流と呼ばれる処理をされている電力がある。送電系統の接地点とは、変圧徽内部の一時側コイルから地中に繋がっているラインである。二次側の需要が減った時に、一次側のコイルからリアクタンスという抵抗を経て接地(アース)されている。これが負苛変動を調節するための隠れた仕組みになっている。限流されている電力のデータはとられていないため、経産省でもおそらく把握していない成分になっているはずだ。これらの要素を総て加味すると、エネルギーになっていない電気の量は極めて高いものになっていなければならない。電力会社が事実を懸命に秘匿したがっているのは、このような背景があったからである。

コメント
素晴らしい記事です。最初から最後まで感心しながら読みました。
>いつまでも交流送電をつづけていてはいけない。
電気は直流で作られるので、それをそのまま送る方がロスが少ないということですよね。そうだとすると、やはり燃料電池による分散電源の出番ということになるのでしょうか。
シナネンが伊藤忠かどこかといっしょにやっている水素ステーション事業は、深夜電力で水の電気分解を行っていると、昨年10月の幕張メッセのイベントで担当者の方がおっしゃっていました。そういう活用法も選択肢の中に入ってくるのでしょうか?
Posted by ろろ at 2007年2月 4日 00:29
乾電池、蓄電池、燃料電池、太陽電池など電池と名のつく電源は、すべて直流を出力します。使い方を工夫することにより、交流送電が生んでいた壮大な無駄をなくすべきだと思います。深夜電力や限流で接地させているエネルギーで電気分解をすることは可能ですが、水の電気分解という方法自体が効率の悪いものなので、エネルギー収支は間違いなく赤になるでしょう。捨てているよりは勿論マシですが、交流送電を前提としなければなりません。もっと効率の良い水分解法は他に複数あります。
原研の高温ガス炉というアイデアはヘリウムを熱媒体として使うもので、ヨウ素と硫黄を媒質とした閉鎖系を成り立たせています。(ISプロセスと呼ばれています) 基本特許はアメリカにあり、10万kwh出力の小型原発の排熱を反応器に導くことで実現することができるとされています。都市近傍の地下深くに小型の原発を設置する腹積もりがあるようですが、反応に必要な熱を引き出すことはまだできていません。900℃という高温が必要なのですが、850℃がマックスです。そこでヘリウムの流路を絞り込むことで圧縮熱を導いて加熱しようとしています。未だに実用化されていないところをみると、かなり難儀しているようのではないでしょうか。もしこの技術が実用化されると、小型原発三基あれば日本のエネルギー需要を100%賄うに足る水素を水からとりだせる、と以前プレゼンテーションの会場で説明していたことがありました。
もっと小型で反応の早いモデルの発明が中国で実現しています。その熱化学分解装置を確認しに三度訪中して直接確認しています。その間毎日実験に立ち会っています。高効率の水素抽出ができることに疑問の余地はありませんでした。出遭いがあれば、組織化をすすめて実証プラントを提示することができます。水を資源とすることは充分に可能です。http://www.pictsystem.com/~suiso/index.html
技術的な問題というよりも、寧ろ意識レベルの問題だといった方がよいでしょう。
仰るとおり燃料電池は独立分散電源として最適なモデルです。それを実現するためにはよい二次電源(蓄電システム)が絶対的に必要です。蓄電システムも複数のものが実際に稼動しているので、選択するだけで状況を変える効果が引き出せるようになるでしょう。解決すべき課題は、量産化だけだと思われます。
Posted by 古畑嚆矢 at 2007年2月 4日 18:42
>よい二次電源(蓄電システム)が絶対的に必要です。蓄電システムも複数のものが実際に稼動しているので、選択するだけで状況を変える効果が引き出せるようになるでしょう。
トヨタが昨年辺りから本腰を入れ始めた「プラグインハイブリッド(ハイブリッド自動車のさらなるEV化)」へのシフトというのも、そこで培った蓄電能力の向上で独立分散電源への第一歩なのかも知れませんね。
しかし、くだらない話ですが、直流となれば、本当にプラスマイナスはっきりさせなければなりませんので、今のような「挿し間違い」の起こりえるコンセントだとどこかの大統領のように「炊飯器を壊してしまった」というのが「よくあるトラブル」に一時的になったりするかも‥‥‥
Posted by のらくろ at 2007年2月 7日 22:44
アーク放電を防ぐ対策が別途必要になるでしょう。いろいろなアイデアが登場すると思います。改良プロセスは日本企業の得意技ですから、期待してよいのではないでしょうか。
Posted by 古畑嚆矢 at 2007年2月 8日 10:59