この報告書の第二回目の分で言及した独立分散方式のエネルギー供給系において、蓄電装置の次に重要となる項目は電源の選択である。住宅用だから小型の電源で差し支えない。一日は24時間ある。1kwh出力の装置があれば、一日定格で稼動させると24kwhの電力が生み出せる。交流発電機では電力の備蓄ができなかったため、最大需要を賄うには最低でも3kwh出力の電源が必要になっていたのだった。だが、直流電源と蓄電システムを導入すると、1kwhの小型電源があればそれだけで充分エネルギーの分散備蓄が可能な状態になるのである。
直流化の効果
直流の小型電源であれば、需要地で直接発電した電気で充電しておくことができる。エネルギーの備蓄が自宅で可能になるということなのだ。蓄電装置の容量が24kwh以上あれば、1kwhの小型発電機で充分な電力を貯めておくことができるだろう。毎月600kwhの電気を消費している家庭なら、一日平均20kwhの電気製品を動かしている。差し引き4kwhの利用されなかった電力が、蓄電装置の中には残されている。翌日発電するときには、使って減った分の20時間相当の発電をすればよい。または蓄電する電力量を毎日4kwhずつ増やしていくことができる。これを続けていくと、月間では120kwhの余剰電力を備蓄しておけるようになるだろう。
電気を貯金するようなことが可能になれば、自家消費する分を賄って尚余りある充分なエネルギー備蓄が家庭でできるようになる。自然災害など不測の事態に遭遇しても、エネルギー備蓄が充分であれば心配はないだろう。要するに蓄電装置の能力が適宜増やせるようになっていれば、発電装置は小さな機種であっても構わないということなのである。蓄電量を大きめにとるによって、交流ではできなかった発電量を減らしていく効果が引き出せるようになる。直流化を推進することによって無駄な燃焼を減らしてやれば、二酸化炭素の発生は次第に防げるようになっていくだろう。
二次電源が分散化に最適なわけ
2kwhを出力する電源なら充電効果はその倍になる。12時間の充電で24kwhの電力を生み出すことができる。これをフル稼働させれば48kwhまで増やせるのだが、蓄電装置の容量も倍にしておく必要がでてくる。住宅のスペースによって装置の種別を使い分けて、ライフスタイルに合ったエネルギー供給システムを設計すればよい。電気を消費している時間帯にあわせて発電機の稼動を制御するという方法もある。蓄電装置との組み合わせ方を工夫することによって、分散電源の導入費用を抑制する効果が引き出せるようになる。充放電効率が高く、且つ電圧変動の影響も受けないライフタイムの長い蓄電システムが最も汎用性の高いものとなる。装置類の機能に足らざるところがあるのなら、システム設計を工夫することで対応することができる。
充電効率を高めるには、電源の発電能力の高いものを選ぶべきである。時間効率が向上するからだ。短時間で充電を済ませておくことによって、翌日の需要に随時前以て準備しておくことができるようになる。発電能力を高めると装置の価格が上昇してエネルギー単価のコストアップ要因になるのだが、エネルギーの安定確保という要件を高度化することができる。住宅単位で一週間程度のエネルギー備蓄ができるような状態になっていれば、大きな災害に遭遇しても日常生活に影響がでるようなことはない。立地環境に適した少し大きめの発電装置を選んでおくと、システムとしての付加価値を上げることができるようになる。蓄電装置も同様の趣旨で、少し大き目の容量を選ぶのがよいだろう。それには超伝導応用技術で電力を貯蔵するのが最適な方法なのだ。超伝導は電力輸送だけでなく、電力を効率よく貯蔵する目的で使っても差し支えはない。その実用化は目前のところにきている。
望ましい基本的なシステム
一般の住宅で消費している電力は、月間500kwhから800kwh程度の範囲にきている。家族構成、部屋数、電気製品の数などになって消費電力は変化する。30アンペアの基本契約を前提として考えると、概ね最大で800kwh程度の電力が使われているとみられる。1000kwhを消費する家庭になると、30Aの契約ではブレーカーが頻繁に落ちてしまうだろう。
住宅用二次電源として要求される蓄電能力には、月間の消費電力の四分の一となる125kwhから200kwhに相当する電気を備蓄する能力をもたせたい。一週間程度停電が続いたとしても、その間日常生活を維持することができるようにしておくべきだからである。商用電源(電力会社の交流)では、災害時には送電インフラそのものが寸断されてしまうことがある。交流送電にロスが多いということは、前回までに繰り返し報告してきたところである。損失を減らすためには独立分散型の電源を導入して、送・変電ロスを減らすべきである。直流型のエネルギー供給システムは、それだけで災害対応能力をもっている。
文明に相応しい優れたエネルギー環境を維持するためには、一日に使う電気の五倍から七倍相当の蓄電容量をもった電力備蓄装置の導入が望ましい。10kwhの発電出力をもつ電源を導入するなら、十時間あれば100kwhの電力を充電することができるようになる。月に500kwhの電力を消費している家庭なら、毎月の電力が50時間(二日程度)あれば確保できるということになる。電源はいろいろなものが自由に選択できるので、課題は蓄電容量を確保することとその量産化によるコストダウン、そして環境負荷の少ない発電モデルの選択ということになるだろう。
新エネルギーに分類される発電装置
太陽電池を組み込んだシステムにすると、ランニングコストを引き下げるという経済効果が得られる。自然エネルギーだから当然環境効果は優れている。回路は直流の方が望ましいが、分散化されていれば交流出力であっても大きな問題はない。電流損失は発生するが、長距離送電でなければ当座無視しても構わない。二次電源から交流を出力するには、インバーターが必要だ。直流電源なら太陽電池に次いで燃料電池が最適なのだが、市販時期が当初の予定よりだいぶ遅れている。住宅用では電解膜を使うものと電解質(セラミックス)を使うモデルの二系統が主流になるだろう。前者は低温で稼動するのだが、後者は最新のモデルでも500℃以上の熱環境が必要だ。電解液を使うものでは課題解決に手間取っている。燐酸型燃料電池は当初普及するかに見えたのだが、使い勝手が悪いために需要は伸びず生産は停滞している。定格運転(ハーフロード可)しかできない発電装置であるため、需要水準が一定で安定している回路でしか使えないという制約をもっている。この点が普及の障碍になっていたのだった。
改質プロセスで必要になる熱源を天然ガスの燃焼に求めたのでは、温暖化を遅らせることはできたとしても、水没を却って早めるという結果を引き寄せてしまうだろう。海面水位の上昇が予測していた2.2mm(max)を超えて3.3mmになっていたことが先週末に報道されている。当事者は誤差が生じた原因を推し量りかねているようだ。炭化水素を燃焼で酸化させたら、炭素はCO2に、水素はH2Oへと変化するのは当たり前のことだろう。この簡単な理屈がニンゲンに見えなくなっているのである。知識力を涵養するために、思考するための力を犠牲にしてきたからだろうと思われる。考える力が養われていたら、要素化することは簡単にできたはずである。要素が抽出されていたら、要因の分析はできていなければならない。要素を抽出するという作業が不十分だったために、平均気温の上昇という条件だけで結果を予測していたのだった。予測数値にみられる誤差の原因は、認識の齟齬にあったのだ。
正しい認識が有効解を導く
科学という有力な手段を手に入れていても、その使い方が誤ったものになっていたのである。問題というのは、その事実にニンゲンが気づかなかったということである。現実認識ができていたら、要素化の漏れに気づくことに困難はなかっただろう。とても簡単なことだったからである。考えるための努力がナオザリにされていたため、現象化したものの背景を推し量るという作業が困難になっていたようだ。知識を得ることは確かに重要なことなのだが、使い方を教えておかなければ何の役にもたたないのである。天然ガスの燃焼を抑制していれば、水没を遅らせることができていたのである。二酸化炭素の発生だけを抑えれば片付く問題ではなかったということに気づいていたら、予測値を超える結果を得て悩むことはなかっただろう。
太陽光で超高温域まで熱を増幅する装置は存在しているが、日照密度が下がれば熱を維持することは困難だ。熱エネルギーから電気エネルギーを取り出すのは、一般にとても効率のわるいプロセスである。既存の発電機でみると、原発の熱で約33%、その他の熱エネルギーからでは多くても25%を超えることはない。(マイクロガスタービンでは28%というモデルが市販されている) コンバインドサイクルでは50%近くになっているが、複合効率になっているので割り引いて評価するべきだ。
分散電源としての燃料電池
燃料電池で電気を作るための資源は、水素分子H2である。炭化水素を改質するために、加水分解するという方法が用いられている。この方式は、水素を取り出した後の炭素系廃棄物の処置を別途考慮しなければならない。水素を取り出すための一次資源となるものは、水以外のものでは必ず副産物となる物質をうみだす。再生型の水素抽出モデルはいくつかでているが、分解効率の限界と安定性及び持続性などはいずれも保証されている訳ではない。二次生成した物質の最終処理という課題は、炭化水素を資源とする燃料電池では今後も引き続き残されることだろう。
エネルギーにならなかった残された炭素系の化合物の残渣が、大気中の酸素と反応して温室効果をもつガスにならないことをただ願うのみである。炭素資源が燃焼で熱と二酸化炭素を生み出していたというあの関係が、水素系化合物においても同様に成り立つ。とりわけ炭化水素ではその典型的な事例ができている。二酸化炭素と水を生み出していたのだったから、温暖化とその結果である水位の上昇とが同時におきてしまっていたのだった。炭化水素の資源化をすすめると、水蒸気を二次生成させてしまうのである。ここを見てこなかったために、海岸線の変化が予測を超えて早まったという結果が生まれたのである。
その他の独立系分散電源
燃料電池の普及機が登場するまでは、ガスエンジン、ガソリンエンジンなどの所謂発動機式発電機(発々)を採用して急場を凌ぐ必要がある。太陽電池と併用することで、日照量が足りないときにだけ補助的に発電してやればよくなるからだ。ランニングコストが低下するので、受益者は増えるだろう。初期費用が高いのは量産化で対応できるが、太陽電池ではその方法が使えない。生産が追いつかなくなっているからだ。基材となるシリコンの安定確保とメーカーによる生産の効率化などに、尚一層の創意工夫が望まれる。
分散電源で直流化を実施するなら、送変電ロスは生じない。集合住宅や工場などではマイクロガスタービン発電機の方が効率的な場合がある。システムの組み方次第で面白いものができるだろう。軍用で実績をあげているメーカーが普及機をリリースしている。量産化が可能な装置から先に採用をすすめ、コストダウンを早く実現するのがよいだろう。交流ならディーゼルエンジンの方が回転むらなくて、周波数を安定させておくことができる。だが、軽油の燃焼で生じる弊害は当然増加するだろう。ガスエンジン発電機では、カセットボンベ(ブタンガス)でも発電することができるようになっている。完全な対策ではないものの、京都議定書の削減数値を遵守するには取り敢えずの手段としての有効性は引き出せる。
「発々」は直流でも交流でも任意の電流を出力することができる。これらの小型発電機は、あくまでも燃料電池が登場するまでの間のつなぎの存在である。ノイズの発生は避けがたく、CO2またはH2Oの発生を許容しなければならない。従って、長期的な使用は推奨できない。独立分散型のエネルギー供給システムでは、蓄電装置の関与は必要条件である。システムに二次電源が確保されているなら、災害対応能力を賦与するだけでなく、電流損失を減らして資源消費の効率化を進める効果が引き出せる。高圧の交流送電そのものを廃止すれば、日本が守るべき京都議定書の削減数値を達成することが可能になる。このままでは、日本が京都議定書の定める数値を遵守することはできない。電力業界がどんなに反対しても、それを押しのけて生命環境を守るのは文明の義務というべきものである。
移動体用の電源システム
電気自動車(EV)なら、走行中に生じている慣性エネルギーを取り込むことができる。蓄電容量を減らして移動体を低価格化させることが可能になるはずだ。加速で使ったエネルギーを減速時に回収すれば、発電する機会を減らすという効果が引き出せる。モーターと発電機は基本的に同じものである。使い方次第で発電機になったりモーターになったりする。これを適宜使い分けることで、慣性エネルギーを発電機に取り込ませて次の発進加速に備えておけばよい。揚水式水力発電というのは、この回転機がもつ特徴を生かしたものである。移動体では鉄道分野で回生ブレーキが早くから使われてきた。自動車用の発電システムを小さくするのは可能だが、蓄電容量と充放電効率を最大化してより合理的なモデルを提供するべきだ。燃料電池自動車では、キャパシタと回生装置を併用するモデルが既に一般化している。加速性能が優れて高いのは、キャパシタを採用した結果であった。放電効率が頗る高くなっているため、大電力を出力して運動性能を競うレースなどになると、キャパシタ搭載車はとりわけ有利な存在になるだろう。
燃料電池を搭載する移動体では、次のステップとして高圧水素から液化水素へのシフトが進むものとみられる。(BMWでは液化水素を使った移動体を既に開発している) 圧縮効率は液化水素の方が高い。走行距離で圧縮水素と液化水素との間に差がつくようになると、低温工学がいよいよ時代の脚光を浴びるようになるはずだ。この分野は、今後高温超伝導の応用システムで欠くべからざる基本の技術になるだろう。高温超伝導応用技術は、冷媒の再冷凍システムと組み合わせない限り、長期的な使用には耐えられない。超伝導応用技術の実用化は、低温工学の発展如何にかかっている。液体水素の冷熱で超伝導を可能にする金属線は既に市販されている。だが、高温超伝導がおきる理論的裏づけは、未だ確認されたものがでていない。(高温とはいうもののその熱は液体ヘリウムの温度より高い、という意味である。液体ヘリウムがもっている熱は-269℃、絶対温度で4Kと表記される)
超伝導応用技術
液体ヘリウムの温度領域で確認されている超伝導では、その現象を裏づける理論は定まっている。マイナス269℃(4K)より高い温度領域で発生する超伝導状態のことを、高温超伝導と呼ぶ。液体窒素はマイナス196℃(77K)を超えると気化して蒸発を開始する。77K以下の温度領域で発生する超伝導現象であれば、低廉な熱資源である液体窒素で電気抵抗なしで電力の長期貯蔵が可能になる。高温超伝導の材料となっているのが絶縁性能の高い碍子に使われているセラミックスだった、というのは非常に興味深いことである。電力輸送を目的とした超伝導ケーブルは薄膜状のセラミックスで、リボンのように巻きつけて使う製品になっている。長尺化が進んでいるので導入は早いとみられていたのだったが、目下のところ実用化の話は聞こえてこない。薄膜では超伝導の特徴である断面当りの大電力を確保することができないので、容量不足は否めない。
マイナス253℃以下の熱をもつ液体水素に金属系の超伝導線をドブ漬けできるかどうかは、これからの確認課題である。熱に中性の絶縁材で被覆してやれば問題はないのだが、シンプルなものの方がよいのは言うまでもあるまい。液体水素が自動車分野などの開発案件で標準化されていくのなら、超伝導応用技術の普及は大幅に早まるだろう。超伝導電気自動車は、燃料電池自動車を簡単に追い越すほどのコストポテンシャルをもっている。住宅用では太陽電池と超伝導電力備蓄システムが用意されていれば、年間を通じて充分な電力を確保しておくことが可能になる。このような変革がこの先十年以内に集中的におきるだろう。単にやる気の問題になっているだけのことなのだ。流れの先にある状態が見えるようになっていれば、今なにを為すべきかということはすぐに判ることである。
その他の発電システム
電気を作り出す方法で未だ注目されていないものは、水から直接電流を取り出すというものである。ダイレクトメタノール型の燃料電池が、既に登場している。基本原理はこのDMFCと同じである。水から直接発電することができるという点に着眼した、地下で研究されている開発案件の一つである。水とメタノールはどちらも「水素化合物」という点では同じ種類のものである。違いというのは、水には酸素原子がついたH2Oであるのに対して、メタノールでは炭素に水酸基がついたCH4-OHとなっているという点である。単分子当りの水素の量に違いはあるが、水素化合物という点では同じグループに属している。ダイレクトメタノール型燃料電池が稼動しているので、ダイレクトウォーター型の燃料電池が登場しても決しておかしくはないはずだ。炭素が関与する分子結合より、水素が介在する分子結合の方が結びつきは弱い。ニンゲンが原理を知ってその応用を可能にする方法に気がつけば、よりシンプルな発電システムが近い将来陸続として登場してくることになるだろう。
DMFC型燃料電池の機構は、固体高分子型PEFCと基本において変わりはない。このタイプは別名PEM型とも呼ばれている。Pは水素の原子核であるプロトンつまり陽子のことである。Eは交換を意味するExchangeからとっている。Mは膜Membraneの頭文字である。陽子交換膜と呼ばれている透明なフィルム状の高分子からできているのが、この固体高分子型燃料電池なのである。この膜の特徴は、陽子だけを選択的に透過させるという稀有なその性質にある。軽水素には中性子がついていないため、陽子がこの膜を通り抜けることができるようになっている。初期のPEMはナフィオンという商品名で大手の化学メーカーであるデュポンから供給されていたのだが、複数の国産品が市販されているという情報を間接的に聞いている。
電子より1800倍も大きな陽子だけが通り抜けることができて、それよりもごく小さな電子はこの膜を通過することができない。陽子と同じ重粒子であるハドロンに分類される中性子も通り抜けることが出来ないため、軽水素以外の原子からでは電離現象を引き起こすことができない。陽子と中性子は同じ種類のクォークからできている。組成のあり方が違うだけなのだが、その差はとても大きい。陽子ならPEMという交換膜を自由に行き来することができるのに対して、中性子では膜だったものが壁に変ってしまうのである。これが水素から電気を取り出すための基本原理の一つになっている。しかしながら、この電解膜型の動作原理を正しく説明している記録には、一つを除き未だお目にかかったことはない。電離現象を化学反応として捉えていると、物理反応でおきている電離現象を理解できないようである。
クォークの僅かな違いが大きかった
電解液、電解セラミックスなどを介することよって、タイプの異なる燃料電池が生産されている。燃料電池を説明するのに水の電気分解の逆反応という例えで説明するのが一般化しているが、正しいものであるとは言い難い。水素と酸素を反応させて生まれるものはというと、電気ではなく水なのである。電解質(膜・液)を経て取り出した電気エネルギーを集めて電流とし、それを積層させて電圧を高め、負苛でエネルギーを放出して還流してきた電子が原子核と装置内部で再会を果すのが燃料電池の仕組みなのだ。その後水素原子へと復元したものが大気中の酸素と反応することによって、純水を排出するようになっている。水素に中性子がついていたものの比率が多かったら、地球の回復は遥かに困難な仕事になっていただろう。この原理に着目していれば、水素資源の相を経由せずに水から直接電流を取り出す可能性を見出していたはずである。
【六種類あるクォークの内、原子核を構成する陽子と中性子はアップクォークとダウンクォークの二種類だけからなっている。違いというのはアップクォークの電荷が2/3であるのに対して、ダウンクォークではマイナス1/3となっているという点である。陽子にはアップクォークが二個とダウンクォークが一個ついている。中性子にはダウンクォークが二個とアップクォーク一個がついている。陽子の電荷がプラスになっているのは、クォークの組み合わせ方にある違いからきていることである。中性子は電荷が相殺されてゼロであるため、電気的に中性になっている。この僅かな違いがあるだけで、PEMという改札口を陽子が通過できて中性子がとおせんぼされていたのだった】
電解膜によって原子核から引き離された電子は定められた電極へと集まり、纏まることによって直流電流をうみだしている。所定の電圧は、このPEMからできているセル(発電単位)を積層(直列化)することによって得たものである。高電圧の出力モデルであればあるほど、セルを収めたスタックの量は増えてゆく。燃料電池が高価な装置であったのは、高額なスタックを多数積み重ねて電圧をかせぐ必要があったからである。低圧で統一した回路を設けることができれば、燃料電池をコストダウンさせることは充分に可能である。(だが、動力用電源にはならない) 住宅用のエネルギーモデルに低圧型直流回路が必要だとしてきたのは、システムをコストダウンする効果が得られるからである。
ダイレクトウォーター型燃料電池(DWFC)の概要
ダイレクトメタノール型燃料電池は、純水素も改質器も用いずに炭化水素を直接電離することが可能なことから製品化されている。PEMの原理が分かればこれが水にも応用できるということが見えてくるのではなかろうか。水もメタノールと同様にPEMが要求する濡れ性を備えている。電子を捕捉する面積が広くとってあれば、電流密度を上げる効果が得られる。PEMの能力を向上させるのに水圧という要素が使えるので、住宅用なら水ダイレクト型燃料電池があってもよいはずだ。水素化合物である水から直接発電することができるので、電解膜を採用すると非常に優れた発電システムになるだろう。ダイレクトメタノールは、腕時計、パソコン、携帯電話などの小型電源として使われるため、ポテンシャルマーケットの大きさは極めて巨大なものである。ダイレクトウォター型燃料電池は大型化が可能である。その市場性はグローバルだといってよい。
燃料電池自動車は、このPEMを採用した固体高分子型の燃料電池で作られている。純水素を燃料としているため、改質プロセスは必要がない。熱の誘導を必要としないのは、改質装置を省くことができる純水素を採用したからである。移動体では走行時不規則な揺れと予期しない加減速が発生することがある。これは改質プロセスにとって大きな動乱要因となるため、出力を安定させておくことが困難なのである。燃料電池自動車の燃料が高圧水素になっていたのは、改質を必要とする天然ガスなどの炭化水素のままでは動力用資源として、燃料電池では使えないという制約があったからだった。住宅用なら固定された静穏な状態が安定的に保たれている。改質装置で加水分解すれば水素の発生効率をより高める効果までが引き出せる。
加水分解では水蒸気を必要とするため、予め加熱しておくための燃焼が絶対的に必要なのだ。加熱行程で一旦熱エネルギーを作りだす必要があり、コ・ジェネ方式で熱エネルギーを取り出してできるだけ有効利用しなければならない。熱エネルギーと電気エネルギーを別々に作りだすという作業が求められているのは、システムにとって大きな問題なのである。燃料電池のスペックを比較しただけでは、この差が見えてくるようなことはない。総合効率という概念には、総合損失という部分が隠されている。図を見たために地の方が見えなくなってしまったのなら、その全体のもつ真の意味を知ることはできない。エネルギー供給システムの設計に当っては、これらの点を充分考慮するということが重要なことである。
