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1.感想
先ず、アメリカのタブーに果敢に切り込んだ勇気に感動しました。出版後、イスラエル・ロビー側からの執拗な脅迫・嫌がらせがあったことでしょう。そして、この本の出版によって、アメリカがどのように変わるか、或いは変わらないのか?大変興味のあるところです。
イスラエル・ロビーがアメリカでこれほどの力を持っているのは、ユダヤ系アメリカ人の財力、その寄付に拠っています。要するにお金の力で議員を動かし、マスコミを動員し、大統領を動かして、アメリカの政策をイスラエルよりに偏らせています。その組織力は大したものです。アメリカはイスラエルの属国ではないのか?アメリカの大統領はシャロンなのではないか?と思わせるほどです。しかし、その組織力に比べて、政策立案能力は大したことがないのかも知れません。彼らの推す政策はアメリカの利益を損ない、イスラエル自身の利益にもなっていないと筆者達は見ているからです。私の目にもイスラエルは武力に頼りすぎて、対等な立場での外交を疎かにしているように見えます。
そして私が興味を持ったのは、イスラエルの手口が中国の手口と共通点が多いことです。恐らく中国はこの本を教科書として、アメリカにチャイナ・ロビーを作り、中国現政権の利益を増そうとするに違いありません。そしてその時わが日本は?多分、ただあれよあれよと状況が悪化するのを見守るだけで、何も対抗手段を打とうとしないのでしょうね。大変残念なことです。
2.要約
ここで「イスラエル・ロビー」とは単一のまとまりを持った団体ではなく、イスラエルの利益を増やすことを最大の目標とする個人と団体の緩やかな結合である。大部分はユダヤ系アメリカ人からなり、これにキリスト教シオニストが含まれている。AIPACがその代表である。
彼らの活動の結果、どのようなことが起っているか?
1976年以降、イスラエルは一貫して最大の米国対外援助受給国である。最初は借款だったがその後、援助金になった。その大部分は軍事支援である。イスラエル国民一人当たり年間500ドル、第2位のエジプトは20ドル、桁が違う。しかもその他に便宜供与があり、援助金の支給条件が他国よりもはるかに良い。イスラエルは一人当たり所得が韓国・台湾を上回る富裕国である。エジプトとヨルダンはイスラエルに次ぐ米国対外援助受給国だが、それはイスラエルとの平和条約に調印したご褒美である。
過去には、イスラエルを支援することが米国の利益になったこともあったが、現在ではその利益は、ソ連崩壊と共に終っており、経済的・外交的な負担だけが増大している。
米国がイスラエルを支持した結果、テロの問題が起った。米国がイスラエルの近隣諸国を脅威とする理由は、米国のイスラエルへの支援にある。
イスラエルは自国の利益を優先し、アメリカの利益に反してもその政策を遂行してきた。
イスラエルは米軍の軍事機密を常に盗もうとしてきた。
現在、イスラエルは中東最大の軍事大国である。
イスラエルは人種差別国家である。イスラム教徒アラブ人が閣僚になったことはないし、イスラエル人と結婚したパレスチナ人はイスラエル国民になれない。イスラエルに住むこともできない。イスラエルはデモ鎮圧を理由に、多くのデモに参加していなかったパレスチナ人の子供を狙い撃ちして殺した。
イスラエルの政策を批判すると、ユダヤ系アメリカ人の支持を失い、政治家は政治資金集めが困難になる。
ネオコンは米国の利害よりもイスラエルの利害に関心が強い。
イスラエル・ロビーの力の源泉は連邦議会を動かす力にある。イスラエルは連邦議会で批判されることが殆どない世界ただ一つの国だ。議員は皆、イスラエルに関する議論を避ける。
アメリカ連邦議会
出典
イスラエル・ロビーはイスラエルに味方する議員に政治献金をする他、有能なスタッフを送り込んで、問題分析、法案立案、議会戦術の提案、法案共同提出者の募集、投票の誘導、スピーチの下書きなどを行う。議員の海外視察旅行の行き先の10%がイスラエルである。
民主党大統領候補者への個人献金の60%はユダヤ系米国人からのものだと言われている。
米国の新聞には親イスラエル派の主張だけが掲載され、アラブやパレスチナの主張は掲載されない。
ワシントンの主なシンクタンクの多くはイスラエル支持である。
イスラエル・ロビーは全米の大学にイスラエル研究プログラムを設置させようと寄付を行っており、それは成功して大学内でイスラエルの良いイメージを宣伝している。さらに大学管理者に圧力をかけて、人事決定に影響を及ぼそうとしている。このような親イスラエルキャンペーンは高校でも行われている。
イスラエル・ロビーの最強の武器は「反ユダヤ主義」というレッテルを貼ることである。
米国のイスラエル支援と米軍の駐留が、アラブ社会とイスラム社会の米国に対する怒りを掻き立てて、アル・カイダの活動を拡大させている。
ブッシュ大統領は2002年4月4日、シャロン首相に対して「ヨルダン川西岸への侵攻を止め、撤退する」よう求めた。その日、パウエル長官はイスラエル説得のために中東に向かった。イスラエルとイスラエル・ロビーは激しく反発し、最初ブッシュに同調していたライスのパウエルへの電話の内容は次第に変化た。パウエルへのブッシュ政権内の力関係が変り、パウエルは何も成果を得られずに帰国、4月11日、ブッシュ大統領は「シャロン首相を支持する」と明言した。イスラエル軍の西岸地区制圧は続いた。2002年5月9日にはイスラエルへの2億ドルの追加支援がイスラエル・ロビーの強力な支援の下に議会で可決され、ブッシュ大統領は署名した。
イスラエル シャロン元首相
出典
ブッシュはパレスチナが独立国家を作ってイスラエルと共存すべきだと考えていたが、シャロンはパレスチナが独立した国家を持つことには反対であった。そして、議会工作により、ブッシュの考えを次々と覆した。そしてブッシュも次第にシャロンに反対しなくなり、その考えに従うようになっていった。ブッシュのこのような態度に対して中東全域に怒りが充満した。しかし、このようなブッシュの変更は米国の世論調査によると、米国の世論に反している。
イラク戦争はネオコンの画策によって生まれた。イスラエルとイスラエル・ロビーがこれを支援した。国務省、情報機関、制服組の軍人がイラクに対する戦争を熱望することはなかった。
イスラエルはイラクの次の標的をシリアに定めた。しかし、シリアはヒズボラ等のテロリスト組織を支援して、イスラエルに脅威を与えているだけで、アメリカの脅威にはなっていない。それどころか、シリアはアル・カイダに関する重要な情報をアメリカに提供している。シリアからのイスラエルに対する交渉再開の提案は、シャロン、オルメルトに拒否され続けている。しかもオルメルトはそれをブッシュからの要請であると言っている。しかしそれに反する多くの証言がある。しかし、反シリア法案が議会に提出されると、大差で可決され、ブッシュ大統領は2003年12月に署名した。
イスラエルとイスラエル・ロビーは米国がイランと友好関係にならないように画策している。実際には米国はアフガニスタンとイラクの状況を救うためにはイランの協力が必要なのだ。しかし、イスラエルとイスラエル・ロビーはこのような動きを懸命に妨害している。
2006年夏、イスラエルは34日間レバノンと戦争した。イスラエル兵十数人を殺害された報復として、イスラエル軍は大規模な空爆を行い、1800人のレバノン人(大部分は一般市民、三分の一は子供)を殺すと共に、レバノンのインフラを壊滅状態にした。悪名高いクラスター爆弾さえ大量に使った。この期間、アメリカが無条件でイスラエルを支援したことによって、中東全域の反米感情が高まった。国連安保理のイスラエル非難決議案はアメリカの拒否権発動により葬られた。民主党も大統領のイスラエル支援に反対しなかった。主要報道機関は断固としてイスラエルを支持した。この戦争によって、レバノンとヒズボラの政治的立場は逆に向上した。
アメリカは中東地域から軍隊を引き上げ、地域外から均衡を図った方が、米国・イスラエルの両国に良い結果をもたらすだろう。イスラエルが現在占領しているヨルダン川西岸地区、ガザ地区、ゴラン高原から撤退すれば、反イスラエル同盟を分断し、弱体化させることができる。イスラエルがパレスチナ人の独立国家建設に反対し、一方的で不公正な解決策を強行するならば、米国はイスラエルに対する経済的、軍事的支援を減らすべきだ。
公的資金を選挙資金として候補者に与えればイスラエル・ロビーと政治家のつながりを弱めることができるだろう。
イスラエル オルメルト首相
出典
今必要なことはイスラエル・ロビーの影響力に関する率直でルールに則った議論と、中東における米国の利益についてより開かれた議論を行うことである。
