原子力発電所

1.個人的な意見

原子力発電は炭酸ガス排出量が少ない、といって宣伝している。本当だろうか?ウラン鉱石の採掘・精錬から燃料棒の作成までには相当のエネルギーが使われているはずだ、そして巨大な原子力発電所の建設とその廃棄処分、または長期間の密閉保管。放射能ゴミの処理。これらに要するエネルギーが発生する炭酸ガスの量を計算しなければ、原子力発電は炭酸ガス排出量が少ないとは断言できない。おそらく、石油の方が少ないのではないかと私は思う。

原子力発電はその発生エネルギーの3分の1しか電気にできず、残り3分の2を廃熱として捨てている。これは直接地球を暖めている。原子力発電が地球温暖化を進めているのだ。逆ではない。

左翼系の人達は一貫して原子力発電に反対している。しかし、彼らは中国・韓国・北朝鮮のために反対しているのであって、日本のため、地球のために反対しているのではない。したがって彼らの意見には政治的な偏りが見られる。

原子力発電は極めて不経済な発電方法だ。純経済的な立場からは到底許容できるものではない。しかも地震国日本では地震による被害・事故を防ぐことはできそうもない。廃棄物処理も良い方法は見付かっていない。
只一つ長所があるとすれば、それはプルトニウムを作り出し、核武装を行うのを容易にすることだ。中国は何十発と言われる核ミサイルの照準を常時日本に合わせて威嚇しているし、北朝鮮もいつ核ミサイルを手に入れるか分からない。日本が中国の属国になりたくないのならば、核攻撃の標的にされる可能性は極めて高い。これに対抗するためには日本も核武装をする必要が出るかもしれない。その時のためには原子力発電をやっていて良かった、と言うことになる可能性はある。逆にこれしか原子力発電のメリットは見当たらない。

日本の電力料金は、産業用、家庭用ともに、世界で一番高い。業務用に限っても、フランスの3倍、イギリスの2.2倍、アメリカの3.7倍、スエーデンの4倍である。これは、世界一不経済な原子力発電に膨大な資金を投じているためではないかと思われる。高い電力料金は日本の産業競争力を奪い、家庭生活の豊かさを奪っているのではないか。

チェルノブイリ原子力発電所
出典

2.原子力発電所とはどういうものか


日本で稼動している原子力発電所は54基(内、柏崎刈羽原子力発電所7基は停止中)、アメリカ、フランスに次ぐ第三位である。総発電量の約35%を占める。いずれも1970年以前に計画されたものである。

原子炉では中性子をウラン235にぶつけてその原子核から更に中性子を飛び出させる。その内の1個だけを別のウラン235にぶつけて核分裂がつながるように制御する。これが連鎖反応でその時の状態が臨界である。臨界を越えると核分裂がどんどん大きくなって暴走し爆発する。これをわざとやるのが核爆弾である。

アルファ線はヘリウムの原子核が飛び出したもので、紙1枚で止まる。ベータ線は電子が飛び出したもので金属や板で止まる。ガンマ線は強い電磁波で厚い鉄板、コンクリート、鉛などでやっと止められる。中性子線は中性子が飛び出すもので、コンクリートは通り抜けるが水やパラフィンなど、水素を多く含むもので止まる。人体は多くの水を含むので、中性子線を良く吸収し大きな影響を受ける。どの放射線も生き物の身体に当たるとその細胞を傷つける。そして、セシウムは筋肉や生殖腺に、沃素は甲状腺に、ストロンチウムは骨に集まる。

日本の商業用原子力発電所はすべて軽水炉である。軽水炉には沸騰水型と加圧水型とがあり、沸騰水型は東芝と日立が作っており、東北電力、東京電力、中部電力、北陸電力、中国電力が利用している。加圧水型は三菱重工が作っており、北海道電力、関西電力、四国電力、九州電力が利用している。

日本では商業規模でウラン鉱を採鉱できるところはないので、カナダ、オーストラリア、南アフリカなどから精錬ウラン(イエローケーキ)を輸入している。しかし、この中には原子炉で使えるウラン235は0.7%しか含まれていないので、3~5%にまで濃縮する必要がある。国内施設では能力が不足するので、アメリカやフランスから濃縮ウランも輸入している。濃縮工場では濃縮カスの「劣化ウラン」が大量に出るが、使い道がないのでゴミとして溜めている。濃縮ウランから燃料棒を作り、原子炉には数万本の燃料棒を入れる。

使用済み燃料の中にはまだ燃せるウランの燃え残りと新しくできたプルトニウムが含まれている。世界的には危険を避けて、この使用済み燃料は高レベル放射性廃棄物として処分するのが主流だが、日本ではこれを再処理して再び燃料として使う。これが再処理だが、日本の東海村の施設では能力が不足なので、イギリスとフランスに依頼していた。しかし、その契約も終了するので青森県六ヶ所村に大型工場を建設中であるが、トラブル続きで計画が再々延期されている。

原子力発電では発生した熱の3分の1しか電気にならず、3分の2は廃熱として地球を暖めている。そして大量の放射能を出すゴミが出る。このゴミは捨てられないので、放射能が減るまで貯蔵し、ある程度の放射能をフィルターで取り除いた上で、空気や水で薄めて捨てている。それでも残る高レベル放射性廃棄物や固体ないしドラム缶に詰めて固体化した放射性廃棄物は、海に捨てようとしたが、1993年の国際会議で禁止された。そこで日本原燃と言う会社が作られ、そこが六ヶ所村に埋設センターを作った。ここで300~400年貯蔵することになる。約300万本のドラム缶を埋める計画だ。貯蔵中に老朽化して、ひび割れなどから放射能漏れが起ることが心配である。

プルトニウム239の半減期は24,100年、ウラン235の半減期は7億年。使用済み燃料を再処理した後に残る高レベル放射性廃棄物には半減期が214万年のネプツニウム237、21万年のテクネチウム99、1600万年の沃素129などが含まれている。

原子力発電所は出力を細かく調節できないので、フル出力で動かし続ける。そこであまった電気は揚水発電に使うことになる。しかし、揚水発電所では揚水に使った電気の7割くらいしか発電できない上に、現在の設備稼働率は数パーセントである。つまり揚水発電所は大変コストの高い発電所なのだが、原子力発電所を動かすためには無くてはならないものなのだ。

火力発電の稼働率は現在43%程度であり、火力の稼働率を70%程度上げれば原子力発電をすべて止めても需要を満たすことができる。現在の原子力は過剰設備であるとも言える。

天然ウランの99.3%を占めるウラン238にプルトニウムを混ぜて、中性子をぶつけるとプルトニウム238に変わる。つまりプルトニウムが増える可能性がある。これを実現しようとしたのが高速増殖炉(フランスのフェニックス、日本のもんじゅ)だがいずれも大事故を起こし、フランスは断念、日本は中断している。アメリカ、イギリス、ドイツはその前に撤退。いずれにせよ高速増殖炉が実現できなければ、ウランは40年で枯渇すると言われているし、原子力の存在理由はなくなると言う識者もいる。

そこで、従来の原子炉でプルトニウムを燃やそうというのがプルサーマルだ。しかし危険性が高くなる上に原価も高く付くので、実施は遅れ続けている。

放射性廃棄物は現状地中に埋める以外に処分の方法がない。しかし、問題は地下水である。地下水がしみこむ所では地下水が放射能に汚染され、やがて地上または海に出て行く。しかし、日本中で地下水の流れていないところはない。地下1000メートル以下なら良いかと思うと、廃棄物を埋めるための竪穴が、もっと上の層の地下水の導管になってしまう。そこでドイツでは地層全体を冷凍して固めようとしたが失敗した。

このため、ドイツ、アメリカでは地層処分を断念して、使用済み核燃料としてとしてそのまま地上に保管し、万一の場合は取り出し、点検ができるようにする方向に動いている。

もう運転できなくなって閉鎖した原子炉(廃炉)は燃料や冷却水を取り出してコンクリートやアスファルトで密封して放置するのが世界の主流である。しかし、日本では外側の建物も全て解体撤去することになっている。何十万トンの放射性廃棄物が発生する。放射能レベルの高い所を解体するには遠隔操作機器を使う必要があるから、これも放射能に汚染されて放射性廃棄物となる。強い放射能を持った鉄材はプールの水の中で切断しないといけないので、そのプールや水も放射性廃棄物となる。運転停止から5~10年間は放射能が減るのを待ち、その後30年程度をかけて解体撤去を行うことになる。

3.地震


1995年の兵庫県南部地震はマグニチュード7.2であった。ところが原子力発電所が直下型地震に耐えられる基準として定められているのはマグニチュード6.5でこれよりはるかに低い。1854年の安政東海大地震、安政南海大地震は推定マグニチュード8.4である。 このたび地震被害にあって、現在まだ停止されている柏崎刈羽発電所の危険性も早くから指摘されていたが無視されていた

関東大震災は神奈川県西部の岩盤が大破壊することによって発生したことを思えば、原子力発電所を岩盤の上に建てても安全とは言えない。しかもマグニチュード8の地震が伝わる速度は時速1万キロに達すると言われる。核分裂を止めるために制御棒を挿入する時間はない。

プレート運動による地震発生メカニズムを考慮して原子炉設置基準が定められたのは1981年である。一方、1966年に東海原子力発電所、70年に福井県の敦賀1号、美浜1号が運転を開始している。これら初期の発電所は極めて小さな揺れにしか対応していない。2000年時点では、基準に従って設計された原子炉は19基に過ぎなかった。

原子力発電所は加圧水型の場合、原子炉、蒸気発生器、タービンからなり、その間が金属パイプで接続され、その中を高温の熱水や水蒸気が激しく流れている。地震で一番恐ろしいのはこれらのパイプが一瞬で破壊される「ギロチン破断事故」である。この場合には、緊急炉心冷却装置が働いて冷水が炉心に送り込まれることになっているがこれもまた金属パイプで接続されている。大地震のときにこのパイプだけが破断しないとは思えない。

さらに所内完全停電が恐ろしい。所内完全停電を誘発する可能性があるのは、送電系統やタービンなど、周辺の装置であり、これらは一般建造物とさして変わらない耐震性しか持たされていない。これらが被害を受ければ、所内は停電し、コンピュータも一切の自動安全装置も停止する恐れがある。


4.事故対応

1999年東海村JCOで臨界事故が起った。このようなときにはできるだけ広範囲の人を公共交通機関で安全な場所まで輸送する必要がある。

2000年の有珠山噴火のときには、付近を走っていた特急列車が乗客を途中で降ろし、路線を変更して住民を救出した。チェルノブイリ事故では、バス数百台を半日で動員して数万人の市民を避難させたなどの例がある。

事故後放置されたチェルノブイリの農家
出典

JCO臨界事故当時の原子力問題最高責任者であった、科学技術庁長官の有馬朗人は臨界事故発生の報告を受けたあとも事務室の後片付けを続けていただけだった。屋内にいては中性子被爆を防ぐことはできないにも関わらず、政府は住民に対して「屋内待避」命令を出しただけであった。これは外出禁止と同じで、チェルノブイリ事故で取られた対策とは正反対のものである。日本政府は住民の安全よりも、混乱が起きないことを望んだのである

事故後に決められた「原子力災害対策特別措置法」でも住民の安全を守ることではなく、情報を管理し、住民を制御することに重点が置かれている。次に大事故が起っても住民には何も知らされず、避難対策も取られないだろう。しかも事故調査委員会は被ばく線量を事後的に修正して故意に被害を低く見せていると言われている。

チェルノブイリ事故ではチェルノブイリから300キロ離れた地点の住民にも避難命令が出た。浜岡原子力発電所から300キロと言うと茨城県水戸から千葉全域、東京、大阪、名古屋が含まれる。またその汚染地域は日本本州の6割以上になる。

スリーマイル島では事故発生に気付いて作業員が制御棒を挿入し、核分裂を止めたのに、次々と異常が発生し最後には燃料棒が熔け落ちるメルトダウンが起った。制御棒では事故を食い止めることができないと言うことが明らかになった

スリーマイル島原子力発電所
出典

5.参考文献

原子力発電で本当に私が知りたい120の基礎知識、広瀬隆、藤田祐幸著、東京書籍
新版 原発を考える50話、西尾漠著、岩波ジュニア新書
手に取るようにエネルギー問題がわかる本、有馬朗人監修、かんき出版
必然の選択―地球環境と工業社会、河宮信郎著、海鳴社

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