水素貯蔵技術

水素エネルギーの時代が始まるには、低コストで扱いやすい水素の貯蔵・運搬技術が必須である。そこで、現在どのような水素貯蔵技術があるのかを調べてみた。
・ 高圧圧縮水素
・ 液体水素
・ 水素吸蔵合金
・ カーボンナノチューブ
・ 有機ハイドライド

1. 高圧圧縮水素
水素をガス状のまま運搬する場合は通常、200気圧(20Mpa≒200kg/cm2)に圧縮している。当然、爆発の危険がある。また、水素脆化と呼ばれるように、水素は金属を腐食させるので、腐食されないボンベの製造が難しい。しかも水素は非常に軽いので、圧縮しても体積が大きくなる。

2. 液体水素
水素を液化すれば体積は約1/4になる。しかし、水素の沸点は-252.6℃なので、液化には多くのエネルギーを必要とする。さらにガス化しないように、これ以下の温度を保つのにも多くのエネルギーが必要である。液化しても水素の比重は70.8kg/立方メートル(20Kの時)で非常に軽い。水の約1/14である。したがって燃料タンクに詰めた時、非常に大きな体積を取る。
このような液体水素の輸送・貯蔵する際の最大の問題は、運搬容器の断熱性能を高めて、気化による損失・拡散を防ぐことである。
以上のように、水素ガス、液体水素の貯蔵・運搬は高コストなので、大量に水素ガスを必要とする工場(光ファイバーやガラスメーカー等)では、オンサイト供給を行う所もある。これは水素を必要とする工場内に水素発生装置を設置して、工場外での水素の貯蔵・運搬そのものをなくそうとするものである。
参照:http://www.iwatani.co.jp/jpn/h2/tech/technique.html

3. 水素吸蔵合金
現在知られている水素吸蔵合金には以下のようなものがある。
· AB2型:チタン、マンガン、ジルコニウム、ニッケルなどの合金をベースとしたもの。水素密度が高く、容量を上げることが可能だが容量の大きい合金になるほど活性化が困難という欠点がある。
· AB5型:希土類元素、ニオブ、ジルコニウム1に対して触媒効果を持つ遷移元素5を含む合金をベースとしたもの(LaNi5などが代表)。初期段階からの水素化反応が容易だが、希土類元素やコバルトを含むため高価なのが難点。
· Ti-Fe系:比較的空隙の多い体心立方晶の金属間化合物をなすこの系をベースにしたもの。
· V系:バナジウムは水素と効率よく反応することが知られており、これをベースとした比較的空隙の多い体心立方晶の合金が各種研究されている。
· Mg合金:マグネシウムは7.6 wt%もの水素を吸蔵するが、水素化マグネシウムが比較的安定であるために、これを不安定化する触媒元素との合金が各種研究されている。
· Pd系:パラジウムは自分の体積の 935 倍もの水素を吸蔵するが、高価なのが難点。
· Ca系合金:水素との親和力が強いカルシウムと遷移元素(ニッケルなど)の合金が中心。
気体と比較して極めて高い水素充填密度を実現することができる。また、水素放出が比較的穏和に行われるため、急激な水素漏れによる事故の発生も防止できる。
しかし、V系合金やMg基合金以外は重く、車載などの目的には適さない。また、水素吸蔵放出の過程で反応に伴う熱の出入りがあり、水素吸蔵放出時の伝熱効率の向上が未だ問題点として存在する。さらには、合金に使用される希土類元素や触媒元素が高価、かつ資源量に乏しいこと、リサイクルが容易でない、水素吸蔵放出を繰り返すと脆化して(水素脆化)吸蔵率が低下するなどの問題がある。
参照:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B0%B4%E7%B4%A0%E5%90%B8%E8%94%B5%E5%90%88%E9%87%91

一般にMg軽合金やTi系合金は水素重量密度が5wt%以上と水素吸蔵能力は高いが、動作温度が300℃以上と高温条件 を必要とする。一方、V系合金は動作温度は100℃以下と低いが、実質の水素重量密度は2~3wt%程度である。
以上のように、水素吸蔵合金による水素貯蔵も多くの問題を抱えている。
4. カーボンナノチューブ
カーボンナノチューブはファンデルワールス力によって水素を吸着する。ただし,熱的な振動で水素が離れるために液体窒素を使って低温にしなければならない。
参照:http://techon.nikkeibp.co.jp/article/WORD_LEAF/20050808/107449/

現在研究段階であり、実用化されるまでにはまだ時間が掛かるのではないかと思われる。目は離せないが、直ちに利用できるとは思えない。

5. 有機ハイドライド
有機ハイドライドは、シクロヘキサンやデカリンなどの液体有機物であり、脱水素触媒により芳香族炭化水素と水素に分解し(水素放出)、芳香族炭化水素と水素から合成することができる(水素貯蔵)。また、軽量・コンパクトであり、安全性に優れ、水素の取り出しも容易である。常温常圧で液体なので既存インフラの活用ができること、可逆性がありナフタレンなど、水素化反応と脱水素化反応を繰り返すことが出来るので、リサイクルが可能なこと、などの利点がある。
いくつかの実証研究が行われた段階で、実用化はまだされていないが将来性は高いと思われる。