水素を製造するにはどうすればいいのだろうか?
誰でも直ぐ思いつくのは、水の電気分解だろう。確かにこれで水素は作れるが、そうやって作った水素の持つエネルギーは使った電気エネルギーよりも増えることはない。少なくともその水素を使って発電すれば、水の分解に使った電気よりも少量の電気しか得られない。
と言うことは、水を電気分解して水素を作っても意味があるのは、それが電気の消費地への送電が困難な場合に限られるだろう、ということだ。
たとえば陸地から遠く離れた海の上である。そのような場所で、太陽光発電、太陽熱発電、波力発電、風力発電などによって発電すれば、その電気で水素を作り、陸地に運ぶことは経済的に成り立つ可能性がある。
しかし現在の太陽光発電、太陽熱発電、波力発電、風力発電は従来の火力発電よりもコスト高になっている。この発電コストが技術革新によって革命的に安くならない限り、このようにして作った水素エネルギーの価格は現在の化石エネルギーよりも高くつくはずだ。
(設備利用率向上のための夜間オフピーク電力の活用や、風力発電所の系統連系のための出力平準化などを考えれば、別のコスト計算が可能になるだろう。)
一方、化石エネルギーはいずれは枯渇する。そしてその枯渇は、ある日突然に枯渇するのではなく、徐々に採掘が困難になり、遂に取れなくなる、と言う形を取るに違いない。そしてその間に化石エネルギーの価格は高騰すると予想される。そうすればどこかの時点で、高騰する化石エネルギーの価格を、上記の自然エネルギーで作った水素の価格が下回ることだろう。
水の電気分解以外にも水素製造の方法はある。
現在、工業的製造法として確立しているのは化石資源の水蒸気改質プロセスだが、大量の二酸化炭素を放出する。
一方、化石資源を用いない水素製造法としては、
(1) 水の熱化学分解、
(2) バイオマスの変換、
(3) 水の光分解
があるがいずれも技術的に未確立である。
水の熱化学分解
水を熱により直接分解するためには理論的には2,500℃以上の高温を必要とする。しかし、最近1,000℃以下の熱で水を分解する熱化学サイクルが多数提案されている。二酸化炭素を排出しない熱源として、原子炉の核熱や太陽熱の利用も考えられている。
バイオマス
バイオエネルギーを利用したり(燃焼熱、発電、液体燃料など)、あるいは、バイオマスを原料として水素を製造する際には二酸化炭素が発生するが、その量はそのバイオマスの起源である植物が成長する過程で大気中から固定した二酸化炭素の量に等しいので、トータルで見ると大気中の二酸化炭素濃度を増加させない。
乾燥系バイオマスの場合には、基本的には熱化学的ガス化プロセスにより水素を製造できる。この際、反応温度を高めるために、バイオマス自身の燃焼熱を利用する。ただし、水素の他に、一酸化炭素や炭化水素系ガスが発生するため、 これらの副生物の改質や除去が必要となる。
一方、含水率の高いバイオマスの場合には、メタン発酵プロセスが実用化の段階に達しており、生成メタンから水素を製造できるが、発酵に数週間程度の時間がかかる。この他、触媒による水相改質、超臨界水ガス化法、微生物による水素発酵法などが考案されている。
しかし、人口増加と気候変動により将来の食糧難が予想される現在、食糧生産と競合する様なバイオマスは無意味であろう。エネルギー源として利用すべき物は、食用となる部分を抽出した後の滓から取れるバイオマスに限定されると思われる。
例えば、製パン廃棄物等から水素を高効率で生成する「水素・メタン二段発酵技術」、
バクテリアが菓子産業から出される糖分を多く含んだ廃棄物を食べる過程で水素ガスを放出する技術
等が提案されている。
また、実際に建設されたものには下記がある。
嫌気性微生物により生ごみ・紙ごみ・食品系廃棄物を分解処理し、水素ガスとメタンガスを回収する高効率水素・メタン醗酵実験プラント(鹿島建設株式会社、財団法人バイオインダストリー協会)
出典
水の光分解
太陽光の光エネルギーにより、水を分解し水素を生成することができる。最近注目されているのは、光触媒を用いて水を直接光分解する技術である。これまでに、紫外域の光に対し反応する光触媒材料は多数見出されているが、紫外光は太陽光の入射エネルギーの約4%にすぎない。従って、水素を効率的に生成するには、太陽光の入射エネルギーの約43%を占める可視光(波長 ~400-700nm)のできるだけ広い波長範囲に対して応答する光触媒の開発が必要となる。
近年、いくつかの新しい研究成果が報告され、本分野の研究が活発化してきている。しかし、エネルギー効率が低く、実用化には程遠い。実際、他の太陽光起源の水素製造システムと比較して見ても、太陽光発電と水電解を組み合わせたシステムや、バイオマスを育成し水素に変換するシステムよりもエネルギー効率が1~2桁低い。
また、光合成によって水から水素を生成する光合成微生物を介して水素を生産する光生物的水素生産も研究されているが、微生物の水素生産能を大幅に向上させることが不可欠である。

出典
以上の他に、化学工場がカセイソーダを精製する際に大量に排出される水素の利用も考えられる。
また、石油精製プロセスの中で、原油の蒸留から得られた直留ナフサを原料として、高オクタン価の芳香族を多量に含むガソリンを製造する、接触改質触媒プロセスでは、水素を多量に副生する。
出典
しかし、通常この副生水素の量は灯・軽油の脱硫 程度までは賄えるが、重油の脱硫や水素化分解などを行う場合は水素消費量が大きいこともあり、副生水素のみでは不足するため、水素製造装置が併設されることが多いので、残念ながらエネルギー源として転用できる可能性は少ない。
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