輸送力の低下
下図は突然の気候変動によって人類の輸送能力が下がり、その必要を満たせなくなることを示している。
元の報告書から転載
現在の人類の生活を支えているのは輸送能力である。必要な資源が一部の地域に偏って存在しているからだ。
突然寒冷化した場合、輸送能力は大幅に落ちるだろう。その結果、食料、水、エネルギーを争奪する戦争が起ると思われる。戦争と飢餓により人口は減少し、やがて低下した輸送能力に見合うようになる。
高い輸送能力をもっている国は同時に突然の寒冷化に対処する能力も高いだろう。例えば米国や西欧である。このことが持てるものと持たざるものとの対立を激しくする。そして持たざるものは行動を起こす。
輸送力低下と戦争
人類は飢餓と略奪の選択を迫られた時には、隣国を略奪してきた。狩猟採集時代から農耕時代まで、戦争があると全人口の25%の成人男性が死んだ。
平和な時代が来たのは、輸送力が増した時代である。しかし、このような平和な時代は長続きしない。人口が急速に増加して輸送力を圧迫し、戦争を呼び戻す。最も闘争的な社会のみが生き延びてきた。
過去3世紀では、皆殺しを避けて、勝敗を決めるために最小限の敵を殺した後、生き残った人間に自国の経済を再建させるようになった。戦勝国も輸送力を増強して隣国との関係の融和に努めるようになった。
突然の寒冷化によって輸送がいたるところで途絶すると、このような傾向も崩壊して元の状態に戻る。戦争の時代になる。
予想される紛争
米国とオーストラリアはその自給力を守るために要塞化する。米国の被害は大したことはない。国境警備はカリブ諸国、メキシコ、南米からの難民を排除するために堅固になる。原子力、再生可能エネルギー、水素、などの高価なエネルギーが使われるようになり中東は萎縮する。漁業権紛争がいたるところで起り、農業支援、災害救助が広く行われる。米国がメキシコにコロラド川の水利権を保証していたのを取り消すことにより、両国の間の緊張が増す。それでも米国は他の国よりは良好な状態を保つ。
飢饉、疫病などにより多くの国では輸送に対する需要が能力を超える。このことが絶望を生み、侵略に結びつく。東欧はロシアに注目するだろう。日本は臨海都市の洪水に悩まされ、飲料水が汚染されて、脱塩プラントとエネルギー多消費農業を支えるために、サハリンのエネルギーに目を付ける。パキスタン、インド、中国は国境で避難民や水利権、耕作権を巡って争う。スペインとポルトガルの漁民は漁業権を争い海戦になるかもしれない。
200以上の土地が、川を隔てて隣国に接している。そのような所では飲料水、灌漑用水、輸送路を求めて争いが起る。ドナウ川は12カ国に接している。ナイル川は9カ国、アマゾン川は7カ国。
米国とカナダは国境管理を簡素化して一体化するかもしれない。あるいはカナダは水力を独占しようとして米国との間にエネルギー問題を起こすかもしれない。南北朝鮮は協力して核武装する可能性がある。ヨーロッパは一体となって難民移入を抑え、外部からの侵略に備える。そして資源豊富なロシアを仲間に入れる。
核兵器の拡散は抑えられない。寒冷化が進むにつれて2酸化炭素の排出は減る。エネルギーに対する需要は増えるのに、供給は減るので、原子力エネルギーの重要度が増す。中国、インド、パキスタン、日本、韓国、英国、フランス、ドイツはイスラエル、イラン、エジプト、北朝鮮と同様に核兵器を開発できる。
日本のように強い団結心を持った国はうまく対処するだろう。インド、南アフリカ、インドネシアのように国内が分裂している国は国内の秩序が維持できないだろう。突然の寒冷化で一番困るのは、その継続期間が分からないことだ。熱塩循環が回復して温暖化が始まるまで、10年、100年、1000年のいずれになるのかが分からない。
(つづく)
