松村 劭氏を訪ねて

2007年2月9日、松村 劭氏を訪ねてお話を伺った。

略歴:(まつむら・つとむ) 1934年、大阪生まれ。防衛大学校卒。陸上自衛隊幕僚監部情報幕僚、作戦幕僚、防衛研究所研究員、西部方面総監部防衛部長などを歴任後、1985年に退 官。在職中は在日米軍との共同作戦計画にも携わった。元陸将補。米国デュピュイ戦略研究所東アジア代表。英国国際戦略研究所所員。専門は戦略・戦術研究、 情報分析。
著書多数:『戦争学』『ゲリラの戦争学』(以上、文春新書)、『戦術と指揮』(文春ネスコ)、『日本人は戦争ができるか』(三笠書房)、『悪の国防学』(太陽企画出版)、『海から見た日本の防衛』(PHP新書)、『平和のための「戦争学」』(PHP研究所)。
松村 劭氏
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1. ペンタゴンレポート
起る可能性のあること全てに対して備えることはできない。心配される事態が発生する公算に、その場合の損害額を掛けた、言わば「期待値」の大きい事柄に対して対策を打つべきである。
アメリカは常に脅威に対して直接対応をする。つまり間接近接戦略(Indirect Approach)が下手である。実際に成功の公算が高いのは直接対応でなく、間接的な対応である。女性に対するアプローチを考えれば理解できるだろう。押しの一手だけが有効なのではない。時には目指す彼女の友人を通して最初にアプローチする方が効果がある。
ペンタゴンレポートを全てウノミにする必要はない。ペンタゴンが公表するレポートは常に政治的なものだ。勝利を追求するペンタゴンと交渉を追求する国務省はもと考え方が異なる。あれはペンタゴンの国務省に対する抗議である。いわば一種の宣伝文書だと思った方が良い。

ペンタゴン
ペンタゴン
出典
アメリカの亭主は家庭で全ての権利を握っている。人は「権力(栄達)」「財力(栄華)」「戦力(栄光)」を求めるが一人の人間が二つを握っては社会が崩壊する。ところがアメリカの家庭では亭主が財力と権力の両方を持ってよいとする。これがアメリカ流の考え方だ。キリスト教原理主義の一派、カルバン主義から強い影響を受けて清教徒が生まれ、アメリカはこの清教徒が作った。運命予定説を主張するカルバン主義では、金儲けは悪ではなく善である。それがアメリカの独立戦争と結びついて建国精神の一つになった。次いでアメリカは南北戦争を経験した。これは国内戦争であり、国内戦争は国際戦争と違って絶滅戦争になる。アメリカは南北戦争の経験が強烈で、この国内戦争の論理を国際戦争に持ち込んでいる。これは注意する必要がある。巻き込まれては危険である。

2. ゲリラ
チェ・ゲバラ
チェ・ゲバラ
出典
第二次世界大戦後の国際法は国家に属しないゲリラ団体を交戦団体とみとめて、捕まえたゲリラを軍人並に捕虜であると決めた。これは間違いである。この決定のためにゲリラを派遣した国は関係ないと言えるようになった。
制限戦争論(キッシンジャー)と言う考えがある。ローカルな戦争の戦域を政治的論理で決めるという考えだ。それはしばしば軍事的合理性によって決める戦域と同じではない。そのギャップが「聖域」となる。これでは戦争が終らなくなる。軍事理論と政治理論が乖離しているのだ。ゲリラは聖域に逃げるので戦争が終らなくなる。聖域を断ち切ることが必要だ。しかし政治的な理由からゲリラの逃げ込む聖域に手を出せないことが多い。ゲリラは必ずしも戦場内の民衆に好かれていない。必要物資の徴発を行い、危険を呼び込むからだ。だからゲリラはこの聖域から外国の支援を受けて武器、人員、食料その他の補給を受けて再び戦場に戻ってくる。ゲリラには通信が必要である。これを抑えれば良い。軍隊はいらない。ゲリラを退治するには秘密警察と郵便局があればよい(今ならインターネットと無線?筆者)。通信を抑えられると、ゲリラは怖くて戦えなくなる。補給を立つ=聖域を潰すことが肝要である。英軍がマラヤゲリラを潰したのも、ロシアがハンガリー動乱を鎮圧したのもこれだ。

ホーチミンルート
ホーチミンルート
出典

3. 尖閣諸島。
戦争は常に敵国を滅亡させる全面戦争(All-out War)ではない。戦争の歴史は戦争原因(Casus Belli)が限定されている限定戦争(Limited War)が通常だから総力戦(Total War)で戦わない。戦争目的と手段・方法が経験則として均衡がとれている。従って、尖閣列島の争奪を巡って総力戦にならない。中国が尖閣列島を不法占拠すれば、その中国軍を撃破すればよい。その報復に中国が日本を核攻撃することも、尖閣列島の巡る日本軍に対して核攻撃することはない。核爆弾を使えば、中国は尖閣諸島は確保できるかもしれない。しかしそれでは中国の失うのもが大きすぎる。中国は世界の笑いものになるだろう。したがって中国は核を使うことができない。ここで中国と喧嘩しなければ、尖閣諸島は中国が実質支配することとなり、世界は「既成事実の原則」によって中国領土と認めるだろう。ここで歴史論争を持ち出しても効果はない。それよりも尖閣列島において中国軍を撃破して恥をかかせれば日本が戦略関係の主導権を握ることができる。おおいに喧嘩すべきだろう。
尖閣諸島
尖閣諸島
出典

先年、中国の原子力潜水艦が日本の領海を侵犯したことがあった。海上自衛隊では、これを爆撃しようと言う意見が強かったが当時の政府に止められた。自衛隊はこちらが気が付いている事を中国側に知らせるために連続してソナー爆弾を投下した。これは海中で人間が耐えられないほどの騒音を発する。後ほどの情報によると中国側乗り組員が4人発狂したそうだ。
原子力潜水艦
原子力潜水艦
出典
同じ手法は竹島にも使える。西欧のことわざによれば「恋愛と戦争では何をしても正当(All is fair in love and war)」なのだ。法が適用できない分野である。(日本政府には到底できないだろう。現状のまま推移すれば尖閣諸島も竹島も失われるのでは?筆者)

竹島
竹島
出典

4.中国のミサイル
現在中国は瀋陽軍区の通化(鴨緑江の北西)に24基~27基のミサイルを展開して日本の主要都市や国家インフラに照準を合わせており、いつでも発射できるようになっている。米軍基地を狙わない。米軍を核攻撃すれば米中全面核戦争になるからだ。台湾に照準を合わせてあるのは200基である。内130基は沖縄、九州を射程に入れている。その脅威はマスコミが騒がないが北朝鮮の核どころではない。
ミサイル基地には、ハード型とソフト型がある。ハード型は竪穴、ソフト型は横型である。ハード型は核爆弾でないと破壊できないが、ソフト型は核でなくても壊せる。日本は核武装する前に核弾でも通常弾でも正確に命中させることができるミサイルとその機動的なブラットフォームを開発し、装備することが対核戦略のための第一歩である。


北朝鮮の核ミサイル基地
出典

松村劭書店

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