本当はヤバイ!韓国経済―迫り来る通貨危機再来の恐怖―、三橋貴明著、彩国社刊、を読んだ。興味深かったので以下に内容を紹介する。国際収支に関する初歩的な説明は省略する。
1.経常収支
韓国の貿易収支は黒字が2004年以降毎年減少し、2007年の第一四半期は赤字。今年度は通年で赤字になる恐れがある。しかしこれはコストダウンを求めて海外に工場を移転したことによる物かも知れない。そうだとしたら一概に心配する必要はない (資本収支)。
サービス収支は04年以来一貫して赤字であり、しかも赤字幅は増えている。これは海外旅行も増えているのだが、韓国国内の教育事情に絶望した親達が子供達を海外留学させているからだ。韓国の教育は、日教組の元祖の全教組による、北朝鮮賛美教育と平準化教育によって壊滅状態になっている。韓国は母親が子供について小学校から海外留学をしているので、父親が韓国に残って、生活費の仕送りそしている。これがまた韓国の経常収支を悪化させている(経常移転収支)。
さらに、韓国では国民の海外移住が進んでいる。移住すれば当然資産を海外に持ち出すことになる。また、移住しないまでも海外投資、資産逃避が増えている。これでも経常収支は悪化する(資本移転及び非金融資産収支)。韓国に投資していた外国資本が、儲からないので資本を引き上げれば当然経常収支が悪化する(直接投資収支)。 数字を示せば下記のようになる。
2004年 |
2005年 |
2006年 |
2007年1・3月 |
|
| 経常収支 | 281.7億ドル | 149.8億ドル | 60.9億ドル | ▲15.2億ドル |
| 貿易収支 | 375.6億ドル | 326.8億ドル | 292.1億ドル | 61.8億ドル |
| サービス収支 | ▲80.4億ドル | ▲136.5億ドル | ▲187.6億ドル | ▲61.8億ドル |
| 所得収支 | 10.8億ドル | ▲15.6億ドル | ▲5.3億ドル | ▲6.9億ドル |
| 経常移転収支 | ▲24.3億ドル | ▲24.8億ドル | ▲38.1億ドル | ▲8.3億ドル |
| 資本収支 | 75.9億ドル | 47.5億ドル | 186.1億ドル | 48.4億ドル |
| 直接投資収支 | 45.8億ドル | 6.7億ドル | ▲34.8億ドル | ▲9.6億ドル |
| 証券投資収支 | 86.1億ドル | ▲17.2億ドル | ▲225.4億ドル | ▲101.5億ドル |
| その他投資収支 | ▲38.5億ドル | 68.1億ドル | 476.7億ドル | 167.6億ドル |
| 資本移転及び 非金融資産収支 |
▲17.5億ドル | ▲23.4億ドル | ▲30.3億ドル | ▲8.1億ドル |
| 外貨準備高 | 387.1億ドル | 198.0億ドル | 221.1億ドル | 39.9億ドル |
2.円キャリトレード
現在日本では歴史的な低金利が続いている。この低利で円を借り出し、外貨に換えて、高利な国に投資する。これが円キャリトレードである。この時、円をウオンに換えれば、円が下がり、ウオンが上がる。 円キャリトレードを続けていると、継続的に円安となる。そこで円建て融資を返す時に、返済額が借りた額よりも少なくなる。これが円キャリトレードのメリットである。日本の経常収支は黒字だから、その分の外貨が円に両替されて、円高になる筈である。それがそうならないのは、この円キャリトレードが大規模に行われているからだ。 これが、日銀の利上げ等によって、円高の不安が起ると、円キャリトレードを止めて、円を返済する者が出てくる。そうなると円高になるので、膨大な損失が円キャリトレードを行っていた金融機関に生じる。そしてその被害をまともに受けそうなのが韓国だ。 2006年の韓国の短期対外債務(1年以内に返さないといけない借金)は対外債務全体の43.1%である。1997年にアジア通貨危機のきっかけを作ったタイの短期外債比率は43%であった。 韓国政府はウオン高を操作してウオン安にするために、ドルを大量に買ってきた。この資金を作ったのが「外国為替平衡基金債券」と言う名の国債で、18兆ウオン(約2兆円)の発行残高がある。 しかし、そのままではウオンが国内に溢れてしまい、インフレになる恐れがある。そこで韓国銀行(中央銀行)は「通貨安定証券」を発行してウオンを市場から回収しようとした。その発行残高は2007年4月で157兆400億ウオン(20兆円以上)である。年間の利子負担だけで6兆ウオンとなり、韓国銀行は3年連続の赤字を出している。しかも、通貨安定証券の債務は国家債務に算入されていない。これを算入すれば韓国は今既に「純債務国」である可能性がある。 2006年末、韓国の円キャリトレード残高は1兆2261億円であった。これは企業の設備投資には使われず、不動産投機と株投機に向かった。
3.労働組合
韓国企業は国内価格と海外価格が全く乖離している。その結果、サムソン電子の2004年売上高営業利益率は国内56%、海外2.4%となっている。それで少し通貨高になると海外市場が赤字化するのだ。 韓国では労働組合専従員の給与は会社が支払う。またストライキ中も会社が給与を支払わなければいけない。このように強い労組のために韓国製造業の人件費は日本を除くアジアで一番高くなった。大卒初任給は日本と同レベルである。しかも韓国労働者の労働生産性はOECD加盟国平均の38.6%である。
4.教育
韓国の大学の授業料は高い。一人あたり国民総所得に対する大学授業料の割合は日本の2倍以上になる。しかも、4年制大学卒業者の就職率は5割以下、日本の大卒への求人倍率1.9に対して韓国は0.25である。 大学1年生に対する数学テストでは日本の最低点と韓国の最高点が略同じであった。 韓国には全教組(全国教職員労働組合)があって、そのホームページは北朝鮮礼賛の言葉で埋められている。彼らが進めているのが、平準化教育による教育レベルの低下と北朝鮮賛美教育である。その結果、韓国の親達は小学生時代から子供達を海外に留学させている。2005年に海外留学した小中高生は2万400人であった。子供が小さいので多くの場合、母親が一緒について行く。そのために生活費を海外送金しなければならない。しかも、留学生の多くが卒業後も帰国せず現地で就職してしまう。2002年の博士学位取得者の内、帰国したのは48.7%であった。 また、1998年以降の北朝鮮支援は総計で約2911億円である。
5.外国資本
韓国の銀行に対する外資系ファンドの出資率は極めて高い。 銀行名 外資比率 国民銀行 85.68% ウリィ銀行 11.10% ハナ銀行 72.27% 新韓銀行 57.05% 外換銀行 74.16% 韓美銀行 99.90% 第一銀行 100.00% アジア通貨危機とその後のIMF管理により、韓国の金融はアメリカの大手に抑えられたのである。 外換銀行は1996年以来無配だったが2007年に10年ぶりに配当を行った。その結果、大株主の米国ローンスターは投資額の6分の1の配当を受け取った。他の銀行、企業でも多額の配当を海外投資家(主にファンド)に対して支払っている。韓国は既に経済的な植民地になっている。
6.工場の海外展開
韓国の2001年から2005年までの設備投資増加率は平均1.1%である。特に中小企業の設備投資が減少している。しかし、これは国内の話で、海外投資は急増している。中国、米国、ベトナム等への投資が大きい。しかし韓国の高すぎる人件費を抑えるには、経営者が労働組合の要求をそのまま呑まずに、もっと上手に交渉する必要がある。また、技術力不足を補うためには、むしろ国内投資をして、国内の技術レベルを上げるべきであろう。
7.株価操作
韓国企業は自社の株価を維持するために自社株を購入している。そのため、個人投資家、機関投資家、外国人投資家の全てが株式を売り越したときにも株価指数(KOSPI)が上昇している。自社株買いとは本来、企業が1株当たりの価値を高めて株主に報いるためのものだが、韓国では違っている。
つまり、韓国の証券市場はあまりにも信頼性が低いので、韓国人投資家は国内株式市場に投資せず、海外証券投資を急増させている。
8. 短期借入
2006年に韓国に流入した融資の内、80%以上が韓国の金融機関による短期借入(返済1年以内)であった。そしてこの借入金は不動産投資と家計への貸出に廻った。しかもこの家計への貸出が再び不動産投資に廻った。つまり、韓国の個人は銀行から借り入れをして不動産投機を行い、更にこうやって購入した不動産を担保にして借金して別の不動産を購入する、と言うことをやっている。 韓国の法定利息は66%である。しかし、貸し金業者の平均金利は年利200%を越しており、その利用者は564万名と言われている。返済が滞った時の取立てには、暴言、暴行、拉致、監禁、殺害、臓器売買の強制、身体放棄覚書(売春承諾書)、人身売買が行われている。このような韓国の消費者金融ではグレイゾーン金利禁止により、儲け口を失った日本の消費者金融業者が60%を占めているとの報道もある。
9.韓国脱出
2000年以降、海外に移住する人による人口の純流出が続いている。しかも20代以下が全体の86.7%を占めている。2005年の出国超は8万1千人、しかも大部分は若者である。移住先はアメリカ、カナダ、オーストラリア、欧州など。2005年にアメリカの永住権を取得した韓国人は約2万5千人、2006年に米国連邦人口統計局が発表した韓国人合法移民者数は100万人に迫った。梨花女子大生に対するアンケートでは3分の2が生まれ変わるなら韓国以外の国に生まれたいと答えている。 海外移住者は移住に際して韓国から資産を持ち出す。これが「資本移転及び非金融資産収支」の赤字を増やしている。
10.感想
(1)確かに韓国では著者が警告するように、近未来にデフォルトが起る可能性がありそうである。 その時に、再度IMFが救済に乗り出すかもしれないし、反米的な韓国を嫌気して断るかもしれない。その場合には中国が救済に乗り出す可能性がある。そして、北朝鮮と韓国を合併させて実質的な中国植民地にするのではないか。アメリカがその時まだイラクに足を取られていれば、実現してしまう可能性がある。次は台湾、更にその次は日本の植民地化を狙うだろう。それに対する対抗策を今から考えておく必要がある。
(2)実は私は書いていて薄ら寒くなった。「これはまるで近未来の日本の姿ではないか?」と感じたからだ。日本政府が現在の安易な政策を続けていれば、そうなる可能性が高い。もちろん、韓国のように露骨なごまかしはやらないにしても、国民が日本の政治に愛想を尽かして日本脱出する可能性は高い。政治家ももう少し国民と危機感を共有してもらわなければ困る。国民が危機感を持ち、政治家と官僚が目先の利権を追って安穏としている国には未来はないと思う。
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