クマの現状と環境

現在日本には北海道にヒグマ、本州・四国にツキノワグマがいる。生存頭数は分からない。九州では絶滅したと言われている。四国ではほぼ絶滅、ときどき剣山系で目撃情報が流れる程度。中国地方では多分数10頭。しかしここで保護に当たっている人(米田一彦氏)は絶望的だと言っている。

レッドデータブックで、現在「絶滅のおそれのある地域個体群(LP)」として上げられているのは、下北半島・紀伊半島・九州地方・四国山地・西中国地域・東中国地域のツキノワグマと石狩西部のエゾヒグマだけであり、種としては絶滅危惧種に指定されていない。ツキノワグマもヒグマも狩猟動物であり、被害が出れば有害動物駆除の名目で射殺できる。その後の熊の胆とか掌とか高価で取引される部位がどうなるのかは知らない。

しかし自然環境が人間の健全な生存にとって不可欠のものらしいことに多くの人が気付き始め、何故クマがそんなに人里に出てくるようになったのかが注目されるようになった。

その理由はいろいろ考えられるが、よく言われているのは下記のような事柄であろう。

1. 森林伐採

人口の増加に伴って多くの森林が切り払われて農地または宅地になった。それらの中には元はクマの住んでいた所もあった。当然そんなことを知らないクマが出てくる。

2. 過疎化

僻地は過疎化し、放棄された農地が増えている。このために、クマの住む場所と人間の住む場所との間の緩衝地帯がなくなり、両者が直接隣接することになった。

3. 雑木林が要らなくなった

以前はコナラ、クヌギなどの雑木林が薪炭林として維持されていた。しかし雑木林は放置していては維持できない。毎年適宜伐採をし、落ち葉掻きをしなければ遷移して樹種が変わってしまう。薪や炭が燃料としては使われなくなった結果、放置され、自然林に近くなった雑木林は農地や人家に隣接し、人とクマとの接触の機会を高めた。

4. 自然を知らないで森に入る

昔の人は自然の怖さを知っていた。最近の人は森林と公園との区別がつかない。町の公園に行くような手軽さでクマの住む森に入って行く。山菜取り、茸取りに山に入る人の中のどれだけの人がクマの生息を確認してから、クマのいない森に入っているのか疑問だ。本来そのような森に入るのに、クマよけの鈴一つ持たずに入るような人には、山菜や茸を取りに山に入る資格はないのではないだろうか?

さらに、山菜取り、茸取りが危険なのは、彼らが山菜や茸を探して同じところを行ったり来たりするからだと言う人がいる。クマは人がいれば普通これを避ける。人よりもクマの方が先に気が付いて隠れているのが普通だそうだ。そして人が行ってしまったところで出てくる。ところが山菜取り、茸取りの人たちはここで戻ってくるのでクマと鉢合わせをすることになるそうだ。

5. 餌付け

ヨセミテやイェローストーンの自然公園ではクマの出てくる可能性のあるところに置いてあるゴミ箱は鋼鉄製でクマが開けられないように工夫してある。日本でも徐々にそのようなゴミ箱を設置するようになってきた。クマ等の野生動物に人間の食べ物の味を覚えさせては危険だからだ。人間の食べ物の匂いや味を覚えた野生動物は自分から人間に寄ってくるようになる。キャンプなどで残飯を放置するのはもってのほか、地面に埋めても彼らは簡単に掘り返してしまう。そして匂いと味を覚える。繰り返し言われていることだが最近の自然指向を反映して、基礎知識のない人がどんどん山に入っているのが実情だ。