キュロスの教育〔第八巻(2)〕

第八巻 第三章

キュロスは宮廷から聖域まで壮大な行進を行う準備をした。まず、主要指揮官達に色とりどりのメディア服を与え「私がお前達を着飾らせるように、これらで友人達を着飾らせよ」と言い、聖域に犠牲を捧げに行く事、またその整列はペラウラスが指示する事を伝えた。

キュロスはかつて「各人が功績に応じて名誉を付与されるべき」だと自分に賛成してくれた平民出身のペルシア軍指揮官ペラウラスを呼び「好意を持っている者には最も美しく、悪意を持っている者には最も恐ろしく映る行進」について相談し、二人の意見の一致でそれが決定された。キュロスは行進を明日挙行するようペラウラスに命じ、指揮官達が彼に快く従いやすいように配慮して、槍平隊と騎兵隊と戦車隊の指揮官達への衣装をペラウラスから与えさせた。指揮官達はペラウラスに皮肉を言ったが、衣装を受取ると嫉妬心を忘却し、衣装を非常に喜んだ。

翌朝、宮廷入口前に約4000名、その両側に2000名の槍兵が立ち、ペルシア兵達は道路右側、同盟軍は左側、戦車は半数ずつ両側に配置された。宮廷の入口が開くと、ゼウスとマゴスが指示した神々への犠牲である牡牛が、次いでヘリオスへの馬、それからゼウスに捧げられる馬車、ヘリオスへの馬車、3番目の馬車に続いて竃の火が兵達によって運ばれ、その後ろに冠を被ったキュロスが戦車で登場した。彼を見た全ての者が彼に平伏した。4000名の槍兵がキュロスを先導し、2000名の槍兵が彼の両側に従い、彼の側近である権標捧持者約300名が投槍を構えて騎乗し随行した。黄金で飾られた200頭の馬、2000名の投槍兵、クリュサンタス率いる1万の騎兵隊、ヒュスタスパス率いる1万のペルシア騎兵隊、ダタマス率いる1万の騎兵隊、その後ろにメディア騎兵隊、アルメニア騎兵隊、ヒュルカニア騎兵隊、カドゥシオイ騎兵隊、サカイ騎兵隊、ペルシア軍司令官アルタバタス率いる戦車隊が続いた。

この時、多くの人がキュロスに用件を請願したので、「各自、騎兵隊長に請願ごとを述べるように」と権標捧持者から言い渡させ、特に尊敬されてほしい友人達には「正当な事を求めている請願者の意見は聞き入れよ。私達で相談して彼らの願いを叶えよう」と個別に呼び寄せて言った。

聖域に着くと、ゼウス、次いでヘリオス、そしてガイア、最後にアッシリアを支配した英雄達にそれぞれ犠牲を捧げた。それから、種族ごとに競馬を催した。ペルシア兵ではキュロスが、メディア兵ではキュロスから馬を与えられたアルタバゾスが、アッシリア兵ではガダタス、アルメニア兵ではティグラネス、ヒュルカニア兵では騎兵隊長の息子が勝者となった。圧勝したサカイ兵の勝者にキュロスは、その名馬と王国を交換しないかと申し入れたが、サカイ兵は勇敢な方にこの馬を差し上げると返事した。そこで、キュロスは友の多い場所を示し、サカイ兵が目を閉じてそこへ土塊を投げた。すると、丁度キュロスの命令を伝達しにそこを駆け抜けたペラウラスに当たった。サカイ兵はペラウラスと馬を交換してその場を去った。キュロスは戦車も部隊ごとに競争させ、全ての勝者は、犠牲と宴の為の牛と杯を得た。キュロスはそれで得た杯を、行進を見事に指示したペラウラスに与えた。行進を終えると、兵達は都城の家や宿舎に戻り、食事した。

ペラウラスは馬を与えてくれたサカイ兵を招いて饗応し、キュロスから貰った杯を彼に贈った。彼がペラウラスの裕福さに「幸福なお方だ」と言ったのでペラウラスは「私は、祖国で貧しい暮らしをしていたが、従軍して財貨を得て豊かになった。しかし、多くの財貨を所有する者は、その監視と分配の配慮に膨大な苦労を費やさねばならぬ。財貨の所有は楽しくないが、財貨を失うのは苦痛だ。」と嘆いた。彼は「多くを持ち、多くを消費するのが、幸せだと思う」と答えたので、ペラウラスは「私の全財産を自由に使ってよい代わりにこれらの財産を管理してくれ」と彼に依頼した。双方これに合意し、このサカイ兵はどんどん増えていく多くの財産を支配し管理する事で幸福を得、ペラウラスも財産の配慮から解放されて友人の世話だけが出来るようになり、とても喜んだ。

第八巻 第四章

キュロスも犠牲を捧げ、親友達、メディアのアルタバゾス、アルメニアのティグラネス、ヒュルカニアの騎兵隊長、ゴブリュアスを招いて宴を開いた。キュロスの信頼厚いガダタスは宦官達を指揮し、宴の時も同席せずに常に彼らの世話をした。食事の席は、策略の攻撃に晒されやすい自分の左手側に一番尊重する者を、右手側に二番目の者を、左手側に三番目の者を、という順で着席させ、キュロスからの評価を皆に明示し、競争心を煽り、優れた功労者ほど、キュロスから多くの財貨を得た。

キュロスは美味な食べ物を手に入れると、必ず側に居る者と一緒に食べたり、友人達にも送ったりした。ゴブリュアスは、宴で残った料理をキュロスが多くの人に送ったのを見て賛嘆した「我が君は、司令官の才能よりも、人間愛の方で人々を凌いでおられる」。

皆で食後の酒を飲んでいる時、ヒュスタスパスがキュロスに尋ねた「何故、クリュサンタスが自分より名誉ある席に着いているのでしょうか?」キュロスは答えた「クリュサンタスは、私達の為に良いと判断した事は命じていなくても行い、常に適切な助言をしてくれ、同盟軍へも、私から言い難い意見を自分の意見として示し、他にも、一切の物事について常に私の幸せを考慮してくれている」。ヒュスタスパスはこの言葉に納得した。それから、キュロスは、ヒュスタスパスがゴブリュアスの娘に求婚するよう仕向け、その縁談を纏め、多くの贈り物を与えた。ヒュスタスパスはそれをゴブリュアスの娘に贈った。キュロスはクリュサンタスを抱き寄せ接吻した。ティグラネスには遠征を共にした妻の為に女性用装身具を、アルタバゾスに金の酒杯を、ヒュルカニア王には馬などを与え、宴会が終わった。

翌日、故郷へ帰る者達に多くの物を与え、彼らを送り返し、留まる者達には土地と住居を与えた。キュロスは優れた功労者達にはより抜きの物を与え、残りを「配下達に功績に応じて分配するように」連隊長達に渡し、最終的には班長達が自分の部下達を調査して財貨を分け与えたので、全員が正当な分け前を受けた。兵達は語った「こんなに多くを頂けるのだから、王様はもっと多くを持っているに違いない」「王様は与えられるのをお喜びになられるから、多くを持っていないよ」キュロスはそれを知ると友人達や主要指揮官達を集め「財産を明らかにして志操の高尚さを競うのが、誠実な人間のする事だ」と言ってそれらを示し「これらは全て、私自身の消費や浪費の為の物では無い。私は、優れた功労者や必要とする者達に与えるために、これらを集めている」と述べた。

求む(平成19年12月23日迄に投稿)

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