キュロスの教育〔第六巻(下)〕

第六巻 第三章

キュロスは犠牲を捧げて吉兆を得ると、軍隊を率いて出発した。初日は近い所に野営した。

先行した偵察隊の報告により敵が近いのを知ると、キュロスは兵達に朝食を取らせ、騎兵隊と歩兵隊と戦車隊の指揮官達、戦闘機械隊と荷馬車隊と天蓋馬車隊の隊長達を集めた。その時、探索に行っていた騎兵達が敵軍の捕虜を連れてきた。尋問すると「大軍の為に全てが物資不足なので、前哨を超えて集めに来ていた。約11パラサンゲス先に私達はおり、皆は敵が間近に迫っていると知り悲しんでいる。毎日戦列を組み、命令しているのはクロイソスとギリシア人と脱走者のメディア人だ」と言った。

次いで、偵察隊長からの伝令が届いた「平地に騎兵の大軍が出現。約30騎が先駆しており、見張り場所に居る10名の我が軍に向かってきております」。キュロスはヒュスタスパスに1000の騎兵を率いて進撃するように言い、側近の騎兵達にはすぐ駆けて行くように命じた。すると、彼らはアラスパスとその従者達に出会った。キュロスが大喜びで彼を歓迎したのを見て、事情を知らない部下達は唖然とした。「アラスパスは、敵状を知って我らに報告するよう、私によって送り出されたのだ。彼を称賛せよ。彼は罪に苦しみながらも我らの役に立とうと危険を冒したのだ」。

アラスパスは皆の歓迎を受けた後、戦列を手助けしたことや、敵の戦い方の意図を詳しく述べた「クロイソスは我が軍の包囲を願っている。歩兵隊も騎兵隊も奥行き30列の隊形で約40スタディオン(約7400m)の幅に広がっており、エジプト兵達だけは故郷の慣習通りに奥行きと幅が100人ずつ合計1万人の連隊で戦列を組んでいる。」

キュロスはそれを聞き、兵達に命令した「馬の装備と自身の武器を手落ち無く入念に調べよ。明朝、私が犠牲を捧げている間に兵達と馬に朝食を取らせよ。クリュサンタスは右翼を、他の連隊長達も現在の場所を受け持て。中隊長と小隊長は各小隊が2列横隊になるようにせよ(各小隊24人編成)。鎧着用兵隊の後ろに軽装歩兵隊を、次いで弓兵隊、最後尾の後衛隊は、軟弱な兵士達に恐怖を与えよ」

各隊はキュロスの指示を受け、準備を終えた後に夕食を取り、歩哨達を立てて眠りについた。

第六巻 第四章

翌朝、キュロスが犠牲を捧げている間、兵達は朝食を済ませて神酒を注ぎ、武装して馬にも鎧を着用させた。全軍隊が銅で輝き、紫紅色の光に包まれた。

アブラタダスが国の慣習通りに亜麻製の鎧を着用しようとした時、パンテイアが金の武具一式、赤紫色の外衣、兜の羽飾りを持ってきた。彼女は涙を隠しながら、驚く夫に武具を着せた。そして、夫が御者から手綱を受取った時パンテイアは言った「私の命よりも大事な人よ。私は勇敢な夫と共に大地に葬られる事を選びます。キュロス殿下はあなたの為に私を護って下さいました。そして、私を警護していたアラスパスが離反した時、彼よりも優れたあなたが来ましょうと、殿下に約束したのですよ」。アブラダタスは感慨を込めて祈りを捧げた「神よ、彼女に相応しい夫として、キュロス殿下に相応しい友としての態度を示させてください」。出発する夫をいつまでも追いかけるパンテイアを宦官と女中が天蓋馬車に乗せた。

キュロスが犠牲を捧げると吉兆を得た。全軍を配置した後、指揮官達を集めて皆を鼓舞した「私達は敵より遥かに多くの訓練積み、共に勝利を得ているが、敵は共に敗北を喫している。敵の未経験者達は皆が裏切り者である事を知っているが、私達は相互に信頼しあい助け合うので、心を一つにして戦う事ができる。さぁ、敵に前進しよう。武装した戦車隊で武装していない戦車隊へ、武装した騎兵隊で武装していない騎兵隊へ。エジプト兵達は私達の鎌戦車で踏み留まれても、騎兵隊と戦列と塔とは同時に戦えない」

そして最後に言った「犠牲の場所で祈った後、部署に戻り、部下達にこれらを思い起こさせよ。言動と表情で自分が恐れ知らずである事を示し、指揮官に相応しい人物である事を明らかにしろ」

収益はボランティアコラムニストに還元

アクセス地図

知の重爆撃機『連山』による日本復興への知の支援図
なかのひと