名将たちの教育論(第一回)

『連山』創刊一周年記念企画

第1章 軍人たちの教育システム

第1節 教育すべき人間活動の領域

 禅の名僧、鈴木大拙師や哲学者マイケル・ポランニーが教える通り、人間は言葉や文字で自分の考えや感情、意志を伝達できる形式知の領域(writable world)と伝達できない暗黙知の領域(unwritable world)の両方の世界で生きている。前者は“有理の世界”であり、後者は“無理の世界”と言ってよい。 “無理が通れば、道理が引っ込む”というが、道理が常に正しいとはいえない。空理空論も道理という衣服を着て人間生活を破壊するし、理想論は、しばしば現実とかけ離れて二枚舌を作る。さらに理屈の言葉(ペン)は剣よりも強く残虐である。  人は言葉や文章で説明することができる形式知の領域での生活は、社会秩序を維持するルールとして「成文法や理論」を使用している。 しかし、言葉や文章で説明できない暗黙知の領域には明文化された法律は存在できない。存在するのは「不文律」だけである。 「不文律とは書けない(unwritable law)法律」である。書いていない法律(unwritten law)ではない。そのような不文律は伝統や歴史の経験則(原則)によって造られている。暗黙知の世界にもルールがあるのだ。

名将たちの教育論(第二回)へ続く

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