名将たちの教育論(第二十九回)

第1章 軍人たちの教育システム

第6節 将校を育てる


(戦術は軍人の表芸)

戦場の状況を分析すれば、いくつかの作戦方針案が浮かぶ。問題はどの案を選択し決断するかである。作戦方針案には、
◎ 安全性を第一に考える案
◎ 実行容易な案
◎ 大胆な案
◎ 後悔が少ない案
の通常、4種類が生まれる。戦略は安全第一の案を選ぶのが歴史の経験則であるが、戦術では大胆な案を選ぶ。一般社会では、実行容易で期待値が大きい案を選ぶのと大違いである。
そのためには戦場を一瞥しただけで戦場の要点と焦点を見破る“戦局眼(Coup d’Oeil)”と決断のための”冷静な勇気(Courage d’Esprit)”が不可欠である。
「指揮官は、あらゆる考慮事項を“公算”と言う光で直観する力を持たなければならない。そうでなければ多くの異論や見解によってカオスに陥る」(クラウゼヴッツ)
“剣道の名人と達人はどこが違うのか?”の質問は昔からよく議論されたものである。それは直観力であると言われている。
「直観力のない者は指導者として不適である」(「戦略」リデル・ハート、1954年)
例え直観力を生来のもとして持っていたとしても、あらゆる分野に働くわけではない。得意とする分野がある。さもなければ将棋の名人は碁の名人になってしまう。
“玉磨かざれば、ただの石”である。直観力も修練の結果、得られるものであり、練磨の職人が優れた美的感覚を身につけるのと同じである。
生来の直観力の少ない人でも鍛錬すれば、名人になれずとも達人の域には到達する。修練によって本能化するのである。



名将たちの教育論(第三十回)へ続く

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