日本の京都議定書達成の鍵は水素社会の実現である(2)

5. 日本の温室効果ガス排出の現状

日本が京都議定書に批准した内容は「1990年度比で6%の温室効果ガス削減」であった。この京都議定書の内容を達成するために政府を挙げての具体的対策が 「地球温暖化対策推進大綱(平成14年3月19日発表内容)」 に定められている。その6%の削減内容と2005年度の実績値(環境省の資料より)を比較してみよう

1990年度の総排出量12億6,100万トンに対し、2004年度の総排出量が13億5700万トン(+7.6%増)、2005年度の総排出量が13億6100万トン(7.8%増)となっている。また2005年度の京都議定書に基づく国内森林の整備による吸収量の確保量が3,500万トン(基準年総排出量の2.8%)に達したことから、京都議定書の第一期間(2008年-2012年)には1億4,100万t(基準年総排出量の11.0%)を毎年現在の水準より削減しなけらばいけないということになる。

図から明らかなように、目標値と2005年度の実績値が乖離した最大の要因はエネルギー起源の二酸化炭素ガス排出の大幅な超過である。その詳細を見てみよう。まずエネルギー起源の二酸化炭素ガス排出は、産業部門(工場等)、運輸部門(自動車・船舶等)、業務その他部門(商業・サービス・事業費等)、家庭部門、エネルギー転換部門(発電所等)の5つの部門で構成される。

産業界では、省エネ技術などを積極的に改良・導入する事によって二酸化炭素排出量の減少という成果を挙げている。一方で温室効果ガスの排出に大きく寄与しているのは家庭部門( +36.7%)と業務その他の部門(+44.6%)である。この2つの部門のエネルギーは併せて民政部門エネルギーと呼ばれている。まず家庭部門のエネルギーについて見てみよう。

1990年から2005年に至る15年間の家庭部門エネルギー消費量の増加は40%強となっている。その内訳は世帯数の増加がおおよそ6割、世帯当たりのエネルギー消費原単位の増加が4割である。これを最近10年間で見ると、前者は15%の増加だが後者のエネルギー消費原単位はほぼ横ばいとなっている。

各家庭当たりのエネルギー消費量はここ10年あたり減少過程にはいたらないもののほぼ横ばいで推移している。家庭部門のエネルギーが増加しているのは世帯数が増加しているためである。

先にも述べたように、世帯数の削減は施策的には不可能だから、世帯当たりの排出量を減らす以外に方法は無い。となると、CO2排出ベースで見る限りでは1970年以前のエネルギー消費と同等にまで引き下げないとCO2削減目標の達成は不可能ということになる。

原理的にいえば、早稲田大学客員教授の中上英俊氏が指摘するように世帯数の削減が簡単にできない以上、各家庭当たりのエネルギー消費量を減少させないことには京都議定書の目標値に達しないことがわかる。しかし1970年代のエネルギー消費量まで引き下げなければならないということは現在われわれが享受する豊かさを半分にまで減らさなければいけないということになる。果たして京都議定書の第一期間が始まる2008年までに、そのような抜本的な改革が可能であるのだろうか?環境大臣 若林正俊氏はNikkei BP netのインタビューで「ひたすら快適を追い求めるのではなく、暖房を抑えて重ね着したり、冷房温度も高めに設定するなど、生活スタイルを変えていくことが大事なんじゃないでしょうか。」と述べているが、まず世帯数の増加は正比例であり予測可能な変化量であったことを考えると、平成14年に作成された「地球温暖化対策推進大綱」目標設定に不備があったことを大臣はまず国民に謝罪しなければならない。

次に業務その他の部門のエネルギーについて見てみよう。業務部門は、事務所・ビル、デパート、卸小売業、飲食店、学校、ホテル・旅館、病院、劇場・娯楽場、その他サービス(福祉施設等)の9業種に大きく分類され、業務部門のエネルギー消費は、「延床面積当たりエネルギー原単位×延床面積」で表現される。

[【図】業務部門業種別延床面積の推移  民政部門のエネルギー消費の動向]
[【図】業務用エネルギー消費原単位の推移  民政部門のエネルギー消費の動向]

1990年以降、多少の増加は見られるものの業務用エネルギー消費原単位はほぼ横ばいであり、業務部門のエネルギー増加は延床面積の増加に正比例していることが見て取れる。業務部門のエネルギーを減少させるため、新ビルの建設等を一切認めないということはほぼ不可能であり、経済発展とのバランスを重視する京都議定書の趣旨にも反している。対策としては若林環境大臣が指摘するように夏の冷房を効きすぎないようにしたり、現在規制の対象外になっている病院や学校に抑制を呼びかけたりするという根性論しか残っていないのであろう。

そもそも日本人は無駄にエネルギーを使い続ける怠慢な国民なのであろうか?

[【図】GDP当たりのエネルギー消費単位の推移  中上英俊の「暮らしとエネルギーと温暖化」]

[【図】GDP当たりのCO2排出量の推移  中上英俊の「暮らしとエネルギーと温暖化」]

GDP当たりのエネルギー消費単位の推移より日本はエネルギー的に最も効率よく経済発展を成し遂げている事が見て取れる。またGDP当たりのCO2排出量の推移より、アメリカ、ドイツ、英国、フランスとも2004年現在において1990年の日本の技術水準に達していないことがわかる。つまり1990年という京都議定書の基準年に既に日本の省エネ技術は世界最高水準でほぼ頭打ちしていたのであり、削減余力が大幅にあったアメリカやヨーロッパとほぼ同等の削減率が適用されたことは、各国のおかれた状況を考慮しない"完全な不平等条約"であった考えることができる。つまり当時の外交ミスの最終責任を国民に根性論という形で押し付けられるのである。もしくは大量の排出権獲得予算を計上するために各会社製品・サービスのコスト高として生活を圧迫することになる。次回は京都議定書が不平等条約であるその理由について見ていきたいと思う。

推薦図書

コメント

太平洋戦争といい日本は日本人自身の手で未来を破壊するのが得意ですね。
欧州連合が最も必要だった安定した水素の補給ルートが確保されました。
一時的に優位な日本車もエネルギー部門から崩壊が始まるでしょう。

ドイツではドイツ水素協会が2002年10月に水素インフラ整備に向けた
ロードマップを発表している。2005年から2010年の間に2,000箇所を
超える水素供給ステーション整備を目指す計画である。
http://www.iae.or.jp/publish/kihou/25-4/07.html