原発炎上

0.目次

1. 原発炎上
2. 原子力発電所、その安全神話の崩壊
3. 原子力発電所がなくても電気供給には困らない
4. 原子力発電所に蠢く既得権益
5. 日本の新エネルギー社会への夜明けは遠い

1.原発炎上

1号機から7号機までの7つの炉を有し、その合計出力が821万2千キロワットを誇る世界一の巨大原発である柏崎刈羽原子力発電所に新潟県中越沖地震が襲いかかったのは2007年7月16日午前10時13分のことであった。地震のマグニチュードは6.8強、震度は6強。当時、運転停止中であった原発1号機、5号機、6号機を除いて、運転を行っていた2号機、3号機、4号機、7号機は自動停止したが、地震発生直後に原発内で火災が発生、その後、日を追うごとに原発内の深刻な被害状況が報告されている。今回の柏崎刈羽原子力発電所の事故は今後起こるかもしれない、より悲惨な「日本版チェルノブイリ事故」の予兆かもしれない。日本国家の主権は日本国民に存在する。国民自身が原子力発電所の必要性の是非を問わなければならない。今一度、原子力発電所の問題に関して、国民レベルの議論がなされる必要があるのではないか

確認された放射性物質漏れの一部(柏崎刈羽原子力発電所)
(1)6号機の非管理区域で、微量の放射性物質を含む水が漏れ出し、一部が放水口を通じて海に放出
(2)7号機の排気筒からは18日夜までの間、放射性ヨウ素の放出が検出
(3)6号機の原子炉建物内において鉄製クレーンの駆動部が損傷
(4)低レベル放射性廃棄物の入ったドラム缶400本が倒れた。うち39本のドラム缶は蓋が開いており、床の1カ所で微量の放射性物質汚染が確認

2. 原子力発電所、その安全神話の崩壊

”原子力発電所は阪神淡路大震災クラスの地震にも耐えられる。”原子力発電所は幾重にも安全対策が施されているので、地震が起きても全く問題がない。"といった、日本の原子力発電所の安全性を唱えるニュースソースは繰り返し我々の耳に届く。しかし絶えず繰り返される原子力発電所の事故によって、安全神話はすでに崩壊していると言っても過言ではない。原子力の取り扱いの難しさとともに原子力発電所の耐震指針そのものに大きな欠陥があるのだ。

原発が想定する最大の設計用地震動は「およそ現実的ではないと考えられる地震による地震動」と言われるが、それを超える地震動が頻発したことで、耐震指針そのものの信頼性が大きく揺らいでいる。

1ガルとは、1秒(s)に1センチメートル毎秒(cm/s)加速度の大きさとして定義される。ここで、柏崎刈羽原子力発電所の第1号機は設計用地震動が273ガルを設計されているのに対して、新潟県中越沖地震において、第1号機で観測された最大加速度は680ガル、実にその2.49倍である。これ以外にも従来の原発の耐震性の常識は原発設計時に想定した最大の地震動を超えた地震が、すでに3件も発生していることにより、もはや通用しないことがわかる。よって、抜本的な改革が必要であるが、原子力発電の安全を脅かしているのは原子力発電所の耐震性の問題だけではない。各原子力発電所の立地から計測された原発立地危険度、また、主に老朽化することによって引き起こされる原発トラブル危険度。我々の生活に電気を供給してくれる身の回りの原子力発電所が本当に安全かどうか、自分自身で確認する必要がありそうだ。

3. 原子力発電所がなくても電気供給には困らない。

"わが国の原子力発電は、総発電電力量の約3分の1を占め、電力の安定供給のために重要な位置を担っています。"という宣伝文句を聞くと、原子力がなければ、我々は電気のある暮らしは維持できないんだ!だから、少々危険でも原子力発電の問題には目を瞑って、うまくやっていくしかないんだ!と思っている人は多い。しかし、このキャッチコピーは原子力業界最大のヒット商品であるに違いない。なぜなら、我々、日本人は原子力発電所がなくても、電気の恩恵を受け続けることが可能であるからだ。つまり何も原子力発電所がなくても特段困らないのである。原子力発電所は、石油から合成繊維や合成樹脂が製造できるのとは異なり、電気事業のみにしか使用できないという特徴があるのと、火力や水力発電と比較して、出力調整ができないのでフル稼働しなければいけないという特徴がある。一方で、日本の水力発電所の使用率は約20%、火力発電所の使用率は約50%とあまり使用されていない。よって、水力発電や火力発電をフル稼働すれば、一体どうなるのであろうか?

原子力資料情報室が1998年を例にとって、8月の電力需要を試算したところによると、火力発電と水力発電を合わせた電力供給力を上回った日は、数日だけだとわかった。(中略)つまり「原発なしで、火力と水力だけでは、電力供給が足らなくなる」と言っても、それは真夏の特に暑い日のことであり、しかもそのうち昼間の数時間である。真夏の電力の4割以上が冷房に使われているという。ならば、誰もが経験する凍えるほどの冷房の設定温度をほんの数度上げるだけでも、原発は必要なくなるかもしれない。

我々が夏場に少し電気を節約することができるのであれば、日本に存在する55基もの原子力発電所と使用済み核燃料貯蔵施設や核燃料加工工場などの核燃料施設が日本の地から消え去ることが可能となる。我々は大規模地震によって、原子力発電所が破壊されて、放射能汚染になることも心配する必要がなくなるし、化学的に毒性が強く、ガン発生を引き起こす放射性物質プルトニウム239という負の遺産を子孫に残さなくても良いのである。実にプルトニウム239の半減期は24,000年にも達する。24,000年が経過しても、その半分のプラトニウムが崩壊せずに存在しているのである。これほど厄介なものを我々は電気の恩恵を受けるためだけに使用し続けているのである。またウランは石油や天然ガスとともに有限な化石資源であるので、化石資源の枯渇に備えて、ウランを使用しようという議論はそもそも成立しない。

4. 原子力発電所に蠢く利権集団

原子力発電による「チェレンコフの青い光(※1)」を日本から永遠に消し去るために、我々がすべきことは真夏日に少し冷房を我慢すれば良いのである。それなら善は急げである。日本にある原子力発電所をすべて停止しようと!......という議論があってもよさそうなものであるが、そのような声は一向として聞くことができない。それは一体なぜか?それは原子力発電に伴う利権構造の根があまりにも深いからである。(※1: 臨界のウランが発する青い炎のこと。それは、人間が決して見てはならない「神の火」であると言われる。)

(1)地方自治体

原発の立地地域にはどのくらいのお金が落ちるのご存知だろうか?

原発の街には、「迷惑施設」を受け入れる代わりに「電源三法交付金」やその他のさまざまな名目で、国から地元に大金が落とされる仕組みがある。この仕組みは非常に巧妙で、原発の運転期間が長期間になると、段階的に交付金などの額が減らされていく。最も多くの大金が集中的に地元に投下されるのは運転開始までの10年間であり、更なる投資を受けるために、地元からも増設容認の声が上がり、二基、三基と作られていくのである。

原発の誘致で、地域振興を図ろうとする自治体の思惑とは裏腹に、毎年のように数億-数十億円の大金が落とされると、地元は交付金に依存せざるをえない体質になってしまう。原発城下町と称されるゆえんである。

このような莫大なお金が立地地域に落ち続けることにより、地方自治体の財政が原発以外で成り立たなくなってしまう。私は補助金づけのせいで、特に自助努力をして、産業を興すこともなく、観光業の衰退ともに経済破綻を引き起こした北マリアナ連邦というアメリカ自治領の内実を知っている。補助金とはドラッグのようなもので、依存症になるとなかなか止めることはできないのだが、北マリアナ連邦もアメリカの補助金の減額と観光産業の没落によりもはや見る影を失っている。いずれアメリカの準州になる可能性が高いとも言われる北マリアナ連邦は日本の地方自治体の未来の姿ではないのだろうか?

(2)原子力産業従事者

日本の原子力発電所が本格的に建設されたのは1973年の第4次中東戦争によって引き起こされたオイルショック以降である。日本のエネルギー供給先が中東の石油以外にバランスよくミックスされたのは評価に値すると思うが、問題は地震が頻発する日本で発電電力量の30%を占めるまでに原子力発電所を造設したことである。1990年までの原子力発電所の建設ラッシュをを終えて、放射線業務に従事する労働者だけで、約6万3600人。非放射線業務の人員を加えれば就労者はさらに膨らむ。彼らも生き残りをかけたキャンペーンを実施しており、日本国内ではなく、海外にその市場を求めようとしている。

原子力発電 四季報第32号(2005年9月)では、原子力地球温暖化対策のエースと題して特集を組んでいるが、原子力が地球温暖化対策にならないことはすでに証明されている。このような言論に騙される人はもはやいない。

原子力発電が、運転中に二酸化炭素を出さないというのは、厳密には正しくない。原子力発電は、核分裂によって生じた熱エネルギーの三分の二を廃熱として捨てているのだが、その廃熱は 、取水時よりも7度ほど高い温排水として海に流される。水の温度が上昇すると、コカコーラを温めた時と同様に、水に溶けている二酸化炭素が大気中に放出される。温排水の量は、発電容量100万kWに対し、火力発電で毎秒40立方メートル程度だが、原子力発電では70立方メートル程度である

また、柏崎刈羽原発の停止に伴い、足りない電力を火力発電所で補われた。その結果、東京電力の試算によると、運転停止が来年の3月末まで続いただけでも、今年度の二酸化炭素の排出量は当初の見込みより2800万 トン増える見通しであるということだ。これは、日本国内の二酸化炭素の 排出量のおよそ2%にあたる増加であり、トラブルを頻発する原子力発電所を地球温暖化対策のエースと言うのは甚だ笑止千万であると言える。

日本の原子力権益は、6万人以上の就労者を抱える巨大な既得権益集団である。このまま原子力発電所の増設に対して、なんら対策を講じられない場合、阪神淡路大震災のような、巨大地震によって、原子力発電所が破壊され、日本列島が放射能汚染になるということを日本国民は薄々気付いている。その上、原子力発電所が日本からなくなっても、電気供給に問題はおこらないことも知っている。それなのに、原子力発電所とそれに付随した核燃料施設を日本の地から消え去ることができないのは、約6万人の就労者の生活が掛かっているからである。このような場合どのような解決策があるのか?過去の事例をひも解いてみよう。

戦国時代に、織田信長が日本の既得権益集団である寺社集団と戦ったのは有名な話である。信長以前の商業は比叡山を代表する多くの寺社が多くの利権を持っており、寺社以外の人が商業をしようとしたら寺社によって、潰されるのである。寺社が武装した背景には、単に自らを守るというだけではなく、自らの利権を守るために武装を必要とした、という事実がある。よって、自由に商売ができない、商売しようとすれば寺社に大きなライセンス料を払わなければならない、となると、商業をできる人は限定されるし、ライセンス料を価格に上乗せされれば、庶民には多額の負担となる。信長は、そういった「既得権益」を排除し、旧来からの改革を進めようとしたのである。結果として、信長の勢力圏は「楽市楽座」が施行され、商業は大発展、信長はそれで得た大きな資本を背景に勢力を伸ばすことになる。

日本の国益に反した既得権益集団との戦いはいつの時代でも命がけである。私、個人の意見として、原子力発電所は日本には必要ないし、すべて撤廃されるべきであると考えている。しかし、織田信長のように武力で弾圧するという方法はかなり無理があると思う。そこで、今後、原子力関連予算を漸次的に減額し、原子力関連業務を行う人員を削減していき、リストラされた労働者の再雇用先の斡旋や、教育訓練を優先的に行うという措置がまだ柔軟性がありよいと思う。

5. 日本の新エネルギー社会への夜明けは遠い

毎年およそ5000億円の税金が原子力につぎこまれています。新エネルギー関連予算は1000億円程度にすぎませんし、これには廃棄物発電など持続可能でない発電方法も含まれます。

日本が新エネルギー社会に向けた取組みが他国にむけて遅れをとっているのは、原子力に偏った補助金が投入され続けているからである。原子力発電建設などの推進のため1974年から電源開発促進税法、電源開発促進対策特別会計法、発電用施設周辺地域整備法ができており、公共施設の建設に公共の税金が湯水のごとく使用され続けている。本当に投資すべきは風力発電や太陽光発電、バイオマス発電、そして燃料電池などの持続可能な分散型新エネルギーではないのだろうか? 原子力発電所にこれだけの予算を毎年与える論理的な説明を是非ともして頂きたいと思う。地震大国の日本に原子力発電所は必要ない。予算を投資すべきは新エネルギーであると思うが現実は一体どうなっているのか?

経済産業省が2007年度予算に対する概算要求を発表しました。(中略) 原子力については,2030年以降においても発電電力量に占める原子力発電の比率を30〜40%程度以上とすることを目指す「原子力立国計画」に対して,今年度は1900億円と2006年度予算の13%増となる概算要求を出しています。バイオマス由来燃料や天然ガスなどを起源とする合成液体燃料(GTL)の実証研究への予算を2006年度予算の17億円から72億円に増額要求しています。(中略)ハイブリッド自動車や電気自動車などの新世代自動車を普及させるため,蓄電池の低コスト化と高性能化を目指す「次世代蓄電システム実用化戦略的技術開発」への予算を2006年度予算の8億円から50億円に増やす要求を出しています。

原子力発電とバイオマス、次世代自動車を例にして2007年度の予算額にどれほどの差異があるのかわかる。日本国は原子力発電所とともに心中をするのであろうか?新しいエネルギー社会に向けた日本の未来は限りなく見通しが暗い。なぜならこの歴史的な決断ができるリーダーが不在であるからである。新しく発足した福田内閣はその力量はあるのであろうか?内閣の今後の動向に期待したい。

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