ロタを離れて、はやいもので2週間が経ちました。時間感覚を島国特有のゆったりしたしたものから、高速な日本のものに戻すのになんだかとても苦労しています。そして東京にひろがるイルミネーションを見ているとロタを離れた2週間という時間が2年前にも3年前にも感じることができます。ロタでの生活を思い出すことは小さい頃に読んだ浦島太郎などのおとぎ話を回想するのとどこか似ているのかもしれません。それはロタで過ごした日々があまりに現実ばなれをした竜宮城のような世界だったからではないでしょうか
夜中、ロタの家の前を歩くとヤシガニが歩いているのを目撃しました。「サイパンなどの都会ではヤシガニなんてほとんど見られないんですよ。値段も食べようと思えば1万から2万円ぐらいするんじゃないかな? それがですよ。ロタにはヤシガニが驚くことに道ばたを夜中に歩いているんですよ!それだけロタの自然は豊かなんですよ。信じられますか?」 サイパンの閑散とした錆びれたバーで一人で飲んでいると60頃のカロリニアン人男性が話しかけてきました。彼は自分のことをサイバニーズと呼んで、人生で一度しかロタには行ったことがないようですが、初めて出会う日本人の自分にロタ島の魅力を滔々と話し続けていました。朦朧とする不確かな意識の中で彼の話を聴いていたせいか、話しの細部を覚えていませんがロタではじめてヤシガニを道ばたで発見したときに、潜在意識に埋もれていた彼の言葉が私の脳裏にふと甦りました。
いつか、やしの木に登ってココナッツジュースは飲んでみたいと昔ハウス名作劇場の南の島のフローネを見たときから思っていました。その10数年にわたる夢が実現したのが昨年7月に私がシンガポールに駐在しているときでした。オーチャードのニーアンシティー前で始めて飲んだココナッツジュースの感想は「ポカリスエットに少し豆乳を混ぜて撹拌したような味」というのを覚えています。端的にいえば期待した割には対してうまくなかったということです。初体験がそのようなものだったので、ロタで現地の人からココナッツジュースをすすめられても、「 シンガポールで飲んだことがあるんだけどあまり好きじゃないんだ」と断っていました。それはどこか初恋がうまくいかず異性とはこのようなものかと勝手に解釈してしまい、それ以降、しばらく異性を遠ざけるのに似ているのかもしれません。その固定観念をとり払うのは何かきっかけが必要ですが大して難しいことはありませんでした。私は目撃したからです。 あまりにも現地の人がおいしそうにやしの実を割って、ココナッツジュースを飲んでいるのを!
ロタのココナッツジュースをはじめて飲んだときの印象は鮮明に覚えています。シンガポールで飲んだものとはまるで別物でした。それは本当に美味しかったです。ポカリスエットなんかよりもっともっと洗練された味がします。そして、やしがにの英知に驚きました。彼らは知っていたのです、この自然界の「king of juiceを!」それ以来、風呂上がりにヤシの実を割って飲むココナッツジュースが最高の贅沢となりました。風呂上がりのビールからココナッツジュースへ変わることにより体重が5kgほど落ちました。
ロタでは、日本からもこの地で結婚式を行うカップルがとても多いです。先駆的な存在なったのは野口五郎さんと三井ゆりさんの挙式ですが何がこの地を人生のはれの日を迎えるカップルに 好まれるのでしょうか? 南国の異国情緒あふれる雰囲気でしょうか?それとも驚異的な透明度を誇る海の青?外界から隔離されて独自の生態を示すロタの神秘的な動植物たち? ウェディングケーキマウンテンの伝説? この地を彩るすべてのものが人生の最高の舞台には相応しいと私は思います。

サイパンの場末のバーで出会った老男性は帰り際にわたくしに向かって、肩を軽く叩いて「See you again」と力強く叫びました。私はこの島に再び戻ることはあるのでしょうか。その時も 私の記憶にある美しいロタ島であってほしいものです。それではその日までしばらく母国から南の島、ロタ島を思いえがくことにしましょう。
