国民の品格を復活せよ

亡国のイージス

海上自衛隊のイージス艦「いそかぜ」副長の宮津弘隆2等海佐(寺尾聡)は、東京湾沖で訓練公開中に亡国対日工作員のヨンファと凶暴の上、官庁を殺害し、「いそかぜ」を乗っ取った。彼らは乗務員を強制的に退艦させ、日本政府に宣言する。「現在、本艦の全ミサイルの照準は東京・首都圏内に設定されている。その弾道は通常にあらず。」今、この国の未来に不安を抱かぬ者は一人としていないだろう。未曾有の経済的発展を享受しながら、理想も持たず、国家としての責任能力も自覚せぬまま世界進出を遂げた日本。バブル崩壊が経済を袋小路へと迷い込ませたとき、そこに我々が誇るべきものは何ひとつとして残らなかった。「イージス」とはギリシャ神話に登場する最高神ゼウスが娘アテナに与えた、あらゆる邪悪を払う「無敵の盾」のこと。同時に、最新鋭の防空システムを搭載し、専守防衛の象徴ともいえる海上自衛隊の護衛艦をも指し示す。だが、語るべき未来も見えず、守るべき国家の顔さえも失った「亡国の盾」に果たして意味などあるのか。この国に生きる者すべてに関わりながら、その誰もが真剣に考えることを避けてきたテーマを、第一級のエンターテイメントへ昇華させた福井晴敏の原作は、それゆえ日本推理作家協会賞・日本冒険小説協会大賞・大藪春彦賞の3賞を制覇、58万部を超えるベストセラーとなった。

亡国のイージス

戦後、経済発展のみを国是としてきた祖国日本に対して、この映画が問いかける命題は重くて深い。10月29日にテレビでも放映されたのでご覧になった方も多いかもしれれない。この映画の中で対日工作員と共謀の上、イージス艦「いそかぜ」を乗っ取った宮津弘隆2等海佐(寺尾聡)の息子である防衛大学生は次のように語っている。

この国を背負うものたちに受け継ぐべき日本はあるのか 専守防衛によって守るべき日本とは何であろうか 守るべき日本とは日本の経済力でも軍事力でもなく もっと普遍的な価値や普遍的な日本の資産である。 日本とは何か、日本は世界に対して何を誇るのか 世界に対して日本は何を主張するのか

現在の知識偏重の詰め込み型の教育の中で、日本とは一体どのような国なのかと教えられる事もなく、考えさせられる時間もあたえられなかった。自分のアイデンティティの土台となる日本という国を知りもしないのに、国際化社会だからという理由で英語を学ばせているのは大いなる矛盾ではないのだろうか。イージス艦を乗っ取ったテロリストは映画の中で次のように発言する「この国は一度滅んだ方が良い。生まれた国に責任と自由を取り戻したい。」生まれた国を愛するがゆえに、語るべきもの誇るべきのを見失った日本を憤りを感じ、首都東京の1,200万人を人質にとり自分たちの要求を突きつけた彼らの方法は決して認められるわけではないが、その主張の中に皆が共鳴する真実があるからこそ、その原作がベストセラーになったのだと思う。何ごとも遅すぎるということはない。「教育の目的は、志ある国民を育て、品格ある国家をつくることだ」と安倍総理大臣は語っているが、品格のある国家を作るためには自分たちは一体何者なのかという問いかけを避けて通ることができない。100万部を超えるベストセラーとなった藤原正彦著「国家の品格」のタイトルを文字っているだけでは話しにならない。政府のビジョンとしての品格のある国家とは一体何なのかしっかりと国民に明示すべきである。

藤原氏はその著書を次のように閉じている

日本一人一人が美しい情緒と形を身につけ、品格ある国家を保つ事は、日本人として生まれた真の意味であり、人類への責務と思うのです。ここ四世紀間ほど世界を支配した欧米の教義は、ようやく破綻を見せ始めました。世界は途方に暮れています。時間はかかりますが、この世界を本格的に救えるのは、日本人しかいないと思うのです。

シャネルの社長

10月27日オンエアされた「たけしの誰でもピカソ」を見た。女性ブランドで有名なシャネルの社長のリシャール・コラス氏がゲストとして登場していた。17歳の時に父親の仕事の関係で来日して以来の大の「日本通」であるコラス社長は日本の浮世絵などのコレクションだけではなく、日本が持つ特有の音(下駄の音等)や日本の伝統工芸品に大変な興味関心を抱いているということだ。そんな日本びいきの社長でも日本人に対して我慢がならないことが一つだけあるということだ。それは「日本人は自分たちがもっているいいものを簡単に捨てすぎる」ということだ。日本の伝統工芸品でもそうだし、日本の価値観でもそうだ。ヨーロッパ人の社長であるからこそ、自国の文化、伝統を大切にすることを知っておられるのかもしれない。日本を訪れた外国人を通して、自分たちの文化がどれだけ貴重であるかを知る事もとても大切な事だと思う。守るべき、誇るべき日本の資産を次の世代に受け継ぐ事が日本人の使命である。日本人と一体なにものであるのか?まずは自己のアイデンティティを取り戻すことが急務であるが、それだけでは十分だとは言えない。日本人は決して内にこもってはいけない。目を外に向けて、世界が抱える諸問題の解決に挑戦すべきである。(民族紛争、環境問題、人口爆発、地球温暖化、砂漠化問題等)私は日本国民が21世紀においてもなお、世界に対して光を放つ民族であると強く信じている。

なぜ欧米の論理は破綻したのか

欧米の論理の出発点となっている「自由」「平等」「民主主義」の3種の神器である。国家の品格」の著者藤原正彦は「論理」を徹底させることがさまざまな破綻を生じさせると断言する。そのためには論理では説明ができない情緒が必要であると説く。なぜなら、「論理」それに自体に内在する問題があり、これは永久に乗り越えられからだ。欧米の論理の出発点となる「自由」「平等」「民主主義」にも大きな問題点が介在する。疑問符が付くところもたくさんあるが、これらの矛盾点に対して藤原氏は明快に著書の中で解析されているので本コラムではそれを取り上げるのは割愛させていただく。一例として、王権神授説を否定するために書かれた「統治二論」の著者である、近代文明の思想を形成しているジョンロックは「他人の自由と権利を侵害しない限り自由」と説いた。この説から考えると第三者に何の迷惑もかけない「援助交際」は全く問題なしということになるが、果たしてそうなのだろうか?日本人が持つ道徳規準の中に「恥」の概念というものがある。人間の行動基準の中に道徳が欠如して、「金銭至上主義」のみ、判断されるのならば、それは既に日本人ではない。犯罪の多発、家庭崩壊、教育崩壊による学力の低下は日本だけではなくて、先進諸国に見られる共通の問題である。それは現代文明が欧米の過てる「論理」の上に形成されているからだ。現代文明の病巣の元にあるのは欧米の論理なのである。

ここ四世紀間は欧米の教義が世界を支配しただけではなくて、帝国主義と植民主義の名の下に、欧米によって世界は破壊され続けてきた。南米も然り、アフリカも然り、歴史を欧米よって、破壊されて断絶された国はあまりにも無惨である。著者が主張する欧米の論理とは異なる判断基準であるところの情緒や形は、長い歴史に裏付けれた民族の英知である。日本国民は先祖が懸命であるがゆえにその歴史と断絶するということはなかった。欧米の価値観が崩壊した以上、日本人はその責務として世界のために貢献しなければならないのではないだろうか

骨のうたう

「骨のうたう」という竹内洪三氏の有名な作品がある。氏は1945年に23歳の若さでフィリピンで戦死されている。詩の中にある『がらがらどんどんと事務と常識が流れ故国は発展にいそがしかった 女は 化粧にいそがしかった』先に辿り着いたのが現在の先行きの見えない日本である。しかし、日本だけでなく、世界が行き詰まりを始めている。まずは世界に発信するために日本国民の品格を復活させることが急務である。

白い箱にて 故国をながめる
音もなく なんにもなく
帰っては きましたけれど
故国の人のよそよそしさや
自分の事務や女のみだしなみが大切で
骨は骨 骨を愛する人もなし
骨は骨として 勲章をもらい
高く崇められ ほまれは高し
なれど 骨はききたかった
絶大な愛情のひびきをききたかった
がらがらどんどんと事務と常識が流れ
故国は発展にいそがしかった
女は 化粧にいそがしかった

戦死やあわれ