古代文明の滅亡理由
この文章はシュメール文明の再掲載です シュメール文明 永井俊哉著 シュメール人は、世界で初めて都市文明を築いた。現在の地球文明の原型はシュメール文明にある。シュメール文明はなぜ成立したのか、なぜ滅んだのかを分析しながら、文明のあり方を考えよう。 1. シュメール文明の成り立ち シュメール文明とは、周辺民族とは言語系統が異なるシュメール人が、紀元前3100年頃に、メソポタミア(現在のイラク)南部に造った世界初の都市文明である。もう少し広く、メソポタミア文明といってもよいのだが、それだと、後に北部に成立したアッカドやバビロニアまで含まれてしまうので、シュメール人の文明に限定して、シュメール文明という名前を使うことにしよう。 シュメール文明は突然花開いたと思っている人が多い。 この国(及び民族)は大きな謎に包まれています。彼らは人類史上、最古の文明を興しました。そして、文字(楔形文字)・文学・王...
なぜ古代ローマ帝国は滅亡したのか(再掲載)
古代ローマ帝国は、いわゆる五賢帝時代に最盛期を迎えた後、徐々に衰え、大移動を開始したゲルマン民族に蹂躙され、滅んだ。なぜ古代ローマ帝国は持続不可能になったのか。諸説を検討しながら、考えよう。1. 古代ローマ帝国はいつ滅びたのか古代ローマ帝国がなぜ滅んだのかを考える前に、そもそも古代ローマ帝国の滅亡とは何かから考えなければいけない。ローマ帝国自体は、東ローマ帝国(ビザンツ帝国)として、オスマン帝国のメフメト2世がコンスタンティノポリスを陥落させた1453年まで続くわけだが、 定説では、古代ローマ帝国は、西ローマ帝国が滅亡した、すなわち幼帝ロムルス・アウグストゥルスが、ゲルマン人オドアケルの圧力で退位した476年をもって終焉を迎え、そこから中世が始まったということになっている。だから、その後の東ローマ帝国は「中世ローマ帝国」と呼ばれることがある。もっとも、476年というのは、ローマ帝国の歴史に...
持続可能な文明(3)再生可能なエネルギー
人類の文明を、何千年、何万年と持続させるためには、再生可能なエネルギー源による循環型社会を構築しなければならない。再生可能なエネルギーには多くの候補があるが、主力となるのは、バイオマスであろう。 1. 持続可能な文明のエネルギー源 人間は、この地球に誕生して以来、現代に至るまで、バイオマスを主なエネルギー源にしている。つまり、人間は、植物が、太陽エネルギーを利用して作った低エントロピー資源に依存している。バイオマスという言葉は、化石燃料を含まない狭い意味で使われることもあるが、ここでは、化石燃料を含めた、生物起源の有機物という広い意味で使うことにしたい。 私たちが、体内用エネルギー源として、バイオマスに依存していることは言うまでもない。私たちが食べる食物には、植物起源のものもあれば、動物起源のものもあるが、後者の資源価値は、前者の資源価値に由来する。人間のみならず一般的に生物は、食物を高...
【覚書】 コスモス(7)
『コスモス』は、アメリカの天文学者、カール・セーガンが監修し、自らナビゲータとして進行を担当した、宇宙と生命をテーマとする、全13回のドキュメンタリー科学番組である。日本で初めてテレビ放送されたのは、1980年のことであるが、2000年に7枚組みのDVDが発売されたので、それを見て思いついたことを7回にわたって書いてみたい。 12. ヒエログリフの解読 ジャン=フランソワ・シャンポリオンの肖像画 [Jean-Francois Champollion (1790-1832) portrait made by Leon Cogniet in 1831] ジャン=フランソワ・シャンポリオンは、ロゼッタ・ストーンを手掛かりに、ヒエログリフを解読したエジプト学の父である。シャンポリオンは、12歳のとき、ジョゼフ・フーリエの部屋でロゼッタ・ストーンの碑文を目にし、そこで使われている三種の文字のうち...
持続可能な文明(2)沙漠の再緑化
地球の沙漠化は、おそらく最も深刻な環境問題ということができる。過去の多くの文明は、森林伐採と土地の酷使によって滅んだ。現代文明が滅びないようにするには、持続可能な農業の方法を確立しなければならない。 1. 沙漠化はいかにして起きるのか 産業革命以降の急激な人口爆発により増大した農作物と家畜への需要を満たすべく、近代人は、森林を切り開き、農地や放牧地を作ってきた。以下の図は、米国に限定されているが、近代文明の発展が原生林を消滅させる様子を描いている。 1620年(左上)、1850年(左下)、1920年(右上)、現在(右下)の米国における原生林の分布 [United States Deforestation from 1600AD] 左上の、1620年の図は、イギリスのメイフラワー号がプリマスに到着した時の原生林の分布を示している。当時のアメリカ大陸東部は、うっそうとした原生林で覆われてい...
【覚書】 コスモス(6)
『コスモス』は、アメリカの天文学者、カール・セーガンが監修し、自らナビゲータとして進行を担当した、宇宙と生命をテーマとする、全13回のドキュメンタリー科学番組である。日本で初めてテレビ放送されたのは、1980年のことであるが、2000年に7枚組みのDVDが発売されたので、それを見て思いついたことを7回にわたって書いてみたい。 10. 宇宙観の脱中心化 ロサンゼルス郊外のウィルソン山天文台の100インチフッカー望遠鏡。[Andrew Dunn (1989) 100 inch Hooker] エドウィン・ハッブルとミルトン・ヒューメイソンは、ウィルソン山天文台の100インチフッカー望遠鏡(上の写真)で銀河の赤方偏移を測定し、宇宙膨張を発見した。地球から遠ざかる銀河から来る光は、ドップラー効果により、赤方に偏移するのだが、赤方偏移の量は、遠方の銀河ほど大きいことがわかった。ヒューメイソンは、...
【転載論文】知性とは何か
私たちが、人間と他の動物との間にある最も重要な違いと考えている属性は、高い知性である。しかし、知性が高いということは、具体的にはどういうことなのか。人はなぜ知性が高くなったのか。なぜネアンデルタール人が滅んだのかを考えながら、知性の本質を探ろう。(永井俊哉ドットコム論文編より転載) 1. 知性が高いとはどういうことか “知性 intellect”は、語源的には、ラテン語の動詞“intellegere”に由来し、複数の選択肢の“間から inter”“選ぶlegere”能力を意味する。ただし、選択の能力といっても、遺伝子にあらかじめプログラムされた本能は知性でない。知性は新しい選択の可能性を切り開く後天的な能力である。未経験の選択をするのだから、迷いはある。しかし、人間は、迷うからこそ意識を持つのである。だから、知性とは、意識を伴った選択の能力であると考えてもよい。 もっとも、こうした内面的な...
持続可能な文明(1)人口増加の抑制
人類文明を持続可能にするには、(1)人口増加の抑制、(2)植生の維持と回復、(3)再生可能エネルギーの利用が必要である。三つの課題に対する私の提案を三回にわたって連載することで、本シリーズ「資源問題と環境問題への解決策」の結論としたい。今回は、まず人口爆発問題を取り上げる。 1. 現代の資源問題と環境問題の根本原因 現代における資源の枯渇リスクの増大と環境汚染の深刻化は、根本的には、産業革命以後急激に増大したエネルギー消費によってもたらされている。 急増する世界のエネルギー消費量。バイオマスエネルギーは横ばいだが、産業革命以降、化石燃料の消費が急増している。[HYDROPOLE:Data from Jean-Marie Martin-Amouroux, IEPE, Grenoble, France, private communication (2003) BP Statistical ...
【覚書】 コスモス(5)
『コスモス』は、アメリカの天文学者、カール・セーガンが監修し、自らナビゲータとして進行を担当した、宇宙と生命をテーマとする、全13回のドキュメンタリー科学番組である。日本で初めてテレビ放送されたのは、1980年のことであるが、2000年に7枚組みのDVDが発売されたので、それを見て思いついたことを7回にわたって書いてみたい。 8. 恒星間航行 オリオン計画での宇宙船の想像図 [An artist's conception of Project ORION] 太陽系内での宇宙旅行なら、既存の宇宙船で問題はないが、恒星間航行となると強力な動力源が必要になる。米国は、1958年から、核パルスによって推進される宇宙船を開発するオリオン計画 (Project Orion)を始めた。英国惑星間協会(British Interplanetary Society)は、1973-1978年にかけて、核融...
京都議定書(3)新しい制度の提案
京都議定書には、負担の分担が不公平である、吸収源を軽視している、多目的事業を不利にするといった欠陥があることを指摘した。最後に、これらの欠陥を克服し、地球温暖化問題を含め、トータルに環境問題を解決する新制度を提案したい。 1. 温室効果ガス排出税を導入する 1990年を基準として、恣意的に削減率の目標を決めると、負担の分担が公平ではなくなる。だから、温室効果ガスの排出量全体に、一定割合で課税するという形で、普遍的に規制するべきだ。このように外部不経済の内部化する税のことを、経済学ではピグー税という。ピグー税では、自分が生み出した不経済の分だけ負担をするのだから、明快で、公平である。 この税を導入しても、増えた税収の分、他の課税を減らせば、国民経済全体にダメージを与えることにはならない。多くの国は、所得に課税しているが、こうした取りやすいところから取る方法は、社会政策的に望ましくない。税には...
【覚書】 コスモス(4)
『コスモス』は、アメリカの天文学者、カール・セーガンが監修し、自らナビゲータとして進行を担当した、宇宙と生命をテーマとする、全13回のドキュメンタリー科学番組である。日本で初めてテレビ放送されたのは、1980年のことであるが、2000年に7枚組みのDVDが発売されたので、それを見て思いついたことを7回にわたって書いてみたい。 6. 大航海時代と宇宙開発時代 クリスティアーン・ホイヘンス(1629年-1695年)[Christiaan Huygens] 望遠鏡を製作し、土星の輪や土星の衛星を発見した。ホイヘンスは、他の惑星にも、地球と同じ生物がいると信じていた。 17世紀から18世紀にかけての大航海時代に、オランダは、世界の海を支配する覇権国家となった。この時代はオランダの黄金時代で、ホイヘンス(上図)、スピノザ、グローティウス、ルーベンス、レンブラント、フェルメールなど、優れた学者や芸術...
京都議定書(2)柔軟性措置の問題
京都議定書の温室効果ガス排出削減規制には、金融メカニズムと呼ばれる柔軟性措置があって、国内で削減目標が達成できなくても、他の国での削減実績でそれを補填することができる。しかし、このメカニズムにおける吸収源と追加性のルールに関しては、問題がある。 1. 三つの金融メカニズム 京都議定書が認める金融メカニズム(financial mechanisms)、通称、京都メカニズムあるいは柔軟性メカニズム(flexible mechanisms)には、共同実施(Joint Implementation)、クリーン開発メカニズム(Clean Development Mechanism)、排出量取引(Emissions Trading)の三つがある。 このうち、共同実施とは、先進国(附属書Ⅰに掲げる締約国)が、他の先進国、特に、ロシアなど市場経済への移行途上国で温室効果ガスの排出量を削減するプロジェクトを...
【覚書】 コスモス(3)
『コスモス』は、アメリカの天文学者、カール・セーガンが監修し、自らナビゲータとして進行を担当した、宇宙と生命をテーマとする、全13回のドキュメンタリー科学番組である。日本で初めてテレビ放送されたのは、1980年のことであるが、2000年に7枚組みのDVDが発売されたので、それを見て思いついたことを7回にわたって書いてみたい。 4. 金星における温室効果ガス パイオニアが紫外線で撮影した金星の映像 [NASA:Venus] 第四回目のタイトルは「天国と地獄」だが、天国とは地球で、地獄とは金星のことである。金星は、上の写真からも窺い知ることができるように、厚い大気で覆われている。金星の大気圧はきわめて高く、膨大な量の二酸化炭素の温室効果により、地表温度は400℃以上になる。他方で、火星の大気圧は、地球の1%未満で、温室効果が極めて弱く、地表温度は平均で-40℃以下になる。金星と火星は、温暖...
京都議定書(1)負担分担の問題
京都議定書の企図は、米国が批准を拒否したことで、骨抜きとなり、事実上失敗した。京都議定書にはどのような欠陥があったのか。温暖化を有効に防止するには、どのような制度が必要なのか。今回より三回にわたって、京都議定書の欠陥を分析し、その欠陥を克服する新たな議定書を提案したい。 1. 各国の数値目標の不公平さ 京都議定書とは、温室効果ガスを国際的に削減するために、1997年に京都市で開催された第3回気候変動枠組条約締約国会議(COP3)で議決した議定書である。この議定書では、以下の第三条第一項にあるように、地球温暖化に責任があるとみなされた先進国(附属書Ⅰに掲げる締約国)は、2008年から2012年までの期間中に排出する温室効果ガスの年平均量を1990年比で少なくとも5%割合削減する義務を負った。 1. The Parties included in Annex I shall, individ...
【覚書】 コスモス(2)
『コスモス』は、アメリカの天文学者、カール・セーガンが監修し、自らナビゲータとして進行を担当した、宇宙と生命をテーマとする、全13回のドキュメンタリー科学番組である。日本で初めてテレビ放送されたのは、1980年のことであるが、2000年に7枚組みのDVDが発売されたので、それを見て思いついたことを7回にわたって書いてみたい。 2. ヘイケガニ 歌川国芳の浮世絵に描かれた平家蟹 [Martin, J. W. (1993). The Samurai Crab. Terra 31 (4): 30-34] 冒頭で、甲羅の模様が、侍の顔に見えるヘイケガニの話が、人為選択による進化の例として取り上げられている。人為的選択による説明には、異論もあるようだが、網にかかったヘイケガニを海に戻してやったことで、ヘイケガニの生存はいくらか有利になったことだろう。ところで、ヘイケガニを畏怖する日本の怨霊信仰...
地球温暖化(9)問題の本質
これまで8回にわたって、地球温暖化の現状、原因、影響を分析してきた。このシリーズを終えるにあたって、良い温暖化と悪い温暖化を区別することで、地球温暖化問題の本質は何なのか、対策としてどのようなことをするべきかを論じたい。 1. 良い温暖化と悪い温暖化 人間を含めて、生命システムは、太陽放射を中心とする高熱源から、低エントロピーなエネルギーを作り出し、それ以上に発生する高エントロピーな廃棄物を最終的には廃熱という形で、水を中心とする低熱源に(最終的には宇宙に)捨てることで、自らを維持している。地表面に到達する太陽放射の量が増えれば、地表面の温度は上昇するが、それは良い温暖化である。なぜならば、太陽放射は低エントロピーな資源であり、太陽放射が増えることで大気内の水の循環も活発になり、水の入手可能性も高まるからである。 これに対して、温室効果ガスの増加による温暖化は悪い温暖化である。温室効果ガス...
【覚書】 コスモス(1)
『コスモス』は、アメリカの天文学者、カール・セーガンが監修し、自らナビゲータとして進行を担当した、宇宙と生命をテーマとする、全13回のドキュメンタリー科学番組である。日本で初めてテレビ放送されたのは、1980年のことであるが、2000年に7枚組みのDVDが発売されたので、それを見て思いついたことを7回にわたって書いてみたい。 0. COSMOS(宇宙)について カール・セーガン [Carl Sagan] この番組が日本で放送されたのは、私が中学3年生のときであるが、当時、私はテレビを一切見ないことにしていたので、この番組を見るのは、今回(2007年)が初めてである。アマゾンのレビューから判断すると、このDVDを買っているのは、子供の頃見た番組をもう一度みたいという中年の人たちのようだ。当時は画期的だったこの番組の視覚効果も、今の目が肥えた子供たちには物足りないだろうし、アップデートされ...
地球温暖化(8)温度上昇の影響
前回に引き続き、地球温暖化が与える影響について検討する。気温上昇は、降雨量、植生、洪水や暴風といった異常気象の発生、熱塩循環(深層海流)にどのような影響を与えるのかを考えよう。 1. 降雨量の二極化 地表面が温暖化すれば、水の蒸発量も増えるが、蒸発した水は、雨としてまた地表面に戻ってくるのだから、地球全体では降雨量が増えるはずである。クラウジウス-クラペイロンの式から、1℃の気温上昇で大気の保水能力は7%増加することがわかる。第四次報告書は、20世紀全体を通して、大気中の水蒸気量は、5%増えたと認識している [IPCC (2007) Observations: Surface and Atmospheric Climate Change, p.262]。 しかしながら、以下のグラフを見ればわかるように、温暖化と降雨量との関係は、それほど単純ではない。1976年以降、気温が上昇している一方で...
【転載論文】鏡像はなぜ左右だけ逆なのか
鏡は、左右を逆にするのではなくて、逆になった左右をそのまま映しているだけである。私たちが、自分と鏡像を重ね合わせる時、左右を逆にするのは、私たちの身体が左右対称に近いからである。(永井俊哉ドットコム論文編より転載) 1. なぜ鏡に映る私は左右逆なのか 鏡に映った像は、なぜ実像と左右だけが逆で、上下は逆ではないのか。昔から問われてきた、そして今でも子供たちがよく問う問いである。しかし、この問いに答えようとする前に、本当に鏡は左右を逆にしているのかと問い直す必要がある。鏡に向かって右手を挙げてみよう。すると鏡の中の私も、私から見て右側の手を挙げている。鏡象の頭と私の頭が上どうし対応しているように、鏡象の右側の手と私の右側の手は対応している。そもそも光学的に考えるならば、鏡が逆にするのは、左右や上下といった鏡に対して平行な向きではなく、前後、すなわち鏡に対して垂直な向きだけである。前後が逆になっ...
地球温暖化(7)温度変化の影響
地球温暖化は様々な問題を惹き起こすと考えられているが、大きく分類すると、温暖上昇がもたらす問題と温度変化がもたらす問題の二つに分類できる。今回は、まず、温度変化がもたらす問題、すなわち、温暖化であれ、寒冷化であれ、気温が変動することで生じるリスクについて考えてみたい。 1. 地球温暖化がもたらす影響 地球温暖化の影響を評価することは、IPCC第二作業部会の仕事である。2007年6月現在、フルレポートはまだ公開されていないが、政策決定者向けの要約は公開されている。この要約の14~15ページに、温暖化が惹き起こすと予想される現象の一覧表がある。日経BPが、環境省の仮訳をもとに、簡潔にまとめているので、それを引用しよう。 21世紀半ばから後半までの予測に基づき、極端な気象及び気候現象の変化に起因する気候変化の潜在的な影響の例 [ECOマネジメント:3万件のデータが導き出した 「最悪のシナリオ」...
地球温暖化(6)森林伐採と沙漠化
植物は、海洋とともに、重要な二酸化炭素吸収源である。人口爆発により、森林伐採と沙漠化が世界中で進んでいる。こうした植生の後退は、二酸化炭素濃度を上昇させることで、地球温暖化を悪化させていると考えられているが、これに異論を唱える人もいるので、植物が果たす役割について、改めて考えてみたい。 1. マラケシュ合意をめぐる論争 2001年10月に、モロッコのマラケシュで、第7回気候変動枠組条約締約国会議が開かれ、京都議定書の運用細則を定める文書が正式に採択された。この所謂マラケシュ合意では、新規の植林や再植林だけでなく、既存の植生の管理によって確保される吸収分も京都議定書で目標とされている削減分にカウントできるようになった[United Nations Framework Convention on Climate Change (2001) Report of the conference o...
地球温暖化(5)メタンミステリー
メタンは、水蒸気と二酸化炭素についで、最も影響力のある温室効果ガスである。しかし、メタン濃度変動のメカニズムは、二酸化炭素濃度変動のメカニズムほどよくはわかっていない。メタン濃度の不可思議な変動は、研究者の間で、メタンミステリーと呼ばれているが、このメタンミステリーを解くことを試みよう。 1. メタン濃度の急激な上昇 メタンの濃度は、二酸化炭素の濃度よりも上昇率が高い。 The measured concentrations of the three greenhouse gases fluctuated only slightly (within 4% for CO2 and N2O and within 7% for CH4) over the past millennium prior to the industrial era, and also varied within a ...
地球温暖化(4)温室効果と太陽活動
地球温暖化をめぐる論争で最も大きな争点は、温暖化は人間活動が原因なのか、それとも自然現象なのかという問題である。温暖化の原因の有力候補は、人間が大気に放出する温室効果ガスと太陽活動である。両者の気温に与える影響力を吟味しつつ、どちらの影響がより強いのかを考えてみたい。 1. 温室効果 IPCCの第四次報告書は、温暖化/寒冷化要因を以下の図にまとめている。この図は、FAQ 2.1にあるものだが、政策決定者向けの要約にも同じような図がある。 図1 1750年から2005年までの気候の放射強制力。各棒グラフにある直線は、不確定性の範囲を表す。 [IPCC (2007) Changes in Atmospheric Constituents and in Radiative Forcing, p.136] 放射強制力(Radiative Forcing)とは、対流圏の圏界面で出入りする放射量の変化...
【転載論文】末は博士かホームレスか
もしもあなたが日本の大学院の博士課程に進学すれば、周囲からこうささやかれるだろう。なぜならば、たとえ博士号を取得できたとしても、ホームレスにしかなれないぐらいに、今後、余剰博士の問題は深刻になるからだ。「末は博士か大臣か」と言われた時代は終わった。余剰博士問題はなぜ起きるのか、その根本的な原因を考えながら、問題の解決策を探ろう。(永井俊哉ドットコム論文編より転載) 1. 大学院重点化で量産された博士 余剰博士問題が深刻化した原因を作ったのは、文部科学省の大学院重点化政策である。1996年に大学審議会は、「大学院の一層の量的な拡大が求められる中で,質的な面での抜本的な充実と改革が必要となっている」[文部科学省:大学院の教育研究の質的向上に関する審議のまとめ] と大学院重点化の理念を語ったが、量的拡大を行った結果、質が大幅に低下したというのが現実である。 大学院生の数は、この10年で倍近くにま...
地球温暖化(3)温暖化の程度
1980年代から今日に至るまで、対流圏下層が温暖化しているという事実を確認した。では、現代の温暖化は、過去と比べてどの程度異常であるのか。現在の温暖化のスピードは、過去に例がないほど急激であるのか。現在の地球温暖化の異常性を検証する。 1. ホッケースティック論争 IPCC第三次報告書の政策決定者向け要約には、以下のような、マイケル・マンらによって復元された過去1000年間の北半球における気温変化のグラフが掲げられていた。 図1 過去1000年間の北半球における1961-1990年を基準とした地表面温度の偏差。赤色の部分は、温度計による実測値。青色の部分は、木の年輪、サンゴ、氷柱、史料からの推測値。黒の曲線は、50年移動平均。灰色の部分は信頼度95%の推定区間 [Climate Change 2001: The Scientific Basis] この曲線は、その形状から、「ホッケース...
地球温暖化(2)温暖化の事実
今日、地球温暖化を人類文明にとっての脅威とみなす風潮が強いが、それに疑問を持つ科学者もいる。地球温暖化脅威論への懐疑論には、地球温暖化の事実そのものを疑う懐疑論、温暖化の原因が人間活動であることを疑う懐疑論、温暖化が人間社会に悪影響を及ぼすことを疑う懐疑論と三種類ある。後の二つは、後ほど扱うことにして、今回は、本当に地球は温暖化しているのかという問題を取り上げる。 1. 大気の温度は本当に上昇しているのか 科学者の中には、地球の大気の温度が上昇していることを否定する人がいる。日本では、渡辺正氏が、こういう主張をしている[渡辺正:これからの環境論―つくられた危機を超えて, p.92]。海外では、ウィニペグ大学(カナダ)元教授(地理学)の Timothy F. Ball が、2004年のインタビューで、次のように言っている。 The argument is that there has bee...
地球温暖化(1)温暖化の発見
地球温暖化は、今日最もポピュラーな環境問題である。今月開催されたハイリゲンダム・サミットでも、地球温暖化対策は、最も重要な議題の一つだった。その注目度の大きさゆえに、地球温暖化に関しては、全九回の連載で、詳しく論じたい。初回では、地球温暖化が世界的な関心となったプロセスを振り返る。 0. シリーズ「地球温暖化」の目次 第一章 温暖化の現状 第一節 温暖化の発見 第二節 温暖化の事実 第三節 温暖化の程度 第二章 温暖化の原因 第一節 温室効果と太陽放射 第二節 メタンミステリー 第三節 森林伐採と砂漠化 第三章 温暖化の影響 第一節 温度変化の影響 第二節 温度上昇の影響 第三節 問題の本質 1. 70年代は寒冷化が危惧されていた 現在、世界の気候学者は、地球温暖化に警鐘を鳴らしているが、70年代までは、彼らは、地球寒冷化を警告していた。日本の気象庁は、73/74年に気候変動調査研究会を設...
汚れとは何か
汚いかきれいかという判断は価値的で主観的であるが、これを物理学的、かつ定量的に表現することは可能だろうか。私たちは、不正を「汚い行為」と表現することもあるが、こうした非物理的な汚さは、物理的な汚さと何らかの共通点を持っているだろうか。 1. 汚れとしての物理エントロピー 槌田敦氏によると、エントロピーの持っている特性を一番よく表現する日常語は、「汚れ」である。物理学の概念を、このような価値的な概念で定義することは奇妙に思えるが、槌田氏はこう反論する。 エントロピーは、もともと価値を表現するために物理学に導入された概念である。つまり、熱機関の効率を上げたいという欲望から生まれたものなのである。これを隠して、エントロピーを没価値の概念にしてしまおうというのは欺瞞的である。生きていくうえで、エントロピーが無視しえない大切な指標である以上、生きているものの共通の価値の表現として、エントロピー=汚れ...
象徴的に一般化されたコミュニケーションメディア
「象徴的に一般化されたコミュニケーションメディア」は、ルーマンの社会システム論における重要な概念の一つである。社会学におけるルーマンのメディア論が占める学説的位置を確認しつつ、ルーマンの批判的継承のための方向性を打ち出したい。 1. ルーマン以前の学説史 “象徴的に一般化されたコミュニケーションメディア[t] symbolisch generalizierte Kommunikationsmedien”は、ニクラス・ルーマンが、タルコット・パーソンズの“象徴的交換媒体 symbolic medium of exchange”から引き継いだ概念である。 [t]日本語の翻訳では、「シンボルによって一般化されたコミュニケーションメディア」と訳されることもあるが、これではまるで、シンボルとコミュニケーションメディアが別であるかのようなので、望ましくない。ドイツ語では、二つの形容詞を並べる際、最初の...
権力の脱中心化(3)経済システム編
脱中心化シリーズの三回目として、経済システムを扱う。前近代における労働集約的経済から近代の資本集約的経済への移行過程で経済システムの中心化が進み、ポスト近代の知識集約的経済への移行過程で脱中心化が進みつつある。 1. 近代における産業の資本集約化 近代小氷期をもたらした三つの太陽黒点数極小期、すなわち、シュペーラー極小期(Sporer Minimum 1450-1550)、マウンダー極小期(Maunder Minimum 1645-1715)、ドルトン極小期(Dalton Minimum 1790-1820)は、それぞれ、イギリスにおける第一次囲い込み、第二次囲い込み(農業革命)、産業革命と同時代である。私たちは、これら三つの経済的出来事を、経済的生産の集権化として特徴付けることができる。 シュペーラー極小期に、イギリスの気候は寒冷化し、毛織物に対する需要が増え、羊毛を量産する必要が生じ...
権力の脱中心化(2)政治システム編
近代ヨーロッパの絶対王政において中央集権化された政治システムは、その後の民主化の流れの中で、脱中心化されていった。情報システムの脱中心化と政治システムの脱中心化は、どのように関連しているのか、ウェブ2.0に対応する民主主義の制度とはどのようなものなのかを考えたい。 近代小氷期における絶対王政 中世ヨーロッパにおける政治システムは、封建制度という地方分権的な制度を採用していた。封建制度においては、臣下が領主に忠誠を誓う代わりに、領主は臣下に土地の支配を委任する。この関係は、騎士と諸侯の間のみならず、国王と諸侯の間にも成り立つ。国王は、諸侯に対して、同輩の中の第一人者といった立場にしかなく、諸侯に対して超越的に支配するような強い立場にあったのでもなければ、国土を直接に支配する強力な権力を持っていたのでもなかった。 近代小氷期になると、集権化による効率性の向上が必要になってくる。ニッコロ・マキャ...
権力の脱中心化(1)情報システム編
近代ヨーロッパにおいて中央集権化された社会システムは、現在、脱中心化されつつある。このトレンドは、1970年代以降の情報化社会においてとりわけ顕著である。知のシステムが脱中心化される思想史的背景を探ろう。 1. 近代哲学における自我による知の統一 古代寒冷期において、ギリシャの哲学者は、アルケー(万物の根源)を求めた。中世寒冷期において、ローマ人とゲルマン民族は多神教を捨てて、一神教であるキリスト教を崇拝した。近代小氷期に起きた科学革命と近代哲学の誕生もまた、知的システムの集権化として特徴付けることができるイノベーションである。 寒冷期には、太陽エネルギーと大気循環が弱くなり、物質的にはエントロピーが捨てにくくなるので、意識システムは、情報エントロピーを捨てることで、これに対応しようとして、知的システムのカタルシスを行う。逆に、温暖期には、太陽エネルギーと大気循環が強くなり、物質的にはエン...
気候と経済
ジュグラー・サイクル、コンドラチェフ・サイクル、キチン・サイクルといった景気循環のサイクルは気候変動のサイクルに対応している。なぜ、気候変動のサイクルが景気循環に影響を与えるのかを考えよう。 1. 太陽黒点数周期と景気循環 太陽黒点数の変動と景気循環の関係を最初に指摘したのは、イギリスの経済学者、ウィリアム・スタンリー・ジェボンズである[William Stanley Jevons (1875) Influence of the Sun-Spot Period on the Price of Corn, Nature; (1878) Commercial Crises and Sun Spot, Nature]。しかし、ジェボンズよりも前に、イギリスの天文学者、フレデリック・ウィリアム・ハーシェルは、太陽黒点数が減少すると小麦の価格が上昇することを指摘していた[William Hersch...
【書籍】「資源問題と環境問題への解決策」関連書籍
この連載のテーマ「資源問題と環境問題への解決策」に関係した本の一覧。以下は、アマゾンストアプログラムが「環境」「資源問題」というキーワードで選んだ書籍のリストである。 ...
北マリアナ連邦
サイパンに首都を置く北マリアナ連邦(米国自治領)は、事実上財政が破綻している。かつては日本から多くの観光客が訪れ、経済的に豊かだったこの国は、なぜこんなに落ちぶれたのか。その原因は、住民の未来のことを何も考えないアメリカの統治政策と持続可能な開発を考えない住民の安易な生活習慣にあった。 1. 北マリアナ連邦の概略 北マリアナ連邦(Commonwealth of the Northern Mariana Islands)は、小笠原諸島の先に続く、サイパン(Saipan)島、ティニアン(Tinian)島、ロタ(Rota)島など、マリアナ諸島南端のグアム島を除く14の北マリアナ諸島から成っている米国の自治領で、原住民は、チャモロ人と呼ばれている。 Mariana Islands [Wikimedia Commons] 北マリアナ諸島はかつて日本領だった。第一次世界大戦中、日本によって、当時ドイツ...
気候と文明
これまで、私は、気候が文明の盛衰に及ぼす影響を断片的に取り上げてきたが、今回は、これまでの議論を整理し、気候と文明の間に成り立つ一般的な関係を模索してみたい。 1. 気候と文明の関係 これはまだ仮説であって十分に実証できていないが、気候と文明には次のような関係があるように思われる。 寒冷期には、集中化が進み、知的革命が起きる 温暖期には、分散化が進み、知的停滞が起きる システムは、エントロピーを縮減し、自らを維持するためには、熱を取り入れるための高熱源と熱を捨てるための低熱源の両方を必要とする。寒冷期では高熱源が不足するので、効率的に熱を発生させるために、システムは集中しようとする傾向がある。温暖期では低熱源が不足するので、効率的に熱を排出するために、システムは分散しようとする傾向がある。 知的革命かそれとも知的停滞かは、熱エントロピーの問題というよりも情報エントロピーの問題である。温暖期...
ハイチ共和国
ハイチは、かつて西半球で最も豊かな植民地だったが、現在では西半球で最も貧しい国になっている。世界で最初に独立した黒人共和国という輝かしい歴史を持つハイチ共和国が、なぜこんなに貧しくなったのか。隣のドミニカ共和国では森林資源が豊富にあるのに、なぜハイチでは森林資源が枯渇しているのか。その原因を独立の精神に求めることができる。 1. イースター島化するハイチ ハイチ共和国は、西インド諸島の一つであるイスパニョーラ島の西側に位置する国である(以下の地図の赤い部分)。 ハイチ共和国の位置 [Wikipedia] ハイチは、現在、イースター島化している。人口が急増し、森林資源が枯渇し、土壌流出により大地が不毛となり、人々は貧困に喘いでいるのだ。ハイチの沙漠化しているのは、自然的原因よりも人為的原因に負うところが大きい。その証拠に、同じイスパニョーラ島でも、東側のドミニカ共和国は沙漠化していないからで...
倭国大乱
倭国大乱とは、中国の複数の史書に記述がある、2世紀末に日本(倭国)で起こった大規模な戦争のことで、卑弥呼が即位することで収拾したと伝えられている。この戦争はなぜ起きたのか。王位継承をめぐる政治的闘争という通説に代わる新たな仮説を提示したい。 1. 倭国大乱はいつ起きたのか 中国の資料で「倭国大乱」の記載が最初に出てくるのは、三世紀に編纂された『魏志倭人伝』においてである。『魏志倭人伝』は、邪馬台国を紹介した上で、次のように述べている。 其國本亦以男子爲王 住七八十年 倭國亂 相攻伐歴年 乃共立一女子爲王 名曰卑彌呼 その国は、もともと男を王としていたが、七、八十年経った頃、倭国は混乱状態になり、長年にわたってたがいに攻め合う状態が続いた。そこで一人の女性を王とした。この女性の名を、卑弥呼という。 [三國志 魏書 卷三十 東夷伝 倭人] この記述には、倭国大乱の時期が明示されていない。五世紀...
ヴァイキング
ゲルマン民族の南下を惹き起こしたのが寒冷化であったのに対して、なぜヴァイキングは、中世温暖期に南下したのか。なぜ中世初期のキリスト教国は、北に向かって膨張しなかったのか。ヴァイキング活躍の背景を探ろう。 1. ヴァイキングとは何か ヴァイキング(Viking)は、8世紀から11世紀にかけて、ヨーロッパやその周辺地域で、貿易、強盗、植民などをした、スカンジナビアの海賊である。特にイギリスでは、ヴァイキングがリンデスファーン修道院を襲撃した793年から、スタンフォード・ブリッジの戦でノルウェー王のハーラル3世がハロルド2世に敗れる1066年までを「ヴァイキング時代」と呼んでいる。 ヴァイキングが8世紀に住んでいた、本来の居住地は、以下の図で、濃い赤色で塗られた、スカンジナビア半島南部やユトランド半島である。9世紀には赤色、10世紀にはオレンジ色、11世紀には黄色の地域に進出し、定住している。緑...
【批評】 9/11 アメリカ同時多発テロ事件
ブッシュ大統領による「テロとの戦い」の発端となった、9/11 アメリカ同時多発テロ事件に、実はブッシュ政権が何らかの形で関与したのではないかという陰謀論が、アメリカ人の間ですら支持者を見出すようになっている。特に、今ネットで話題の“Loose Change”に焦点を当てて、9/11 陰謀論の現在を紹介しよう。 1. 解き放たれた変革(ルース・チェンジ)の反響 画像をクリックすると、『ルース・チェンジ』日本語版が無料で視聴できます。[Google Video] 2005年4月13日、9/11 陰謀論をまとめたドキュメンタリ映画“Loose Change”(ディレクター:Dylan Avery, プロデューサー:Korey Rowe)が一部の過激派向けに公開された[Loose Change Website:Loose Change]。この映画は、その後、第二版が製作され、間違いの修正や内容の増...
人類はいかにして全大陸に進出したのか
人類は、700-600万年前にアフリカ大陸に誕生して以来、長い間この大陸から出ることはなかった。約180万年前にホモ・エレクトゥスがアフリカ大陸を出たが、北京、グルジア、スペインが北限で、それよりさらに北に移住して、アメリカ大陸にまで渡ることはなかった。人類が氷期に全大陸に進出するには衣服の発明が必要であり、そのきっかけになったのは、7万2千年前に起きた巨大火山噴火であった。 1. 二百万年に一度の巨大火山噴火 今から71500±4000年前、現在のインドネシア領スマトラ島のトバ湖(下の地図と写真を参照)で、過去200万年間で最大と推定される巨大な火山噴火があった。この出来事は、トバ事件と呼ばれている。現在のトバ湖は、その噴火で形成されたカルデラに水がたまってできた。トバ湖は世界最大級のカルデラ湖である。 トバ湖の位置 [Wikipedia] トバ湖の写真 [NASA] 近代で最大規模...
イースター文明
イースター文明を造ったのは、どこから来た民族だったのか。あの巨大な石の人像は、何のために作られたのか。あの巨石文明は、なぜ崩壊したのか。人々は、崩壊を防ぐために、どのような努力をしたのか。イースター文明にまつわる謎を解こう。 1. 誰がイースター文明を作ったのか イースター島(ラパ・ヌイ)は、海底噴火によってできた、太平洋南東に位置する孤島で、火山噴火が終了して、しばらくして人間が定住を始めた。最初の定住がいつごろかに関しては諸説があり、西暦300年から1200年までの幅がある。 イースター島のモアイ。この祭祀場はアフと呼ばれる。 [Wikimedia:photo taken at 17:04, 29 March 2006 ] イースター島での口承伝説によれば、ヒヴァ島(マルキーズ諸島の島)の首長であったホツ・マツアが、戦いに敗れて、あるいは別の説によると、ヒヴァ島が沈んだために、二艘の...
アラブ首長国連邦
アラブ首長国連邦は、ペルシャ湾南部に面する中東の国である。世界有数の原油生産国であるが、石油依存からの脱却を図り、産業の多角化や新エネルギー産業の開発にも努力している。2007年1月27日から2月2日にかけて、取材のためにアラブ首長国連邦に滞在したので、その時の体験も交えながら、この国の文化と歴史と将来の戦略を紹介したい。 1. UAEの地理と文化 1.1. UAEの地理 アラブ首長国連邦は、以下の図に示されているように、サウジアラビア、オマーン、イラン、カタールに囲まれた中東の国である。首都は、アブダビ島に位置するアブダビである。 [A map of the United Arab Emirates, converted directly from CIA World Factbook] 中緯度高圧帯に位置するため、ほとんど雨は降らない。海に面してはいるものの、風が南から北に吹くので...
水素エネルギー(3)水素の製造方法
水素は、現在、石油精製所、鉄鋼プラントなどから副生されているが、そのほとんどは自家消費されており、本格的な燃料電池の燃料供給源にはならない。燃料電池を普及させるには、どのようにして安価に、かつ環境を破壊することなく、水素を製造するかが課題となる。さまざまな水素製造方法を検討しながら、有力候補を探っていこう。1. 水蒸気改質現在広く行われている水素の製造方法は、水蒸気を使って天然ガスの主要成分であるメタンから以下のように水素を製造する水蒸気改質法である。水蒸気改質法とは、CH4+H2O→3H2+COという吸熱反応とCO+H2O→H2+CO2というシフト反応を組み合わせたもので、両者をまとめると、CH4+2H2O→4H2+CO2という反応式になる。固体酸化物燃料電池のような高温で作動する燃料電池では、自分の熱で、水蒸気改質ができる。ただし、シフト反応の部分は異なる。固体酸化物型燃料電池における...