【批評】 9/11 アメリカ同時多発テロ事件

ブッシュ大統領による「テロとの戦い」の発端となった、9/11 アメリカ同時多発テロ事件に、実はブッシュ政権が何らかの形で関与したのではないかという陰謀論が、アメリカ人の間ですら支持者を見出すようになっている。特に、今ネットで話題の“Loose Change”に焦点を当てて、9/11 陰謀論の現在を紹介しよう。

1. 解き放たれた変革(ルース・チェンジ)の反響

日本語版
画像をクリックすると、『ルース・チェンジ』日本語版が無料で視聴できます。[Google Video

2005年4月13日、9/11 陰謀論をまとめたドキュメンタリ映画“Loose Change”(ディレクター:Dylan Avery, プロデューサー:Korey Rowe)が一部の過激派向けに公開された[Loose Change Website:Loose Change]。この映画は、その後、第二版が製作され、間違いの修正や内容の増強が行われた。第二版には、日本語版をはじめ各国語版が作られ、大きな反響を呼んでいる。現在最終版となる第三版が製作されており、2007年の春に公開される予定である[Loose Change Website:Loose Change Final Cut]。

Google Video で公開されている様々なバージョンの“Loose Change”
タイトル 解説 時間
Loose Change 英語の第一版 1時間55秒
Loose Change 2nd Edition 英語の第二版 1時間21分44秒
Loose Change 2nd Edition Japanese 第二版の日本語版 1時間23分24秒
Loose Change 2nd Edition Recut 英語の第二版の修正版 1時間29分22秒

内容は、これまで指摘されてきた9/11の疑問点をまとめたものになっている。日本では、2004年9月11日に、テレビ朝日が「ビートたけしのこんなはずでは!! 世界を震撼 9・11同時多発テロ!! ブッシュは全てを知っていた!?」を放送し、ユナイテッド航空93便では、携帯電話が使用できないことから、飛行機からかえられた電話が音声合成によって作られたものだという説を出していたが、このビデオもその説をとっている。

Google Video では、これ以外にも、いろいろと興味深いドキュメンタリ・ビデオが無料で公開されている。“Loose Change 2nd Edition Recut”は、世界貿易センタービルで起きたアメリカン航空11便テロ事件とユナイテッド航空175便テロ事件、アメリカ国防総省本庁舎(ペンタゴン)で起きたアメリカン航空77便テロ事件、ペンシルヴァニア州のピッツバーグ郊外で起きたユナイテッド航空93便テロ事件のすべてに対して、通説を否定し、積極的に陰謀論を唱えているが、“9/11 Mysteries (Full Length, High Quality) ”は、世界貿易センタービルに焦点を絞って、航空機の激突でビルが崩壊したという公式見解に疑問を呈している。ドキュメンタリ映画としては、ルース・チェンジよりも質が高い。

9/11 Press For Truth”は、被害者の家族の視点から、ブッシュ政権に対する不信感を表明している。ブッシュ政権がテロの警告を事前に受けながら、それを無視して何もしなかった疑惑、報復として行われたはずのアフガニスタン侵攻で、米軍が意図的にオサマ・ビンラディンをパキスタンに逃がした疑惑、パキスタンのISI(Inter-Services Intelligence)からテロ実行犯へ送金した疑惑が取り上げられている。私は「ブッシュはなぜ戦争を始めたのか」で、穏健版の陰謀論と過激版の陰謀論を区別したが、このビデオは、前者に基づいている。

これ以外に、風変わりで興味深いものとして、Alex Jones のビデオ“Martial Law 9/11: Rise of the Police State”がある。ブッシュ政権は、テロ対策を口実にアメリカを警察管理国家にしようとしているという趣旨のビデオで、前半はやや退屈だが、後半(1時間40分後)、ボヘミアン・グロウヴのあたりから面白くなる。ボヘミアン・グロウヴについては、このビデオより前にリリースされた“Dark Secrets Inside Bohemian Grove”に詳しい。真偽のほどは定かではないが、世界制覇を目指すカルト・ネットワークにアメリカの政界の要人が関わっているとのことである。

ルース・チェンジの成功に刺激されて、様々な陰謀論に基づくビデオが作られ、ネットで公開されているが、他方で、“Screw Loose Change”のように、ルースチェンジの根拠に逐一反論を加えたカウンタービデオも公開されている。例えば、ルース・チェンジは、ペンタゴンにできた穴は、アメリカン航空77便の大きさに比べて小さすぎるというが、アメリカン航空77便が突入したのは、下の写真に写っている右側の小さな黒い穴ではなくて、左側の大きな崩壊箇所であるといったことが指摘されている。

ペンタゴン

ルース・チェンジは、世界貿易センタービルが崩壊した時に多くの爆発が起きたは、遠隔操作で爆薬を使って解体が行われたからで、映像には、崩壊時に爆発の煙が見えると言っている。しかし、スクルー・ルース・チェンジは、爆弾による解体では、爆発の煙は、崩壊の前に見られはずだし、また映像には、解体に先立つ、パチパチという音や閃光が確認できないなどと反論している。

私は、3年前に、メールマガジンで、

過激版の陰謀論がどこまで正しいのかは、現時点では自信を持って断言できないけれども、戦争の口実を求めていたアメリカ政府が、9.11に何らかの形で関わっていた可能性はかなり高いと私は考えている。太平洋戦争のきっかけとなった真珠湾攻撃、ベトナム戦争のきっかけとなったトンキン湾事件、あるいは湾岸戦争のきっかけとなったイラクのクエート侵攻などの過去の事例を見ればわかるように、工作活動によって戦争の大義名分を捏造することは、アメリカの常套手段である。

と書いたが、ルース・チェンジを見ても、いまだに過激版の陰謀論が正しいという確信はもてない。もっと証拠を集める必要があると思う。

2. V for Vendetta

2006年3月17日(日本では2006年4月22日)より、ワーナー・ブラザーズ製作・配給の『Vフォー・ヴェンデッタ』という映画が公開されたが、これは9/11のパロディ映画ではないかと見られている(注意:以下、作品の内容の一部がわかる記述がなされています)。

監督は『マトリックス』三部作の助監督を勤めたジェームズ・マクティーグで、製作・脚本は『マトリックス』シリーズのウォシャウスキー兄弟で、主人公のV役を『マトリックス』でエージェント・スミス役を演じたヒューゴ・ウィーヴィングが担当している。『マトリックス』と同様に、洗脳からの覚醒と体制への反逆が主題となっている。

この映画では、自国民にバイオテロ攻撃を仕掛け、それをテロリストの仕業と宣伝し、あらかじめ開発・用意した特効薬で危機を救って、英雄となり、権力を握った独裁者、アダム・サトラー宰相[s]が登場する。アダム・サトラー(Adam Sutler)のモデルは、アドルフ・ヒトラー(Adolf Hitler)である。ホロコーストをイメージした生体実験のシーンが出てくるし、ヒトラーをイメージした演説シーンも出てくる [V for VendettaPhoto]。

[s]この映画の日本語版では、“Chancellor Sutler”を「サトラー議長」と訳しているが、独裁者のイメージがわかないので、良い訳ではない。“Chancellor”は、ヒトラーの肩書きの英語訳で、ドイツ語の“Reichskanzler(帝国宰相)”に相当する。「宰相」ないし「首相」と訳すべきだろう。

サトラー宰相によるバイオテロの狂言とそれを口実にした圧政は、9/11陰謀論に基づいているとみなすことができる。実際、この映画には、イラク戦争や反イラク戦争のデモの映像が含まれている。この映画の中に、テロリストVの仮面を剥がしてみると、実はサトラー宰相というテレビ番組が出てくるが、この番組はサトラー宰相に対する痛烈な皮肉であり、トーク・ショー番組のホスト、ゴードンが逮捕されるのも当然である。

Vフォー・ヴェンデッタ』は、1982年から85年にかけて、イギリスのコミック雑誌『ウォリアー』に連載された同名の漫画を原作としている。近未来のフィクションといっても、原作には、当時の冷戦時代の状況を反映した古臭さがあるので、この映画は、現代の政治状況を反映させるように、内容をアップデートしている。

もっとも、独裁者が、BBC をイメージした BTN(British Television Network)を通じて国民を洗脳し、その洗脳を打破するためにVがBTNを乗っ取って、国民にメッセージを流すというあたりには、依然として古さを感じる。現代では、中央集権的なマスメディアにはもはや国民を洗脳するほどのパワーがない。『ルース・チェンジ』がネット上で流布したことからもわかるように、9/11 陰謀論のような反体制的な言説は、インターネットを通じて広がる。

Vフォー・ヴェンデッタ』は、ジョージ・オーウェルの小説『1984年』の影響も受けている。この近未来反ユートピア小説では、市民は常にテレスクリーンによって監視されていることになっている。当時普及していなかった監視カメラが普及するようになったのだから、その意味では、現代の情報社会は管理社会化しているということができるが、インターネットは、ビッグ・ブラザーが市民を監視するための情報技術ではない。インターネットでは、一者が多数を監視するのではなくて、多数が多数を監視している。インターネットのような分権的メディアの発達によって、全体主義的な世論操作は、難しくなっている。

関連記事紹介

最初みたときは、よく出来た映画だと思いました。世界貿易センタービルが崩壊したときは、老朽化したビルを爆発させて崩壊させる映像と同じようにみえたからです。ニュースでは熱で鉄が溶けてといっていたが、ジェット燃料では鉄を溶かす温度は出せません。まあうそを堂々と言っていたわけです。911は捏造ではないかという最近の出版された本に書かれたことは、911直後では少なからずありましたが、アメリカの熱狂の中、次第に消えていきました。昔の赤狩りではありませんが、TVで言っていることに疑問を出すと、あいつは非国民だという風潮があり、心あるものは口を閉ざし、勇気がある者は、いつの間にか交通事故死や自殺、失踪、病院送りとなったのです。自由の国、アメリカがそういうことをしていたのです。ペンタゴンに突入したのが飛行機ではないこと位、被害の出た穴の大きさをみれば一目瞭然ではないですか。でも、それとて言えないのです。ナチスドイツとどこが違うんでしょうね。

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コメント

これらの動きはどういう影響をあたえると思いますか?

電通が2006年度の日本の広告費を発表した
http://www.dentsu.co.jp/news/release/2007/pdf/2007014-0220.pdf

2006年の広告費
媒体 広告費 前年比(▲はマイナス)
テレビ 2兆161億円 ▲1.2%
新聞 9986億円 ▲3.8%
雑誌 3887億円 ▲1.5%
ラジオ 1744億円 ▲1.9%
SP 2兆2億円 0.9%
衛星メディア関連544億円 11.7%
インターネット3630億円 29.3%

総広告費 5兆9954億円 0.6%

マーケットがセグメント化しているので、マスメディアによる無差別型広告の需要が減り、ニッチマーケットにピンポイントで「狭告」できるネット広告の需要が増えているのでしょう。

新聞等の広告費が落ち、ネット広告費が上がったのは人々が新聞よりもネットで情報を取得するようになったからですね。新聞が利用されなくなってきた理由はリンク等での情報のつながりによる拡散や情報の伝達速度の遅さがありますね。インターネットでは情報制限も新聞等ほど楽にはできませんし、たとえ1箇所で制限や捏造をしたところで世界中に広がるスペースでは誰かを抑えきることは難しいでしょう。陸遜さんの広告の需要の移り変わりが表す影響はそういった情報操作においての影響が質問ではないでしょうか?ターゲットに対してのピンポイント広告の話ではないのでは?

インターネットだけでなく、衛星メディア関連やSPでの広告費が伸びていることを説明しようとするならば、ニッチマーケットにピンポイントで「狭告」できるという属性に注目しなければなりません。これが必要になったということは、それだけ消費者の嗜好が多様化し、全体主義とは逆の方向に動いているということです。

「どういう影響をあたえるか」と聞かれれば、本文に書いたように「全体主義的な世論操作は、難しくなっている」と答えます。

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