【覚書】 コスモス(3)

『コスモス』は、アメリカの天文学者、カール・セーガンが監修し、自らナビゲータとして進行を担当した、宇宙と生命をテーマとする、全13回のドキュメンタリー科学番組である。日本で初めてテレビ放送されたのは、1980年のことであるが、2000年に7枚組みのDVDが発売されたので、それを見て思いついたことを7回にわたって書いてみたい。

4. 金星における温室効果ガス

Ultraviolet image of Venus' clouds as seen by the Pioneer Venus Orbiter (February 26, 1979).
パイオニアが紫外線で撮影した金星の映像 [NASA:Venus]

第四回目のタイトルは「天国と地獄」だが、天国とは地球で、地獄とは金星のことである。金星は、上の写真からも窺い知ることができるように、厚い大気で覆われている。金星の大気圧はきわめて高く、膨大な量の二酸化炭素の温室効果により、地表温度は400℃以上になる。他方で、火星の大気圧は、地球の1%未満で、温室効果が極めて弱く、地表温度は平均で-40℃以下になる。金星と火星は、温暖化と寒冷化が進むと地球がどうなるかを暗示している反面教師である。カール・セーガンは、温室効果ガスの上昇によって地球が温暖化するというリスクと、砂漠化で地球のアルベドが上昇することによる寒冷化のリスクの二つを取り上げ、地球が将来金星や火星のようになるかもしれないと警告した。これは『コスモス』が放送された当時、地球温暖化への警告と地球寒冷化への警告の二つが混在していた気象学の状況を反映している。

5. 火星人とは誰のことか

火星人は、かつて、SF小説の定番のテーマだった。特にイギリスの作家、H・G・ウェルズが、1898年に発表した『宇宙戦争』(原題:The War of the Worlds)は、そうした小説の古典である。この小説では、地球人よりも知性が高いが、冷酷な火星人が、地球を植民地にしようと、イギリスを襲撃し、侵略するのだが、言うまでもなく、これは当時のイギリス人が、他の民族に対して行っていたことだった。結局のところ、この火星人とは、イギリス人が火星という異界に投射した鏡像的他者であり、自分自身である。カール・セーガンは、番組の最後で、火星を地球と同じ環境へと作り変えるテラフォーム計画を紹介し、火星人は、地球人ということになるだろうと言っているが、これは別の意味で正しい。

The original cover to H. G. Wells' novel The War of the Worlds
H. G. Wells の小説 The War of the Worlds 初版の表紙
[Especial H. G. Wells]

上の絵は、『宇宙戦争』初版の表紙の絵であるが、火星人と言えば、ここに描かれているようなタコのような形でイメージされることが慣例となった。なぜ火星人は、タコのような形でイメージされるかと言えば、それは、人間が将来そういうように進化するだろうと人間が想像しているからである。肉体労働をしなくなり、頭脳ばかりを用いる結果、首から下が退化し、脳と目だけが大きくなるだろう。宇宙人にはいろいろなバージョンがあるが、多くは、未来の人間の自画像である。

カール・セーガンは、『宇宙戦争』が、それ以前の空想のマイナー・ヴァージョンではなくて、革命的な産物と言っていたが、私はそうは思わない。異界を火星に求めたり、ハイテク兵器が登場するあたりは、確かに新しいが、基本的な構図は、過去に存在した神話的空想と大きく変わるわけではない。宇宙人やUFOの本質を知る上で重要なのは、天文学や宇宙生物学ではなくて、神話学や心理学である。

COSMOSのDVDと本
タイトルCosmos Collector's Edition (7pc) (Coll Box)
媒体DVD
監督, 出演Carl Sagan
出版社と出版時期Cosmos Studios, 2002/10/22
書名Cosmos
媒体ペーパーバック
著者Carl Sagan
出版社と出版時期Abacus, 1983/08/11

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