『コスモス』は、アメリカの天文学者、カール・セーガンが監修し、自らナビゲータとして進行を担当した、宇宙と生命をテーマとする、全13回のドキュメンタリー科学番組である。日本で初めてテレビ放送されたのは、1980年のことであるが、2000年に7枚組みのDVDが発売されたので、それを見て思いついたことを7回にわたって書いてみたい。
6. 大航海時代と宇宙開発時代
17世紀から18世紀にかけての大航海時代に、オランダは、世界の海を支配する覇権国家となった。この時代はオランダの黄金時代で、ホイヘンス(上図)、スピノザ、グローティウス、ルーベンス、レンブラント、フェルメールなど、優れた学者や芸術家が現れた。セーガンは、オランダの繁栄を、異端に対して寛容な政治風土に求めている。
オランダは、世界各地に植民地を築いたが、利益を上げないうちにその大半を次の覇権国家であるイギリスに奪われてしまった。その結果、英語が世界の標準語となった。カール・セーガンは、惑星探査機ボイジャーの名前にかこつけて、大航海時代を現代の宇宙開発時代に喩えているのだが、米国も、利益を上げないうちに、宇宙開発の成果を次の覇権国家に奪われるかもしれない。
もしも多くの人が予想するように、次の覇権国家が中国となるならば、さらに、中国がテラフォーミング(惑星の地球化改造)に成功して、過剰な人口を他の惑星に移住させるならば、中国語が宇宙の標準語となるだろう。日本人がイニシャティブを握れば、日本語が宇宙の標準語になるかもしれない。
7. 経験主義と理想主義
セーガンは、ミレトス学派の自然哲学を、宗教的権威に依存しない自然の説明として、なかんずく、デモクリトスの原子論を、最初の科学的アプローチとして高く評価する。哲学の世界では、デモクリトスのようなソクラテス以前の自然哲学は、プラトン・アリストテレスの前座として軽く見られる傾向があるのだが、セーガンのような自然科学者は、逆の評価をする。
ミレトスは、既存宗教の支配力が強いギリシャ本土から遠く離れた植民地だったので、自由な思想が発達しやすかった。また、交易が活発だったために、知的刺激にも欠かなかった。これが、非宗教的な自然哲学が花開いた原因と考えられている。
自然哲学者は、経験を重視し、実験を行ったが、プラトンは、経験を軽蔑し、イデアの世界に閉じこもった。プラトンの哲学はその後キリスト教によって受け継がれ、科学者にとっては暗黒の時代が続くことになる。プラトンのイデア論は、肉体労働を奴隷にさせる特権階級の思想であり、自ら技術者として肉体労働を行ったミレトス学派の自然哲学者とは異なって、人類の進歩を妨げたとセーガンは言う。
プラトンの哲学のような経験的多様性を無視する理想主義は、学問的には神秘主義的独断論を、政治的には全体主義的独裁制を帰結する。カール・ポッパーは、プラトンの哲学を悪しき全体主義の源泉と位置付けていたが、健全な学問にとって必要なのは、経験を重視した理論であり、健全な政治にとって必要なのは、個の利益を重視した全体の利益である。
| タイトル | Cosmos Collector's Edition (7pc) (Coll Box) |
|---|---|
| 媒体 | DVD |
| 監督, 出演 | Carl Sagan |
| 出版社と出版時期 | Cosmos Studios, 2002/10/22 |
| 書名 | Cosmos |
|---|---|
| 媒体 | ペーパーバック |
| 著者 | Carl Sagan |
| 出版社と出版時期 | Abacus, 1983/08/11 |



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