【覚書】 コスモス(6)

『コスモス』は、アメリカの天文学者、カール・セーガンが監修し、自らナビゲータとして進行を担当した、宇宙と生命をテーマとする、全13回のドキュメンタリー科学番組である。日本で初めてテレビ放送されたのは、1980年のことであるが、2000年に7枚組みのDVDが発売されたので、それを見て思いついたことを7回にわたって書いてみたい。

10. 宇宙観の脱中心化

The 100 inch (2.5 m) Hooker telescope at Mount Wilson Observatory near Los Angeles, California. This is the telescope that Edwin Hubble used to measure galaxy redshifts and discover the general expansion of the universe.
ロサンゼルス郊外のウィルソン山天文台の100インチフッカー望遠鏡。[Andrew Dunn (1989) 100 inch Hooker]

エドウィン・ハッブルとミルトン・ヒューメイソンは、ウィルソン山天文台の100インチフッカー望遠鏡(上の写真)で銀河の赤方偏移を測定し、宇宙膨張を発見した。地球から遠ざかる銀河から来る光は、ドップラー効果により、赤方に偏移するのだが、赤方偏移の量は、遠方の銀河ほど大きいことがわかった。ヒューメイソンは、地球を中心に宇宙が膨張していると考えたが、現代の科学者は、宇宙のどの地点で観測しても、同じ現象が見られると考えている。

The expanding raisin bread model
レーズンパンモデルによるハッブルの法則の説明 [WMAP Cosmology101: Formation of the Elements]

銀河をレーズンに喩えると、パンが膨らむにつれて、どのレーズンから見ても、他のレーズンが離れていくように見える。また、遠くにあるレーズンほど遠くへと離れることがわかる。だが、レーズンパンモデルだと、中心に位置するレーズンと縁に位置するレーズンの違いが出てくるので、真に、各銀河を脱中心化したとはいえない。宇宙に三次元的な縁がないことを示すためには、四次元モデルが必要である。球の表面上に位置する点は、球が膨張するとき、相互に離れていくが、どの点も特異点ではないし、二次元的に縁があるわけでもない。

人間は、地球が太陽系の中心ではなく、太陽系は銀河系の中心ではなく、そしてこの銀河系は宇宙の中心でないことを認識するようになった。人間の知的進歩は、人間が特殊な存在ではないということを明らかにしている。むしろ、人間の宇宙における特殊地位は、人間が宇宙において特殊地位を持たないことを認識している点にある。

11. 情報エントロピーの増大としての汚染

クジラは、海中で音波によるコミュニケーションを行っている。人間が大規模に進出するまでは、大洋は静かで、クジラが発する音声は、15000キロメートル先まで届いた。だが、人間が海洋上を頻繁に往来するようになると、船のスクリュー音やソナーが撹乱要因となって、音声は数百キロメートルにまでしか届かないようになった。

人間が海を喧しくしたおかげで、クジラの繁殖のためのコミュニケーションが妨げられるようになった。人間による物質的な海洋汚染のみならず、ノイズ汚染までもが、クジラの生態を危機にさらしているわけだ。最近増え始めた、クジラの岸辺への打ち上げも、人間によるソナーの使用が原因ではないかという指摘もある [BBC NEWS : Sonar 'may cause whale deaths'] 。

人間は、たんに物質的なエントロピーを増大させるだけではなく、情報エントロピーをも増大させることによって、他の生物に害を与えている。人間が夜間に出す過剰な光は、間違った信号として、動植物の生態を撹乱し、光害と呼ばれているが、これも情報エントロピーの増大としての汚染と位置づけることができる。

COSMOSのDVDと本
タイトルCosmos Collector's Edition (7pc) (Coll Box)
媒体DVD
監督, 出演Carl Sagan
出版社と出版時期Cosmos Studios, 2002/10/22
書名Cosmos
媒体ペーパーバック
著者Carl Sagan
出版社と出版時期Abacus, 1983/08/11

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