1973年にオイルショックが起きた時「石油はあと30年で枯渇する」と言われていた。それから既に30年以上たっているが、石油の可採年数は逆に伸びている。 いったい石油はいつ枯渇するのか。石油の枯渇に備えて、私たちは、今から何をしなければいけないのか。
1. なぜ石油の可採年数は増えているのか
石油の埋蔵量が有限で、かつ、人類がそれを毎年大量に消費しているのだから、石油の埋蔵量は、したがって可採年数も年々減っていくはずだと人は考えがちである。ところが、実際には、以下の図に示されているように、石油の確認埋蔵量も可採年数も、逆に年とともに増える傾向にある。
確認埋蔵量とは埋蔵が確認されている石油のうち、現在の技術力と採算性から採掘できる量であって、地球に実際に存在する石油の総量ではない。だから、確認埋蔵量は、次のような要因で増える。
- 技術革新による掘削・回収力の強化
- 新しい油田ないし油層の発見
- 石油価格の高騰による採算性の向上
最近の確認埋蔵量増加の主要因は、三番目である。石油価格が上昇して、採算のとれる油田が増えれば、埋蔵量も増えることになる。
可採年数は、確認埋蔵量を年間生産量で割った値である。ここ数年、年間生産量は停滞しており、可採年数は伸びやすくなっている。2005年末の推計で可採年数は49年であるから、しばらくは、枯渇の心配はない。にもかかわらず、なぜ最近石油枯渇論が台頭しているのか。
2. 石油価格の高騰は枯渇の予兆か
それは、おそらく、石油価格が上昇しているからであろう。70年代に石油価格が高騰したときも、石油枯渇論が喧伝された。その後80年代に入って、石油価格が暴落すると、石油枯渇論も雲散霧消したが、9.11以降、再び記録的な高さにまで上昇し、それと同時に枯渇脅威論も復活しているのであろう。
「石油が不足すれば、石油価格は上昇する」という命題は正しい。しかしこの逆「石油価格が上昇しているなら、石油は不足しているはずだ」は必ずしも真ではない。石油価格はいろいろな要因で変動するからだ。
例えば、70年代における石油価格の吊り上げは、OPEC諸国の団結によってのみ可能であったわけではない。オイルショックが起きる2年前にはドルショックがあった。アメリカは1960年代後半から、財政赤字によりインフレ状態にあり、ドルの価値を支えるために日本や西ドイツなど他の国もインフレ政策を取らざるを得なかった。1973年は、第一次オイルショックの年であると同時に、スミソニアン体制が崩壊した年でもあり、石油をはじめとする物価の狂乱的な上昇は、過剰なマネーサプライの増大がもたらしたインフレが根本的な原因であったと考えることができる。
現在の石油価格の高騰に関しても、アメリカの財政赤字の拡大、ドル価値の下落、石油と天然ガスの主要な輸出国である中東とロシアの政治的リスクの高まりなどが原因となっており、世界的なリフレーションの動きが背景にあると考えることができる。たんに石油価格が上昇しているというだけで「石油の枯渇が近づいている」などと結論を出すことは早計である。
3. 石油は無尽蔵か
石油エネルギーは、風力エネルギーや太陽光エネルギーとは異なって、「再生可能なエネルギー」ではないとしばしば言われるが、これは正しくない。なぜなら、石油のもととなる原油は、今でも自然現象で新たに作られているからだ。また、石油を人為的に作ることもできる。コストあるいはエネルギー収支という点で実用化はできないが、同じことは、風力エネルギーや太陽光エネルギーについても言える。
石油の原料は、海底にたまった生物の死骸が圧縮されてできるケロジェンと呼ばれる泥岩と考えられている。ケロジェンは、低温、低圧の若い地層に分布している。それが高温/高圧の環境に長く晒されれば晒されるほど、ケロジェンから原油へ、原油から熱分解性ガスへと変質していく。では、原油はどの程度のスピードで、新たに作られているのだろうか。正確なことはわからないが、新たに熟成する原油の量は、現在消費している量の1%以下というのが大方の見方である。石油が、いつかは枯渇する有限な資源といわれる所以である。
もっとも、石油は無尽蔵に供給されると主張する少数意見もある。アメリカの天文物理学者トーマス・ゴールドは、生物を石油の起源とする主流派の説を批判し、石油や天然ガスの供給源は、地球が形成されたときに蓄えられた、深部に存在するメタンであり、その量は きわめて膨大に違いないと推測している[Thomas Gold:The Origin of Methane (and Oil) in the Crust of the Earth]。
実験室では、無機的材料からも有機的材料からも石油を作ることができるのだから、生命起源説も非生物起源説もともに可能性はある。また、石油といっても成分には大きな違いがあり、生命起源の石油と非生命起源の石油の二種類がある可能性もある。
4. 炭化水素の時代はまだ続く
トーマス・ゴールドが考えるように、石油の材料となるメタンが、地下奥深くに無尽蔵にあるとするならば、石油の枯渇を心配しなくてもよい。また、彼の楽観的過ぎる説を信じないとしても、石油は、少なくとも、21世紀の半ばまでは枯渇しない。さらに、石油のもっとも単純な形態であるメタンは、石油以上に可採年数が長く、2005年末現在で、65年と評価されている[BP Global:Proved natural gas reserves]。
石油や天然ガスといった炭化水素は、現在人類が活用できるエネルギー源の中で最も優れたエネルギー源である。できるだけ大切に使わなければいけない。燃料としてだけ使うのはもったいない。まずは石油化学製品として使い、ごみになった段階で、ごみ発電で電気エネルギーを取り出すという方法をもっと普及させるべきである。
また原油にせよ、天然ガスにせよ、石油にする過程で水素が発生するので、その水素を燃料にして燃料電池による発電を試みることも重要である。燃料電池は、当面、炭化水素に代わる新たなエネルギー源ではなく、炭化水素の新しい活用方法の一つということになるだろう。炭化水素以外から水素を取り出す方法は、今のところ、コストが高すぎて、実用化のめどは立っていないからだ。


コメント
石油枯渇の話としては良いのですが、石油消費における問題点も指摘して欲しかったです。
Posted by CELSS at 2007年2月 7日 03:48
それは、また別の機会に論じます。
Posted by Nagai Tosiya at 2007年2月 7日 10:57
>まずは石油化学製品として使い、ごみになった段階で、
>ごみ発電で電気エネルギーを取り出すという方法を
>もっと普及させるべきである。
この発想にはハッとさせられました。
現在のごみ分別はリサイクルが主眼になっていますが、それを少し見直して、いわゆる「サーマルリサイクル」の効率を高めるための分別という視点で行えばよいと考えられますね。そうすれば、石油化学製品は「燃料」として有料回収の対象になる可能性もあります。
一般にプラスチックごみが問題になるのは、塩素化合物を使用しているため、低温燃焼だとダイオキシンが発生するからだと言われています。ところが、サーマルリサイクルの資源として位置づければ、回収や燃焼を専門の業者(電力会社など)がやるので、高温の焼却炉は当然備えていると考えられ、ダイオキシンの問題は起こりにくくなるでしょう。
そう考えると、無理矢理「リサイクル」して、誰も買わないプランターや値段が高い割に使い勝手の悪い再生繊維にするより、ずっとコストパフォーマンスの高い事業になります。行けますよ、これは。
Posted by ろろ at 2007年2月11日 00:53
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