持続可能な文明(2)沙漠の再緑化

地球の沙漠化は、おそらく最も深刻な環境問題ということができる。過去の多くの文明は、森林伐採と土地の酷使によって滅んだ。現代文明が滅びないようにするには、持続可能な農業の方法を確立しなければならない。

1. 沙漠化はいかにして起きるのか

産業革命以降の急激な人口爆発により増大した農作物と家畜への需要を満たすべく、近代人は、森林を切り開き、農地や放牧地を作ってきた。以下の図は、米国に限定されているが、近代文明の発展が原生林を消滅させる様子を描いている。

Source of 1620, 1850, and 1920 maps: William B. Greeley, The Relation of Geography to Timber Supply, Economic Geography, 1925, vol. 1, p. 1-11. Source of TODAY map: compiled by George Draffan from roadless area map in The Big Outside: A Descriptive Inventory of the Big Wilderness Areas of the United States, by Dave Foreman and Howie Wolke (Harmony Books, 1992).
1620年(左上)、1850年(左下)、1920年(右上)、現在(右下)の米国における原生林の分布 [United States Deforestation from 1600AD]

左上の、1620年の図は、イギリスのメイフラワー号がプリマスに到着した時の原生林の分布を示している。当時のアメリカ大陸東部は、うっそうとした原生林で覆われていた。しかし、やがて原生林は、ヨーロッパから来た移民によって蚕食され、現在では、ほとんど残っていない。この地図には描かれていないが、現在は、再植林による人工林が増えつつある。もとより、現在の森林被覆率は1620年の水準には及ばない。

原生林が開墾され、農地や牧草地に転換されても、植被が減るわけではないから、問題はないと思うかもしれない。確かに、木でも草でも植物であることには変わりがないのだが、木と比べると、草のほうが、蒸散の量と規模が小さいので、水の循環を作り出す機能が弱い。もちろん、農地であれ、放牧地であれ、持続可能ならよいのだが、実際には、農地や放牧地が沙漠化するという現象が頻発している。沙漠化のメカニズムは、以下のとおりである。

1.1. 放牧地が沙漠になる過程

生産性を高めようと、家畜の数を増やすと、家畜が牧草を食べ過ぎて、牧場が持続不可能になる。また、放牧地では、家畜が行き来するので、家畜の踏圧により、土壌が硬くなる。その結果、降雨が地下に浸透せずに、地表層に貯まり、蒸発しやすくなり、植物の根圏土壌水分環境を悪化させ、植生の再生伸長を妨げる [国際農林水産研究センター: 過放牧が引き起こす砂漠化の微気象学的メカニズム] 。そして、植被が後退すると、風食や水食により表層土壌が失われ、恒久的な沙漠になる。

1.2. 農地が沙漠になる過程

天然の草木は、菌根菌や根粒菌といった共生菌のおかげで、わずかな栄養とわずかな水分で生きていくことができる。ところが、近代農業は、商品価値の高い作物を作ろうとして、大量の殺虫剤や除草剤を散布して、土中有用微生物を殺してしまう。その結果、植物は、土中の栄養分や水分を吸収する能力を大幅に失う。そのため、化学肥料の散布と灌漑が必要になるが、大量の肥料と水の投与は、塩類集積をもたらし、作物を枯らすことになる。そして、植被が後退すると、風食や水食により表層土壌が失われ、恒久的な沙漠になる。

2. 沙漠化にはどのような問題があるのか

現在、世界の沙漠は、毎年6万平方キロメートルのスピードで広がっている。植物は、食料、建築資材、衣類原料など、人類にとって有益な資源を提供するのみならず、水と気温を調整するなどエコロジカルにも重要な役割を果たしているのだから、植被の後退としての沙漠化が人類にとって好ましくないことは言うまでもない。

植物が二酸化炭素の吸収源としても機能していることは広く知られているが、生きている間に、植物本体にのみならず、土壌にまで炭素を蓄積させることはあまり知られていない。だから、京都議定書は、植林に仮のクレジットしか認めない。だが、植物による土壌への炭素隔離、長期にわたる温暖化防止策として、近年注目されている。

Plants serve as sinks for atmospheric carbon dioxide. Carbon stored in vegetation, soil, or the ocean, which is not readily released as carbon dioxide, is said to be sequestered. To balance the global carbon budget, we need to increase carbon sequestration and reduce carbon emissions. While carbon can cycle in and out of soil or biomass material, there are methods for building up what are called soil “humic” substances (also known as organic matter) that can remain as stable carbon compounds for thousands of years.

植物は、二酸化炭素吸収源として機能している。炭素が、二酸化炭素として直ぐに大気中に放出されるのではなく、植物、土壌あるいは海洋に貯蔵されることを「隔離」という。地球上の炭素の収支バランスを保つために、我々は炭素の隔離を増やし、炭素の大気中への排出を減らす必要がある。炭素が土壌あるいはバイオマス(一定の空間に存在する動植物と有機物全部)の内外で循環しうる一方で、いわゆる土壌の「腐植」物質(有機物としても知られる)を増加させる方法がある。この腐植物質は、炭素を安定した炭素化合物として何千年もの間存続させることができる。

Before forests and grasslands were converted to field agriculture, soil organic matter generally composed 6 to 10% of the soil mass, well over the 1 to 3% levels typical of today’s agricultural field systems. The conversion of natural grasslands and forests around the globe works to elevate atmospheric carbon dioxide levels significantly. Building soil organic matter by better nurturing our forest and agricultural lands can capture this excess atmospheric carbon dioxide, and preserve more natural landscapes.

森林や草原が農地に切り替わる以前は、土壌有機物は土壌質量の約6-10%を占め、今日の通常の農耕システムにおける1-3%の水準をはるかに上回っていた。世界中で自然の草原や森林が農地に切り替わることで、大気中二酸化炭素濃度は著しく増加した。我々は、森林や農地をもっと肥沃にして土壌有機物を増やすことによって、この過剰な大気中の二酸化炭素を捕え、より自然な地形を維持することができる。

土壌中に最も大量に炭素固定を行っているのは、菌根菌である。菌根菌は、植物に、リン酸を代表とする無機栄養と水分を与える代わりに、植物から有機物を受け取る形で、植物と共生している。この共生関係は、植物が陸上に進出した4億年前から続いている [T. N. Taylor, W. Remy, H. Hass, H. Kerp (1995) Fossil Arbuscular Mycorrhizae from the Early Devonian]。近代以降、人類は、農薬をまくことで、菌根菌を殺し、4億年間続いてきた共生関係を破壊しつつある。

3. どうすれば沙漠を再緑化することができるか

土壌の炭素固定能力を回復させるためには、菌根菌を生かした有機農業を復活させなければいけない。有機農業とは何かに関しては、様々な議論があるが、米国農務省は、次のように定義している。

Organic agriculture: A concept and practice of agricultural production that focuses on production without the use of synthetic pesticides.

有機農業:合成殺虫剤を使わない生産を重視する農業生産の概念と実践。

合成殺虫剤の不使用だけでは、不十分である。有機農業の定義には、除草剤や化学肥料の不使用までが必要である。有機農業では、害虫の駆除や雑草の除去には、化学農薬ではなくて、生物農薬が使用され、肥料は、化学肥料ではなくて、堆肥などの有機肥料が使われる。

もとより、生物農薬や有機肥料だからといって、安全だとか、環境によいというわけではない。生態系を破壊するような生物農薬は使うべきではないし、有機肥料も必要最小限にしなければならない。肥料を過剰に与えると、余剰窒素を求めて虫や病原菌が湧く。肥料を必要最小限にすると、虫や病原菌が湧かなくなるので、農薬の使用も減らすことができる。

この考えをさらに推し進めて、化学農薬や化学肥料だけでなく、農薬と肥料を一切使わずに作物を育てる無肥料栽培を推奨する人々がいる。なぜ一切肥料をやらなくても、作物は育つのか。

現在の施肥農業は、植物を生育させる栄養素はチッソ・リン酸・カリのほかに一六種の必須微量元素が必要で、植物の生産量は最も不足する無機成分量に支配されるという「最小養分律」の概念が基本になっている。したがって、不足成分をバランスよく補うことが大切になる。しかし無肥料栽培の場合、不足成分を人為的に補うことはない。植物は必要不可欠な成分をどのように得ているのであろうか。

その答えとなる説のひとつに「元素転換」がありそうだ。一般の化学では異端視されている説だが、量子力学の見地からすると、その正当性が成り立ってくるそうである。

元素転換は常温核融合と同じく、ごくわずかなエネルギーでも起こり得るといわれている。そのエネルギーのもとになっているのが、植物と人間が共通してもつ微弱な生体電流だともいわれ、特に人が放つ生体電流は作物の生長に大きく影響を与えているのだそうだ。

簡単にいえば、農家の体や心の状態までもが作物に影響する。つまり農家が愛情をもって作物に接し世話をする、その心の声(こえ)こそが、見えない肥(こえ)になっているのかもしれない。

ここに出てくる生物学的元素転換説は、ルイ・ケルヴラン(Corentin Louis Kervran)が唱えたものだが、元素転換は実証されていない仮説である。また、無肥料栽培でどれだけ連作ができるかについての実験もない。日本の土壌は肥えているので、無肥料でも、しばらくは作物が育つが、無機栄養分は、植物によって摂取されたり、水に流されたりするので、新たに補給されなければ、徐々に減っていって、最終的には、土壌は作物を育てることができなくなる。

日本で農業をするには、あまり肥料は必要ないかもしれないが、沙漠や荒地など、栄養の乏しい土地を緑化するには、施肥は不可欠である。化学肥料は、リン鉱石から作られるが、リン鉱石は枯渇しつつあるので、化学肥料を用いた農業は持続可能ではない。

化学肥料は、石油と同様、無尽蔵な資源ではない。リン鉱石が枯渇したら、人類は、海に流出したリンを回収しなければなくなるだろう。そうした回収を機械 で直接やろうとすれば、莫大な費用とエネルギーが必要になるが、心配は無用である。魚や鯨が代わりにやってくれる。魚や鯨の骨には大量のリンが含まれているから、それを農地に還元すればよいのだ。

化学肥料のもう一つの問題点は、主要な必須元素を含んではいるものの、微量の必須元素までは含んでおらず、長期的に化学肥料ばかりを用いていると、田畑が植物の育たない土地になってしまうということである。この点からも、有機肥料、なかんずく人糞尿の利用を見直したいものである。

家畜の糞尿を肥料として使うという方法もあるが、これだと海から陸への栄養の循環を作ることはできない。また、家畜の放牧自体が沙漠化をもたらしていることを考えるならば、家畜への依存度を高めることも好ましくはない。陸上動物ではなくて、水中動物の肉を食べ、そして、人糞を発酵させて肥料にし、有機農業により陸地に還元することが、沙漠の緑化にとって必要である。 

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コメント

元素転換や常温核融合などの与太話をされますと、読者が逃げますよ。

“元素転換や常温核融合などの与太話をされますと、読者が逃げますよ。”

本文をよくお読みいただければわかるように、私は、元素転換を根拠にした無肥料栽培を批判しています。あなたは、元素転換や常温核融合を批判すること自体が与太話だと言いたいのですか。

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