廃棄物発電

前回、リサイクルが、ごみを減らす以上に増やし、資源を食いつぶし、環境を悪化させることがあることを指摘したが、今回は、その対策として廃棄物発電による未利用資源の有効活用を考えてみよう。

1. 廃棄物発電のメリット

宇宙のエントロピーは増えることはあっても、減ることはない。しかし、だからといって地球のエントロピーは増える一方というわけではない。地球内で生じたごみを廃熱として捨てるならば、そのごみは、大気循環によって運ばれ、最終的に宇宙に捨てることができる。だから、ごみを廃熱にすることは最も優れた廃棄物処分の方法である。

一般廃棄物の成分の全国的な平均値は、水分40-60%、可燃物30-40%、灰分10-20%である [鍋島 淑郎 他:ごみから電気をつくる, p.21]。燃やせば、残滓はわずかである。燃やすだけではもったいないので、発生した熱を発電に使ったり、残滓を埋め立てに使ったりすることができる。

マテリアル・リサイクルと比べた廃棄物発電のメリットは、分別収集をしなくて良いことと処理施設がごみを出したりエネルギーを使ったりするコミュニティに近いということである。

リサイクルの場合、回収する材料が特殊であればあるほど、処理施設の数は全国で少なくなり、回収場所から処理施設までの平均的な距離は長くなり、輸送ロスが大きくなる。だが、分別しなければ、狭い範囲で大量のごみが出るので、近くの施設で処分できる。灰を捨てるための輸送距離は長くなるかもしれないが、減量されているので、大きな負担にはならない。

また、リサイクルした製品は特殊なので、消費地までの距離は長くなるが、廃棄物発電で生み出される電気は汎用性があるので、それをごみを出す近くの需要地に供給することができる。また近くにあるという利点を利用して、コジェネレーションも可能である。廃棄物発電は、送電ロスを少なくした分散型発電の一つとして注目されている。

2. ダイオキシン問題にどう対処するべきか

廃棄物発電は、ダイオキシンを発生させるということで、評判が良くないが、ダイオキシンは、一般に考えられているほど有害ではない。実際、大量のダイオキシンを浴びても人は死なない。

最も顕著なケースは、北イタリアのセベソで起こった事故です。1976年7月、この町にある農薬工場で化学反応の暴走が起こり、推定130kgものダイオキシンが噴出しました。これは周辺数キロの範囲に飛び散って17000人がこれを浴び、しかもまずい対応のために避難が始まったのは事故から1週間が経過して、住民がたっぷりとダイオキシンを吸い込んでからになってしまいました。住民の血中ダイオキシン濃度は通常の2000~5000倍にもはね上がり、悲惨な事態を予見してイタリアのみならずヨーロッパ一円がパニックに陥りました。

ところが驚くべきことに、22億人分の致死量(モルモットでの数値)のダイオキシンが狭い範囲に降り注いだこの事故で、死者は一人も出ていません。奇形児の出産を恐れて中絶した妊婦もたくさん出ましたが、胎児にも特別な異常は見られなかったということです。出産に踏み切った女性たちの子供や直接ダイオキシンを浴びた住民たちはその後長い間追跡調査を受けていますが、体質によりクロロアクネ(吹き出物に似た数ヶ月で治る皮膚病)が出た人を除けば、病気の発生率・死亡率など特に異常は見られていません。

[有機化学美術館:ダイオキシンは猛毒なのか]

生活に近い場所でダイオキシンが発生することに、それでも不安を感じる人のため、近年ごみをガス化して資源化する方法が開発されている。この方法にはいろいろなものがあるが、ここでは、吉川邦夫(東京工業大学教授)が開発したスターミートを紹介しよう。

この方式は、酸素によってごみを直接燃やすのではなくて、酸素濃度の低い高温の水蒸気でごみを熱分解して、ガス化する。次に高温の水蒸気でその熱分解ガスを水素や一酸化炭素 やメタンなど可燃性のガスに改質し、それで発電する。

酸素をほとんど含まない熱分解ガスを800 ℃以上の改質炉内温度で分解して塩素ガス成分を除去後に燃料ガスとして利用するためにダイオキシン類の発生抑制が容易である。

マテリアル・リサイクルは、廃棄物を固体のまま再利用するので、毒物の除去ができないという短所を前回のコラム「リサイクルの問題点」で指摘した。ガス化する場合は、有毒物の検出と分別除去は容易である。

また、この方法だと、従来の廃棄物発電よりも小型化(1日数トン程度のごみの処理)が可能なので、分散型発電を徹底し、より効率的なコジェネレーションを行うことができる。

ただし可燃性ガスを内燃エンジンで燃やすと、一般の内燃エンジンと同様に、有害な気体が発生するので、一酸化炭素やメタンを水素へと改質し燃料電池で発電できるようにすることも試みられているようだ。

3. 有機廃棄物をどう処分するべきか

産業廃棄物の排出量は一般廃棄物の排出量の8倍もある [鍋島 淑郎 他:ごみから電気をつくる, p.24]。産業廃棄物の中で最も多いのは汚泥で全体の6割を占める。建設資材、動物の糞尿を加えると全体の8割を占める。だから、有機廃棄物をどう処理するかは、きわめて重要な問題である。

有機廃棄物からエネルギーを回収する方法としてポピュラーなのは、メタン菌にメタンを醗酵させ、それを発電に利用するという方法であるが、これだと微生物の死骸である汚泥が大量に出るので、汚泥処理という観点からすると好ましくない。

この問題点を解決した新しい発電方法として、柿薗俊英(広島大学助教授)が開発した、好気性微生物を使った燃料電池がある[日経エレクトロニクス編集部他:燃料電池(2006), p.130-131]。好気性微生物は、ミトコンドリア内で行う呼吸においてブドウ糖を一時的に水素イオンと電子に分解する。その電子を、メチレンブルーをメディエイターとして、奪い、発電するというものだ。微生物のエネルギーを奪うので、微生物は繁殖できず、その死骸である汚泥の量が減るというわけだ。

この好気性微生物を使った微生物燃料電池は、従来のメタン菌などの嫌気性微生物を使った燃料電池よりも、ブドウ糖一モルから得られる水素の量が倍以上で、効率がよい。また、他の燃料電池のように、触媒 に白金を使うわけではないので装置は安価である。非バイオマス系の燃料電池と比べるとエネルギー密度は小さいが、有機廃棄物の新しい処理方法として注目できる。

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