地球温暖化(2)温暖化の事実

今日、地球温暖化を人類文明にとっての脅威とみなす風潮が強いが、それに疑問を持つ科学者もいる。地球温暖化脅威論への懐疑論には、地球温暖化の事実そのものを疑う懐疑論、温暖化の原因が人間活動であることを疑う懐疑論、温暖化が人間社会に悪影響を及ぼすことを疑う懐疑論と三種類ある。後の二つは、後ほど扱うことにして、今回は、本当に地球は温暖化しているのかという問題を取り上げる。

1. 大気の温度は本当に上昇しているのか

科学者の中には、地球の大気の温度が上昇していることを否定する人がいる。日本では、渡辺正氏が、こういう主張をしている[渡辺正:これからの環境論―つくられた危機を超えて, p.92]。海外では、ウィニペグ大学(カナダ)元教授(地理学)の Timothy F. Ball が、2004年のインタビューで、次のように言っている。

The argument is that there has been warming since then [1980] but, in fact, almost all of that is due to what is called the “urban heat island” effect - that is, that the weather stations are around the edge of cities and the cities expanded out and distorted the record. When you look at rural stations - if you look at the Antarctic, for example - the South Pole shows cooling since 1957 and the satellite data which has been up since 1978 shows a slight cooling trend as well.

1980年以降、温暖化しているという議論だが、実際には、その温暖化のほとんどすべては、所謂「ヒート・アイランド」効果によるものだ。つまり、測候所は都市の周辺にあって、都市の拡大が記録を歪めている。もしも人里離れた測候所、例えば南極の測候所を見るならば、南極では、1957年以降、寒冷化しているし、1978年以降採取されている気象衛星データを見れば、同様に、わずかではあるが寒冷化の傾向があることがわかる。

[Frontier Centre for Public Policy:Dr. Tim Ball, Historical Climatologist]

地上での測候所における直接的な温度測定の結果とは違って、気象衛星による観測の結果は、寒冷化の傾向を示していると主張する科学者は、他にもいる。例えば、1997年のものであるが、NASAのサイトには、今でも次のような記事が掲載されている。

Unlike the surface-based temperatures, global temperature measurements of the Earth's lower atmosphere obtained from satellites reveal no definitive warming trend over the past two decades. The slight trend that is in the data actually appears to be downward.

地表面の温度とは異なって、気象衛星によってグローバルに測定された地球の下層大気の温度は、過去20年間にわたってはっきりした温暖化の傾向を示していない。実のところ、データに表れた傾向は、わずかながら下向きであるように見える。

2. 対流圏の気温変動と地表面の気温変動は別か

本当に大気の温度は下がっているのだろうか。地表面の気温と対流圏の気温は別の変動をしているのだろうか。以下のグラフは、1979年から1996年にかけて、気象衛星で観測した、地表面から5マイルの対流圏下層部の温度の偏差(基準:1979-1998)である。グラフの中の回帰直線は、わずかではあるが、上昇傾向を示している。

気温
1979年から1996年にかけて気象衛星で観測された、対流圏下層の、1979-1998年平均からの偏差。UAH(University of Alabama in Huntsville)教授、John Christy 提供[Channel 2 Retrieval of the Lower Troposphere developed by John Christy

このデータに基づいて、John Christy は、1997年の米国上院環境委員会の公聴会で、次のように発言している。

It does show a slight warming trend of .06 degree per decade. It's small enough to be easily placed within the bounds of natural variability, but I can't be certain about that. Humans may be having a slight impact on the global tropospheric temperature.

このグラフは、10年間で0.06℃のわずかな温暖化の傾向を示しています。この変動は小さく、自然の変動の範囲内とみなすことは容易ですが、私は確信をもてません。人類は、ひょっとしたら、グローバルな対流圏の温度にわずかな影響を与えているのかもしれません。 

John Christy は、この時点では、あまり自信がもてなかったようだが、その後の、2007年までの観測データは、よりはっきりと温暖化の傾向を示している。

気温
1979年から2007年にかけて気象衛星で観測された、対流圏下層の、1979-1998年平均からの偏差。UAH(University of Alabama in Huntsville)教授、John Christy 提供[Channel 2 Retrieval of the Lower Troposphere developed by John Christy

Timothy F. Ball は、地表面で顕著な温暖化は、ヒートアイランド現象が原因だとしたが、David E. Parker は、風が強い夜でも、風が弱い夜でもあまり差がないことから、ヒートアイランド現象による影響ではないとしている[David E. Parker (2004) Large-scale warming is not urban]。

それにしても、なぜ気象衛星でのデータは大気の寒冷化を示しているという主張がかつてなされたのか。どうも、初期の気象衛星による温度測定の精度に問題があったようだ。気象衛星は、直接気温を測るわけではない。さまざまな波長帯の放射輝度を測り、それから気温を推定する。だから、もとのデータに変更はないにしても、それの気温への変換にさまざまな補正が加えられる。懐疑論は、初期の推定に基づく議論であり、現在の補正結果によれば、地表面の気温変動と対流圏下層の気温変動が逆の傾向を示しているということはない。

3. 成層圏の気温は低下している

以下のグラフを見てもわかるように、大気圏の気温(下)は上昇しているが、成層圏の気温(上)は低下している。

比較
熱帯地域における成層圏下層(上)と対流圏下層の、1981年から1990年までを基準とする温度偏差。RSSとあるのは、Remote Sensing Systems社、HasAT2とあるのは、ハドレーセンターによる衛星観測の結果。[Met Office: Hadley Centre: Climate monitoring]

IPCCの第四次評価報告書によると、10年間の温度変化は、対流圏が0.04℃から0.20℃へと上昇したのに対して、成層圏は、-0.32℃から-0.47℃へと低下した [IPCC (2007) Observations: Surface and Atmospheric Climate Change, p.267] 。この逆転はなぜ起きるのか。

田中正之氏によると、対流圏の温度上昇も成層圏の温度上昇も、どちらも二酸化炭素濃度の上昇で説明できる。成層圏は、地表から対流によって熱が輸送されることはなく、主として、オゾンが太陽紫外線を吸収し、そのエネルギーを赤外線として射出することで暖められる。赤外線を宇宙に向けて放出している主要な大気成分は、二酸化炭素と水蒸気であるから、二酸化炭素濃度が上昇すると、気温が低下する [田中 正之:温暖化する地球, p.120]。(続く)

関連書籍紹介
書名 温暖化する地球
媒体 単行本
著者 田中 正之
出版社と出版時期 読売新聞社, 1989/12
書名 これからの環境論―つくられた危機を超えて
媒体 単行本
著者 渡辺 正
出版社と出版時期 日本評論社, 2005/01

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