世界10大詐欺事件(2)

「真実としてはうまく出来過ぎている!」というイギリスの新聞ガーディアン紙で紹介された10大捏造科学ともいえる事件を紹介。発掘!あるある大事典の捏造事件のように、科学らしく振舞うものに民衆は弱い。科学に無知な人々を欺く捏造や詐欺は10大どころか次々と出てきているが、証明されていないものを簡単に信用しない方がいい。科学が全てを可能にするわけではないことを知り、理科系の教育を受けていても社会に流され擬似科学を信じてしまうことがある。

⑥ロズウェル事件

ロズウェル事件というのは知っている人も多いだろうしここでは詳しく書かないが、私が小学生の頃、よく特集が組まれたUFOに乗った宇宙人がらみの話である。1947年米国のロズウェルにUFOが墜落し、そこから一般にはグレイと呼ばれる目と頭が身体に対して大きな異星人が回収されたと言われた。1995年英国の音楽プロデューサーが元カメラマンから極秘入手した異星人解剖フィルム(Alein Autopsy Film)は世の中で大きな話題となったので実際の映像を1996年頃に見た読者もたくさんいるだろう。しかし、2006年映画Alien Autopsy(宇宙人解剖フィルムのパロディ作品)の特殊効果を担当した英国の彫刻家John Humphreyが10年間守秘義務に基づき隠し続けていた解剖フィルムそのものの製作関与について告白。ロズウェル事件そのものについては何も言わないものの特殊美術である異星人のモデルはJohn Humphreyが製作し、映像内の外科医を演じたことを語った。グレイに本物のプロジェリア患者を使ったという噂は消えたが、映画「アレキサンダー」や「チャーリーとチョコレート工場」を手がける彼の技術に多くの人々が騙された。

⑦マラケシュの贋作化石

ドイツのヴェルツブルグ大学の医学教授Johann Bartholomew Adam Beringerは同僚の地理と代数学の教授J. Ignatz Roderickと大学司書Johann Georg von Eckhartの悪意に満ちた悪戯に騙され18世紀最大の化石贋作事件の被害者となる。彼らはBeringer博士の高慢な態度に怒り、3人の青年を使ってBeringer博士が化石採集によく訪れていたアイフェルシュタット山という場所に石灰岩を加工したトカゲや鳥、カエル、ハチ、カタツムリなどの化石やヤハウェを表す「YHWH」をラテン文字やアラビア文字、ヘブライ文字で刻んだ化石、そして怪獣や輝く太陽の化石を埋めた。トカゲの皮膚、鳥の目、花から吸蜜するハチ、カタツムリと卵、交尾中のカエル、巣を張ったクモなど、完全な姿をとどめた化石は奇跡的な発見だったのでにビュルツブルク産化石の石版図集を発表した。本の出版前から批判はあったがBeringer博士は「造形力説」の信者なので、神の手による神秘的なものだと確信して偽物だと見抜くことができなかったのである。これに驚いた2人は実際に偽造してみせた石を送ったり偽造の方法まで明かしたりしたが、手柄を貶めるための中傷だと思われてしまい最後にはヘブライ語でBeringer博士の名前を石に刻んだという。今ではリューゲンシュタイン(lying stones)として有名になりオックスフォード大学自然史博物館に保存されている。

⑧一家に一台で電気代いらず

永久に稼動する機械を発明したという米国の発明家Charles Redhefferは1812年フィラデルフィアで大規模な機械の開発資金として人々に出資を頼んだ。彼の主張はインチキだったが、詐欺の共謀者は人々は誰もそれを暴くことができないと賭けた。ところが1813年1月21日、8人の都市行政官が機械を調べるためにRedhefferを訪問、振り子のような機械を調べることにした。Redhefferは機械に近づこうとすると必死に止めたが、委員のうち1人がギアが不自然なことに気がついた。計略が明らかになってしまったためRedhefferはすぐに面割れしていないニューヨークへ出発した。ここでも機械を見せるのに1人1ドルで何百ドルか稼いだ。機械技師Robert Fultonがその機械を見に行き、機械の不安定な動きから「秘密の電源を解明してみせよう、もし間違っていたら代償を払う」と言い、 Redhefferはこれに同意し機械の分解を始めた。見物人は騙されたことに気づき、Redhefferは逃げ出した。

⑨ルイセンコ論争

環境因子が形質の変化を引き起こし、その獲得した形質が遺伝するという1934年に発表された遺伝学や進化論を否定するTrofim Denisovich Lysenkoの学説。低温処理によって春まき小麦が秋まきに、秋まき小麦が春まきに変わることを発見し、スターリン政権下で「マルクス・レーニン主義の弁証法的唯物論を証明するものだ」と指示された。一方有名なGregor Johann Mendelの遺伝学はソビエト連邦でこのときブルジョア理論として否定された。後天的に獲得した性質が遺伝されるというのは努力すれば報われるという共産主義国家に都合が良い理論でスターリンは強く支持していた。当時のソ連生物学者でこの学説に反対した者は処刑されたり強制収容所送りになった。中国でも毛沢東が大躍進政策の中でLysenkoの学説を採用し、数多くの餓死者を出した。1947年日本の学界にも導入された学説を擁護する学者によって低温処理を利用するヤロビ農法が寒冷地の農家に広まった。アメリカやヨーロッパの学界では政治色に染まった遺伝学説として疑われ、批判されていた。スターリン批判に伴いLysenkoも批判され、DNA構造や機能の解明が進み、この学説の支持者はいなくなった。

⑩原子番号116と118

1999年米国ローレンス・バークレー国立研究所で発見された原子番号116(第116元素)と最も重い元素として118(第118元素)を発見したとPhysical Review Letters誌で公表。ところが検証してみると確認ができない上に、2002年7月に研究所所長は科学者Victor Ninovによって捏造されたデータだと発表。発見の報告は取り下げられたが、それらはラテン語の数字でウンウンヘキシウム(116)とウンウンオクチウム(118)と呼ばれた。その後2006年10月9日に米国ローレンスリバモア研究所とロシアの合同原子核研究所(JINR)の合同研究チームがウンウンオクチウムを発見したらしい。この同位体はカリホルニウム249の原子にカルシウム48のイオンを衝突させて3原子のみ発見、アルファ崩壊してウンウンヘキシウムになったとされるとロイター等で報じられた。捏造された存在しないものが後で発見されたということになるが、超ウラン元素のほとんどは自然界に存在しないし、原子炉や粒子加速器で人工的に作られるものなので後の科学者が研究で発見する度に原子番号は増えていく。他の10大捏造でも取り上げたUFO陰謀説ではBob LazarによってウンウンヘキシウムはUFOの燃料だと言われた。

疑似科学

このコラムシリーズで取り上げた捏造は疑似科学(pseudoscience)つまり似非科学ばかりだ。だが、悪徳商法と親和性が高くお金を得る目的である場合もある。連鎖販売取引をしようとするのに「ねずみ講」だとは言わないで数式や図式を用いてミクロ経済学を装ってさも科学的で合理的なことだと他人を陥れたり、節電できるとかマイナスイオンが出るとか工業製品を科学的に見せかけたり、医療の現場でも科学的に証明されていないものを治療に用いたりするのも擬似科学に非常に近い。

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