環境破壊の文明史
狩猟・採取時代、人類は自然の恵みにより水や食料を得ていました。食料の多少により、人口が増減していました。農業時代になると、水を引いたり、家畜を飼うことで以前より多くの食料が獲得できるようになり、それに合わせて、人口は増加していきました。古代文明がいくつも勃興と消滅を繰り返していましたが、地球全体からみると、人類の活動は現在と比べると微々たるものでした。地球は無限に大きくて、必要となる水・食料・資源は無尽蔵であり、ゴミなども自然の回復力でなんとかなっていました。 自然の恵み >> 人類の活動 という時代です。そうは言っても、文明が消滅した後には、砂漠や不毛な土地、はげ山が残されてきました。千年以上経過しても相変わらず砂漠のままという場所は世界各地にあります。アマゾン奥地や東南アジアでは自然の回復力が強かったため再び森に戻ったケースもありますがごく一部にすぎません。
産業革命により大量生産が可能となると、これまた人口が増えました。また、生活水準がアップすることにより1人あたりのエネルギー消費量が増加し、ダブルの要因で人類の活動は増大し、地球に与える負荷も増えてきました。とはいえ、人口が10億人を超えたのは1800年頃なので、現在(2006年)の65億人と比べると、まだまだ地球は広かった。1950年頃でも25億人程度でした。この頃の地球は、人口の増大に対して、井戸を掘れば水が出るし、森を開拓すれば畑ができる。新たな油田や鉱山もどんどん発見され、人類が必要となる水・食料・資源は必要なだけ獲得できました。技術により、明るい未来が約束されていた幸福な時代といえましょう。 自然の恵み > 人類の活動 という時代です。
20世紀後半になると、人口が30億人、40億人と増え、世界各地で公害が発生したり、せっかくの畑が塩害などでだいなしになったり、砂漠化が進行していったりと、様々な問題が起こるようになりました。1972年に、ローマ・クラブが「成長の限界」(環境問題の古典です)を発表しました。当時の有識者が未来に対して警告を出したのです。このあたりから、石油危機や食料問題、水問題を始めとする諸問題が局地的な問題ではなくなります。地球が人類に必要なだけの水や食料や資源を提供するにはもう限界が来ていました。無限だと思えた地球が有限なものとして認識されたのです。 自然の恵み ≧ 人類の活動 の時代になっているのです。人類の活動による、自然に対する負荷は年々増大していきます。今までのやり方では近い将来破綻をもたらすでしょう。無限の欲望を満たすことは不可能です。自然の恵みは、限りがあるのです。もう既に 自然の恵み < 人類の活動 となり、未来を先食いしているかもしれません。
1960年代以降の宇宙開発により、地球全体を宇宙から見た写真や、人工衛星による地球の観測データが蓄積され始めました。コンピュータの処理速度向上によるシミュレーションも活用できるようになりました。これらの技術を使って未来を予測するこができるようになったのは1990年代になった頃でした。1992年、「限界を超えて」という形で「成長の限界」以降の20年間のデータを集めて、シミュレーションを行った結果が発表されました。1997年、京都にて京都議定書が採択されるまで、経済発展と環境保護のバランスをどうすれば良いのか、多くの人達による議論が繰り返されてきました。
100年後の地球
未来の地球はどうなるのだろうか? その疑問に応えるべく、スーパーコンピュータに今まで観測された膨大なデータを入力し、2002年3月より運用開始された当時世界最速の「地球シミュレータ」を用いて、未来の予測をしました。研究結果は世界中の研究者に公開されており、2006年2月18日と19日に放送された NHKスペシャル「気候大異変」 などにも利用されています。
(1) このまま何もせず無為に時を過ごした結果の100年後
(2) いっしょうけんめい環境問題に取り組んだ結果の100年後
この2つの予測をしたところ、100年後の地球の様子は大きく異なりました。現在を生きる私たちの選択が未来を大きく変えるのです。「何もしなくても自分の世代はなんとかなる」「環境問題に取り組むと経済成長の足を引っ張られる」「どうせ100年後は生きていない」このような我善しの態度をとると、取り返しがつかない状況となります。いまなら(もって10年位だろうか?)、まだ破滅的な未来は避けられる可能性がまだ残されています。
明るい未来を獲得するためには、20世紀型の大量生産大量消費の経済システムから、持続可能な循環型経済へのシフトが大前提となります。循環型経済はこんな仕組みです。
(1) 天然資源を浪費しないように消費を抑制する。
(2) 廃棄物の発生を抑制して生産/消費する。
(3) 再使用できるものは再使用する。修理して使うのも有効。<まずは再利用です>
(4) 再使用できないものは原料として再利用する。<次にリサイクルをします>
(5) 再利用できないものは燃やして熱を回収する。その際、熱効率をできるだけ高める。
(6) どうしようもないものだけ適正な方法で処分する。 <ゴミを最小限にしましょう>
身近な例を1つあげるとすると、ペットボトルや缶に入ったジュースよりも、昔ながらの瓶入りの方が洗って再利用できるので、よりよいけれど回収する手間が増えます。なかなか大変です。それなりにコストや手間もかかります。今までの生活水準を落とすケースもあるでしょう。
こうしてみると、21世紀を生きる私達は、20世紀とは全く異なった価値観を持つ必要に迫られているのがわかります。
その他にも、21世紀になって判明したことや新技術についても考慮する必要があります。石油の生産が上限を迎えた。食料の増産に限界がある。魚資源が枯渇しそうだ。化石水が涸れつつある。潅漑の失敗などにより砂漠化が進む。などのマイナス要因を追加されます。逆に、燃料電池などの代替燃料が普及する、砂漠を緑化するためのコストが大幅にダウンしたなど、新技術の発明や普及などプラスの要因もあります。省エネ技術や低燃費の車などは日本の技術が大いに役立ちます。
これらを考慮すると、かつてのイースター島みたいに環境破壊を徹底的にしてしまう前に人類の英知と技術のブレイクスルーにより、よりましな未来を構築することは今からでも充分可能だと私は判断しています。これからの多くの人達による実証実験の成果が出てきます。成功事例として誰もが認めるようなすばらしいものが間もなく出てくることを心から望んでいます。
【関連するリンク】
NHKスペシャル「気候大異変」(NHKのホームページ)
第1回 異常気象 地球シュミレータの警告 (2006年2月18日(土)放送)
第2回 環境の崩壊が止まらない (2006年2月19日(日)放送)
地球シミュレータセンター (独立行政法人 海洋研究開発機構)
京都議定書の目標を達成するには
(※の部分は、執筆者によるコメントです)
1997年12月、京都で開催された第3回締約国会議(COP3)において、法的拘束力をもった温室効果ガス削減のための議定書「京都議定書」が採択されました。その後、京都議定書に関する運用ルール等について交渉が行われ、京都議定書は2005年2月16日に発効しました。ロシアは参加していますが、残念ながら、アメリカと支那は参加していません。
1.温室効果ガスの削減目標
京都議定書では、先進国の温室効果ガス排出量について、数値目標が各国ごとに設定されました。先進国全体で、2008年から2012年までに排出した量が、基準の年となる1990年の排出量×5倍から5・2%削減することが目標となっています。ちなみに、日本は6%、EUは8%削減がです。ここからチームマイナス6%というフレーズが出てきたわけですね。ちなみに、温室効果ガスとして対象となるのは、6種類(二酸化炭素(CO2)、一酸化二窒素、メタン、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、パーフルオロカーボン(PFC)、六フッ化硫黄(SF6) )です。温室効果の程度はガスごとに違い、CO2を基準にした相対値(地球温暖化係数=GWP)で図ります。CO2を1とするとメタンのGWPは21、一酸化二窒 素が310、HFCとPFCはそれぞれ数百から数千、SF6は23,900となる。GWPが高いほど温室効果は大きくなります。
※ここで問題なのは、低成長が続いているのにも関わらず、2005年度で日本の温室効果ガス排出量は8%程増えてしまいました。あと6年で14%も減らさないといけない事態となっています。環境省がクールビズを始めとする省エネを推進する活動を一生懸命するようになったのは良いとして、現時点(2006年)から単にマイナス6%ではないことは意識しておいた方がよさそうです。
2.国内対策以外で削減目標を達成するには木を植えよう
(1) 「1990年以降」の「直接的かつ人為的」な「植林・再植林・森林減少」によって生じる吸収・排出分
(2) IPCCなど科学的な助言を考慮して、上記の3つの活動以外の活動による吸収分
※日本は、天皇陛下を始め、各地で植樹祭をやったり、木を植えています。海外でも砂漠緑化活動をしているので、ある程度の数字は出せるかもしれません。
3.京都メカニズム(他国と協力する対策)
(1) 共同実施(JI:Joint Implementation)
先進国が共同で温暖化対策事業を行う。その事業によって生まれた排出削減量を先進国の削減目標の達成に算入できる制度。
(2) クリーン開発メカニズム(CDM:Clean Development Mechanism)
先進国が技術や資金を提供し、開発途上国でその国の持続可能な発展を助ける温暖化対策事業を行う。その事業によって生まれた排出削減量を、先進国の削減目標の達成に算入できる制度。
(3) 排出量取引(ET:Emission Trading)
先進国間で、排出割当量の一部を取引することができる制度
※共同実施(JI)は先進国同士で温暖化対策を行い、クリーン開発メカニズム(CDM)は開発途上国の温暖化対策事業を先進国の技術や資金で行う点が異なります。日本の技術が海外貢献としてお役に立って、日本の削減目標達成分に組み入れる割合はクリーン開発メカニズム(CDM)が主体となると予想します。
4.日本の取り組み
日本政府はCOP3閉幕後に首相を本部長とする地球温暖化対策推進本部を設け、1998年に緊急対策として地球温暖化対策推進大綱を作成しました。この大綱は日本が約束した温室効果ガスの排出量6%削減を達成するための方策を示したものです。
(1) 企業の技術開発や国民の努力などで0・5%削減、
(2) 森林によるCO2の吸収分が最大3・7%、
(3) 外国との排出権取引など議定書が認めた補完的な方法で1・8%削減
1998年に排出量を削減するための国、地方自治体、企業などの責任と取り組みを定めた地球温暖化対策推進法が施行されましたが、企業の温室効果ガス排出量削減については努力義務にとどまっています。
※5.削減目標が達成できそうか?
EUは東欧諸国のエネルギー源を石炭から天然ガスに転換することをすると、目標達成できるようです。一方、省エネ大国の日本では、乾いた雑巾のごとくエネルギーの利用効率が高いため、国内の対策だけでは目標を達成するのが困難です。環境税や二酸化炭素税の名前でお金を集めて、温暖化対策を普及させる財源に使うことも想定されます。2008年度から排出量がカウントされるので、国内対策を実施するのに残された時間はあまりありません。原油価格が暴騰して、国内の生産が減ったり、物流が停滞したり、レジャー等による車の利用が減ることで強引に削減することは可能性としてゼロではありませんが、大不況になってしまいます。普通のやり方では目標達成は困難です。現実問題としては、排出権取引で他国の排出権を買いつつ、日本お得意のODAをばらまいて海外貢献をしてクリーン開発メカニズムで減らすことを目指すしかありません。
【関連するリンク】
地球温暖化防止京都会議 1997.12.1-12.10 (環境省)
京都メカニズム情報プラットフォーム
全国地球温暖化防止活動推進センター(JCCCA)
持続可能な開発のための日本協議会(JSCD)
平成17年度の温室効果ガス排出量速報値 (環境省)
現在を生きる私たちの責任
西ローマ帝国が崩壊した大きな要因に、ゲルマン民族大移動が上げられます。気象の悪化により中央アジアで食えなくなったフン族が375年に黒海北岸に侵入してきたので、しかたなく西ゴート族がドナウ川を越えてローマ帝国内に移動しました。西ゴート族はイタリア半島に進出するようになると、イタリア本土を防衛するため、国境守備隊を呼び戻した。国境地帯が手薄になり、結果として多くのゲルマン民族がヨーロッパ全土に移動してきました。西ローマ帝国は各地の独立により弱体化したというのが歴史書の伝えるところです。このまま温暖化が続くと日本は大雨になりますが、中央アジアやアフリカなどの乾燥地帯はますます雨が降らなくなり、砂漠化が進んでしまいます。そのため、民族大移動が再び起こるかもしれません。農耕民族と騎馬民族が争った場合、農耕民族は負けてしまいます。万里の長城のような代物を作っても維持費がかかってしまいますから、あまり良い方法とはいえません。
騎馬民族が移動させないためには、食うに困る状況を作らないのが一番です。草原が砂漠にならないように、オアシスが枯れてしまわないようにすること。となると、砂漠化の防止(砂漠緑化)をすることは、温暖化対策にもなるし、砂漠の民は喜ぶし、一石何鳥もの効果が期待できます。
過去から現在を経由して未来へと続く時の流れは、現在を生きる私たちにこの言葉を投げかけます。
(1) 過去の結果としての現在がある。
(2) 未来の原因としての現在がある。
未来に生まれる子供たちが困らないようにするのは、現在を生きる私たちの責任です。ご先祖から受け継いだ地球環境をできるだけ損なわず、できれば改善の方向に働きかけ、よりましな状態の地球を子孫たちに引き継ぐ。そのために今、私たちは目先のことよりもずっと先を見て、何をするべきかを選択し、実行に移すことがなによりも求められます。
橘みゆき 拝

コメント
日頃関心を持っている問題を整理して示してくださいました。
私たち意のある者は気づく限りのことを実行していると思います。
しかし、小さな気づきも打ち消してしまう力の存在があります。主としてテレビ放送です。これに対する方法をどのようにお考えでしょうか?
Posted by 牛窪 正 at 2006年11月12日 19:32
子供たちの自殺が止まりません。
親子関係から学校にいたるまで病んでいます。
嘘で固められた社会を作ったマスコミの罪は大きいと思います。
自殺予告:また7通 文科省に届く
http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20061114k0000e040055000c.html
Posted by パイナップル at 2006年11月14日 13:05