米国の底力

第二次大戦に勝利した米国は、自由主義と民主主義を唱える西側陣営のリーダーとして君臨し、社会主義を唱える東側陣営と対峙しました。19世紀のイギリスによる覇権が次第に弱まり、2つの世界大戦を経て、米国による覇権にシフトしたことになります。20世紀は米国の時代であったがいつまで続くのでしょうか。米国の覇権が衰退し、その後どこの国が引き継ぐことになっても、移行期には20世紀の世界大戦規模の戦争が何回か起き、大量の血と膨大なカネが浪費された後、誰もが納得する事実により、覇権の移行が完成することになります。戦争を回避するためにも、なるべく米国には踏ん張ってもらいたいと考えています。

真珠湾攻撃を受けた後、リメンバー・パールハーバーの号令の下、民主主義陣営を守れとか、枢軸国の支配から民衆を解放しようという大義名分が米国に広がっていた。米国は抽象的なスローガンと強大な敵が存在する場合に、一致団結してとても強い国になります。逆にベトナム戦争や今回のイラク戦争で、何のために戦争をするのがあやふや状態で、国内がいくつかに分裂している時は、強さが全然活かされません。戦争の目的や意義を明確にすることと、敵は誰でどんな行動をするのか、国民が戦争遂行を支持すること、これらがうまくいくと、米国の潜在能力がフルに発揮することができます。
2001年9月11日の世界貿易センタービル崩壊事件をきっかけに米国民はテロに対する戦争で一致団結したものの、5年以上経過し、終わりの見えない戦争で、敵もよくわからないこともあって、手頃な敵としてイランを選んだが、現時点で核がある北朝鮮を攻撃しないのに、核がないイランを攻撃するのはおかしいではないかという議論もあって、うまく進んでいません。米国民を一致団結させるため、第二の911事件や副大統領暗殺未遂くらいのことはやりそうです。

経済面に視点を移すと、ニクソンショックを始め、米国は自分が不利になるとルールを自分の都合に良いように勝手に変更し、他国にそれを押し付けることを繰り返してきました。日本は米国のわがままに従うだけでしたが、フランスなどは機会がある度に反発しましたが結果として受け入れるための条件闘争であり、米国のわがままを翻らせるまでには至りませんでした。湾岸戦争の戦費負担も自国でまかなえないから同盟国に負担を求め、日本は1兆円の負担を強いられました。米国の貿易赤字を日本や支那の黒字国が支えている構図は次第に強まりつつあります。ソ連が崩壊して東側陣営が資本主義に転じ、強大な敵を失った米国は唯一の超大国としていい気になりすぎ、親米国が反米国に転じるケースが多くみられました。グローバル化が貧富の格差を広げてしまったからです。冷戦時代は西側陣営に引き留めるため、経済援助などもしてきたのですが、それも昔の話となりました。テロの原因が貧困に由来するため、テロをなくすには貧困を解消することが近道なのですが、外国で内戦を起こしたり、貧乏人がますます貧乏になる政策を遂行するなど、逆方向に進んでいるように見えます。ここまで見ると米国は衰退しつつあるという意見に賛成したくなります。

1942年、米国の総力を上げて、日独伊の枢軸国を叩き潰すため、自動車業界に対し、民間向けの自動車の生産を止め、航空機、戦車、トラックなどの兵器を生産するように指示をしました。これによりただでさえ生産力の差が大きいのに、物量作戦により枢軸国は次第に敗北への道に追いやられました。ちなみに、戦争が終わるまで米国市民向けの自動車は生産されなかったそうです。この故事から、京都議定書に反対して経済成長を優先している米国でも、大統領による方針転換(テロとの戦争から環境に対する戦争への転換)があれば、強力なリーダーシップで、Co2を出さなくするための行動は可能であるという意見を聞くこともあります。再びリメンバー・パールハーバーの号令で米国が一致団結することがあれば、逆転も可能です。米国は戦略的に行動する国であるため、世界をあっと言わせるルールを押し付けて、苦しい状況を打破することが何度かあったため、潜在力はとても強い国ですから、注意が必要です。

橘みゆき 拝

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