2006年9月16日のコラム「年収300万円台に備えよう」で森永卓郎さんの「年収300万円時代を生き抜く経済学」について書きましたが、現実には年収100万円代しか稼げないフリータ層がどんどん増えてきています。年収300万円ならば、それほど苦労しなくても生きていけるのですが、さすがに100万円代となると、自力で生活するには困難です。今は親が建てた家に住み、親の貯金を取り崩し、親の年金収入から補填されることにより、問題は先送りされています。自分が死ぬまでこのようなぬるま湯的な状況が続くわけありません。今なんとかなっているから大丈夫と思うのは、非常に危ない認識です。





極甘シナリオを想定しても厳しい
私自身は日本の国家破綻は避けられないと認識してますが、仮に奇跡的な方法により、避けられたとします。その場合、日本が抱える膨大な借金を考えると金利をあらゆる手段で低く抑え、その代償として円安と物価高を受け入れることとなるでしょう。前提として、日本全体として経済成長を達成し、インフレも5%程度に抑えられている極めて楽観的な状況としましょうか。日本社会が極甘シナリオである場合、低金利・円安・物価高ですから、輸出企業は有利、輸入企業は苦しくなります。外国に資産を持っていて資金運用して稼ぐ会社も出てくるでしょう。また、付加価値の高いモノやサービスを提供している企業は業績が良くなります。国内企業で誰でも提供できるものを売っている場合、価格競争に巻き込まれ、現状維持できれば良いほうでしょう。その結果、日本全体として成長していても、1割程度の業績の良いところと残りの9割の業績が低迷するところに二極分化します。実際はこんな社会にはならないのですが、官僚達が作るシナリオ(抜本的な改革をせず現状維持を基本とする)のような極甘シナリオを想定しても、経済成長の恩恵を受けられないグループがニート・フリータ層なのです。日本の製造業は、世界最高品質のモノを作り続けることで外貨を稼ぎます。団塊の世代が抜けた後、雇用のニーズは生まれますが、国内では人材が足りず、外国人労働者によって埋められます。知識・スキル・意欲の高い人で即戦力になる人材を雇用側が求めるからです。つまり、時代遅れの知識で、スキルもなく、意欲も乏しい場合、ニート・フリータ層が製造業の正社員として雇用される可能性は全くありません。アダム・スミスのみえざる手ではありませんが、供給が多ければ価格は下がり、需要が多ければ価格が上がります。誰でも提供できるサービスは安い価格で提供され、付加価値の高いサービスは提供できる人が限られる(全体の1割もいれば良いほうでしょう)ため、価格が上がります。サービスに関しても価格の二極化が進むのです。実現の可能性がないと思えるほどの極甘シナリオですら、この状態ですから、5年後、10年後の日本で暮らす場合、もっともっと厳しくなります。ロシア危機やアルゼンチン、トルコなど先に破綻した国の国民がどれほど苦労したのかを参考にすると良いでしょう。
ニート・フリータ層から脱出するには
ニート・フリータ層が収入の多い正社員や契約社員として採用されれば、状況は改善されます。では、どうすれば良いのでしょうか?
学生から社会人になる過程で就職活動をした結果、正社員や契約社員として採用されなかった。もしくは一旦、就職はしたけれども諸事情により会社を辞めた。最近では親が学費を払えなくなり退学したという人も多いのではないでしょうか。フリータという言葉が生まれた1980年代では、夢を追いかけてフリーという立場でアルバイトをしながら糊口をしのぐ人達という意味がありました。そういう芸術家やクリエータを目指している人は、自分の目標に向かって突き進めばよいでしょう。なんとなく大学に入って、なんとなく時間をすごし、気がついたら就職活動をしないといけなくなって自分なりにやってみたけどダメだったという人はどうすれば良いのでしょうか? 大学受験みたいに全体の偏差値であなたはこれ位だから、こういう会社に行けばいいんですよで済んだ時代ではありません。全員に仕える便利な物差しはありません。親の時代はこうだから同じようにすれば良いのだとか、自分で勝手に決めて来いと放り投げたりすると、結局時間切れとなり、ニート・フリータ層に組み込まれてしまったのです。ではどうすれば良いのか。ヒントを求めて、参考になりそうな本はないか探してみました。知人が著者ということで紹介するのですが、仕事力スイッチ―わが子をニートにしないために 就活コーチが開く(著者:藤原直哉、大谷賢司)は、お薦めです。 一人一人適性があって、一人一人の能力(顕在能力+潜在能力)を最大限に活かし、いろんな方と相乗効果が得られるようにするために、周囲の方(親、教師、友人など)がサポートしていく。ゲームを通じて自分自身腹で理解する。そういう風にすればよいのではないかということが書かれています。
ニート・フリータ層の未来シナリオ
あまりに悲惨なシナリオです。現在、フリータ・ニート層に所属している方は、一日も早く、収入の多い層へ脱出することを願っています。最初に社会人になる機会を逃したニート・フリータ層は、親の遺産で生活できるレアケースを除くと、収入の多い正社員なり契約社員として、どこぞの会社に採用されることを目指します。(芸術家志向の方は好きにしてください) その場合、会社が求める即戦力となる実力を持たないと採用されませんが、それは時の経過と共に就職が困難となります。学校で習った知識は陳腐化していき、新たにスキルアップをしないと、即戦力として役に立たないからです。フリータ・ニート層の場合、親に食わせてもらえるため、収入が少なくても不自由はあまりありません。アルバイトなどでやっている仕事は、マニュアル化され、誰でも出来る仕事ですから、単純作業といって良いでしょう。フリータ・ニート層を単純労働者と読み替えても暴言ではないでしょう。単純労働者の場合、誰でもできるため、供給が多く賃金は安くなります。物価が上昇する中、賃金は安くなるわけですから、実質的には年々苦しくなるのです。働けど働けど暮らしは楽にならないし、どんどん苦しくなるのです。これで未来に対して希望を見出せと言われても無理というものです。中には自暴自棄となり犯罪に手を染めてしまう人も出てくるでしょう。ニート・フリータ層は、単純労働をしているため、正社員のような仕事を通じてスキルアップをする機会が非常に少なくなります。自腹を切って教育を受けないと相対的に質の低い労働者になっていきます。会社は進入社員だろうが中途採用だろうが、正社員に即戦力の人材を求めています。採用後に教育する悠長なことを言っていられないため、ハードルが高くなっているのです。例外はあります。それは知人の紹介です。この場合、紹介していただいた人の信用に関わりますので、軽率な行動はできません。お見合いと違いますが、知合いからの紹介先は、自分で探すよりも条件がよいと思いますし、変な人を紹介もできませんから、いい仕組みだと思います。
なかなかいい就職先がみつからずに、ニート・フリータを続けた場合、どうなるのでしょうか? 親の家に住めば住宅費の負担はなくなりまするが、独立する場合は、単純労働のニーズは、24時間眠らない都市部が主体となります。山奥で自給自足生活に近い集落にはコンビニは必要ないだろう。それゆえ都市部で働いて、周辺の家賃が相対的に安い地域に住むことになります。ワンルームマンションがやっと。年収が100万円代のため、家賃を払うともう残りは少ない。食費を倹約するしかなく、外食はファーストフード、家ではレトルトやカップ麺を主に食べる。 ・・・栄養バランスが良くないが安いから食べる。その結果、太ってしまうだろう。服は安い店で買う。100円ショップがお友達になる。安くて品質が悪いものしか手に届かない。といっても、携帯電話など通信費を減らす可能性は少ない。健康保険や年金を払う余裕はない。30代位までは健康面で問題は少ないが、40代、50代となると、いろいろ病気を抱えるようになると大変です。病気をして会社を休むと収入が減るし、医療費も10割負担となると、そうそうカゼ程度では病院に行けません。病院に行く時は自力でなんとかできない状況に悪化した時となる。健康なときにはあまり問題にはなりませんが、病気になったり事故になった場合、貯金などはゼロですから、逆境になった時の備えが全くできていません。消費者金融から借りたら、借金を返済できなくて破産への坂をころがってしまう。また収入が少ない経済的な理由のため、結婚できない人が多い。結婚したとして子供を経済的な理由で産めない。仮に産んだとしても教育にお金をかけられない。子供もまともな教育を受けられないのでニート・フリータ層に組み込まれてしまう。・・・さらに追い討ちをかけて、親が倒れて介護が必要な状態になったら、どうにも行き詰ってしまいます。親が元気なうちは親の年金で食っていけるにしても、親が亡くなれば年金も打ち切りです。それゆえ、親が死んでも死亡届を出さずに自宅の庭に埋め、年金を不正に受けとっていたという事件もニュースになっています。親を殺して保険金を受け取ろうとする人が出てきてもおかしくありません。血のつながった家族で殺し合ったり、貧困がゆえに生きるために犯罪に手をだす状況に追い込まれる。まったくもって絶望的な未来です。
現在、定年後の親と同居しているニートやフリータの方へ
親の貯金を取り崩したり、年金収入があるため、なんとかなっているため、ぬるま湯に浸かっている状態です。この状態が何年も続くと親は歳を取り、介護が必要となったり、亡くなります。親の貯金は底をつくでしょう。親が倒れた場合、多額の出費がかさみますから、正社員でもだいぶダメージを受けますが、貯金を取り崩して対応できます。ニートやフリータ層の場合、深刻なダメージとなってしまいます。親の財産はなくなり、家も手放し、路頭に迷ってしまいかねません。今はなんとかなっても、将来はなんともならないし、誰かがなんとかしてくれることもありません。まして政治や行政に期待しても無駄です。自分で現状を打破しなくてはならないのです。今はなんとかなっていますが、現状に対する認識の甘さにより、将来飢えてしまうことに追い詰められる可能性が高いです。正社員は無理でも、年収300万円代が期待できる派遣型労働者になるよう、スキルアップをすぐにしてください。国内に職がどうしてもみつからない場合は、戦前の移民みたいに外国の地に希望を見出すことになります。そうなってもいいように、最低限、英語で意思疎通ができる程度にしておく必要があります。英語で仕事ができるレベルにまで達していれば、収入UPが見込めます。
芸術家やクリエータの卵たちへ
あなたの夢が実現するよう祈ります。あなたのような先輩を数多く見てきましたが、夢が実現した人と夢半ばで挫折してしまった人との違いはほとんどありません。あえていえば、人と人とのつながりで成功につながる仕事に関わったか、そういう機会がなかったのか、その程度です。ある意味、幸運をつかんだか否かの差です。例えば、イラストを描いている人達をみると、みなさん上手だし、きれいな絵を描いています。ふしあなだらけの私の眼では明確な違いはわかりませんでした。オリジナルな絵を描けるかどうかなのかもしれません。数人のクリエータの方とお話させていただいた時、彼らは新しいモノを産み出すため、街を歩いたり、自然とふれあったり、映画をみたり、常に強烈な刺激を外部から受けています。部屋にひきこもってゲームをする時間はほんの少しだそうです。モノを産み出す人と消費する人は、似て非なるものだと私には思えます。みなさまにアドバイスできるとすれば、多くの人とお話したり、外に出て強烈な刺激を受けることで自分の内面にある想いを芸術に昇華していただきたいと思います。それと現実的な話を1つ。夢を実現できる方は1%もいないでしょう。大多数の人は仕事と夢を両立させる程度に我慢して、社会人として暮らしています。30歳くらいまでは好き勝手なことをしても、ニート・フリータ層からの脱出は比較的簡単です(35歳以上の方との比較で)。そのため、30歳で年収300万円以上の正社員または契約社員として採用されるよう、自分のスキルをアップすることを心がけてください。専業でできなくても、週末芸術家でも、4-5倍期間をかければ専業の芸術家と同じだけの時間を作品に注ぐことができます。専業で毎月1枚絵を描いている人だと、週末芸術家に転進しても年に3枚は描けます。友人に現実と妥協して良い作品が描けるのかと問われたことがありました。その時、私はこう答えました。「一生食えるだけの財産がないのだから、せめて自分の食い扶持程度は稼がないといけません。二千年ほど前にこんなことを言った人がいたそうです。家族を養うことができない人は信仰がない人にも劣るとね」 夢を捨て去るのではなく、夢を持ち続けることこそ大切なのです。花が開くことがないかもしれませんが、自分の好きなことをしているのだから、現実と夢とが共存していることがすばらしいのです。
橘みゆき 拝
【関連記事】
「年収300万円台に備えよう」(2006年09月16日のコラム)
仕事力スイッチ―わが子をニートにしないために 就活コーチが開く(著者:藤原直哉、大谷賢司)

コメント
All About のコラムにフリータの将来について書かれたものがありましたので、併せて読んでいただければ幸いです。
「フリーターの老後はどうなる? 超危険!フリーターの将来設計」
(山崎俊輔 2003年06月03日掲載)
以下の問題点を指摘しています。
1)仕事の切れ目が収入の切れ目
2)収入を上げていくことが難しい
3)結婚~子育ての補助もほとんどない
4)住宅を買うときも大変
5)病気になったとき健康保険も不安
6)老後の年金もほとんどもらえないかも
7)老後の資金準備は特に危ない
Posted by 橘みゆき at 2007年1月 2日 00:51