連載コラム13 楽園ロタ島:ゾーニングの重要性(後)

今回は、連載コラム12からのつづき。ロタ島でのゾーニングの提案を試み、水素の島を目指す『アクエイリアス・プロジェクト』について考えてみたい。私のロタ島に関する連載コラムの最終回となる。 ********** 5.自然保護は分散して広くネットワーク化 市街地など環境負荷は一ヶ所に集中すると自然環境の受けるダメージが小さくなる。逆に、自然環境のための対策は、一ヶ所一分野だけで徹底的(集中)にやっても努力の割に効果がそれほど上がらず、従って環境全体への貢献は少ないことをお話した。自然保護などはその好例だ。ほどほどの保護で良いから、できるだけ広範囲に広げて分散させネットワークする方が、徹底的な保護を極く狭い範囲だけでするより、ずっと大きな効果が得られる。もちろん、徹底的な保護を広範囲にとれるのが理想であることは言うまでもないが。 現在、ロタ島にはウェディング・ケーキ・マウンテンの他に、2...

連載コラム12 楽園ロタ島:ゾーニングの重要性(前)

前回の連載コラム11では、『気持良い』をキーワードとした『ランドシャフト』を環境評価に活用してロタ島に真の楽園を創ることを提案した。 今回は、より基本的なゾーニング(土地利用法)について考えてみたい。 ********** 1.楽園ではどこで何をしてもよいのか? 楽園には厳しい掟も厳密な規則もない。それは住民がやって良いこと良くないことを自ずから分かり当たり前のこととして守るからだ。現実のロタ島でそれを期待したらどうなるであろう? 好き勝手な所に家を建て、最も眺望のよい場所には大きなホテルが建ち、島のあちこちに港が造られ、その港の周りには工場などの大きな建物が建ち並び、あちこちに細切れの農地が開かれ、道路がジャングルを縦横に突っ切り、村のど真ん中でゴミを燃やし……など、かなりひどいカオス(渾沌状態)を想像できる。これでは楽園ロタ島の自然はアッと言う間に破壊され、多くの動植物が絶滅...

連載コラム11 楽園ロタ島:ランドシャフトで楽園を創る

前回の連載コラム10では、その建設について(再び)議論されているカジノ・プロジェクトについてお話し、楽園ロタ島での新しい観光のあり方を提案した。今回は、ロタ島に気持よい楽園を創るために、島の自然や環境、そして構造物(市街地、道路、建物など)に対する直感的で簡単な評価法について、近自然学から提案したい。その評価の物差しとなるのが『ランドシャフト』という新しい概念だ。 ********** 1.楽園は『気持よい』所 皆さんは『楽園』と聞くと、をどんな情景をイメージされるだろうか? いずれにしても、静かで、きれいで、自然豊かで、居心地よく、快く、そして気持よい場所だろう。そしてそれはある特定の人だけに当てはまるのではなく、楽園に住むすべての人たちに共通のことに違いない。 楽園をヴィジョン(理想像)としたロタ島では、当然のことながら、住んで気持よい場所の実現を目指す。どうしたら、そんな素...

連載コラム10 楽園ロタ島:未来のヴィジョンと今日のパン

楽園では働く必要がない。しかし、現実の世界では日々のパン(我々にとってはご飯か?)を得るためにそうはいかない。また、何もしないのも辛いものだろう。そこで今回のコラムでは日々の糧を得ることをテーマに、ロタ島での観光のあり方についても考えてみたい。 ********** 1.楽園というヴィジョン ロタ島のヴィジョン(理想像)は楽園だ。楽園ではあくせく働かなくても生きていける(らしい)。『働かざるもの喰うべからず』という厳しいオキテは、楽園には通用しない。しかしながら、我々には何も仕事をしないという状態も、ほとんど拷問に近いのかもしれない。逆に、お金のためにする仕事も虚(むな)しいではないか。理想を言えば、全ての住民が自分のやりたいことを一生懸命やって、それで社会が維持できることだ。つまり、それぞれが自らの天命と天寿を全うして生きる社会。ロタ島ではこの理想を是非実現したい。 *****...

連載コラム9 楽園ロタ島:自由奔放に生きる!

前回の連載コラム8では、楽園ロタ島の歴史とコミュニティ(地域社会、共同体)についてお話した。ロタ島の楽園を壊さないために、さらにロタ島をもっと楽園にするために、そのコミュニティにおいて「競争から協調への転換」を提案した。今回はその続編とでも言うべきもので、住民が自由にしかも他人に迷惑をかけずに生きることができる方策を提案したい。 ********** 1.楽園では皆が自由奔放に生きる ロタ島のヴィジョン(理想像)は「楽園」だ。楽園には悲惨な環境戦争も、難しいエネルギー問題も、過酷な生存競争も、そして窮屈な規制もない。皆が「自由奔放に生きる」ことができるのだ。 しかし、現実のロタ島には、環境問題もエネルギー問題もある。過当競争や厳し規則はまだないが、このまま行けば間もなく実施されることは目に見えている。そうしなければ、環境悪化を食い止めることができず、住民の生活が厳しくなることを避...

連載コラム8 楽園ロタ島:その歴史とコミュニティ

連載コラム5&6が「太陽エネルギー」、連載コラム7が「ゴミ」とヘヴィーな話題を続けてしまった。ここらで一息入れたいのだが……。もしかしたら、またヘヴィな展開になるかもしれないが、よろしくお付き合いの程を! 今回は、「友愛」を絵に描いたようなチャモロのコミュニティ(地域社会とか共同体という意味)とその背景にある歴史をテーマにお話しよう。我々がお手本にしたくなるような、素晴らしいコミュニティなのだが、そのクォリティーを保つためには、これからの発展には注意しなくてはならないこともある。 ********** 1.楽園の住民チャモロ ロタ島のチャモロ人たち(カロリン人たちも)は、道で出会うといつも手を挙げて「Hafa Adai !(こんにちは!)」と挨拶する。それがクルマどうしであっても、クルマと歩行者であってもだ。……と、事前に聞かされていた。それは本当だった。詳細に観察すると、全員が...

連載コラム7 楽園ロタ島:ゴミは資源だ!

連載コラム5&6と2回続けて太陽エネルギーの有効利用についてお話した。少々難しいコラムとなっただろうか。エネルギーは我々の生活のあらゆる局面に深く関わっていながら、直接目に見えないだけに、何となく縁が薄いように感じられるようだ。バナナやエビが太陽エネルギーの塊だと言われても、ピンと来ないに違いない。しかし、バナナもエビも、そして風や雨も、紛れもなく太陽エネルギーの塊なのだ。 そこで今回は、読者の皆さんにもなじみ深いテーマを選んだ積もりだ。 前回、ロタ島のゴミ、特に建築廃材に触れた。ゴミや汚水は近代文明と現代社会が生み出した問題であり汚点だと言えよう。この問題をどう考えたら良いのか? 近自然学の視点からは、ゴミや汚水の背景にどんな世界が見えるのか? 皆さんと一緒に考えてみたい。 ********** 1.楽園にはゴミも汚水もない ゴミと汚水は、固形か液状かの形の違いはあるものの、我...

連載コラム6 楽園ロタ島:太陽の恵みを活かす(後)

連載コラム5「楽園ロタ島:太陽の恵みを活かす(前)」からのつづきである。 十分にある太陽の恵みだが、あるだけではダメで、上手く利用したい。そこで今回は太陽エネルギーをどう利用したら良いのか、ロタ島にフォーカスしてお話しよう。 ********** 6.ロタ島での水素エネルギー ロタ島には太陽エネルギーが十分にある。しかし、その持続的有効利用のためには守らなければならないいくつかの原則がある。 前回お話したように、太陽エネルギー(分散性)の有効利用のためには、石油など(集中性)と同じやり方ではダメなのだ。つまり、頭の切り替えと、全く違うテクノロジー(科学技術)が必要となる。にもかかわらず、今まで通りの(従って石油のための)やり方で押し通そうとすると、いずれ破綻する。それは自然の摂理に反するからだ。 ロタ島は世界最先端のテクノロジーによる...

連載コラム5 楽園ロタ島:太陽の恵みを活かす(前)

キラキラ輝く太陽はロタ島の宝! さんさんと降り注ぐ陽の光に心が解放されて気持が良いのは、太陽が我々の命をはぐくんでくれていると、無意識に感じているからだろうか。太陽の光や熱によって、風がそよぎ、大気や海や大地が暖められ、植物や動物たちが大きく育つ。そんな太陽の恵みを受けて育った旨い食物について、前回の連載コラム4「楽園ロタ島:清水と旨い食物」ではご紹介し、「食の自立」を目指そうと提案した。 そしてそれが「太陽エネルギーの有効利用」と「脱石油」につながるというお話をした。なにやら「風が吹けば桶屋が儲かる」的な展開と感じられたであろうか? そこで、今回、エネルギーについてさらに詳しくご説明しよう。 少々長くなるので、前後2回に分けることにする。 ********** 1.太陽エネルギーとは そもそも、太陽エネルギーとは何なのか? 地球から約1億5千万キロメートル(149,600,00...

連載コラム4 楽園ロタ島:清水と旨い食物

1.楽園の飲み物 ロタ島の楽園的飲み物の代表は、湧き水(ミネラルウォーター『ロタクリスタル』)、フルーツジュース、果実酒、ハーブティーなどだろう。 ココナッツ・ジュース(ココナッツ・ウォーター、ココナッツ・ミルク)(注1)には、私自身今まで良い印象がなかったのだが、ロタ島の物はココヤシの種類が違うのか、旨いものを見分ける力量のお陰なのか、トライした3回とも旨かった(写真)。このココナッツ・ジュースは発酵させてココナッツ・ワイン(注2)となる。口当たりが良く芳醇な風味の素晴らしい飲み物だ。 ロタ島独特の果物の一つにロタレモンがある(写真2枚)。日本のミカンを小粒にしたような色と形だが、味はライムに近い独特の香りと味わいがある。ジュースとしても、またビールなど他のドリンクに絞り落としても旨い。 ********** 2.楽園の食べ物 島でとれる山海の珍味が楽園の食べ物だ。それは、島内産という...

連載コラム3 楽園ロタ島:そのヴィジョン

1.ヴィジョンとは何か? ヴィジョンとは理想像とそれを思い描くこと。つまり、我々の求める理想状態を、具体的な像としてイメージすることだ。何かを実現しようとする場合、具体的な形をイメージできるなら、ほぼ90%、事はなったも同然だ。あとはそのイメージを実際の形にする作業があるだけだとも言える(注1)。 ヴィジョンが重要なのには、2つの理由がある。まず第1点は、理想像をイメージすることが、何かを実現するという我々の創造的プロセスの重要な根幹をなすこと。そして第2点は、プロジェクトなどにおいて、右往左往するムダを減らすこと(図左)。つまり、効率を上げることだ。闇夜の航海での北極星や南十字星のような道しるべとなる明確なヴィジョン(理想像)がなければ、右往左往は必然であろう(図右)。いや、自分たちが右往左往していることすら気付かないだろう。それは右往左往と分かる明確な基準が存在しないからだ。 ...

連載コラム2 楽園ロタ島

1.ロタ島はこの世の楽園だ! ……これが島に初めて足を踏み入れた私の第一印象である。 2006年8月、私は家内と共に北マリアナ諸島連邦(首都サイパン)(注1)のロタ島に2週間ほど滞在した。ここにエコヴィレッジ(エコタウン)などを実現するプロジェクトがあり、私の研究する『近自然学(注2)』を活かそうということになった。近自然の考えのベースとなる「我々の豊かさと自然環境とを両立させる」ためには、まずしっかりしたグランドデザイン(全体構想)が大切だ。そして、それを描くのに必要な材料を集める現地調査のために、今回ロタ島を訪れた。さらに、今回、政府関係者やロタ島市長とロタ島の行政に関わる皆さん、そしてマスコミ関係者に対して、近自然学の講演を行った。ロタ島でのエコヴィレッジの実現は北マリアナ諸島連邦政府やロタ島市長などとの共同プロジェクトであり、しっかりした協力なしには実現不可能だからだ。講演では、...

連載コラム1 楽園ロタ島:ウェディングケーキ山のおとぎ話

昔、昔、ある晩のこと、一人の神様が、まだ天にいたころのこと、ある夢を見ました。それまで神様は、地上ですむための、うっとりするほど、すばらしくて、美しい場所をずっと夢見ていたのです。 そこで、神様は、目覚めると、天の太母、海の太母、地の太母に会いに行き、彼女たちに彼が夢見たことを語りました。そして、彼女たちに、自分の夢の実現を手助けしてくれるようにお願いしました。 偉大なる太母たちはともに集い、素敵な彼の夢に手を貸すことを決めました。そして一人のうっとりするほど、すばらしくて、美しい天と海と地の神々の娘が生まれした。この愛しく、かわいらしい少女は『ルタ*』と名づけられました。*チャモロ語でロタ島は『ルタ』という 本当に光輝くような少女と出会い、神様はとても喜びました。彼女は本当に輝くばかりの存在だったからです!その少女は、透き通った水晶のような光と虹の七色に包まれていました。そして、それ...

「近自然」への発想転換

9月中旬より山脇正俊(やまわきまさとし)さんによる近自然学の連載が始まります。 PDF版はここをクリック。 以下は、HTML版です。 1)なぜ今までのやり方ではダメなのか?  地球環境が崖っ縁らしいのに、我々は豊かさを諦められないから   石油の枯渇が目前に迫っているから 至る所で、今までのやり方が通用しなくなっている。八方ふさがり的な閉塞感から、人類とその文明に大きな壁か崖が迫っているかもしれないという危惧を、多くの人達が直感していると言われる。IPCCなどの環境データによると、大気中のCO2濃度の加速的上昇が顕著で、地球の温暖化傾向も明瞭だ。このままでは、そう長くは続かないことは自明だ。どうやら、多くの人達の直感は正しいようだ。 このまま環境が汚染されたり自然が破壊され続けても、地球が消えてなくなるわけではない。従来の地球環境に依存して生きる動植...