

楽園では働く必要がない。しかし、現実の世界では日々のパン(我々にとってはご飯か?)を得るためにそうはいかない。また、何もしないのも辛いものだろう。そこで今回のコラムでは日々の糧を得ることをテーマに、ロタ島での観光のあり方についても考えてみたい。
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1.楽園というヴィジョン
ロタ島のヴィジョン(理想像)は楽園だ。楽園ではあくせく働かなくても生きていける(らしい)。『働かざるもの喰うべからず』という厳しいオキテは、楽園には通用しない。しかしながら、我々には何も仕事をしないという状態も、ほとんど拷問に近いのかもしれない。逆に、お金のためにする仕事も虚(むな)しいではないか。理想を言えば、全ての住民が自分のやりたいことを一生懸命やって、それで社会が維持できることだ。つまり、それぞれが自らの天命と天寿を全うして生きる社会。ロタ島ではこの理想を是非実現したい。
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2.今日のパンをどうするのか?
前回の連載コラム9では、皆が自由奔放に生きても大丈夫なシステムの提案をした。それが「環境貢献プレミウム(ボーナス)と環境負荷ペナルティー」の導入だ。しかしこれだけではまだ不十分である。現在の貨幣をベースとした経済システムは早晩破綻するだろうが(注1)、ここでは、一応貨幣経済が存在するとしてお話しよう。
楽園ロタ島でも、現金収入は今のところ必要不可欠なものだ。チャモロ人の一般家庭で、月額600ドルほどが必要と言われる。この600ドルを得るために、大変な努力を強いられ、目先の利く多くのチャモロ人たちは米国本土へ移住した。そして、その代わりに低賃金でもやっていけるフィリピンなどからの外国人労働者たちが多く流入している(注2)。
問題は、ロタ島のチャモロ人たちが月に600ドルをいかに確保できるかだ。
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3.近自然学からの提案:基本給の無条件支給と楽園基金
月額600ドルを確保するために、何をすべきか?
近自然学からズバリ提案しよう。
それは、島民全員に一律600ドルの基本給を支給することだ。現状のロタ島では、月額約600ドルで生きていけると言われるので、とりあえず600ドルとしておこう。大人1人で600ドルだ。家族がいれば増やす。
これで、病気や障害などで働けなくても、なんとか生きていくことができよう。そして、もし働くなら当然収入が増えるのだが、その一部は『楽園基金』にプールされる。この「楽園基金」と前回お話した『環境基金』は同じでもよいし、別に分けてもよい。
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4.楽園ロタ島でのカジノ・プロジェクトに
今ロタ島にカジノを造ろうという話が持ち上がっている。実は今回は4回目で、今まで3回はことごとく実現しなかった。しかし、今回はどうやら様子が違う。それは、首都サイパンの隣のテニアン島に大きなカジノが造られ、風俗や治安はかなりメチャメチャらしいのだが、経済的には一応成功してるからだ。
カジノは中国人が牛耳り、その客のほとんどは中国人たちだ。私はよく知らないのだが、中国人はバクチが好きらしい。今でも「ポーカー」という看板をあげた賭場がロタ島にもあるのだが、すべて中国人の経営だ(写真)。

すでに首都サイパンの隣のテニアン島に大きなカジノが3つもあるのに、誰が好き好んで飛行便もろくない僻地のロタ島のカジノへ来るのか? 破綻は目に見えているではないか。さらに、多くの住民にとってメリットは何もないと断言できよう。経済的恩恵を受けるのは、土地を提供する地主、税金やリベートを受け取る政府と政治家、そしてそこで働く従業員だろう。ただし従業員の中にチャモロ人は1人もいないはず。それは給料が低過ぎるからだ。要職を占める中国人と雑用を請け負うフィリピン人だけの世界となるだろう。またカジノの客たちは、日系の高級ホテルには泊まらず、カジノが新たに経営するであろう安ホテルに宿泊することになろう。経営の行き詰まったホテルが何軒もあるからだ。
もちろん、これは私の想像に過ぎないが、恐らく核心は外していないはずだ。
しかも、そのカジノも数年で破産する。中国からの客が来続ける保証がないからだ。残るのは、乱れた治安、荒んだ人心、憎悪、落胆、無残に破れた夢、そして環境破壊だけだ。そんな中で数人の資産家だけはしっかりと財産を増やす。しかしながら、今でも無気力な大多数のチャモロ人たちのさらなる落ち込みようは想像に難くない。考えるだけでも心が痛むではないか。こんな厳しい試練をロタ島のチャモロ人たちは受け入れなければならないのだろうか?
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5.ロタ島での観光は無視できないが…
ロタ島の主産業は観光であり、最大の企業はゴルフ場を備える日系のホテル、ロタ・リゾートだ。その他大小のホテルが10軒、ベッド数は300ほどあるので、宿泊のインフラはすでに整っている。
現金収入のために、ロタ島では観光を無視することはできない。確かに、ロタ島の自然は素晴らしく、チャモロ人たちは親切で、治安はとてもよい。しかしながら、観光のあり方には一考を要する。日本では安いパッケージツアーが観光だと思っている人が多いようだが、これはたいへんな誤解だ。観光の基本は、本来なら行けないような場所にある桃源郷を訪ねることだ。つまり非日常性の実現なのだ。安く気軽にいつでも行けるのは本当の観光ではない。単なる移動か気晴らしの旅だ。
ロタ島へはとても行き難い。普通それはデメリットと思われがちだが、本来の観光から見れば、大きなメリットでもあるのだ。もちろん、苦労して行ってみたら大したことなかった……というのでは話にならぬ。ようやく到達したロタ島は素晴らしかった、是非また行きたい……と多くの人たちの思わせる、そんな桃源郷(楽園)を実現しなければならない。
ロタ島は一般的なパッケージツアーが組める観光地ではない。短期滞在であちこちの名所を見て買い物をする……こんな観光をイメージするなら、ロタ島の魅力は半減、いやほとんどないと言えるだろう。ロタ島に名所はないしショッピングもできない。否、できないことはないのだが、観光客を満足させリピーターを呼べるような名所やショッピング街はない。
では、ロタ島の観光はどうすれば良いのか?
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6.新しい観光の提案1:『健康を楽しむ(スポーツ、セラピー)』をテーマに
確かにロタ島の売りは美しい自然だが、スイスのアルプスやモルジブの海のように、見ているだけで飽きない、しかも何度も行きたくなる……そんなタイプの自然ではないように思う。長期滞在のために、何か特別な付加価値が必要だろう。
ロタ島にはすでに整備されたゴルフ場がある(写真)。これは是非活用したい。一方、海の透明度が高いのでダイビングも素晴らしい(らしい)(写真)。また、ロタ島一周のサイクリングや秘密の洞窟などもあるジャングルのトレッキングも是非やってみたい(写真)。ジャングルのトレッキングには、当然のことながら現地ガイドのエスコートが必要だ。有能なガイドと一緒なら、自生する草花やフルーツやハーブ、そして鳥類など豊かな動植物の説明が受けられるので、楽しみは倍増するだろう。毒ヘビがいないのも大きなメリットだ。




実は、ロタ島にプロ・テニス・プレーヤーのためのトレーニングセンターを造るプロジェクトがある。将来のプロ・プレーヤーを養成する場所でもある。暑い場所では身体の冷却効率が低いので、トレーニング効果が上がると言われる。それにプロにとって一番怖いケガも減る。
そこで、『健康を楽しむ』を観光の第一のテーマにあげたい。
楽園では、人々は健康と永遠の命を授かる。故に、楽園ロタ島では、「健康・長寿」がとてもふさわしいテーマだ。しかしながら、それを楽しみながらやりたい。なにしろ『楽』園なのだから。
テニス、ゴルフ、ダイビング、サイクリング、トレッキングなどのスポーツの他、太極拳や気功法やヨガを学ぶのもいいだろう。また、ロタ島にはノニ(注3)をはじめとした様々な薬草やハーブが自生している(写真)。これらを使った健康茶やハーブバスやマッサージなどのセラピーも考えられる。
また、豊富なフルーツや魚介類、そして自生するロタペッパーなどの数多くのハーブを活用した料理教室も面白い。また、それらを美味しく食べさせるレストランも欲しい。現状でも素晴らしいレストランがいくつかあるのだが、一般的にひどいものが多過ぎる。もっと安くて旨いレストラン、またはカフェーが欲しい。

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7.新しい観光の提案2:『環境を学ぶ(近自然学)』をテーマに
楽園ロタ島では、世界で初めての『近自然の島』を実現しようとしている。
人間の豊かさと自然環境とを両立させて、我々が豊かに健康に幸せに、しかも末長く生きていくことができる……そんな楽園を実現するのだ。そしてこの近自然の考えを、できるだけ多くに人たちに知って欲しい。また、できるだけ多くに人たちに学んで欲しい。これはロタ島や日本ばかりではなく、人類の将来にとって重要なことだ。
つまり、南の島の楽園を楽しみながら『環境を学ぶ』という新しい観光の提案だ。
その拠点となるのが、今私がこれを書いている、スイス・チューリッヒ州にある『スイス近自然学研究所』だ。ロタ島にも『ロタ近自然学研究所』をつくり、日本などから近自然学を学ぶ多くの人たちを受け入れたい。もちろん、本格的な勉強のためには数ヶ月から数年が必要だが、その核心部分を1週間から1月ほどで伝えようというわけだ。
すでに、スイス近自然学研究所では、近自然学セミナーを定期的に開いており、まだ数は少ないが日本からの留学生も受け入れている。しかし、手狭なため、新しいスイス近自然学研究所の建設プロジェクトが現在進行中だ(写真)。

ロタ島では、まず近自然学を教えるインストラクターの養成をしたい。
ここでは国際性を身に付けるために、英会話講座も開く。語学講師はすべてネイティブ(英語が母国語)であり、従来の学習法にとらわれない、新しいメソッドによる確実に上達する英会話講座を提供する。
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今回は豊かさを支える経済活動としての観光を主テーマに、ロタ島独自の新しい観光を提案した。次回は、観光にも日常生活にも重要な、ランドシャフト(注4)の重要性についてお話したい。
2006年11月22日、スイス近自然学研究所にて
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注1)貨幣をベースとした経済システムは早晩破綻する
本当はもうすでに破綻しているのだが、多くの人たちが気付かないか、認めたくないだけだ……とも言われている。アメリカ合衆国や日本など先進諸国が抱える累積赤字は返済できる見通しは全くない。企業で言えば、とっくに破産状態である。国の借金を平気で累積させていく政府には、国家経営の能力がないというのは極論だろうか?
「今までの借金はなかったことにしていただきたい」、という法律が国会を通過する日もそう遠くないと予想する。すでに米国では上の内容を含むNESARA(National Economic Security And Reformation Act)法が2000年3月に連邦議会で可決され、クリントン大統領もサインしていると言われるが、ブッシュ政権は反NESARAの立場をとり、米最高裁判所も公開を禁止しているため、詳細は不明のままだ。
注2)フィリピンなどからの外国人労働者たちが多く流入
ロタ島の公式データでは、
チャモロ人: 1,861
フィリピン人: 891
アメリカ人: 54
日本人: 36
その他: 320
合計: 3,162
である。フィリピン人の全人口に占める割合は30%に登る。実際には、バングラディッシュなどから、工事現場などの肉体労働者が入っているので、低賃金の外国人労働者の割合は全人口の40%近くを占め、異常な状態と言える。
注3)ノニ:Noni
学名:Morinda citrifolia(モリンダ・シトリフォリア)
和名:ヤエヤマアオキ(沖縄地方の呼び名)
熱帯から亜熱帯地方に自生するアカネ科の植物で、成長が早く、発芽から約8カ月で実を付ける。年間およそ4回花が咲き実を付け、一つの枝に完熟の実、未熟の実、花弁が同時に付くのが特徴。種は気泡を持ち水によく浮くので、島から島へと海を渡って繁殖しやすい。
ノニの実は各種ビタミンやミネラルなどを豊富に含むハーブフルーツ。その実は数週間で醗酵を始め、その醗酵液には各種酵母菌や酵素、アミノ酸、中鎖脂肪酸、ポリフェノール類など有用な成分が多く含まれる。ノニジュースは、糖尿病、高血圧、免疫力、心臓病、ガンの予防、美容や健康などに効果があると言われるが、科学的に実証された物ではない。また、その根には毒素を持つので、扱いは専門知識が必要。
ノニの育成には水はけがよく汚染のない土壌が必要で、汚染に無縁の火山島であるロタ島は良質のノニが育つ好条件が揃っている。
注4)ランドシャフト
景観・景域・風景・風土・情景・心象風景のこと。見た目だけではなく、音・匂い・味・感触、そして感動をも含む。つまり『五感+心』がテーマだ。
