連載コラム7 楽園ロタ島:ゴミは資源だ!








連載コラム5&6と2回続けて太陽エネルギーの有効利用についてお話した。少々難しいコラムとなっただろうか。エネルギーは我々の生活のあらゆる局面に深く関わっていながら、直接目に見えないだけに、何となく縁が薄いように感じられるようだ。バナナやエビが太陽エネルギーの塊だと言われても、ピンと来ないに違いない。しかし、バナナもエビも、そして風や雨も、紛れもなく太陽エネルギーの塊なのだ。



そこで今回は、読者の皆さんにもなじみ深いテーマを選んだ積もりだ。



前回、ロタ島のゴミ、特に建築廃材に触れた。ゴミや汚水は近代文明と現代社会が生み出した問題であり汚点だと言えよう。この問題をどう考えたら良いのか? 近自然学の視点からは、ゴミや汚水の背景にどんな世界が見えるのか? 皆さんと一緒に考えてみたい。



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1.楽園にはゴミも汚水もない



ゴミと汚水は、固形か液状かの形の違いはあるものの、我々にとって邪魔な物、使えない物のことだ。



楽園にはゴミも汚水もない(はずだ)。つまり、ゴミも汚水も出ない状態が理想だと言える。ロタ島にはゴミ収集もないし、ゴミ焼却場もない。また、汚水を流す下水道もそれを処理する汚水処理場もない。

では、ロタ島にはゴミも汚水もないのか?

それが結構盛大に出ていると思われる。現在のロタ島で一般的な使い捨てのライフスタイルからは、大量のゴミが出るのは当然。では、出たゴミはどこへ行くのか?



また、トイレはどこでも近代的な水洗だ。下水道も汚水処理場もないロタ島では、水に流された汚物はどこへ行くのだろう?

どうやら、ゴミはそのまま投棄場へ捨てられている。焼却もバクテリア分解処理もしない生のままだし、土壌や地下水汚染を防ぐための漏水止めもない素掘りのままだ(写真)。








汚水は、各家庭の地下に埋め込まれたコンクリートボックスに入り……なんと出口がない。このボックスの中で何が起こっているのか定かでないし、出口のない(見えない)のは地下浸透させているからだ(注1)。



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2.ロタ島にゴミ焼却場を造るべきか?



投棄場へ捨てられるゴミをよくよく観察すると、かなりカロリー(熱量)が高そうだ。つまり、燃やせば沢山の熱が出るという意味。では、給湯を兼ねたゴミ焼却場を造るのが良いのか? 現状ではその通りだが、ちょっと待った!「現状では…」と言ったのは、「従来のライフスタイルでは…」という意味だ。使い捨てが当たり前のアメリカ流ライフスタイルはロタ島にはそぐわない(高過ぎるし、何より住民の幸せになっていないようだ)し、石油の枯渇と価格の高騰から、遅かれ早かれ破綻して循環型のライフスタイルに変わるだろう。いや、変わらざるを得ない。そうでなければ、極端な話、島の豊富な食べ物を前にして餓死することになるからだ。



使い捨てのライフスタイルから循環型のライフスタイルへ転換すると、実はゴミの量が減り、その内容も大きく変わる。燃える物がどんどん減っていく。環境先進国と言われるスイスでは、この現象が顕著だ。ゴミが有料化(市町村によって差があるが、35ℓのゴミ袋が150〜200円程度)され、資源ゴミの分別収集(ゴミが資源になるなら、それはもうゴミではないが…)(注2)が進むと、ゴミの量は劇的に減る。また、パッキング(包装)の簡略化とリユース(再使用)(注3)などにより、燃えるゴミはさらに減る。

スイスで最大の街であるチューリッヒには2つのゴミ焼却場が市街地内に造られている(写真)。郊外に造らないのは、ゴミ焼却場が集中暖房給湯施設として機能しているからだ。つまり、ここで得られた熱を周辺の公共施設や各家庭に供給する(実は売っている)のだ。また、焼却場が市内にあると、ゴミ収集車の走行距離が減る。ばい煙処理技術が進歩した現在、焼却場を市内に作る環境的デメリットは少ない。むしろメリットが大きいという判断だ。








ところが、近年、ゴミの量が減り、さらにカロリー(熱量)が落ちて、燃え難くなる傾向が強い。そこで、チューリッヒ市では、焼却場を持たない小さな町村などからのゴミを受け入れたり(もちろん処理費を取る)、リサイクル用に集めた紙を燃料として投入している。ゴミを燃やすために重油を投入するなどもってのほかなので、苦肉の策としては致し方ないだろう(そもそも、紙の分別収集リサイクルがどうあるべきかという問題は解決していないが…)。



こういう先例があるので、ロタ島でゴミ焼却場を建設することは、あまり賢明な策とは思えない。では、ゴミ問題をどうしたら良いのか?



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3.ロタ島での下水道と汚水処理場は?



一方、汚水はどうだろう。

汚水も実はライフスタイルと深い関わりがある。しかし、ゴミのように汚物の量がライフスタイルによって大幅に変わるわけではない。例えばトイレ。かつては汲み取り式だったのが、今は水洗式が当たり前だ。水洗式になってウンチの量が増えるわけではない。いや、もしかしたらライフスタイルの変化によって不要に多量の食事を摂っているかもしれないが、まあ、それは置こう。問題は、水洗の水で汚物が薄まることだ。これによって汚水の総量が増え、しかも薄まることによってバクテリアの分解処理効率が落ちる。つまり、分解し難くなるのだ。汚物は有機分(炭素化合物という意味)が主体で、バクテリアにとっては美味しいご馳走だ。そのご馳走が薄まってしまうと、バクテリアは食事し難くなる。

しかし、だからと言って、今更かつての汲み取り式トイレに戻れるだろうか? 恐らく無理だろう。ある程度のメンテナンスが期待できるなら、水に流さずに、枯草や木片などの植物性有機物と一緒に混ぜて、その場でバクテリア分解させる手もある。スイス・アルプスの山小屋などでは実績を積んでいる。1年を通して気温の高いロタ島ではバクテリアの活動が活発なので、とても有効な方法だろう。



下水道と汚水処理場は水質浄化のため。汚水の流れ出る、川や湖、さらには海の水質を悪くしないための配慮だ。しかしながら、長大な下水道と汚水処理場を実現するなら、そのインフラ整備(建設・保守)とランニング(運転)のために膨大なエネルギーを使う(写真)。








うがった見方をすれば、水質浄化のために大量の石油エネルギーを使って大気汚染を出してるとも言えないことはない。「水質汚染を大気汚染に置き換えてるだけだ」という批判もあるのだ。

大都市ならいざ知らず、ロタ島に下水道と汚水処理場を造るのは、現実的ではない。では、どうしたら良いのか?



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4.なぜゴミや汚水が出るのか?



ゴミと汚水問題の解決策を探る前に、まず、ゴミや汚水がなぜ生じるのかを考えてみよう。



我々の生活や活動には多くの物質資源とエネルギーが使われる。しかし、使われた資源やエネルギーが消えてしまうわけではない。形が変わるだけだ。極々単純に表現するなら、「この世界では物質が太陽エネルギーによって循環している」と言えよう。エネルギーは最終的には熱の形となり、しかも均等に分散した状態へ落ち着く。これをエントロピーが高い状態と言う。そうなると、もう何も起こらない。これが永遠の静寂、つまり、死の世界だ。地球上でそんな状態を避けるためには、片や、地球に溜まった熱を宇宙空間へ捨て、片や、太陽から新たなエネルギーを得なければならない。実は、クルマのエンジンなども同じことをしている。冷却とガソリンの爆発燃焼だ。



物質が太陽エネルギーによって循環するのがこの世界だが、全ての物質が循環すればゴミは出ない()。上手く循環しないと余剰分が出る()。また、この循環の環の中に新たな物質(地下資源など)を大量に追加投入すると、全ての物質が循環できず多くの余剰分が出る()。これらの余剰分がゴミであり汚水なのだ。もちろん、いくら努力しても物質の100%が循環できるわけではないので、それを補う物質の追加は必要だ。それが多過ぎるのが問題なのだ。












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5.ゴミや汚水は資源なのだ!



循環しない物質がゴミや汚水になることをお話した。

これは、物質を循環させればゴミは出ないことを意味する。逆に言えば、ゴミが出ないようにすると物質は循環することになる。



ゴミや汚水は資源であり、再利用したい。

しかしながら、出たゴミを資源として再利用すること(つまり再循環させること)より、ゴミが出ないように配慮することの方が、実は重要なのだ。それはライフスタイルや社会システムの転換を意味する。そして、それが実現した社会を循環社会(循環型社会)と言う。



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6.循環社会にはゴミも汚水もない



循環社会では、ゴミも汚水もない。(いや、実際にはあるのだが、ごくわずかだ。)ここで、連載コラム4「楽園ロタ島:清水と旨い食物」の章でお話した、資源利用に関する優先順位の原則を再確認しよう。



 1)リデュース:使用量の減量

 2)リユース:物の再使用

 3)リサイクル:資源の再生利用



不要な物やそれほど重要ではない物は、「製造させない、流通させない、消費しない」。これが、リデュース(使用量の減量)で、最も大事なことだ。



まだまだ使える物は、新たな使用法を考えたり、他人に譲ったりして、何度も使う。これが、リユース(物の再使用)。兄のお古の玩具を弟がもらって使ったり、お母さんの和服を娘が着たり、クルマや電気製品などを中古品として販売するのがこのリユースだ。品質が良いほど、何度もリユースできるので、安物の大量生産から良い物の少量生産へ、経済活動は大きく転換することになる。



最後にリサイクル(資源の再生利用)が来る。リサイクルは環境のためという意味もあるが、むしろ、枯渇資源の温存が主目的と解釈したい。つまり、エネルギーを投入しても枯渇資源を温存するという意味だ。もちろん、物によっては地下から掘り出して精練・加工するより、ずっと少ないエネルギーで済む場合も多い。アルミなどはリサイクル製品のクォリティーが落ちがちだが(ボロボロになる)、不純物を取り除くなどして次第に改善されつつある。



日本ではリサイクルが注目されがちだが、実は、リユースの方が重要である。(いや、最も重要なのはリデュースだ!)それは、エネルギー投入量がずっと少ないからだ。「リサイクルするからどんどん使い捨てして良い」などと考えるのは飛んでもないことなのだ。



リデュース、リユース、リサイクルを「3R」と呼ぶ(注4)。これらがうまく機能するとゴミは極端に減る。さらに、有機物の燃料や肥料としての最終利用も進むと、ゴミはほとんどなくなる。これが、資源をムダにしない循環社会だ。



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7.楽園ロタ島にはゴミも汚水もなくなる



ロタ島では循環社会の実現を目指したい。そうすれば、我々にとって有用なエネルギーも資源も徹底的に有効利用することになり、ゴミや汚水は極端に減るはずだ。本当はゴミや汚水は出るのだが、それを資源として再利用するので、ゴミにも汚水にもならないわけだ。



具体的には何をすれば良いのか?



 ・食材はロタ島やマリアナ産を優先する

 ・衣類もロタ島やマリアナ産を優先する

 ・建材や家具はロタ島産の木材や自然材で無処理・無加工を優先する

 ・どんなものでも余計なものは買わない:生産させない、流通させない

 ・安物の使い捨ては止める

 ・一時的には高価でも良い物を買う

 ・良い物を慈しみながら使い、壊れたら修理してさらに使う

 ・まだまだ使える家具や電気製品などは、他人に譲ってリユースする

 (リユース・ビジネスは将来有望)

 ・買い物には自分の手提げ袋を持って行き、過剰包装は断る

 ・スーパーでは発泡スチロールのパックや冷凍物を買わない

 ・あらかじめ小分けパックされたものは買わず、大きなパックを家庭で小分けして使う

 ・塩ビのラップやアルミホイールはできるだけ使わない:紙のラップがある

 ・ラップを使う場合は何度もリユースする

 ・生ゴミはコンポスト化して肥料として利用する

 ・残飯は塩分が多いので別にして、ブタのエサにする

 ・ビールや清涼飲料はペットボトルやアルミ缶を止めてビン入りにする

 ・ガラスビンは洗浄して何度もリユースする

 ・紙は裏側もメモ用紙としてリユースする

 ・紙ナプキンは汚れた食器をぬぐってから捨てる

 ・減らす努力をした上で出たゴミは、枯渇資源の場合はリサイクルする

 ・木材・紙などの再生資源の場合は燃料かコンポストとして利用する

 ・汚れのひどくない水は下水に流さずに、観葉植物や庭に散水する

 ・汚水はバクテリア分解による簡易処理の後、ため池などでワンクッションおき、水性植物を生やし、魚を飼う



などなど……



意外に簡単なことばかりだとお気付きになったのではないだろうか。これらの簡単なことを日常生活で当たり前に実践していけば、ロタ島のゴミも汚水も劇的に減るだろう。こんなに簡単にゴミや汚水から解放されるのだから、やらない手はない。それには一人一人の心がけと実践が決め手なのだ。



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ゴミ(汚水も)問題と言うと、出たゴミをどう始末しようかと考えがちだが、ゴミが出ないようにすることの方が重要だ。ゴミが出るということは、我々の貴重な資源をムダにしていることで、とてももったいない。

我々の目指すゴミのない循環社会は、資源をムダにしない社会のことである。そしてそれは窮屈な毎日ではなく、我々の人生の質を上げてくれる本当の意味で豊かな社会のことなのだ。






2006年11月1日、スイス近自然学研究所にて




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注1汚水は……地下浸透させている

ロタ島最大の企業でもある日系のロタリゾートホテルでは、ホテル内で出る汚水を敷地内にある処理場でバクテリア分解処理し、さらにその処理水をゴルフ場の散水に利用している。中々上手いシステムと言えよう。





注2資源ゴミの分別収集

スイスでの資源ゴミの収集法は、市町村ごとに異なる。しかも、時代と共に変化している。私の住んでいるチューリッヒ郊外の村での現状は以下だ。



常設の分別収集所へ持って行く物:

古着、ワインボトル(洗ってリユースする)、ガラス(透明、緑、茶)、缶、小金属(どんな金属も混ぜて良い)、大金属、発泡スチロール、植物性廃油、鉱物性廃油、動物の死骸(冷蔵庫がある)、塗料・毒物(有料)



毎週1回だけ分別収集所へ持って行く物:

粗大ゴミ(有料:1kg約40円)



月1回回収する物:

紙、段ボール



週1回回収する物:

枝や葉などの植物のゴミ(台所の生ゴミはダメ)



お店へ持って行く物:

バッテリー、ペットボトル、薬



自分で処理する物:

生ゴミ(コンポスト化)





注3パッキング(包装)の簡略化とリユース(再使用)

スイス・ドイツでは、「贈り物だから包んでください」と言わない限り、包装はしないのが普通だ。

パッキング(包装)のリユース(再使用)とは、タマゴのトレイなどが有名。また、郵送用の既製のボックスがある。通信販売などで、製品を注文すると、いくつかの小物をそのボックスに入れて送ってくる。受け取ると、中身だけを出し、ボックスは配達人や郵便局へ返却する。そうやってボックスを何度も使うわけだ。フタも簡単に開閉できるので、梱包と開梱の手間も省ける。





注4リデュース、リユース、リサイクルを「3R」と呼ぶ

リデュース(Reduce)、リユース(Reuse)、リサイクル(Recycle)。ロングライフ(Long Life)を加えて、「3R+L」と呼ぶこともある。

さらには、リフューズ(Refuse:例えば過剰包装などを「拒否する・断る」)、リペア(Repaire:修理する)、リフォーム(Reform:改善・改良する)、リターン(Return:元へ戻る)などを加えることもある。

「リ」が付く単語が並んでいるが、これは偶然ではない。「Re」とは「再び」という意味で、資源に関して考える場合、とても重要なことなのだ。


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